前話のほうが時間的に少しあと。
テンポとしてもこっちのほうがいいかも。
さて、ハンマーかついだ(心情的に)姫君と兄上が対面します。
シーマ・ガラハウやガトーの説得、アムロとの再会、彼女にとっても盛りだくさんです。
ジェリド・メサが、出撃できるモビルスーツを求めて、グリーンノアのコロニー保安部の管制室にたどり着いたとき、ソム・エドワウもそこにいた。
なにが起きているのかはチェックしていた。
グリーンノアを襲撃したのは、暗礁空域を寝じろにするジオンの反主流派デラーズ・フリートのシーマ・ガラハウの艦隊のものである。
アーガマがマークⅡの受領に上がっているのは予定通り。
だが、超高速とIフィールドを備えた見た事の無い機体が援軍に加わり、さらにジオン公国軍の艦隊が現れて今度はシーマ・ガラハウの艦隊を攻撃し始めた。
ジオン公国軍も通常の戦力に加え、巨大なモビルアーマーも投入され。
戦場は混迷を極めていた。
ソム・エドワウは、通信回線を開かせた。
そして、サングラスをとって、直ちに戦闘を中止するように「命令」したのだ。
デラーズ・フリートがイオマグヌッソ事変で死亡したギレン派の残党であり、ジオン公国から半ば離脱した存在なのもわかっている。
そことジオン公国の正規軍が、戦いを始めたのだ。
止められるものなどいるはずがない。
彼女が「命令」したからどうなると言うのか。
ひと言で戦艦、モビルスーツが入り乱れる戦場が止まった。
「ジェリド。」
それを可能にした美しい女性パイロットは、ジェリド・メサを振り返った。
「ヤザンたちを収容した船は一体何なの?
もともとマークⅡを引き渡すはずだったのは、“トロイホース”で上がってきてるティターンズよね?」
「ああ。あれはエゥーゴの船アーガマだ―――ブレックス准将がティターンズの暴走を止めるために連邦の外郭団体として新しく作った組織だ。俺たちはエゥーゴから依頼を受けて、ティターンズの新型を分捕るために潜入していたんだ。」
「わかったわ。だいたい…では、わたしはそのアーガマとやらに行くわ。ついてくる?」
予備の機体はなく、ジェリドは移送用のコンテナモジュールに詰め込まれて、ソムの操縦するハイザックに抱えられてアーガマに向かった。
着艦はスムーズだったが、移送用コンテナから降ろされたジェリドは、事態の変遷についていけず、目をパチクリさせている。
ソムは、ヘルメットを脱いでそれを整備兵に渡した。
まるで自分の家にでもいるような優雅で自然な仕草だった。
そうしながらも、格納されているモビルスーツを確認する。
ガンダムマークⅡは3機。
先程ソムがハイザックでグリーンノアに戻ったときにすれ違った金色もいる。
ソムが知らなかっただけで「エゥーゴ」とやらはグリーンノアのフランクリン・ビタンの研究所に深く根を張り込んでいたらしい。
そのほかに見慣れぬガンダムタイプの機体。
「あれはたしかクラバの限定配信コンテンツで見たわ……白い悪魔のガンダムタイプね。あのガンダムタイプは見たことがないわね。トリントンの試作機かしら。ゾックにそれと、なに!ジークアクスまでいるの?」
「ブリッジは? 責任者と会いたいわ。」
「ブレックス准将が乗ってるはずだ。」
ジェリドは答えた。
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ソム・エドワウは、クルーに案内されてブリッジに向かった。
ソムは、シーマ・ガラハウをデラーズから引き抜いて、自分の直下の戦力に組み込むよう「命令」したのだが。
コンスコンは如何にも手堅い彼らしく、非礼を詫びたあと“マ・クベ総司令官に確認する”と言ってこの宙域を離れた。
シーマ・ガラハウはこちらはこちらでいかにも彼女らしく、直接顔を合わせて話したい、と言ってきた。
だから一足先にアーガマに着いているはずだ。
ブレックス准将は初対面ではあるが、連邦軍内部でもスペースノイドへの穏健派で知られている。
有意義な話し合いが出来るだろうが、まるきり知らぬ顔ばかりではないのは心強い。
だがその期待は逆方向に裏切られた。
「ソムさん!!」
ブリッジへのドアが開くと同時に、前にテストパイロット同士で食事をしたときに何度か顔を合わせた少年が飛び出してきた。たしか施設の責任者フランクリン・ビダンのご子息だ。カミーユとか言った...。
「ヤザンさんが重傷なんです。あのデカブツが射出した爆雷からアーガマを守ろうとして!」
「な…」
血の気が引くのは自分でもわかった。
あの殺しても死ななそうな男が―――。
「何ヶ所か骨折してるようですが、意識ははっきりしております。生命に別状はないそうです。」
「そ、そうですか。では後で見舞いに行かせてください。」
ソムはそう言ったあとで発言者を睨みつけた。
「ところでなぜあなたがここにいるのです? 確かあなたは特別任務中で」
「ああ、クラバの英雄『白い悪魔』の調査でしたら」
シャリア・ブルはにこやかに、ブリッジの隅の方でドリンクを飲んでいる青年を指さした。
「彼がアムロ・レイです。格納庫はご覧になりましたか? 彼と彼の父親テム・レイ博士が作りあげた“ガンダム”もそこにあります。」
ぐっ。
シャリア・ブルは、確かに彼女をいまの望まぬ地位に押し付けた陰の立役者のひとりだった。
だが政権成立後は直接政治に関わることを拒否した。
見ているだけで腹が立つ仮面を着用しているのも、彼女から遠ざかろうとする意思の現れのように見える。
「わかった。わたしもアムロには直接話がしたい。あとで二人きりでお話しする場所を提供いただくようお願いします。
それと―――」
ソムはサングラスを外して、シャリア・ブルを思い切り睨みつけた。
「もう一つの任務のほうは―――」
シャリア・ブルは、これもまたソムに気が付かないのか、そのフリをしているのか。
年配の男と話し込んでいる青年を指さしてた。
「現在も監視中です。」
しまった!
