決着のときは迫る。
コウ・ウラキは吶喊した。
彼自身と、作中の登場人物である浦木豪がどのように関係しているかは知らない。
彼は、フロドの「0083ジオンの残光」を読んでいなかった。
たまたま、彼もまたトリントン基地に縁があって、名前が似ていたから呼んでもらったのだろうか。
分厚い装甲をまとったサイサリスは、むしろずんぐりとして見えた。
全身をカバー出来る巨大な盾。
背負ったバズーカは、戦略級の核弾頭仕様。
ここでは使えない。
あとほんの数十メートル。
それだけ移動すれば「脱出」判定がとれて、このフィールドでのディラス・フリート側の勝利が確定する。
だが、サイサリスはじっと立っていた。
ガンダムタイプにほとんど採用されているツインアイが、コウのゼフィランサスをとらえた。
「待っていた?」
コウの目が見開かれた。
小説と現実をごっちゃにするのは、馬鹿げている。
だが、彼が実際に経験したこと。
ガトーがサイサリスを持ち出した時、彼は負傷していた。
操縦技術には少しは自信があったが、片腕では、モビルスーツの操作はむずかしい。
代わりに追撃に出たのが、たまたまトリントンに来訪していたクワトロ・バジーナ大尉だった。
相手は、“ソロモンの悪夢”である。
なんとか足止めだけでも、と考えたのだが、なんと彼は、演習用の模擬弾しかないドムで、ガトーを制圧してのけた。
クワトロ大尉が“赤い彗星”……
そう呼ばれるジオンの伝説的エースではないか、という噂はずいぶんとあとで知った。
「来い! コウ・ウラキ!」
逃げる、つまり勝利条件を確定させてしまうことは出来たのだろうが、ガトーはサイサリスを動かさない。
「俺と戦うために待っていたのか、がとおぉぉぉっ!」
[00:10:15] 運営 : プライベートモード:ガトーさん、コウさん!
実名で呼びあうのはなしです。
世界観が……
コウのゼフィランサスは、地上戦に特化している。宇宙での戦闘にはバーニヤの換装が必要でる。
その分。
ゼフィランサスの地上での機動性は群を抜く。
ガンダムマークⅡや百式が
実用化したような1Gの重力下でのホバリング移動も可能だ。
ビームがサイサリスの盾を穿つ。
表面は溶けだが、撃ち抜けはしなかった。
サイサリスの防御力は、やはりとんでもない。
カチッ!
ビームライフルの手応えはなかった。
エネルギー……レッド!
弾切れ、である。
マチュたちとの戦いで、ビームを撃ちすぎた。
とっさにビームサーベルを抜き放つが、サイサリスの仕掛けのほうが早かった。
巨体は急速に、間合いをつめた。
抜きはなったビームサーベルの一撃が、ゼフィランサスの盾の一部を切断した。
ビームサーベルの威力もサイサリスが上である。
コウはとっさに短くなった盾をサイサリスに投げつけた。
軽々とそれを弾き飛ばし、サイサリスはさらにビームサーベルを振るう。
かろうじてかわしたゼフィランサスではあったが、コウの胸中に冷たいものが走る。
“ダメなのか……”
冷たい塊が、コウの心を凍らせる。
実際にあったトリントンでのサイサリス強奪のさい……コウはなにも出来なかった。
ガトーを止めたのは、クワトロであり、ガトーの救出に現れたシーマの海兵隊と戦ったのは、マチュとニャアンである。
結果―――ガトーとサイサリスは、シーマのリリーマルレーンで逃げ延びたが、サイサリス運用の要である特殊バズーカと盾を地上に置き去りにせざるを得なかった。
そして宇宙空間でも。
地上戦仕様のまま出撃したコウのゼフィランサスは、いいように弄ばれ。
ゼフィランサスもニナ・パープルトンも奪われてしまったのだ。
怒りが込み上げる。
オレの。
オレの大事なものはすべて、おまてが奪った!
ガトー、ガトー、ガトーおおおっ!!
「まずいぞ! 運営!」
ガトーは飛びかかってきたゼフィランサスをいなしながら呼びかけた。
[00:10:48] 運営 : プライベートモード:どうしました、ガトーさん?
ガトーも素早く通信をチャットモードに切り替える。
[00:10:56] GP02 : プライベートモード:コウの様子がおかしい。
鍔迫り合いから、サイサリスがゼフィランサスを弾き飛ばす。
だが、ゼフィランサスは直ぐに立ち上がり、正面からうちかかる。
[00:11:05] 運営 : プライベートモード:たしかにまえにシミュレーターを使ってもらった時とは戦い方が違いますが……
[00:11:09] GP02 : プライベートモード:コウは以前、ジオン正規軍で試作モビルアーマー、ノイエ・ジールを操縦していたんだ。そのときに強化のために薬物投与と―――誤った記憶を植え付けられて!
[00:11:15] 運営 : プライベートモード:誤った記憶……?
