第13話 鼓動   作:ATARU 2025

412 / 412
0083世界に降臨するバウンド・ドック。
操縦者は不敵に笑う。おまえの戦いは愚かで無様だと。
動けないゼフィランサス。新鋭モビルアーマー、バウンド・ドック。
白い悪魔と凄まじき呪いの集合体。
その戦いは。


↓↓↓こちらもよろしくお願いします

魔法少女まどか☆マギカ 廻天の残響
https://syosetu.org/novel/429133/

魔女のいない世界に魔女が来襲する。見滝原の魔法少女たちは―――
え? 登場キャラが被ってる!?







GQuuuuuuXseason2 第19話 魔女の世紀~夜の到来2

盆が、ひっくり返った。

 

そうとしか言いようがなかった。

 

底が割れて突き出た頭部と胴体は、天地が逆だ。モノアイは下を向き、脚部は上から折りたたまれるように出現して、クローアームのついた縁の部分を掴む。本来ならMS形態で立つはずの機体が、MA形態の盆の部分を背負ったまま、逆さでぶら下がっている。

 

アムロは、懸命にバウンド・ドックのデータを思い出していた。

かつて、ジオンへの反攻の足がかりとなるべく、組織された教導隊“ティターンズ”は、一時はかなり予算を与えられて、最新鋭機を与えられる一方、新鋭モビルスーツの独自の開発もすすめていた。

バウンド・ドックはその一機だ。サイズや独自の変形方法からモビルアーマーに分類されていたかもしれない。

そのコンセプトは、高機動、高防御力。

巨大化した機体を制御するために、サイコミュの改良型の搭載を予定したプランもあった。

 

しかし。

 

「なぜ、逆さに?」

 

アムロの呟きは、誰にも拾われない。配信はララァの一言で止まっている。

すでにチャットの話題は、賭けの配当や意外に精彩をかいたアムロの状況に対する心配の声、次回のシミュレーションバトルの場所になる月面での対決に関心は移っていてる。

 

キラキラの渦の中心、ヨルは笑っている。

 

『がっかりしました。動けない機体で盾を傾けて、角度でいなす。そんなもの、戦いとは言わないわ。』

 

ゼフィランサスは、投げ捨てた盾の代わりに、残った一枚を胸の前で構え直した。ほとんど原型を留めていない。穴だらけで、端は熱で捲れている。

 

「きみはこのバトルに出場する予定はなかったはずだ

よ。」

 

アムロは冷静に言った。

 

「ただ、ネオ香港大学の最新シミュレーターコクピットを体験したみたいから、今回の仮想空間の索敵範囲外でモビルスーツを動かしてみる……それだけのはずだった。」

 

ヨルは盆の縁のクローアームを広げた。バウンド・ドックの逆さの頭部が、アムロを見下ろす。モノアイが細く光る。

 

『見てられなくなったのよ。連邦のニュータイプ。』

 

 

アムロはバーニアを吹かした。ほんの少しだけ。ゼフィランサスの体が、縦に十度だけ傾く。

 

琥珀色の光の奔流が、掠めた。

拡散メガ粒子砲だ。

 

広範囲をカバーする攻撃だ。

だがその威力もまた、並のモビルスーツのビームライフルとは桁が違った。

 

盾は一瞬で融解した。対ビームコーティングなど蒸発している。それでも角度で受け流せたから助かった。真正面から受けていたら、盾ごと機体を貫かれていた。

 

『動かないの? それともまさか本当にうごけないのかしら。』

 

ヨルの声が、共振の中に直接響く。

いらいらような響きがその中にあった。

アムロもまた苛立ちを感じた。

 

あまり会話の機会はなかったが、アクシズからのニュータイプのなかでは、すこし年長の。落ち着いた雰囲気のある少女だった。

こんなことを仕出かすようにはとても見えない。

 

不味いな。

アムロは流石に呻く。

とにかく、ゼフィランサスは動けないのだ。

 

バウンド・ドックの機体が、拡大していく。もともとの巨体がさらに大きくなっていく。

 

“くっ……これがプレッシャーか……”

 

『あなたを落とすわ、アムロ』

ヨルは宣言した。

『シミュレーターのなかだからって、楽観視しないでね。

何百回でも何千回でも。あなたは自分の“死”を経験することになる。それに耐えられる精神は人間にはないわ。』

 

アムロは、いくつかを理解する。

そこまで。

そこまで、話したからには、アムロをこのまま返すつもりはないだろう。

廃人にするか……少なくとも完全に屈服させるまで、それを続けるつもりだ。

 

 

 

「シミュレーターからあの二機だけが、ログアウトできない?」

 

「そうです。」

フレデリカの顔に焦りが見える。

「こちらからの制御を受け付けないです。なかのパイロットも脱出できない。

攻性防壁……いえ、なにかの結界のような。」

 

