第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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殺すもの。
殺されるもの。
それはひとつ間違えれば立場が逆転する脆い関係でしかない。
モビルスーツの修理のため移動するアーガマに暗い夜が訪れる。闇のなかから長い髪の女が手を伸ばした!

次回機動戦士Gundam GQuuuuuuX第19話「孤独な戦い」。
きみは刻の涙を見る。






第18話 星の屑(承前)~孤独な戦い

アーガマは居住ブロックを回転させることで擬似重力を発生させることができる区画を持っている、

スペースノイドであってもずっと無重力下でいることは好まないものも多い。

ある程度、長い時間を宇宙で過ごすことを前提にしているアーガマらしい工夫と言えた。

 

パイロットは狭いながらも個室が与えられていた。

 

そのひとつが開いて、赤毛の少女が顔を出した。

 

通路の壁にもたれかかった青年に気がついて声をかけた。

「ストーカー…」

 

「なんでそうなる!?」

ニャアンとマチュが心配で待ってただけのアムロは言い返した。

そのアムロに、マチュはランドリーバックをを差し出した。

「ニャアンを着替えさせた。これ、洗濯に出しといて。」

 

アムロが受け取ろうとすると。ヒョイとマチュは手を引いた。

「…やっぱ、いいや。わたしが持ってく。」

 

「なぜ?」

 

「下着が入ってる。」

 

絶句したアムロの隣にたって、マチュも壁にもたれかかった。

 

「…どう?」

 

「まだうなされてる。汗かいたから、だいぶ熱は下がった。」

 

ニャアンは、シーマ・ガラハウに自分がサイド2から逃げてきたことを告げたあと熱を出して倒れた。

それから十時間ばかりたっている。

 

マチュはほぼつきっきりで看病していた。

 

「知ってたのか?」

 

「戦災難民だってことはなんとなく。

あらためて聞くのも辛い話だって思うからあんまりくわしくは。」

 

言うまでもない。

サイド2は独立戦争冒頭で、ジオンに奇襲をうけたコロニーのひとつだ。

そのさいに、ジオンはコロニー内への毒ガスの注入という暴挙を行っている。

 

「ニャアンはプチモビの操縦が出来てそれで逃れたって言ってたから、たぶん毒ガスをまかれたのとは違うコロニーだと思う。」

 

小さな手がランドリーバックの取っ手を握りしめた。

 

「―――ニャアンは、」

ポロボロと涙が頬を伝った。

「ニャアンは戦いをするひとではなかった…!」

 

「戦いをするために生まれてきた人間なんていないよ。」

アムロはなんとかそれだけ言った。

 

「でも、ニャアンは! ニャアンだけは!

わたしがニャアンを巻き込んだんだ!」

 

あのとき。

あの改札前でニャアンと出会わなければ。

 

あ、いや。

ぶつかって来たのはニャアンのほうだし、わたしスマホ割られたし。

 

うむ。

マチュはなんとか涙をぬぐった。

 

「ニャアンも悪い。」

 

「どういう思考でそういう結論にたどり着いたんだ。」

アムロはマチュの立ち直りの速さに若干ひいている。

 

「でもこれからはニャアンはモビルスーツには乗せないよ。」

マチュは言った。

「おぺれーたー? っていうのかな。アレにしてもらう。クロメの中尉さんに掛け合うよ。」

「それはどうかな。」

 

休息中の居住ブロックは薄暗い。

現れたクワトロ大尉は、飲み物の入ったバスケットを持っていた。

 

「水分補給…ですか?」

「そうだな。だいぶ熱が高いときいたので新鮮な果実のジュースを持ってきた。」

クワトロは、きみたちも飲むかと言って、カップに入ったジュースを取りだした。

 

「…気が利くんだね、シャアさんは?」

 

「わたしはクワトロ・バジーナなのだが。」

 

「そうだった。ごめんね、大佐。」

 

「わたしはもうブリッジでも大佐とよばれているぞ。」

恨めしそうにクワトロは言った。

 

「へんな偽名を使うからだよ。ソムなんとかさんも。」

 

「ところで…」

ジュースを一口飲んでからアムロは言った。

「“それはどうかな”ってどういう意味です?」

 

「ニャアンはニュータイプだ。しかもキシリアがジフレドのパイロットに選んだほどのニュータイプだ。パイロットの適性はあまりにも高い―――ということだ。

彼女が才能を発揮できるのはパイロットだろう。

もし、地上にでも降ろすのなら別だが、もしこれからも一緒に行動するのならその能力を活かすほうが―――」

 

「でも危険なんだよ! それは!」

 

「直衛のモビルスーツとそれに守られる戦艦とどちらに乗るのが安全か、という問題だな。これはなかなか答えが出しにくいものなんだ。

時代によっても違うだろうし、戦場によっても異なる。

わたしが―――」

と言いかけて、クワトロは咳払いをした。

「ジオンの若きパイロットがひとりで6隻の戦艦を破壊し“赤い彗星”の異名をとったころとは訳が違う。

ビームライフルを備えたモビルスーツに対するには、戦艦は大きめの的でしかない。」

 

