第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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戦いは最終局面へ。
圧倒的多数をもって、シーマ艦隊を襲うコンスコン。
彼女たちに勝機はあるのか。
そして、アーガマのアムロたちはどうする!?

戦闘シーンばっかり続いて疲れてきたけど、たぶん、アニメにすると5分で終わる。


第17話 黒いガンダム~コンスコン強襲

 

人というものは実に面白い。

コンスコンは地位としては中将である。

家柄もよく、華々しい手柄には欠けるが、手堅い戦法には定評がある。

独立戦争時に派手な功績をあげた将官が次々と予備役や退役に追い込まれていくなか、彼はその地位に留まり続けた。

 

それはジオン公国が彼を高く評価していることの現れではあるのだが、彼自身はそう思ってはいない。

 

地面にへばりついて、資源の輸送ばかりしていたマ・クベが、キシリアの引きでルナツーの攻略指揮をとり、その結果いまのジオン公国のトップはマ・クベだ。

それがコンスコンには不満だ。

 

戦勝祝い的な昇進も彼にはなかったし、相変わらず艦隊を率いて現場に出ることも多い。

 

“コンスコン閣下”

地位としては同格の中将であるし、コンスコンの方が歳上のため、マ・クベはそんな物言いをする。

“次にシーマ艦隊が暗礁空域を出たら、これを叩きます。その時の指揮をお任せしたい。”

 

“あれは精鋭中の精鋭だぞ。”

むしろコンスコンの方が乱暴な物言いをする。

“戦えばこちらも無傷では済まない。ア・バオア・クーの戦力を失った今、公国軍同士が相打って自らの力を弱めるのは得策ではない。”

 

“ノイエ・ジールがあります。”

マ・クベは答えた。

“Iフィールドと有線クローアームによる多方面からの同時攻撃を可能にした最新のモビルアーマーです。これでムサイの一隻でも沈めてやればさすがにシーマも戦意を失うでしょう。出来ればリリー・マルレーンは無傷で接収したい。”

 

「有能な臆病者」コンスコンはマ・クベの意図を理解した。

マ・クベは―――まだデラーズ・フリートと交渉するつもりなのだ。その交渉の手札を有利にするためにシーマ・ガラハウの海兵隊を無力化したいのだ。

 

「策がすぎる!」

チベの司令室に戻ったコンスコンは、副官に怒鳴った。怒鳴られた副官はいい面の皮であるが、それはそれ。理不尽な怒りを人事評価に反映させたりはしないこの上官は、部下たちからそれなりに信頼されている。

そもそも大抵の兵士は、華々しい武功をたてるよりも、定年で退役して年金を貰って愚痴とアルコールに塗れた生活を望むのだ。

その意味ではコンスコンの旗下の艦隊勤務は実にいい。

必ず充分すぎる戦力をもって、優位な立場で戦いを始める。

 

それはすなわち、味方の被害を最小限に留めることができるということであって、「寡兵で大軍を破った」名誉の代わりが「名誉の戦死」では死んで行った兵には割に合わなすぎるのだ。

 

 

---------------

 

 

「撤退…」

ガトーは、指揮官としてのシーマを見直した。

その判断は正しい。

 

すでにシーマ艦隊のモビルスーツは半数以上が行動不能にされている。

もともと今回の出撃は、「連邦が危険な新型のモビルスーツを開発していること」を喧伝するためだった。

その「ついで」に暗礁空域をしつこく偵察しているアルビオンをどさくさ紛れに撃沈する。

そしてそのついでにこのデンドロビウムのテストをすること。

 

これが不味いのだ。

ついでに、ついでに、が重なると目的がブレてうまくいかなくなる。

 

“だがいまとなっては撤退こそが至難の業か。”

 

新手の可変モビルスーツは、手強い。

いままでなら、デンドロビウムが本気で加速にかかれば、あの謎の力をもつモビルスーツも、恐ろしく射撃が正確なうえに、接近戦も強い白いヤツもそしてゾックもついてくることは出来なかった。

だが、この金色の可変機は、戦闘機の形態になれば、デンドロビウムに勝る。

 

