第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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謎に包まれた(はぁ?)ソム・エドワウが出撃!
ヤザンたちがなぜティターンズに入ったのか、なにが目的でグリーンノアでテストパイロットをしてたのかも明らかになります。
あと、なんでアルテイシアさんがソロモンの中にいたのかも考察してみました。

それでは「第17話 黒いガンダム~鉄槌」
お楽しみください。




第17話 黒いガンダム~鉄槌

「なぜ、保安部隊は出ないのです?」

ソム・エドワズの表情は険しい。

美女というのは美しいから美女なのだ。

そして、世の男性が美女をちやほや持ち上げたがるのは、この女をモノにしてやろうとかいうさもしい気持ちばかりでない。

 

…怒らせると怖いからなのだ。

 

グリーンノアの保安隊は、顔を見合わせた。

パイロットにしとくのはもったいない、ドレスを着せればお姫様で通る。

いやいや。美人で名高いジオン公国の元首アルテイシアの影武者でも務まるんじゃないか?

そんな風に囁かれている彼女に、恐る恐る保安隊のひとりが答えた。

 

「出撃命令がおりてない。迎撃はガンダムマークⅡにやらせると。」

 

パンッ!

と彼の頬がなった。

 

ちなみに彼は、ここで口答えしたことでも分かるように典型的な被虐体質の持ち主である。

ご褒美をもらって涙目になりながらも、懸命に彼は言い返した。

 

「フランクリン・ビダン所長の直々の命令なんです。」

 

「わたしが出ます。」

ソム・エドワズはきっぱりと言った。

「ザクではなくて、ゲルググかハイザックは? 直ぐにだせるものはある?」

 

「ハイザックが1機あります。」

テストパイロット相手になぜ敬語?

と思ったのだが、口調は知らず知らずのうちにそうなっていた。

 

「分かったわ。」

「ハイザックは初めてですか?」

 

そのまま格納庫へむかおうとするソムの背に追いすがりながら、保安員は言った。

 

「初めてではあるけど、操縦系はほぼ共通のはずよ。」

 

「ジェネレーターにクセがあるんです。」

メカニック上がりの保安員はとりあえずこの横暴なお姫様に伝えるべきことは伝えたいようだった。

「ビームライフルとビーム・サーベルは切り替え式になってます。同時には使えません。」

 

ヤザンやジェリドは取り回しがいいと褒めていたがそんな欠点があったのか。

とっさの切り替えはおもわぬスキを作るかもしれない。

ジェネレーターはビームライフルに固定して近接武器は諦めるか…

 

格納庫はやや雑然としていた。

修理待ちか、あるいは部品取り用に積み上げられた武器の廃材の中に、ソムは面白いものを見つけた。

故障しているのだろうか。

いや、そんなことは関係ないはずだ。

 

 

 

コクピットに座る。

目の前のパネルが光り出す瞬間を、ソム・エドワズは嫌いではない。

 

モニターが映る。

自分が浮かび上がったように想える全天周モニターだ。

 

「保安隊のモビルスーツが出るぞっ」

「倉庫の隔壁開け! 遅い。」

 

天井が開いて、空が浮かび上がる。

雲がふわりと浮いてはいるが、ここはひとが地球に、似せて作った人工の環境。スペースコロニー。

空の先には反対側の大地が広がる。

 

さっき廃品の中から見つけた武器を拾い上げた。

 

「ソム・エドワズ、ハイザック、出ます。」

 

 

 

 

コロニー内に侵入したゲルググは、ヤザンたちが撃退したようだ。

ソムは、コロニーの中央部へとハイザックをジャンプさせた。

そこは、重力がほとんどかからないから、モビルスーツでも「飛ぶ」事ができる。

 

そのままハッチを通って「外」に出る。

相手の戦力がわからない以上、無理は出来ない。

だが、コロニー内部に侵入された時点で、被害は拡大してしまう。

いったいどうやって、ゲルググはグリーンノア内部に入り込んだのだろうか。

 

ソムは訝しく思った。

 

建設したばかりのコロニーで、外部からの出入り用のハッチが充分管理されていないものがあった。そのため、潜入したモビルスーツが実際に攻撃を、始めるまで、侵入に気が付かない。

そんな例をソムは知っていたし、何なら彼女はその被害にあった身だ。

だが、いまは戦時下ではない。

コロニーのハッチはモビルスーツが「こっそり」開けられるようなものではないのだ。

 

内部に手引きをしたものがいる?

 

 

宇宙に、出る。

 

上も下もない。自分が重力の枷から解き放たれていく感覚。ソムはそれは嫌いではない。

 

空間の広がりとともに自分自身の認識機能も拡大していくような気がする。

ジオン・ズム・ダイクンなる男が提唱したニュータイプの感覚に近いものがあるのだろうか。

だとしたら、とんだ道化者に違いない。

 

ソムは、嗤う。

と、同時にバーニヤをふかした。

 

加速したハイザックの後方を火線が通り過ぎていく。

 

ああ、偉大なるジオン・ズム・ダイクンよ。

 

あなたの提唱したニュータイプとやらは、こんなにも戦争向きなのです!