武器を携帯していなかった!
「ちなみにソドンからの正式な報告は、わたしが脱走したことになっております。部下のエグザべくんとコモリ少尉も連れてきておりますので、そこらはよしなにおはからいください。」
諦めてソムは、ブリッジに足を踏み入れた。
ブリッジにいるメンバーの半数ばかりが敬礼した。
「グリーンノアのテストパイロット、ソム・エドワウです。シーマ・ガラハウとこれからのことについてお話を。それとブレックス准将。あなたの立ち上げたエゥーゴについてもお話ししたいのです。」
「確かに対話が必要なことは多いな…」
ソムは、にっこり笑って声の主を見つめた。
“てめえは黙ってろ。”
クワトロ・バジーナはシャリア・ブルのような読心力はないがその言わんとするところは正確に理解した。
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マチュはアムロの肩をチョンチョンした。
アムロが身を屈めると、マチュは耳元に顔寄せた。
“ねえ。何度もシャアさんを殺してしまう白いモビルスーツのパイロットって天パのことだよね?”
“それはララァさんの夢の話だよ?”
“いや、なんだかソムなんとかさんの方がそのポジションに相応しくない?”
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シーマ・ガラハウは、事ここに及んでもいまさら、毒ガス注入が、デラーズ・フリートが、とは言わなかった。
公王府の直属艦隊になるということは、そのようなもろもろの一切をそれで許されたというこの上ない免罪符になるのだ。
「思い切ったことをされるが、別に嫌いじゃあない。」
シーマは唇を歪めながら言った。
「ガトー。あんたもそれでいいな?」
「…仕方ない。」
武士ならば、是非に及ばず、とでも答えただろう。
ガトーは、自分がこのアーガマのモビルスーツチームに敗れたことを。そしてそのあとノイエ・ジールとの戦いにおいて、彼らに救われたことをよく理解していた。
散るはずの生命を救われたこと。それはそのまま救ってくれた相手に自分の生命を預けることになる。
例えば、デラーズが討ち死にしようとしたガトーを止めて麾下に引き入れたというのならば、また話も違ってくるのだろうが、ガトーにはそこまでの恩義はデラーズにはない。
「申し出を受けてくれてありがとう。」
ソムは微笑んだ。
シーマのような女傑でさえ、ふと引き込まれるような笑みだった。
「……ただ、わたしらは暗礁空域に部下をまだ残してるんだ。デラーズもこっちを完全に信用してる訳じゃなくてね。必ず人質がわりに一定の数を手元に残させる。
こいつらを救い出さないと寝覚めが悪い。
あんたの力でなんとかなるかい?」
ソムは眉間に皺を寄せた。
「それは難しいわ…」
「正直だねえ。」
シーマはケラケラと笑った。別に悪意はなくても人を苛立たせる。そんな才能には恵まれているようだった。
「なら、こっちでなんとかして見るさ。何食わぬ顔で茨の園に戻ったあと、脱出の手はずを整える。
手は貸してもらえるんだろうね、エゥーゴ?」
「もちろん。わたしも一緒に行こう…」
ソムは黙って声の主を睨んだ。
“てめえは黙ってろ。口開くな、息も吸うな。”
ニュータイプの素養がないものにも明確にそれがわかる視線だった。
次回より暗礁空域のデラーズ・フリート拠点「茨の園」から、シーマの残存艦隊を救出するミッションスタート。
ちなみにノイエ・ジールはけっこう損傷厳しくて、コンスコン艦隊に曳航されてご帰宅になりました。