第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ニュータイプがだれも出てこない回は、なんだか話しが重いような気がします。
今回の舞台は、デラーズ・フリート。
暗礁空域の要塞“茨の園”です。




第18話 星の屑(承前)~茨の園

暗い暗い情念の炎。

いままでも感じたことが無いわけでもなかったが、いまのデラーズ准将は、ひとの形をした怨念に見えた。

 

「やられちまったよ。まあ、あんたの指示通り、連邦軍が危険な新型を開発してることのデータはとれたがね。」

シーマはさばさばと言った。

 

デラーズ・フリートはこれまでたくみに正面切った戦闘を避けてきた。

ジオン公国そのものが、ア・バオア・クーとともに大戦力を消失している。

これ以上戦力を減らしたくない。

 

マ・クベを中心とするジオン公国にはその意識が強かった。

必ずしも命令をきかなくてもそこにいるだけで、連邦に対する重し。抑止力になってくれれば。

そんな意識のなかでデラーズ・フリート問題は解決がのびのびになっていた。

 

デラーズ・フリートそのものも手持ちの戦力としては決して潤沢ではない。ジオン唯一のグワジン級はあるもののほかはムサイや補給艦も含めて40隻。

モビルスーツは60機を越えるが、今となっては型遅れ感が否めないザクも混じっている。

 

デラーズはこの子飼いの艦隊を出し惜しんだ。

 

茨の園から出撃するのは、常に外様のシーマ艦隊である。

 

 

茨の園。デラーズ・フリートが本拠地とする暗礁空域の一角には恒久的な建築物はない。

しいていうならば、彼らが接収して運び込んだ浮きドックくらいだろうか。

 

司令部は旗艦であるグワジン級戦艦グワデンの艦橋であった。

 

「こっちはモビルスーツが全機行動不能。ムサイが1隻やられている。」

シーマはセンスで口元を覆った。目だけが怒りに燃えている。

「敵討ちをさせてもらうよ。

戦力は出せるかい?」

 

「まあ、待て。シーマ・ガラハウ中佐。」

 

「中佐?」

 

「さきほど、軍令部からの通達だ。」

デラーズはシーマを宥めるように言った。

「過日、連邦のモビルスーツ部隊を撃退したことに対して、勲章授与と昇進の連絡が入っている。」

 

「とことん弱腰だね。ひとを昇進させておいて、新型モビルスーツで撃滅しようなんて矛盾もいいところさ。

工廠とニナを借りるよ!

すぐ出撃しないのなら、わたしのガンダムガーベラだけでも完壁に修理してもらうさ。」

 

シーマが艦橋を去った後、ガトーはデラーズに跪いた。

 

「閣下!

申し訳ありません。デンドロビウムまで与えていただきながら…」

 

「気に病むな、ガトー。」

デラーズは笑った。

どうしてもガトーは、かつての上司であるドズルと比べてしまう。

ドズルならば、本当に豪快に笑い飛ばしてくれたはずだ。敗北は敗北。だが次もある。

そう思わせてくれる男だったのだが、デラーズの笑顔には裏があるようにしか思えない。

 

「デンドロビウムの核はむしろお主が無事に持ち帰ったステイメンだ。武器庫であるオーキスは新しく作ることが出来る。」

 

「…閣下。お耳にいれたいことが。」

 

うん?

ガトーがそんな物言いをするのが珍しかった。

怪訝な顔で、耳を近づけたデラーズに。

 

「シーマ艦隊は、密かに公王府と連絡をつけています。公王直属艦隊の地位を餌に。

我々を裏切る可能性があります。」

 

ふふっ。

と、デラーズは笑った。

 

「ガトーよ。星の屑を決行するぞ!」

 

「閣下! しかしマ・クベを足止めするためのデンドロビウムは……っ!」

 

「いまも言っだろう。武器コンテナであるオーキスは作り直せる。今度は細かなギミックも多彩な武器もなし、だ。」

デラーズは悪魔の顔で笑った。

「中身は全て核ミサイルを搭載する。」

 

「し、しかし!」

ガトーは叫びそうになったが、なんとか自分を押さえ込んだ。

「核兵器の使用は条約で―――」

 

「ティターンズとの約定はこうだ。

我々はジャブローにコロニーを落とすと言ってコロニーの移動を始める。これをティターンズが中心となった特殊部隊が、環境改造用のソーラーシステムを使って部分的に破壊。コロニーは進路を外れて北アメリカの穀倉地帯に着弾する。

コロニーを落とし、反抗をたくらむ連邦軍に先制攻撃を行った我々はスペースノイドから。ジャブローへの落下を阻止したティターンズはアースノイドから。

ともに賞賛を浴びて、組織内部での地位を有利なものにする。」

 

