第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ええっと。こっからガンダムマークⅡの強奪と、『星の屑』を同時進行しつつ、それに地球にいるマチュやアムロ、クワトロを絡めるという離れ業にはいります。
着地できたら拍手してください。


第17話 黒いガンダム~宇宙の呼び声

「うがうっううっ!!」

 

ニャアンは威嚇する少女に、黙ってホットミルクを差し出した。

少女は両手でマグカップを抱え込んで中身を口に運んだ。

 

「ぐうううっ! 不味い! 」

 

ニャアンはパックになったハチミツを絞ってミルクに溶かした。

 

「う……ぅ……うぐう。これなら飲める。」

「よかった。」

ニャアンはマチュを振り返った。

「餌付けが出来た。」

 

「だれが餌付けだ。ボクは選ばれた人間だ! 自分で進化することを選んだボクらはおまえらよりも優れた存在なんだ!」

 

「なるほど。そういうものなのですね。」

ちょうど部屋に入ってきたヒゲの男性が頷いた。なかなかダンディなオトコであったが変な仮面がすべてを台無しにしている。

 

 

ぎゃふぎゃふぎゃふ!

 

少女は慌ててニャアンの後ろに隠れた。

 

「安心してください。ドゥー……くんでしたね。いまのわたしは敵ではありません。そもそもキケロガにも乗ってませんし。」

 

「そ、そうだった! ならば今度はこちらの番だあ!」

ドゥーはシャリアに飛びかかろうとしたが、マチュが首根っこを捕まえて止めた。

「な、なぜ止める! こいつがキケロガに乗ってない今こそが、復讐のチャンスなんだぞ?」

 

「あんただって、モビルスーツに乗ってないじゃん。」

マチュはずけずけと言った。

体格的には似たり寄ったりの二人であるが、体力的にはマチュが勝るらしい。

 

「シャアさ……大佐はどうしてるの、ヒゲマン?」

 

「アムロくんのこれからの進路の件で、先方と相談中です。」

シャリアは気がかりそうに、アムロやクワトロが面談をしているとなりの部屋に目をやった。

 

「気になるなら話をきいてくればいいじゃん?」

マチュは事もなげ言った。

「別に悪い人たちじゃなさそうなんでしょ? そのマツケンさんたちって。

この子の面倒は見ておくからさ。」

 

「クリスチーナ・マッケンジー……さんです。」

 

「略したらマツケンじゃん。」

 

マチュのあだ名の付け方について抗議するのは諦めていたシャリアは、肩を竦めた。

 

「ジュニアモビルスーツ大会のエキシビションの話は聞きました。

そのあと……この少女をめぐってティターンズの攻撃をうけたことも。」

 

でも残念ですが。

とシャリアはコメカミを抑えた。

 

「わたしも予備役とはいえジオンの佐官なのでですね。連邦軍のブレックス准将と同席する訳にはいかないのですよ」

 

めんどくさいねえ。

と言うマチュに、ぇぇめんどくさいです、とシャリアは返した。

 

「ブレックス准将は、政治的な意味合いであまりにも大物なのですよ。いくら優秀とはいえ、一介のパイロットであるアムロくんのためにわざわざ出てくるのは理解できないのですが。」

 

 

 

----------------

 

 

 

「わたしたちがアムロくんの進学先としてリストアップしたのは、こちらの三校です。」

 

ブレックス准将は、クリスチーナ・マッケンジー以外にも黒髪の秘書官を連れてきていた。

 

きちんとした人物らしく、データを紙に出力したものをアムロとクワトロ・バジーナの前に並べた。

 

髪をショートカットにしていた。

 

「わたしとしては、アムロ君の将来のこともある。いくら契約とはいえ、最大限に便宜をはかりたいのだが」

地上はモビルスーツの開発環境としては理想ではない。

地球上での運用に特化したモビルスーツは、かつてジオンが制作した水陸両用モビルスーツが挙げられるが、かなり珍しい。

モビルスーツは宇宙に上げてこそであり、そういった意味では、コロニー内部に研究施設をおくところが多かった。

 

クワトロは、アムロに引き続き興行に出て欲しかった。

とすれば、亜細亜地域のシャンハイ工科大学の一択になってしまうのだが。

 

「シャンハイ工科大学なら、アナハイムと提携しています。」

クリスが言った。

「卒業後はぜひ、わたしたちの研究施設へ。」

 

アムロは心が踊っている。

周りが自分を必要としてくれている!

 

しかもクラバのエースという怪しげな立場ではなく、前途有望な学生としてである。

 

言い換えればそれは帰れる場所があるということだ。

こんな嬉しいことはない。

 

 

「奨学金もわたしたちで手配いたします。」

黒髪の秘書が言った。秘書とはいえ連邦軍の制服に身を包んでいる。

少尉の記章をつけているから、たぶん士官学校を出ている。

引き締まった身体のラインはパイロットを思わせた。

 

「それは心配には及ばないと思う。」

クワトロが言った。

「学業を優先してもらうために、クランバトルへの出場回数は調整するが、クランのエースとしてそれなりに待遇するつもりだ。

奨学金なしでも学費も生活費にも不自由はさせない額を振り込むことを約束する。」

 

