出来るわけないじゃん!」
と、のたまう狂犬。
「で、さ。少佐。」
とマチュはモトコに向かって言った。
「結局のところ、この子たちになにを聞きたいのよ?」
「捜査上の秘密ってとこだよ、マチュ。」
マクレーンが口を出した。
ふうん?
納得出来ないように、マチュは胸の前で手を組んだ。
「……本人たちも身に覚えがない。なにを聞きたいのか、尋ねても答えられない。」
ニヤリとマチュは、悪そうに笑った。
「じゃあ、わたしもこの子たちとの面談を許可できないなあ。」
「……話してしまうと、あなたも巻き込まれるわ。」
モトコが鋭く言った。
だが、まだ二十歳前に見える少女は、まったく怯んだ様子はなかった。
「へえ?
巻き込まれるような事件なんだ。」
マクレーンは、モトコを制してまえに出た。
「いや、ここはケンカしても始まらん。」
「どうする?」
「あくまで、俺たちは、『話をきく』だけだ。
一緒に夕食はどうだ?
もちろんあんたやそっちの『病み猫神』も一緒でかまわんが。」
マチュはちょっと考えて、そういうことなら……
と言いかけたが、ニャアンがそでをひいた。
「今日はダメだよ、マチュ。」
「え? ああ……そっか。アムロたちと一緒に食べに行く約束してたんだっけ?」
「別に、イヤでなければそこに同席させてもらう形でも構わないわ。」
「おい、モトコ!」
「もし、あなたが言ってるのが、『白い悪魔』アムロ・レイのことなら、彼に同席してもらうのは、むしろありがたいかもね。」
モトコはなにか吹っ切れたように言った。
「聞きたいのは、サイコミュを通じての外部からのモビルスーツ操作よ。
わたしたちは、ニューヤークの現場でまさにそうとしか考えられない事態に直面した。そして、この子たちもその近くにいたはずなのよ。」
「ヨルちゃんたちが、そんな特殊な能力をもってるとでも!?」
マチュの眉間の皺はふかくなる一方だ。
「だいたい、コクピットに乗らずに、モビルスーツを操作できるわけが」
「マチュ」
ニャアンが表情を変えずに言った。
「マチュはなんどもソドンの外からジークアクスを、呼びつけてる。」
「あれは、わたしとジークアクスだから、よ!!」
マクレーンは、モトコと顔を見合せた。
有り得ないことは、すくなくとも本当に起こっている。
そして、このまだ少女と言って良いふたりの講師はその当事者なのだ。
「ぜひ。」
マクレーンも頼んだ。
「アムロくんにもそこいらの意見を聞けせて欲しいんだ。」
「普段ならまだいいんだけど」
マチュはまだ迷っているようだった。
「今日はグラナダから、お客さんを迎えての歓迎会だからなあ……」
「クランバトルの関係かい?」
「すこしは関係してるけどね。」
エイヤッと言いながら、マチュは拳を突き出して見せた。
「なんか、武術家の達人さん。大佐の知り合いでいま、アナハイム・エレクトロニクス社の月面支社で保安の仕事をしてるひと。
お弟子さんも一緒だってさ。」
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「ようこそ、ネオ香港へ。」
アムロは、とりあえず丁寧に頭を下げた。
チェン・シャオロンは、呆れたことにジャージ姿だ。
弟子をふたり連れて行いる。
チャイナドレスの少女イェ・チャージーと、精悍な若者。
アムロは初めてだったが、シゥ・クイシェと紹介された。
「わざわざ出迎えすまないね。」
「クワトロ大尉は、老師のことは……」
「とりあえず、アムロ・レイを訪ねようというのは、ディアナとの相談でもあるんだ。」
ディアナ・ソレル。
グラナダの地下で発見された冬眠カプセルで眠り続ける少女。
その彼女と「相談」。
正気を疑うような発言だが、アムロ自身、グラナダをたずねた時に、ディアナの声を聞き、会話をしている。
「わかりました。クワトロ大尉には老師の来訪はまだ内緒に」
「いや、秘密にするほどのことでもない。」
チェンは、にこにこと笑った。
「いずれ、力を借りることになると思う。
だが、まずは当代で最強のニュータイプであるアムロくんと、イオマグヌッソでよゼクノヴァ現象の当事者であるマチュくんとニャアンくんに意見を聞きたいんだ。」
「食べならがら話せるように、レストランを予約してあります。」
「ありがとう!
ビールサーバーの洗浄は行き届いているかな!」
「いえ」
マニアックな質問に、酒飲みではないアムロは面食らった。
「そこまでは確認できてませんが」
「イェ。とっとと用事をすませるネ。」
チャイナドレスの少女、イェ・チャージーが横柄に言った。
「はやいとこ、クワトロに連絡とりたいネ。きっとむこうも待ち焦がれてるハズね。」
いや、それはない───アムロがと言おうとたとき、ズイとシゥ・クイシェが前に出た。
格闘家、という肩書きにいちばん合っている。無造作に伸びた頭髪はだらしなさよりも精悍さを感じさせる。
タンクトップからのぞく肩の筋肉が盛り上がっていた。
「アムロ」
「は、はい、なんでしょう?」
「肉が食べない。腹いっぱい食おうぜ!」
は、はあ。
とこの手の押しに弱いアムロがシドロモドロになったとき、ポンとメッセージがなった。
マチュからだ。
「どうした、アムロくん?」
「マチュからです……」
「今日会えなくなったとか、かね?」
「いえ……そうではないんですが……」
アムロは困ったが、別に隠すことでもない。
「夕食のときにいま、ぼくらが講師を勤めてるジュニアクランバトルスクールの生徒を連れてきてもいいかと」
「べつにかまわんよ?」
チェンたちはとくに手荷物もないらしい。
そのまま、タクシー乗り場に案内しながら、アムロは言った。
「……それとニューヤーク市警の刑事をふたり」
これには流石に、チェンも面食らったようだった。
イェが慌てたように手を振る。
「アイヤ! まだわたしたち悪いことなんと
もしてないネ!」
「これから、するような言い方はやめろ。」
チェンは苦笑いしながら言った。
「構わない───と言いたいが、わたしたちが今回ネオ香港を訪れたのは、ディアナが感知した『三つの凶星』を探し出し、これと接触するためなのだ。
まだ、敵になるかさえもわからない。ただ、ディアナが言うには、そいつらは世界を…改変された『この』世界を正常に戻すためにやってきたのだと言う。
そんな話を刑事さんたちのまえでしても大丈夫か?」
チェンは、真顔で言った。
アムロは、少し考えてから答えた。
「いえ……なんとも。ですが、その刑事はN・ロックさん、の紹介で、しかもニューヤークでクワトロ大尉とも面識があるようです。」
「ほう。クワトロ大尉が」
チェンは、顎に手を当てた。
「まあ……断りきれない予定が重なってしまったときはニコイチもありだと思う。」
「さすがは、ワタシたちの頭領ネ。そのアバウトさ!」
「アムロ」
シゥ・クイシェが、低い声で言った。
なんです?とアムロは返した。
「飯はみんなで食った方がうまいぞ?」
というわけで、地球到着30分後に、チェンは『三つの凶星』とめぐり逢い、飯を食うことになるのですが……