「ヨルさんたちだけで、プログラムに触る機会はあったのだろうか?」

ヤンが言った。

 

「それは……十分ありました。もともとシミュレーター用AIについて説明してたので」

 

「……まさか。しかし何のために。」

 

部屋の者たちの視線は、ふたりの少女。

セルマとライラックにむかった。

ライラックは大人しくお茶を飲んでいる。

セルマは、イタズラを見つかったかのようにニッと笑って見せた。

 

「セルマはねえ、なんか、役にたちたかったんだよ、」

そう笑う少女に邪気は見えない。

 

「でもこんなふうに……仕掛けるとは聞いてない。」

ライラックが唇を噛んだ。

「今回はシミュレーション空間の様子見だったはずなのに。勝手なことを!」

 

 

ココ・シャロンが立ち上がった。

 

「どうする?」

クワトロが尋ねた。

 

「これは仮想空間でおきてることよ。

仮想空間での、出来事は仮想空間で決着をつけるわ。

フレデリカさん。シミュレーターコクピットは空いてる。」

 

「え、ええ……でも」

 

「サイコミュと遠隔誘導兵器の使える機体ならなんでもいいわ。用意してください。」

 

「いったいどうすると?」

N・ロックが言った。

 

「わたしが出ます。あの子を倒してアムロを救出するわ。話はそれからゆっくり聞かせてもらう。良いわね?」

 

 

盾が。正確には盾の残骸が手から吹き飛ばされた。

続くビームライフルの一撃が、肩のバインダーを吹き飛ばす。衝撃で、制動を失いくるくると回るゼフィランサスにさらにビームが突き刺さった。

 

左脚。

右腕上腕部。

さらに右脚の踵が抉られたように欠損する。

 

ヨルは、しかしコクピットで唇を噛んだ。

 

すべてが致命の一撃になるはずの攻撃だ。

 

あのゼフィランサスとかいうモビルスーツは欠陥品だ。まともな移動すらできない。

あるいは「故障している」という設定なのだろうか。

その中で、わずかな動き、身体の向きを変えたりするその仕草だけで、損傷をこの程度に抑えて見せたのだ。

 

ここは仮想空間、シミュレーターの中でしかない。ここでの勝利はここでのみ勝利でしかなく、撃墜してもされても実際に生命を奪われることはないのだ。

 

バウンド・ドックは接近戦も強い。

近づいて、クローアームとビームサーベルで攻撃するか。

僅かに逡巡したヨルのバウンド・ドックを。

ゼフィランサスのビームライフルが直撃する。

 

頑強な装甲とビームコーティングがそれを弾いた。

 

姿勢制動すらままならないあの状態では、まともに狙いもつけられないはずだ。

つまりバウンド・ドックがたまたま射軸線上に来るのを待ちながら、その瞬間に一撃を放ったことになる。

 

ヨルの唇が再び、笑みの形に釣り上がる。

対等に戦える好敵手を見つけた悦び。

 

『この……白い悪魔め!』

 

 

これはダメだな!

アムロはある意味達観した。

どうも操縦者のヨルは、ニュータイプに違いない。

ララァをシャロンの薔薇と呼んだのは。そしてそれを“取り返そう”としたのは意味が分からなかったが、なにか。

彼女たちまたはアクシズにしかない事情があるのだろう。

ディアナ・ソレルを信仰する月面での信仰もあるくらいだ。

妙な信仰の対象に祀りあげられていても不思議はない。

 

―――いや、違うな。

 

アムロの頭脳は忙しく働く。

ふだんはズボラで、身の回りの事にあまり気を使わないアムロだが、戦っている時がいちばん、頭がよく働くのだ。

 

“ララァがすごいニュータイプだって知ってるのは、一部のクランバトル関係者だけだ。まして……グラナダに保管されていた異世界からの漂流物「シャロンの薔薇」を結びつけられるのは、クワトロさんやごく少数のまわりの者たちだけ。”

 

ビームライフルをバウンド・ドックのビームが掠め、砲身が融解する。

 

「落とすなら落とせ!」

アムロは言った。

「そのあとで話は聞かせてもらう。」

 

『なぶり殺しにしてやるわ! 白い悪魔。』

 

バウンド・ドックがビームライフルを持ち上げる。

それを。

虚空から走ったビームが、ビームライフル正確に撃ち抜いた。

 

「な、なに!」

 

ラ

 

ラ

 

ララ……ラ

 

宇宙が音で満たされていく。

 

『こ、これは!』

 

『アムロを虐めないであげてね。』

 

彗星のように、新たなモビルスーツが、迫る。

そのビームライブルが再び、バウンド・ドックを捉えた。

二撃、三撃。

だが、バウンド・ドックの装甲はその直撃に耐えた。まったく、ダメージが通らなかったわけではない。だが、機能を損なうような損傷は受けていない。

 

『おまえは!』

 

ガンダムじゃないか!