[00:11:19] GP02 : プライベートモード:わたしとコウが、ニナ・パープルトンを巡って恋敵だという妄想だ!!
[00:11:25] わたしのガンダム: プライベートモード:ち、ちょっと! それは妄想じゃなくてホントにそうなんじゃないの?
[00:11:26] GP02 &運営: プライベートモード:おまえは黙ってろ!(世にも珍しいチャットでのハモリ)
ゼフィランサスのビームサーベルが、サイサリスの盾の表面に傷をつけた。
[00:11:32] GP02 : プライベートモード:このまま、わたしがゼフィランサスを撃破してしまえば、コウがフラッシュバックの妄想のなかからでて来れなくなってしまう恐れがある!
[00:11:34] 運営 : プライベートモード:でもどうすれば……!?
もしコウさんがそんな状態なら一刻も早く、シミュレーターから解放しないと……
[00:11:38] GP02 : プライベートモード:シミュレーションの中で撃破するしかない。だが、シミュレージョンの想定通りでも、現実の記憶の通りでもいけない。わたしがサイサリスで倒した、という形ではいけないんだ!
[00:11:42] 運営 : プライベートモード:シミュレーターとも現実とも違う状態での撃破……そんな都合のいい機体が……
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サーバーGQX001
[00:11:40] 名無し:なんかトラブルか? なんでサイサリスはゼフィランサスを撃破しちまわないのかな?
[00:11:44] にゃんにゃんにあん : まるで、ゼフィランサス撃破を誰かに譲りたがっているみたい。
あれ? なんか……
[00:11:46] 這いよる混沌 : 高熱源体? 砂の中を泳いでる?
[00:11:55] マチュとニャアンに飼われたい : ゾック……水陸両用機ってそんな機能あるの?
あるかいっ!
サーバー中からツッコミがとんだ。
[00:12:00] 病み猫神信者 : 病み猫神様、出撃!?
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砂の中だった。
ニャアンのゾックは、最初から河床跡の砂の中に半身を埋めていたのではない。完全に潜っていたのだ。水陸両用モビルスーツであるゾックの水中用の推進システムは、流動する砂の中でも、驚くほど静かに機体を進ませることができる。
……できるはずがないのだが。
地上をホバーで滑るドム・トローペンよりも、地上を歩くジム改よりも遅い。だが、誰にも気づかれずに。
ゾックは砂の中を泳ぎ、そして。
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またもサイサリスの盾に、また深い傷が刻まれた。
サイサリスの盾は、バズーカをうったあとの強烈な熱と放射線から機体を守る要でもある。
盾を破損してしまうことが、ここでの勝利条件に影響するのかどうかまでは確認していないが。
「おちつけ! コウ!」
ガトーは叫んだ。
「ニナのことは、単なる暗示だ!
現実ではない!」
「まずいかもしれませんね。」
アムロがぼそりと言った。
低い声だったが、クワトロもN・ロックも、ヤンもフリデリカもニナも。
一斉に彼を向いた。
「フロドの物語では、まさにそのように展開するんです。コウ・ウラキ……作中では浦木豪は、彼の恋人ニナ・バルプンテが、以前加藤大佐の恋人だったことを知る。そして、ニナに裏切られるんです。」
「フロドの作品が」
N・ロックが呟いた。
「向こう側がこちらを侵食しているというのか」
クワトロが呻いた。
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サイサリスになおも切りかかろうとするゼフィランサス。
ガクン!
その脚をクローアームが挟み込んだ。
「加藤大佐!」
この場で唯一、設定をちゃんと覚えていたニャアンは、そう呼びかけた。ゼフィランサスを引きずり倒しながら、ゾックが砂中から姿を現す。
「はやく脱出を!」
コウはなにか叫んだ。
意味はわからない。
狂気の一歩手前のような危うさ感じる叫びだった。
ゾックのクローアームがゼフィランサスの脚にがっちりと食い込む。
そのまま、ゼフィランサスを振り回す。
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[00:12:15] 名無し : ええええええ!? なにこれ!?
[00:12:19] 名無し : なんで水陸両用機が砂の中から
[00:12:22] GP01推し : うおおっ! ぶんまわされとる!
コウは悲鳴を上げた。サーベルの間合いに入る直前、背後からぬめりとした巨大な手に捕らえられたのだ。
[00:12:26] 運営 : ゼフィランサス、ゾックに捕獲されました! なお、ゾックは砂漠仕様の特別機である旨の設定が
[00:12:32] 元連邦軍大尉: 冗談ではない!
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「なんとか」
ゾックは、たっぷり加速をつけて、ゼフィランサスを
「なれーーーーっ!!」
地面に叩きつけた。
脚部破損。
衝撃からパイロットは失神したと見なされた。
加藤大佐のサイサリスは戦闘区域を脱出。
一回目のシミュレーションバトルは、ディラス・フリートの勝利となった。
討伐成功!!