だが―――

互いに手詰まりか。

 

アーガマのモビルスーツは、いずれも恐ろしいまでの凄腕だったが、Iフィールドを備えたデンドロビウムには有効な打撃を当て得ることは出来ない―――

 

デンドロビウムの巨体に衝撃が走った。

 

コクピットのガトーはコンソールに胸を打ち付けた。

 

なにが。

 

死角からバズーカで撃たれたのだ。

 

だが、慣れない複雑極まりない操縦系統に苦戦しながらも、対峙するモビルスーツの場所は把握し続けていたはず。

 

しかもIフィールドが効果がなかったのならば、実体弾。プロペラントタンクが爆発。切り離して誘爆は免れたがスラスターがいくつか損傷する。

 

まさか。

 

それは虚空に浮かぶバズーカ。

さっき、白いモビルスーツが投げ捨てたバズーカ。

そこから発射された弾頭がデンドロビウムを直撃したのだ。

 

“馬鹿な! あのバズーカはサイコミュでも搭載されていて遠隔操作ができるとでも言うのか!”

 

ガトーは決断した。

武人の矜恃よりもまずは生き残る。

自分だけではなく、共に戦うものを生き残らせるために。

 

 

デンドロビウムは、新たに現れた艦隊から発進された巨大モビルアーマーへと進路を変える。

それが、ジオン公国の正規軍のものであり、モビルアーマーがビグ・ザムの後継機種「ノイエ・ジール」であることは、連絡が入っている。

Iフィールドを装備した強力な機体だ。

アーガマ隊との交戦でダメージを負ったデンドロビウムには不利な戦いかもしれないが、なんとか撤退の時間を稼げれば。

 

 

-------------

 

 

「アムロ、ニャアン。いったんアーガマへ帰投。武器の補充を行う。マチュは引き続きアーガマの周辺を防備してくれ。」

ブライト中尉の声だ。

 

「あれはどうする?」

クワトロが尋ねた。

 

「ジオン公国同士の争いだ。こちらからは仕掛けない。クワトロ大尉、それは新しい機体なのか? あなたもいったん帰投してほしいのだが…」

 

「ブライトさん!」

アムロが割って入った。

「止めないと! このままだと戦闘になります。」

 

「―――いや、いまやってたのが戦闘だろう?」

ブライトが戸惑ったように言った。

 

「あ、ああ」

アムロ―――白い悪魔は自分の言ってることの矛盾に気がついたようだ。

「い、いえ、今までのは向こうが攻撃してきたのを守っただけです。」

 

「ブライト中尉。」

クワトロが言った。

「我々はこのまま、船外で待機する。

新しい艦隊はどうもジオン公国軍のようだが、デラーズ・フリートをどうするつもりなのかはわからん。そのままこちらに仕掛けてくるかもしれん。」

 

「わかった。あなたの判断に任せる。機体の損傷があるものだけ、帰投させてくれ。」

 

アムロは、操縦桿を握りしめていた。

損傷を負ったモビルアーマーが飛び去った方向に爆発光がいくつも浮かんだ。

おそらくミサイルとそれを迎撃したビームライフルの光だ。

あれを。

ほっておいていいのだろうか。

 

「アムロ君。」

金色の機体がアムロの“ガンダム”の肩に手を置いた。

 

「大佐。新しい機体ですか?」

 

「君のお父上から託されたよ。稼働実験を兼ねて貸出してもらえた。」

 

「稼働…実験ですか。父らしい。」

 

「きみにもよろしくとのことだ。そうそう、早く進学先を見つけるように伝言があった。

学費はお父上が負担するとのことだな。

―――クラバのほうは引退してもらってもかまわないようだ。」

 

「それについてはもう少し考えます。」

アムロは、戦闘が行われている宙域を指さした。

「あれは…ほっておいていいんでしょうか?」

 

「ほっておくしかあるまい。ジオンとその政府に反旗を翻したものたちの争いだ。」

 

「それについては、動きが妙です。

デラーズ・フリートは、ティターンズの新型機受領を妨害しにきたように振舞っていたのに実際には、トロイホースにまったく攻撃を仕掛けませんでした。」

 