「……ちなみに、奨学金は卒業後、わたしたちの研究施設に勤務いただければ返済不要です。」

クリスが言った。クワトロを睨むように上目遣いで見つめている。

「個人的な希望としては、これを機にクランバトルから足を洗ってもらいたいです。」

 

「それは困る。」

 

「いつまでもクランバトルを続けているわけにはいかないでしょう!」

「まあまあ」

クリスが勢い混むのを、年配の男性が止めた。

「アムロくんの将来のことだ。まずこちらは提示だけしてゆっくりと、考える時間が必要だろう。」

 

顎髭を伸ばしているが威圧的な感じは受けない。

年齢は50前後だろうか。

 

「でも閣下……」

「まだご紹介に預かってはいないようだが」

クワトロが言った。

「初めてお目にかかります、ブレックス准将。この度、予備役になられていよいよ政界にうってでるご予定とか。」

 

「はじめてお目にかかる。クワトロ大尉。」

ブレックスは軽く頭を下げた。

「クリスが推薦するアムロくんと……きみに興味があったのでお邪魔させて貰っている。」

 

「閣下。わたしは多少は世の中が見えているつもりでいます。」

クワトロはさらりと言った。

「ティターンズ……彼らはやり過ぎている。」

 

ブレックスは困ったようだった。

視線を向けられたクリスは頭を振った。

 

「いえ、わたしは何も話していませんわ。」

 

「一応、名前は必要だと思ったのでな。」

ブレックスはゆっくりと言った。

「名はエゥーゴ、とつけた。正規には、連邦の外郭組織となる。近々竣工する特務護衛艦の運用テストを兼ねた特殊部隊だ。」

 

「連邦軍同士が連邦の予算を使ってやり合うのですか。」

クワトロの口元に笑みが浮かんだ。

ザビ家という独裁者が互いに争い、多くの死者を出したジオン公国。

その愚かさは共和制のもとでも例外ではないのだろうか。

 

「武力をもって立たねばならないときがきている。」

 

「シャリア・ブルを退席させておいて良かった。」

クワトロは言った。

「彼はジオンの軍人だ。彼自身がどう思おうが、祖国に対して報告の義務が、ある。」

 

「はっきり言おう。わたしはきみに協力して欲しいのだ。」

 

いやいや。

と、クワトロは言った。

「わたしのクランはやっと軌道にのったところです。

スポンサーになれというお話でしたらもう少し大きな企業を当たることをオススメします。

それに、先だって、ティターンズとは、派手にやり合ってます。これ以上目をつけられたくはないですな。」

 

「新興のクランバトルのオーナーである元連邦軍大尉クワトロ・バジーナくんとしてはそれが正しい判断だろう。」

ブルックスは語気を強めた。

「だが君には別の名前もあるはずだ。その人物はどう思うだろうか。」

 

「……だれのことを言っているのかわかりませんが。」

クワトロはアムロの顔を覗き込んだ。

「もしわたしがその誰かだとすると、どう行動するだろうね。アムロくん。きみはどう思う?」

 

アムロは困った。

ここでぼくに!!

 

クワトロがシャアなのはわかっていた。

ということは、彼はキャスバル・レム・ダイクンであって、今のジオンの国家元首アルテイシアの兄で。

なぜかそのアルテイシアから命を狙われている。

 

アムロには訳が分からない。

ただ。

「ティターンズは放っておけば、際限なく血を流します。」

 

「デラーズ・フリートも、だ。」

クワトロは言った。

「まだ先の大戦の傷は深い。世界には休息こそが必要だ。そこに新たな火種を撒き散らすものは。」

 

「トリントンでのことは聞いている。」

ブレックスは言った。

「核バズーカを持ち帰らせなかったのは、助かったが、それに変わるプランをもった技術者がデラーズ・フリートに渡っている。

ティターンズとデラーズ・フリートは手を組んでなにかを起こすつもりだ。

それは阻止しなければならない。」

 

「……わたしはクランバトルの興行主にすぎないのですよ、ブレックス准将。」

 

「そうはいいながらネオホンコンではティターンズのモビルスーツを迎撃し、トリントンではデラーズ・フリートが強奪したモビルスーツを追撃している。」

ブレックスは少し楽しそうに笑った。

「関わりたくないと言いながら、ずいぶんと関わることに積極的なようだ。」

 

 

コンコン。

ドアがノックされた。

 

「ララァさん、いま少し取り込んでて。」

アムロが言いかける間もなく、ドアが開いた。

 

ララァだ。

マチュもいる。

 

「ヤツらをほっとくわけにはいかないっ……と、ガンダムが言っている。」

 

開口一番にそういう事を言うから、危ない子だと思われるんだぞ。

アムロは思っただけで、口には出さない。

 

「大佐。クランバトルはデニムたちで十分運営できます。別にブレックスさんに資金をつぎ込んで組織を破綻させるのでなくてあなたがパイロットとして、参加するならいいのでは?」

 

ララァは静かに言った。

口元には笑み。

穏やかな表情だがアムロには彼女が言いたいことはよくわかった。

 

―――しかたがないわねえ。行ってらっしゃい。

 

「決まりだな。“大佐”。」

ブルックスは手を差し伸べた。

「エゥーゴとアーガマにようこそ。」

 

 

 

 




「大佐。一緒にマチュとアムロも連れて行ってくださいね。
白いモビルスーツを絶対に敵に回さないためにはそれが必要なのです。」
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