第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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けっこうたくさんの方がお読みいただいてありがとうございます。1話だけぶん投げのつもりだったのですが、すこし続きを書いてみます。
なにぶん、タイトルがアニメ最終話の続きのつもりなので、まあ30分アニメ一本分くらいは同じタイトルで。
(しかしアニメってすごい情報量ですね!)
さて、主人公たちが登場です。マチュたちがリゾートっぽい海でわりと楽しそうに暮らしてて、その資金はどこから?というのが、疑問でしたので、とりあえずジオンのとある基地にかくまってもらいつつ、テストパイロットをやってることにしました。ほら、あそこならわりと海も近いし、人口も少なそうなんでプライベートピーチもあったりしそう。もともとは連邦の基地ですが今回はジオンが勝ってますので接収して、モビルスーツ開発の一大拠点となっています。(全部妄想!)


第13話 鼓動~コロニーの落ちた地で

響きをたてて、二機のモビルスーツが爆走していく。

もともと人間を模した手足を持つ兵器だが、脚を交互に動かすあの「歩く」という動作をとっていない。

 

その巨体を地面から浮かしたままで滑走しているのだ。

 

オーストラリアはそろそろ夏も終わる頃である。

二機のモビルスーツの駆け抜ける大地は、荒涼としていた。

ところどころに、元は街だったのであろうビルの残骸はあるが、基本的には荒野である。

またそうで無ければ、モビルスーツの駆動実験など行えない。

 

「マチュ! テキダ!」

 

パイロットスーツに身を包んでそのコクピットに座るのはプロポーションのとれた少女だった。

ヘルメットは被っていない。

整った顔立ちは、美しいよりまだまだ可愛らしさが先にくる。

 

叫んだのは彼女が膝においた丸い球体である。

 

「左上空っ!!」

 

モビルスーツは減速しながらターンした。

降り注ぐ光が大地に穴を穿つ。

 

彼女が退避行動をとらなければ、全てが直撃していただろう。

 

「ちょっ、ちょっと! 重力のしたで飛べるモビルスーツなんてきいてないっ……!!」

 

改修を重ねたモビルスーツは、全周囲モニターも搭載している。

 

頭上に現れたのは、異形の機体だった。

一応は手足があるから、モビルスーツなのだろうが歪曲した四肢は、人間というよりも玩具の人形を思わせた。

 

「聞こえる? マチュ、ニャアン。」

通信機から若い女の声が響いた。

「それもトリントンの新型試作機よ。バイアランっていう。」

 

「はあ? きいてないよ。」

どことなく緊張感があるようなないような声は、マチュの相棒。もう1機のドムを操るニャアンのものだった。

 

こちらも鮮やかにターンを決めながら、異形のモビルスーツの死角へと滑り込む。

いや、ここは荒野である。

 

盾にするような建物もない。

 

死角というのは、マチュのドムの影に隠れることだった。

 

またっ!

 

 

ここジオンの地上拠点のひとつであるトリントン基地で、テストパイロットをして数ヶ月たつが、マチュにもこの相棒の行動はさっぱり読めない。

いや、M.A.Vとしては彼女以外に考えられないほど信頼はしている。

 

だが信頼はしていても信用は出来ないのだ。

 

例えばいまニャアンのドムがとっているマチュを盾にするような行動だ。

彼女はしばしばこれをやる。

 

影に隠れるどころか下手をすれば、背後から彼女の乗機を拘束して。

 

 

ニャアンはそのままバーニアを全開した。

地上用に熱核ロケットを熱核ジェットに換装しているとはいえ、その推力は軽々と重モビルスーツに属するドムを空中高く送り出す。

 

だが異形のモビルスーツ……バイアランのパイロットはこれを予測していたようだった。

 

ドムに出来るのはあくまでジャンプであって空中での姿勢制御は「飛行」が出来るバイアランには遥かに劣る。

 

二機のドムがジャンプしたその軌道を楽々とかわして、バイアランはクローの先端に備えた機銃をむけた。

 

 

マチュたちの乗るドムは、地上におけるホバー移動のための実験機である。

 

 

一応、戦闘試験もかねていたから、標準仕様のジャイアントバズは備えていたが、それはおよそ上空を飛び回る敵にはあまりにも相応しくない武器だった。

 

なので、マチュは迷わずにバズを捨てた。

 

自分を盾にするニャアンのドムを足場に、さらにジャンプする。

 

 

体当たりでもするように急接近!

 

バイアランの機銃がドムの巨体を叩く。

ダメージ判定―――!!

