デンドロビウムを失ったデラーズ・フリート。
しかし、コロニーはそこにあるのだ!!
ティターンズも戦力をそろえて巻き返しにかかる。
はたして、孤立無援のアーガマは星の屑作戦を阻止できるのか!
「ことの顛末を私のような老人にもわかりやすく説明してもらえるだろうか、ランバ・ラル殿。」
このところ、めっきり衰えたと言われるがどうしてどうして。
マハラジャ・カーンの視線は鋭い。
だがランバ・ラルは丹田に力を込めると、その眼力を跳ね返した。
公王アルテイシアが逃げ出したのは、たしかに警備隊長も兼ねているランバ・ラルの責任ではあるが、専用モビルスーツだのなんだのアルテイシアを持ち上げていたマハラジャ・カーンにも責任なしとは言わせない。
「結果から申し上げます。
シーマ・ガラハウとその指揮下の軍は、デラーズ・フリートを離れることを約束しました。
ただし、シーマ艦隊の離脱を恐れていたデラーズ・フリートはシーマたちを全軍で出陣させることはなく、必ず人質に一定の要員を暗礁空域に残していました。
それを助け出すためにいったん何食わぬ顔でデラーズ・フリートに戻る。
そういう筋書きになっています。」
「…信用できそうなのか、その話は?」
「どう考えてもシーマ・ガラハウにとっては一番得になりますからな。」
「しかし、流石はマ・クベ中将。この程度の犠牲で、シーマ艦隊を正規軍に戻せるのなら、大手柄だ。」
残念ですが
と、ランバ・ラルは髭を捻った。
「シーマ・ガラハウはマ・クベの指揮下には入りません。」
マハラジャ・カーンは怪訝そうな顔をした。
「いったいどういう事だ?」
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「予定外と言えばたしかに予定外だぞ、ウラガン。」
マ・クベはいささかウンザリしたような声で言った。
「シーマ艦隊を公王府の直属軍にか……また、のちのち肥大化して、ギレン前総帥の親衛隊のような宇宙要塞まで私物化したような大規模なものになるのは相応しくないが、機動巡洋艦とムサイ級軽巡洋艦からなるあの程度の規模の戦力ならむしろあって然るべきだろう。」
「たしかに、アルテイシア様が外遊のさいにいちいちわたしたちで護衛艦を手配しないですむ、というメリットはあります。」
「いずれにしてもシーマ・ガラハウの海兵隊は使いにくい。」
マ・クベは言った。
「毒ガスの噂はついてまわるし、シーマ自身もひと筋縄ではいかない女だ。
逆に親衛隊として、身近に置くのはありかもしれん。」
マ・クベとその副官ウラガンが話している場所は、ズムシティの高級住宅街にあるマ・クベ自身の邸宅である。
ジオン正規軍は現在、ルナツーを最大の拠点としているが、マ・クベはあまりそこに入り浸ることはなく、適度にズムシティにも暮らしの拠点をおいていた。
「コンスコンは来ているな?」
「20分ばかり前からお待ちになっています。」
とはいえ、自宅が政治の場になってしもまうのはいかんともしがたかった。
「コンスコン閣下」
部屋にはいるなり、マ・クベは敬礼した。
「ご苦労をおかけした。拙宅まで足を運んでいただいて感謝する。」
「逆に司令部で話そうとしたらお主の正気を疑うところだ。」
コンスコンは、ひと呼吸おいてから、ワインはあるか、と尋ねた。
苦笑してマ・クベは、ワインを持ってくるように告げた。
「まったくこちらが想定したのとは違った結果になった。」
「だがお主が指示した通りになった。
シーマ・ガラハウの艦隊のデラーズ・フリートからの切り離しには成功。
やつらの開発していた強襲用試作ガンダムを撃破し、こちらのノイエ・ジールは中破。」
話がはじまったのはワインのグラスを二杯空けてからだった。
「こちらはゲルググ12機がすべて撃墜、または行動不能。ただ、パイロットは負傷のみだ。」
「陛下も実によいところで介入していただいた。」
マ・クベがぽつりと言った。
「アルテイシア様がなぜあそこにいらっしゃったのか。公王府からは正式な回答はあったのか?」
「もちろんです。お忍びでモビルスーツの開発を見学していたところ事件に巻き込まれたようだ。目の前で公軍が相打つ様子をご覧になって御心が傷むあまり、とっさにあのような行動に出てしまったそうだ。」
「確かに、助けられた。」
ぶつぶつと不満げながらコンスコンは、ワイングラスを空けた。
「誰かが止めてくれなければ、我々はシーマ艦隊を追撃せねばならなかったし、そうすればシーマ艦隊は全滅。虎の子のザンジバル級巡洋艦を失うところだった。
だがもうこんなやり方はゴメンだ。
このことは公王府に厳重に抗議してほしい。」
「もちろんです。ですがあまり芳しい返事は返ってきませんでしたな。」
マ・クベもワインを飲んだ。
あまり酒を嗜むほうではなかったが、多少の酔いが必要な晩もあるのだ。
「なぜだ!!
