第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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もうあれなので「印籠」で終わらせます。






第17話 黒いガンダム~終焉

「ご苦労だった、サウス・バニング中尉。」

 

ドレンは戻ってきた連邦軍の捕虜パイロットたちに敬礼して、迎えた。

これは異例のことである。

普通、軍隊では上官から、敬礼を行うことはない。

所属する軍が違ってもその慣習は生きている。

 

「いったいなにがどうなっている!」

サウス・バニングはドレンに食ってかかった。

「あの艦隊はなんだ?

シーマ艦隊は、同じ公国軍同士だから戦わないんじゃなかったのか?」

 

「我々の“呉用”先生閣下はなかなか心中を明らかにしてはくれんのだよ。」

 

呉用は古代のチャイナの読み物に登場する架空の軍師である。「宋」の時代を舞台にしている。

北宋時代の陶器をこよなく愛するマ・クベに対する皮肉であるが、サウス・バニングには通じなかったようで、ブツブツと不満げにしていたので、ドレンは言葉を足した。

 

「マ・クベ閣下は、まだデラーズをなんとか最小限の損耗で、ジオン公国正規軍に組み入れようと考えておられるようだ。

そのために、デラーズ・フリートの中でも精鋭中の精鋭。しかも海兵隊という独自のルーツをもつシーマ・ガラハウの戦力を削いでしまうことを考えられたらしい。」

 

ドレンはメインモニターに映る画像を振り返った。

 

「あれがノイエ・ジールか。噂では試作機が完成したと聞いていた。一方で操縦の難易度はニュータイプのエース。それこそシャリア・ブル中佐がシャア大佐でも無なければ不可能と言われていたが。

コウ・ウラキ…だったか。よく戦う。」

 

「…」

 

「圧倒的戦力プラスあれを投入すれば、シーマたちは降伏するだろうとマ・クベ閣下はふんだのだ。

まさか、デラーズ・フリートがあんなモビルアーマーもどきをここで投入してくるとは。」

 

光の明滅が次々と起こる。

 

モビルスーツの戦闘を経験しているバニングたち連邦パイロットには、ミサイルを迎撃したときの爆発の閃光だとわかる。

 

「その対艦隊仕様のモビルアーマーと互角に戦えるモビルスーツがいる連邦軍が介入してくるとか。

まあ、」

ドレンは肩をすくめた。

もともとずんぐりとした体型なのでそうするとまるで首がなくなったようにも見える。

「今呉用にもいろいろと計算外のことは起こるものだな。

さてさて、これにどう落としどころを見つけるか。」

 

 

 

--------------

 

 

ノイエ・ジールは、加速した。

デンドロビウムと、その設計思想は似ていたかもしれない。

実体弾にはその加速性能をもって的を絞らせない。それは同時にモビルスーツを相手に接近戦に持ち込ませないための効果もある。

そして、ビームはIフィールドが防御する。

 

飽和状態のミサイル攻撃ならば、効果はあるが、ノイエ・ジールを行動不能にさせるだけのミサイルが命中するまでには、何隻の戦艦が、モビルスーツが宇宙の藻屑となるのだろう。

 

ついでに、ノイエ・ジールを攻撃していたモビルスーツは、金色を中心に集まった。

本格的に加速にはいったノイエ・ジールを追いきれるのは、変形できるその機体だけなのは、彼らにはよくわかっていた。

 

「ガトー、投降しろ。おまえは充分戦った。」

 

ふざけるな。

そう言おうとしてガトーは声の主に気がついた。

トリントンの郊外で、演習用の武装しか持たずに、ガトーの乗るサイサリスを翻弄したドムのパイロット。

 

「…大佐?」

「ガトー少佐。わたしは、連邦軍のクワトロ・バジーナ大尉だ。前にもトリントンのパーティで出会っている。」

 

そうか。ガトーは納得した。

“赤い彗星”はソロモンショックのときから姿を隠している。

なんらかの事情があって偽名を名乗っているのだ―――

 

「ねえ、大佐。あのくらいのダメージで十分なんじゃないかな。」

「大佐。プロペラントタンクが空です。動けません。」

「大佐。あの妙な形のモビルアーマーは撤退したようです。これ以上あれを追う必要はない。」

 

なのになぜ、こいつらは全員、彼を“大佐”呼ばわりするのだろうか!?

 

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「なんなのだね、きみたちは。」

コンスコンは彼にしては恐ろしく下手に出ている。

 

ノイエ・ジールは、あまりにも高価なモビルアーマーだ。

その目的は、もしデラーズ・フリートの本隊が暗礁空域を出た際に、その出鼻をくじくことにある。ここで消耗し尽くしてしまう訳にはいかなかった。

 

相手は“アーガマ”を名乗っていた。

新造艦のようだ。形状はソドンやアルビオンに似ている。つまりはモビルスーツの運用に重きをおいた強襲上陸用戦艦だ。

だがそこには、武装らしい武装がない。

通常主砲として用意されるメガ粒子砲すらない。

 

「コンスコン中将。アーガマは立場としては連邦軍そのものではない。モビルスーツの大気圏外での運用実験のための母艦です。」

 

「ふん。」

とそっぽを向いたが、モニターに映る相手の顔はわかっていた。

ブレックス准将だ。

連邦内部の過激派に追われて、第一線は退いたようだったが、コンスコンは嗤う。

ブレックスは政治向きの人間だ。

軍属という枷をはずしてやったほうが、はるかにその真価を発揮出来る。

ティターンズを名乗る過激派は、自らの策に溺れたのだ。

 

政治のわからないコンスコンではない。

だからこそ、マ・クベはこの任務に彼を指名したのだろうし、彼も目的とするところはよくわかっていた。

 