認識の拡大は、理解も協調も生みません。

ただただ。

 

実弾仕様ゲルググMだ。

続けざまの攻撃をソムはかわし続ける。

 

ゲルググM…海兵隊。シーマ・ガラハウ。デラーズ・フリート。叛乱軍。

 

やつら、か。

つい先日も連邦軍へモビルスーツの保有数の削減と開発の制限を「ジオン公国軍」の名で勝手に申し入れていた。

 

戦うことは好きではない。

戦争は大嫌いだ。

だから戦争を起こそうとしているもの、私欲で大量殺戮を行おうとしているものたちを目の当たりにすると、怒りで我を忘れてしまうことがある。

 

こんな感覚は久しぶりだ。

まえにこんな気持ちになったのは。

そう、あれはソロモンの中だった。

わたしは、ソロモンのグラナダ落下を止めるために、内部に潜入していた。

ジオンも同じことを考えていた。すでにジオンは要所に爆弾を設置。

だが、あいつはその起爆装置を破壊しようとしていた。

 

ゲルググMは当たらない射撃に業を煮やしたのか、ビーム・サーベルを抜いて接近戦を仕掛けてきた。

 

ああ、うるさい。

 

人を殺そうとするやつは先におまえが死ねっ。

 

振りかぶったビーム・サーベルに対して、ソムは回避行動すらしなかった。

 

さっき倉庫で調達した鉄球を。

 

ビーム・サーベルを持った腕に叩きつけた。

 

ビーム・サーベルは鉄球にわずかに食い込んだが、これだけの質量のまえには無意味だ。

グシャ!

腕から肩口、胸部が大きく陥没したゲルググは、もう動けない。

 

「ソム!」

 

呼びかけてきたのは、ヤザン――ガンダムマークⅡだ。

わざわざと機体を触れ合わせると、猛禽の男は続けた。

「さすがだな、『戦鎚』。」

 

「ヤザン!」

粗野で荒々しく暴力的な男は嫌いであったが、なにもできない軟弱者よりはマシだ。

「状況はどうなってるの? デラーズ・フリートはどのくらいの戦力で、なんのためにグリーンノアに押し寄せたの?」

 

「今日、このガンダムマークⅡをティターンズに渡す予定になってたんだ。

連邦軍のトロイホースが上がってきている。」

「それは知ってます。ではそれを妨害しに来たということ?

でもそれが決まったのはほんの数日まえのはずよ。なぜデラーズ・フリートはそれを知ってたの?」

「キレッキレだな。頭の回転が。そういう女は嫌いじゃないぜ。遊びの関係じゃなくてホンモノのマブになれる。」

 

ソムは頬が熱くなるのを感じた。

 

 

「…最初からデラーズ・フリートとティターンズが繋がっていて、わたしたちは猿芝居を見せられてたってこと!?」

 

「戦力は、ザンジバル1隻にムサイが3隻。モビルスーツは15ってとこか。

さっき、俺とカミーユ坊やで1機ずつ。おまえがいま1機おとしたから…それでも10機以上は残っている。

だがまあ…」

 

「なんでカミーユが乗っているの!?」

 

「ジェリドがバランスを崩して落下したところにちょうどカミーユがいたんだとよ!」

 

「で、どうするの?」

 

「どうする、とか言う問題じゃないぜ。向こうが圧倒的な戦力で攻めてる側なんだ。イニシアティブは常にむこうが持っている。」

 

画像はない。音声のみの会話だが、ソムは、ヤザンが笑っているのがわかった。

獲物をまえにしたケモノの笑いだ。

 

「おまえの言う通りこいつは猿芝居で、デラーズ・フリートは攻撃してるフリをして引き上げる予定だったと踏んでるんだが、すこし筋書きが変わってきちまってるんだ。」

 

「変わった…?」

 

「そうだ。示威行動だけで引き下がるハズのゲルググを俺たちが落としちまったからだ。

シーマはな。前線指揮官としては一流だ。味方を落とされてはいそうですか、と引き下がる指揮官はいないのさ。

―――という訳でおまえは下がれ。」

 

「なぜここで?」

 

「たぶん、俺たちが考えているように、ティターンズとデラーズ・フリートの間にはなんらかの密約が出来ている。本気で落としには来ないだろう。

俺たちはここでおさらばだ。

おまえはグリーンノアに戻れ。」

 

「あなたたちがこのままティターンズに合流するなら…いつか敵になるかもしれないわね。」

 

「そうか。」

呵呵とヤザンは笑った。

「そいつは重畳ってやつだ。」

 

それにしても。

10数機のモビルスーツに囲まれて、ヤザンたちは無事でいられるのだろうか。

 

だが。

 

シーマ艦隊から発進したモビルスーツの半分は、後方に向かっていく。

ここに来るのは半分。3個小隊のみだ。

半分はさらに後方に向かう。

 

戦いの始まりを目指す光がいくつも広がる。

 

「シーマ艦隊後方に、ソドン級が一隻いる。どうもデラーズ・フリートとは別の組織…たぶんジオンの正規軍だろう。

そこから発進したモビルスーツと交戦がはじまってるんだ。」

 

「こちらに向かっているのは6機。6機と4機なら勝ち目はあるわ。わたしも戦います。」

 

「それには及ばない。おそらくそろそろ味方も来る頃だ。あと10…」

 

会話はそこまでだった。

 

あと10時間なのか10分なのか10秒なのか。

 

それも聞けないまま、ゲルググMの攻撃を避けるために、ヤザンのマークⅡとソムのハイザックは離れ離れにならざるをえなかった。

 

「ロベルト! カミーユ!

相手にするな! 回避運動をとりつつ、トロイホース…」

 

そうか。

ソム・エドワズは頷いた。やはりヤザンたちは敵になるのか。

繊細そうなカミーユ少年、気の良さげな長身のジェリドの顔も胸をよぎる。

 

「…トロイホースの後方に待機している“アーガマ”に集合しろ。いいか!調整のしてないこの機体でまともに戦おうと思うな。

援護のモビルスーツはもうアーガマを発進してる!

シーマ艦隊の相手はそいつらに任せるんだ!」

 

 

 




あれ?
アムロは?
デンドロビウムは?
次の回ではたぶん、ニャアンのゾックが活躍してしまうので、まだ時間かかるかも。
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