越権行為…いやそれはこちらも助けられたのだから目をつぶるとしてもあまりにも危険だろうが!」
「なにせ、ジオン・ズム・ダイクンの死とデギンの公王即位にはいろいろと黒い噂がつきまとっている。」
マ・クベは、窓から外を眺めた。
そろそろ夕闇がズムシティを覆い始めている。
「わたしも会ってはいないが、ジオン・ズム・ダイクンという人は政治家、為政者というよりは思想家だった。
ジオン・ズム・ダイクンまたは幼いその子供たちを元首にたてたほうがその後の政治ははるかにやりやすかっただろう。だがザビ家はその権力を簒奪する方法を選んだ。何故かわかりますか、コンスコン閣下。」
「ふむ。いまならわかる。
ダイクン家の血筋は、傀儡にするにはあまりにも賢く、また衝動的に行動し過ぎるのだ。」
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「本当に、ここは連邦のニュータイプ部隊じゃないんだね?」
アーガマのブリッジでシーマはもう一度念を押した。
ブレックス准将としては苦笑いをするしかない。そんなつもりもなかったが、結果として見ればそうなっている。
というか否定するのも難しい。
「アムロ君やマチュやニャアンは連邦の軍人ではありませんよ。」
シャリア・ブルが口を挟んだ。
「でもニュータイプだろう?」
「アムロ君はクランバトルの選手です。
マチュとニャアンは、私が採用したテストパイロットです。所属はトリントン基地です。サイコミュ搭載機をテストできる貴重な人材ですよ。」
「そもそも、なんであんたがここにいるんだよ!」
「まあ、シャリア・ブルは公王府からの特命任務中なのだが。」
「あ? 5年も行方不明だったあんたまでなんでここにいるんだい?」
「ソム・エドワウ、ハイザック着艦します。」
ブライト中尉が告げた。彼はそんなつもりはなかったが、話の腰を折られたシーマは思いっきりブライトを睨みつけた。
「わたしはいったん席を外させてもらう―――」
シャリア・ブルの手の中に魔法のように拳銃が現れた。
「大佐。大人しくしてください。」
口元には怖い笑みが浮かんでいる。
「ハイザックのパイロットに会いたくないのでしょうが、逃げれば撃ちます。」
「ち、ちょっとシャリア・ブル中佐。そんな無茶なことを…」
「アムロ君。実はわたしも逃げ出したくてね。」
シャリア・ブルは笑った。
「あのお方の命令をひとつも果たしていない。クワトロ・バジーナ大尉と会って確認が出来たにも関わらず、逮捕も殺害もせずにこうして呉越同舟してしまっている。」
それだったら。
アムロは思った。
ぼくも同じ立場だな。
セイラさんから、クワトロ・バジーナがシャアならばその命を奪ってくれと言われているにも関わらず、そうしていない。
シャリア・ブルの目がキラリと光った。
「ほう?…」
「まあまあ。深刻にならなくても!」
マチュがお気軽に言った。
「その…ソムなんとかさんがジオンのトップだったらちょうどいいじゃん。
いろいろ話をすれば分かり合うことが出来るよ。きっと。」
「―――と、また、ガンダムが言ってるのか?」
アムロが聞いたので、マチュは食べかけのハンバーガーにむせ込んだ。
「―――ち、そうじゃないけど。
わたしね。」
強い意志を持った瞳で赤毛の少女は言った。
「誰よりも大事なひとのためにこの世界を消そうとしたやつとも分かり合えたことがあるんだ。だからきっと、なんとかなるんだって!!」
連休中はかえって生活のペースが乱れて更新が滞ったりします。
今回から新章突入。
デラーズ・フリートによるコロニー落とし作戦「星の屑」発動なのです。
“さあてまた、押し返してやるか。”
エンディミオンユニットが肩ぐるぐる回してます。