敵も味方も出来るだけ損耗せずに、シーマ艦隊を降伏させる。

難易度の高い任務であるが、コンスコンには勝算はあった。

ただこのアーガマというわけのわからない連中が介入して来なければ、だ。

 

鈍重そうなその外見とは別に、頭の中は恐ろしい速度で思考が駆け巡っている。

 

「なぜ、我らのノイエ・ジールを攻撃されたのか伺いたい。」

 

「故意に攻撃したわけではない。あくまでこちらは、グリーンノア内部に侵入し、民間施設に被害を与えたそちらのモビルスーツを制しようとしただけだ。」

 

「…グリーンノアへの攻撃は、デラーズ・フリート麾下のシーマ・ガラハウの艦隊所属のモビルスーツ隊によるものだ。

ならば我々の目的とも一致するな。」

コンスコンは注意深く答えた。

「我々は宙域パトロール中に、かねてから独断専行が目に余るデラーズ准将指揮下の艦隊が、民間施設への攻撃を行っているのを目撃。これを中止させようとしただけにすぎない。」

 

コンスコンの耳元に副官が囁いた。

撃破されたモビルスーツのパイロットは全員、無事。

 

運がよかったのか。

それとも。

 

「ならば、この小競り合いはお互いの誤解から生じたものということだな?」

 

ブレックスは微かに苦笑を浮かべて頷いた。

 

「では我々がデラーズ・フリートの艦隊を無力化することについて手出しは無用に願いたい。」

 

モビルスーツ隊はシーマたちもコンスコンもほぼ消耗しつくした。

あとは艦隊戦ということになる。

ならばシーマ艦隊の機動巡洋艦にムサイ二隻に対してこちらは重巡にムサイ六隻。さらに別任務中とはいえ、後方のアルビオンも当てに出来る。

艦隊戦としてなら、圧倒的に有利だ。

まだ、戦わずして降伏させる交渉はできる―――

 

ところが。

 

「我々は、連邦の新型モビルスーツの開発に抗議するために訪れたにすぎない!」

通信に割って入ったシーマ・ガラハウもまた、頭が回らないほうではない。

「わたしたちの攻撃目標は研究施設に絞られていたはずだ。

ただ迎撃のために上がったモビルスーツとのいざこざの結果、流れ弾が市街地に着弾したのかもしれない。それはこれからの調査が必要だろう。

この程度の示威行動は、暗礁宙域を中心にコロニー間の航行の安全確保をするデラーズ・フリートの艦隊の任務のうちだ。

文句があるなら、デラーズ准将にいえ。

ここでわたしたちが同軍から攻撃を受けたり、行動を束縛される謂れはない!」

 

そしてシーマは命じた。

 

「全艦、最大戦速。前方のアーガマとかいうやつを突っ切るよ!」

 

 

-----------

 

 

「アナベル・ガトー。」

金色のモビルスーツがガトーのステイメンの肩を掴んだ。

モビルスーツ同士を触れ合わせることで他からは傍受できない会話が可能だ。

「おまえはデラーズ・フリートに帰る必要はない。わたしとともに来ないか?」

 

それもありなのだ。

いまデラーズ・フリートとジオンに起こっているのは、政争に過ぎない。

軍人は祖国の興廃にこそその身を捧げるのだ。断じて利権や単なる主導権争いに無駄遣いされる命などない。

ガトーにはわかっていた。わかっていたが……

 

「大佐。あなたはなにを目的に動いているのだ?」

 

「わたしはどうも目的をもってはいけないらしい。」

答えた声は苦笑めいていた。

「なにか目的をもとうとするとロクでもないことをしでかすようだ。目的だったかも知れないものは一応果たしたから、あとは周りの気に入ったものたちを不幸にしないことが目的といえば目的かな。」

 

ガトーには理解できない。

 

「例えば、わたしにはニュータイプの友人たちがいる。彼らを戦場にたたせないのが、目標かもしれない。」

 

 

------------

 

「逃がすな! 主砲各個に射撃開始!

ミサイル全発射せよ!」

 

「コンスコンからの攻撃は相手にするな。全速で突っ切るぞ!」

 

「姉御!! グリーンノアから緊急通信です。」

 

モニターに女性の姿が映った。

ノースリーブのパイロットスーツを着ている。

サラサラの金髪は、肩の辺で揃えられていた。

サングラス越しでも恐ろしいほど、整った顔立ちなのはよく分かった。

 

彼女が口を開いた。

 

「全艦、直ちに戦闘を中止『しなさい。』」

 

実にわかりやすい『命令』。

 

 

「なにを抜かす。」

コンスコンは怒鳴った。

「何の権限があって、小娘が生意気な口を叩く?」

 

これはコンスコンという男の数多い欠点のひとつであった。

これはと思った相手にはそれなりの対応ができるのだが、相手がたとえば若すぎたりすれば、それだけでも頭から否定してかかる。

その場合にはしばしば感情のコントロールも効かなくなる。

 

「消え失せろっ!」

 

「コンスコン。」

厳しい表情だが、いかった様子はない。

「もう一度言う。砲撃を中止しろ。

コンスコン、シーマ・ガラハウ。

共に戦闘加速を中止。すべての火器を

ただちに停止せよ。」

 

「小娘があっ! 生意気な口をたたくな!」

 

“小娘”はサングラスを外した。

コンスコンやシーマには。いやジオン公国のものなら忘れようなない顔だ。

だが、その表情は国民へ語りかけるときの優しく慈愛にみちたものではない。

 

「コンスコン。シーマ・ガラハウ。

わたしの顔を見忘れたか?」

 

 

 

 

 




水戸黄門だとここでおしまい。
暴れん坊将軍だとここからもつひと暴れあるのですが。
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