憎いから殺すのではない。

自らを正義と信じるから壊すのではない。

巨万の利益のために戦争を起こす…それですらない。

 

己の組織内部での優位のために、こいつらは殺す。

コロニーは前回に比べて小型のものだったがそれでも何百万人が死ぬだろう。

 

デラーズの笑いはまだ止まらない。

 

「だが、それでは終わらない。実際にはコロニーは本当にジャブローを直撃する。

ティターンズがコロニーの軌道変更に用意したソーラーシステムを、ガトー、お主のデンドロビウムの核が破壊するからだ。

ティターンズは失脚し、いや連邦軍そのものが壊滅する。かろうじて持ち直してきている地球での食料供給事情もまた一気に悪化する。」

 

閣下。

ガトーは再び頭を垂れた。

デラーズの顔を見ていられなかったのだ。

 

「この戦の大義は何処に。」

 

「……お主の言わんとすることはわかる。だが、英君ギレン総帥の意思はそうでもしないと、頭の硬い公王府には伝わらんのだよ。」

 

--------------

 

「アポリー、ロベルト!」

シーマは歩きながら、ここまで連れてきた部下たちの名前を呼んだ。

シーマの子飼いの部下ではない。

アーガマから監視用につけられたパイロットだ。

元ジオンのバイロットでロベルトはエゥーゴに、アポリーはクワトロに拾われて、アーガマで再会したらしい。

「どうだ!? 茨の園は?」

 

「居住性はよくなさそうです。」

ロベルトが言った。

「数ヶ月はともかく年単位で滞在できる所ではないかもしれません。」

 

「そうだな…例えばジオンが敗れでもして、ここが最後の拠点となっているとでもない限り、そろそろ逃げ出すものも出てくる頃合いだ。」

 

「逃げ出せますか?」

 

「公式にはデラーズ・フリートは叛乱軍ではない。ア・バオア・クーにかわる宇宙の安寧と秩序を守るための戦略拠点だ。

物資の搬入も行われている。逃げるチャンスなどいくらでも。」

 

「―――そもそも」

アポリーがボヤくように言った。

「そもそもなんで、あんたらはデラーズ・フリートに入ったんだ?」

 

「ギレンは親衛隊をア・バオア・クーに集結させていただろう?

ギレンはあのタイミングでキシリアを暗殺するつもりだったんだ。

突然、その正当性を疑い、反旗を翻すものがいたときのための用心だな。

―――で、ギレンに信用されていない、しかし、一応はギレンの指揮下にあった戦力はべつの場所で演習を命じられた。」

 

「あんたはともかく」

 

「なにがあんたはともかくだよっ!」

 

「デラーズ准将はギレン閣下の腹心中の腹心だろう?

たしか独立戦争まえからギレン閣下の親衛隊にいたはずだ、それがなんで…」

 

「まあ、ウザくなったんだろうね。」

連絡艇に乗り込みながら、シーマは言った。

「デラーズの中では理想のギレン像が出来上がっていたんだろう。だからギレンさまならこのときはこうする、ああ言われたらこう返す。自分の中でシミュレーションが済んでいて、実際のギレンの思惑とは違うところで動くようになったんだ。

多くの場合、それは表面や手法だけを真似たより過激なものになりがちだ。」

 

「それが“星の屑”か?」

 

アポリーとロベルトは、ここに着くまでの間にその作戦の全貌を聞かされている。

一言で言えば意味の無い作戦だった。

 

廃棄処分となったコロニーを衛星軌道上から投下。

厚い岩盤に守られたジャブローを破壊する。

 

だがそれは独立戦争の初期。物量においては圧倒的だった地球連邦軍への大打撃を与えるということで意味はあった。

 

いまも確かに連邦軍の司令部はそこにある。

ただし、叩くべき戦力はもうない、

 

宇宙戦艦は建造を禁止されて久しい。

モビルスーツの工場はあるにはあるのだろうが、実際の開発はアナハイム・エレクトロニクス社やジオニック社といったメーカーをはじめとした投資ファンドが行っている。

つまり、ジャブローが喪失したとしても、それは地球環境の悪化をもたらすだけであって、戦略的になにも意味はないのだ。

 

 

「このことを報告するのは少し待て。」

シーマは自分の監視役であるアポリーとロベルトにそう念を押した。

「デンドロビウムとガーベラの修復には時間がかかる。

それまでに、もう一芝居うつさ。」

 

 

 

 

 

 




GQuuuuuuX、ファースト、ZETA、ポケット、0083 当たりを盛り込んでますが、なにか出し忘れてるキャラはいないかなあ。ハマーンはそのうちアクジズごと帰ってきます。別にジオン残党が逃れたりしてはいないので、たいした戦力になりませんし、ハマーン自身もあの性格にはなってはいないはずです。
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