 

アムロは心の中で叫んだ。

彼の父が中心となって、開発されたモビルスーツ。試運転直前にジオンに奪われた。

 

そのガンダムは。

赤く塗装されていた。

 

 

 

クワトロ・バジーナは若干、不快そうである。

N・ロックは面白そうにその様子を眺めていた。

細かい事情は分からなくとも。

クワトロ。

アムロ。

ララァ。

この三名に恋愛感情のもつれがあるのを、N・ロックは敏感に察知していた。

 

アムロのピンチに、ララァが飛び出して行ったのが面白くないのだろう。

 

「赤いガンダムは偶然ですよ、クワトロさん。」

N・ロックは宥めるように言った。

「ココさんが希望した遠隔サイコミュ攻撃ができる機体が、たまたまあれしかなかっただけで」

 

 

『独立戦争時代の骨董品に!』

バウンド・ドックが急加速。

巨体にも関わらず、動きは早い。

そしてなぜか逆さまなのが、相手を混乱させる。

『やらせはしないわっ!』

 

 

『そこっ!!』

 

 

急降下したビットから放たれたビームが、バウンド・ドックのスラスターを掠めた。

 

 

 

 




そういえばジェリドくんは、ヤザンさんと一緒にどっかのクラバで元気に暴れてるはずです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す(作者:駄文亭)(原作:ソードワールド1.0)

「誰がヲタクだって? 僕程度がヲタクを名乗れるか!」▼そう言い張る八坂鷹、十八歳。▼その正体は、『ソード・ワールドRPG完全版』のルールやモンスターデータを記憶している、拗らせまくった重度のTRPGゲーマーだった。▼仲間とのセッションを終えた帰り道、鷹はダンプカーに轢かれて死亡。死後の世界で出会ったのは、フォーセリアの創造神を名乗る謎のハムスターだった。▼知…


総合評価:1759/評価:8.16/連載:88話/更新日時:2026年10月09日(金) 15:23 小説情報

【悲報】昭和のおばちゃん、宇宙世紀に転生したと思ったら、最推しの姉だった【あんまり過ぎる】(作者:佐世保の中年ライダー)(原作:ガンダム)

物心がついて思い出した。自分の前世は昭和四十年代生まれのオタクなおばちゃんだったッ!自分がいつ死んだのか定かではないが、どうやら今生はまさかの宇宙世紀!しかも、しかもよりによって、最推しのカミーユの姉とかあんまりよッ!!▼この物語は、宇宙世紀に転生したおばちゃんの魂を宿すカミーユの姉が、最愛の弟が精神崩壊を起こす事無く、劇場版以上のハッピーや結末へと導く為に…


総合評価:434/評価:7.33/連載:11話/更新日時:2026年09月28日(月) 23:09 小説情報

地球連邦軍上層部はいつも多忙です。(作者:はにわはにわ)(原作:機動戦士ガンダム)

宇宙世紀0083年。核攻撃で観艦式が壊滅する中、地球連邦軍最高司令部の苦労人大将は、コロニー落とし阻止のため胃薬片手に奔走する。▼一旦、0083編で完結とさせてもらいます。Z編は制作に時間が取れなくなっているので、見通しも立たないですから、一旦、打ち切りの上、削除しました。


総合評価:6586/評価:8.3/完結:16話/更新日時:2026年06月24日(水) 01:00 小説情報

続・黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

 一年戦争は終わった。▼ 黒いガンダムを駆り、多くの者たちの運命を変えたレン・イズミ。しかし終戦後、ニュータイプとして高い軍事的価値を持つレン、アムロ、ララァを、地球連邦軍がそのまま自由にするはずもなかった。▼ 研究対象として囲い込まれるくらいなら、その立場そのものを利用する。レンはゴップ大将のもと、新たな特殊部隊――**BLACK RAVEN〈黒鴉隊〉**…


総合評価:1548/評価:8.28/連載:72話/更新日時:2026年10月02日(金) 12:00 小説情報

​『逆襲のシャア』の総帥に憑依した元商社マン、アクシズを落とさず地球圏を支配する 〜静かに暮らしたいだけなのに、アナハイムと狂信者に神輿を担がれて逃げられない件〜(作者:なやむ)(原作:ガンダム)

「お願いだから、もうこれ以上俺(キャスバル)を神輿として担がないでくれ……!」▼目が覚めると、そこは宇宙世紀0090年代▼よりにもよって、グリプス戦役末期、ハマーン・カーンと一騎討ちに臨み、その後消息不明になっていた世紀のカリスマ、シャア・アズナブルーキャスバル・レム・ダイクンに憑依していた▼本物のシャアはすでに成仏してどこにもいない。残されたのは、ただ「早…


総合評価:13638/評価:8.78/完結:9話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>