 

いち、にい、さん、しい……。

 

だが「撃墜」の判定は出ない。

 

ドムの装甲は機銃による攻撃に耐えた、とそうAIは判断したのだ。

 

「うおおおぉっ!!」

 

叫びながらマチュは背中のヒートサーベルを抜きはなった。

 

バイアランのパイロットは機銃によるダメージ蓄積をあきらめ、とっさにクローアームを突き出す。

 

それを掻い潜り。いやクローアームごと潰す勢いで。

 

「うりゃあああっ!」

 

 

ヒートサーベルがバイアランの左肩から腰へと走り抜けた。

 

判定。

 

撃破。

 

ただし。

 

そのあとのことをまったく考えて居なかったマチュのドムは、姿勢制御を失い真っ逆さまに。

 

やばっ。

 

互いに使っている兵器はダミーであって、例えば機銃はドムの装甲を貫けない仕様になっているし、ヒートサーベルはただ光っているだけの金属の棒で当たったら「切れた」と判定されるだけである。

 

だが、落下の衝撃はそうはいかない。

 

例えばドムの機体が耐えたとしもパイロットのほうは―――。

 

パニくったマチュのドムの腕を、バイアランのクローアームが掴んだ。

 

落下速度がゆっくりになる。

 

 

「サンキュ、ニンジンマン。」

マチュはバイアランのバイロットにそう話しかけた。

 

「新型でもダメか。」

元連邦軍のパイロットだという若い少尉の声は笑いを含んでいた。

 

「今日はドムの走行テストだけだったはずだよ?」

 

ゆっくりと地上に向かいながら、マチュは文句を言った。

 

「ズルイ! ズルイゾ!」

その膝のうえで球が跳ねた。ハロという玩具ロボットで、マチュはこれを愛用していてどこにでもつれていく。

 

トリントンは。

もともとは連邦軍の基地だった。

敗戦とともにジオンが接収して五年がたつが、スベースノイドとアースノイドが理想的な融合をしていると賛美される。

 

例えばテストパイロットは、いま話しかけてきているコウ・ウラキ少尉のように連邦出身者も少なくない。

技術者にはジオン出身者も連邦出身者もいる。

今回の「モビルスーツの地上におけるホバー走行」を監督しているニナ・パープルトンはルナリアンだったし、そもそも出自を言い出せばニャアンは戦乱で故郷を追われた難民である。

でもってそれを言い出すとマチュ自身はテロリストとして指名手配を受けている身なのだ。

 

「ニナはモビルスーツの開発のことになると人が変わるんだ。」

コウ・ウラキは言い訳するようにいった。

「最初から試験の内容を全部説明してしまっては試験にならないそうだ。」

 

「彼女さんでしょ? なんとかしてよ!」

 

コウは黙ってしまったが、それはマチュが痛いところを突いたためではなかった。

 

「すまん、マチュ。」

コウは口早に言った。

「バイアランの稼働限界だ。

何十メートルかは……自由落下になる。」

 

「稼働時間何分なのぉ!」

 

「10分だ。試作機なんで仕方ない。」

 

「ふ、ふりょうひんっっっっ!!」

 

 

かつてマチュは、モビルスーツで大気圏突入をやらかしたことがある。

低重力下とはいえ、顔面から劇場にダイブしたこともあった。

 

……結果からいけば、そのうちのどれよりも重傷だった。

 

骨折は免れたが、打撲はけっこう酷く、痛みと発熱で翌日は一日ベッドに縛られることになったのである。

 

まあ、ニャアンのカオマンガイが食べられたのでマチュとしては満足ではあった。

 

---------------

 

 

「バスク・オムですって!?」

顔立ちは美人の部類に入るのだろう。

だが、ことがモビルスーツ開発になると「ちょっとヘン」になるのが、この月面出身のニナという女性だった。

いくつかのプロジェクトを並行して受け持っている優秀な技術者であるのだが、自ら手がけたモビルスーツに対する愛着は凄まじく、いつかは「わたしのガンダム」を開発するのが夢なのだと語っていた。

 

いや、おまえが設計しようが開発しようがそれは「おまえのガンダム」ではないだろう!

 

と、全員が心の中で突っ込んでいたが、口に出したものはいなかった。

 

「少佐殿だよ。」

基地内部の士官用の食堂である。

コウはサラダからニンジンだけを取り分けながら言った。

「確かにここは、ジオンの基地ではあるけれど、はっきり言うとモビルスーツ開発においては来るもの拒まずだ。

予算さえとってくれれば、どんな開発提案だって受け入れる。」

 

「でもね。」

ニナは目ざとく、ニンジンをコウの皿に戻しながら言った。

「バスクってあのバスクでしょう?