「確たる証拠を出せと言われると困るのだがね。」

クワトロは言った。

「ティターンズとデラーズ・フリートはどうも裏で繋がっている可能性が高い。

以前イズマコロニーで、キシリア暗殺のためにムラサメ研究所のモビルアーマーが送り込まれたことがあった。あれを実行したのがティターンズのバスク・オムだという情報がある。」

クワトロはそのまま気になることを聞いた。

「さっきの投げ捨てたバズーカからの狙撃…あれはもちろん偶然ではないな、アムロ君。

君の機体にはサイコミュでもついているのかい?」

 

「そんな! ぼくらのラボにはサイコミュなんて手に入れる伝手も資金もありませんでしたし、だいたい、ニュータイプがいないと効果がないじゃありませんか。」

 

ニュータイプが…いない、ねえ?

 

「あのモビルアーマーは、確かに加速性能は凄かったんですけど、逆に速度を維持すればこちらの攻撃は避けられると思い込んでいたんです。ビームは弾かれるし、実弾は速すぎて当てられない。でも動きに一定の癖があったんで、発射するタイミングと角度を計算して、バズーカを仕掛けておいたんです。」

 

いやそれはヘンだろう。ある程度クセは分かるにしても、むこうも意志を持って行動し、こちらからの攻撃にはリアクションするのだ。

 

先読みのカンか。

相手がそう行動するように攻撃をコントロールしたのか。

 

そこまでやれるパイロットが自分をニュータイプではないと言い切れるのがどうしてもクワトロには分からない。

 

彼は「向こう側」でクワトロを落としたパイロットだという。

あるいは。

分岐世界でのメタ記憶が、ニュータイプという存在を忌避させているのだろうか。

 

「大佐。力を貸していただけますか。マチュ、ニャアンも。」

 

「…なにをする気だ?」

 

「戦いを止めます!」

 

-----------------

 

 

「なんでアーガマがあの戦闘に首を突っ込まなければならない?」

ブライト中尉は苛立っている。

 

作戦そのものは成功した。

ティターンズが受領するはずだったマーク2は3機ともにアーガマが回収した。

クワトロ大尉の持ち帰った金色の新型機はオマケだ。

ここでこちらに被害のでる行動はするべきではなかった。

 

トロイホースはひとしきり、抗議していたがさすがに攻撃するほどの度胸もなく、すごすごと戦域を離れていていった。

 

「だって人がたくさん死にますよっ!?」

 

「アムロ。きみは軍人ではないから、そう思うだろうが。場合によっては必要な犠牲もある。戦争というのはそういうものだ。」

 

「でもあれは戦争ではありませんよね。

ただのジオン公国内部での政権争いです。」

 

「…天パ。」

ニャアンが言った。損傷はゾックがいちばん大きい。うまくクローで防いでいたとはいえ、かなりの機銃を食らっている。

バーニヤも一部損傷しているのか、姿勢の制御もままならないようだ。

「人は、わりと簡単に死ぬ。独立戦争時はもちろん、この前のイオマグヌッソでも要塞と艦隊がまるごと消滅してる。」

 

「そうだよ! だから助けられるときは助けるんだ! ガンダムがそう言ってる!」

 

マチュは相変わらず、言ってることはめちゃくちゃだ。だが助かる。

 

「しかし、どうするつもりだ。」

クワトロもいささかアムロに呆れている。大人しい青年だと思っていたのだが、こんな一面もあるのか。

 

いや。

これは自分が戦いと策謀に人生の時間を費やしすぎたからかもしれない。

 

「どうするつもりだ?」

 

「考えがあります。」

 

そりゃあるだろう、なければこんなことは言い出さないだろうから。

 

「主な武器を破壊してしまえば、お互いを攻撃出来なくなるから戦いは終わります。」

 

それはそうだが。

それをなにかまともなアイデアのように口にするかな、アムロ君。

 

 

 

 




お待ちかねの置きバズーカ。
そしてついに「白い悪魔」対ノイエ・ジール。
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