サイド6であの」

 

「噂だよ、噂。」

 

半年ばかりまえ。サイド6イズマコロニーで可変機構をもつモビルアーマーが暴れ、三桁に達する死傷者を出した。

 

それが極東にあるムラサメ研究所で開発されていたモビルアーマーに酷似していたとか。

 

 

さらには、その事件そのものが、ジオンの要人を狙ったテロであるとされ、そこで対ジオン反抗派として隠れもないジャミトフ・ハイマン准将とその腹心バスク・オムの名が取りざたされたのだ。

証拠はなにもない。

当時のイズマコロニーの入出国記録にバスクに似た人物が映っていたとか。

 

機体そのものは解析も難しいほどに爆散し、重傷をおったパイロットは入院先の病院から忽然と姿を消している。

 

だが、その事件以降、あれほど蜜月状態であったオーガスタやムラサメが、ジャミトフ派から距離をおくようになったのは事実である。

 

虎の子の機体を失ったことよりも、それを操縦するパイロットを失ったことが堪えたらしい。

とくにムラサメは、その研究内容の一切を明かさぬ、いや明かせぬまでに人体への、その精神への改造を試みる。ムラサメが「ドゥ」の名を与えた傑作強化人間が敗れ、捕らえられ、行方不明になるというのはあってはならないことだった。

 

ムラサメとオーガスタへの不興をかったその代わりに、ジャミトフ派がトリントンに接触を試みているのだという。

 

繰り返すが、たしかにパイロットや技術者をふくめ、トリントン基地はジオン、連邦が入り乱れるカオスな状態になってはいるが歴としたジオンのナワバリである。

そこにジャミトフ派のバスク・オムが接触を試みているのだ、とコウが言うのである。

 

「パイロット仲間からきいた話だとやつらは強化人間やサイコミュはいったんあきらめて、最新の技術を盛り込んだ汎用機を欲しがっているらしいんだ。

つまりは本来あるべきだった連邦のガンダムを再びってことだな。」

 

ニナの眉間に深いシワがよった。

コウはかまわず、話し続けた。

 

「どうもその候補の筆頭が、きみが設計したゼフィランサスらしい。」

 

「あれはわたしのガンダムよ!!」

 

いや違うだろ。

コウは喉まででかかった言葉を飲み飲んだ。

 

ニナはあくまで一技術者にすぎない。

たしかに革新的な構造のいくつかは彼女の発案であったし、ほとんど予算のつかない状態からなんどもなんども申請を出し、ようやく予算がおりて、その試作1号機が完成したのがつい先日であった。

 

「まさか! ゼフィランサスの予算がついたのって……!」

 

「言っちゃ悪いがジオンはガタガタだよ。」

コウは容赦なく言った。

「なにしろ、ギレン総帥はモビルアーマーの増産、キシリア閣下はニュータイプ専用機とイオマグヌッソに国家予算を傾けていたのに加えて、今回のイオマグヌッソ暴走事故だ。

いまのトリントンの開発費はジオニックやアナハイム・エレクトロニクスから出てる分のほうがはるかに多い。

実際に本機は渡せないにしろ、設計データや試験記録は提供せざるを得ないんじゃないかな。」

 

「テストパイロットは? あなたがやる?」

 

「マチュかニャアンだな。おそらくは。」

 

ニナの額のしわがいっそう深くなった。

 

ジオン上層部からの預かりであるあの若い二人のパイロットは彼女の理解の範疇を超えたところにあるのだ。

ニナもまだ二十代の前半である。

それでもあの二人……ニュータイプの素養ありとの推薦でトリントンで預かることになったマチュとニャアンはその奔放さもふくめて、根が技術屋であるニナは苦手としていた。

 

「ゼフィランサスはジオンの次世代主力機の雛形として開発したものよ!」

ニナは言い返した。

「スポンサーがどこであれ、これはジオンが使うわ。」

 

 

「ジオンの? ジオンのどこで?」

 

ザビ家のふたり、ギレンとキシリアが続けざまに死を遂げたあと、公王の座についたアルテイシア・ソム・ダイクンは、ビグ・ザム量産の停止も含めて軍縮に舵をとっている。

しかも次世代モビルスーツとしては、ゲルググおよびその改修機がその地位を占めているのだ。

 

「興味をもってくれるのはデラーズ准将よ……」

 

「バリバリのギレン派じゃないか!」

 

ギレン・ザビはその戦力の大半をア・バオア・クーに集めていた。

イオマグヌッソの暴走事故がその大半を消滅させていた。

 

デラーズは指揮下の艦隊をもって暗礁空域にて演習中だったため、難を逃れたのだ。

 

「そこから、トリントンに視察に来るそうよ。」

 

「准将自らか?」

 

「まさか! その側近よ。あなたもきいたことがあるかもしれないけど。

アナベル・ガトーってひと。」

 

「ソロモンの悪夢!

ソロモンの悪夢が、トリントンに来るのか!!」

 

コウはけっしてニュータイプではない。

だがこのときニナが自分になにかを隠していることが、なんとなくはわかったのだ。

だが、それがなにかまではこのときのコウ・ウラキにはわからなかった。

 

 

 




まだだ!
まだ終わらんよ!
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