「でも、でもね、シャアさん。あっごめんなさい。大佐。」

マチュは言い直したがどっちも間違っている。

「才能があってもなくてもニャアンは、戦いが嫌いなはずなんだ。そこから自由にしてやりたいんだ。」

 

「戦うことで、つかめる自由もある。」

ぬうっと、ドアの隙間から痩せた手が伸びて、クワトロの持つバスケットから飲み物を回収して言った。

 

明かりを落とした部屋の中で、ちゅうちゅうとなにかをすする音がした。

 

ずずっ。

と音がしたあと、ドアがまた少し開いた。

 

ざんばらの髪が顔を半分覆い隠していた少女は、のろのろと言った。

 

「お…かわ……り」

 

「ニャアン!」

マチュが飛びついた。

 

「心配かけた。」

ニャアンは流石に顔色が悪い。だがしっかりと立っていたし、クワトロからオカワリのドリンクをもらってちゅうちゅうする姿はなにかの愛玩動物を思わせてなかなか愛らしかった。

 

「マチュ。」

二杯目を飲み終えたあとで、ニャアンはいく分しっかりとした声で言った。

「わたしはジークアクスに乗った時に、世界が広がっていくのがわかったんだ。

隠れて、逃げ回って、やっと生きているんじゃなくて。わたし自身の力で生きる道を切り開いた感覚。」

 

「それはなんとなく、わかるよ。」

マチュは頷いた。

「わたしは周りが全部ニセモノに見えてた。

あのキラキラが見えたとき、なんか分かったような気がした。」

 

「わかったってなにが?」

 

「それはわかんなかったけど。」

 

「嫌な言い方になるかもしれないが、ニュータイプ能力は戦いの中で顕在化することが多い。」

クワトロの口調はわずかに苦いものが混じっている。

「モビルスーツでの戦闘がなければニャアンのニュータイプ能力が覚醒することはなかっただろう。」

 

「じゃあニュータイプは戦いの道具なんですか!」

アムロは自分の口調が刺々しいものになるのを感じていた。

 

「そうとは限らない。少なくともジオン・ズム・ダイクンが、提唱したニュータイプはそんなものではないはずだ…」

 

「そんなのはそのニュータイプが決めることだよ!」

マチュが言った。

ニャアンを支えるように体に手を回していたが、もともとニャアンよりはだいぶ小柄ではあったし、ニャアン自身はわりとしっかりと自分の足で立てていたからニャアンはすこし迷惑そうではあったが。

「ニュータイプがこうじゃなきゃいけないなんだって、周りが決めるのはおかしいよ!」

 

「それはもっともだ。」

クワトロはマチュの言葉に頷いた。

「ニャアン。ラビアンローズまではまだ時間がかかる。もう少し眠るといい。マチュも一緒のほうがよければ寝具を運ばせよう。」

 

 

 

2人の少女が寝室に姿を消したあと、クワトロはすこし、話さないかとアムロを誘った。

 

半弦休息中の食堂は明かりが落とされている。

起きているものはブリッジに詰めているはずだから、ここはアムロとクワトロの2人のだけだった。

 

さっきクワトロが差し入れしてくれたジュースで、べつにのどの乾きはなかったが、なんとなく手持ち無沙汰になるので、コーヒーを注ぐ。

 

「アムロくん」

「はい、クワトロ大尉。」

「アルテイシアと知り合いなのかね。」

 

ブッ。

むせたコーヒーが鼻から吹き出した。

無重力下ではこれは危険な行為だったが、ここは擬似重力が発生している。

 

「…セイラさん。いえ、あの人はセイラ・マスと名乗ってました。住んでたコロニーが一緒で、単なる顔見知り、くらいです。

ぼくはただの学生で、セイラさん…ソムさんはたしか医療の学校に通ってたはずです。」

 

「医学生か…アルテイシアらしいな。

しかし、それがなぜ、パイロットに。」

 

「住んでたコロニーがジオンに奇襲を受けて、連邦軍に負傷者がたくさんでたので、医者の卵のセイラさん…ソムさんはそれを手助けする形で徴用されたみたいです。そのあとは知りません。」

 

「そうか…きみたちも戦争難民だったわけか……」

 

アムロはへんな顔をした。

「ええ。民間への被害は少なかったのでぼくは『難民』にはならずにすみましたけど。でも開発中のガンダムを狙って奇襲をかけてきたのって……」

 

ブウッ!

コーヒーを吹き出したのは今度はクワトロだった。

 

「わたし……いや、赤い彗星の仕業というわけか!」

口元を拭いながらクワトロは言った。

 

「べ、別に恨んではいませんよ。戦争中のことですから。

それに父もよく言ってました。

兵隊を憎んでもしかたがない。責任があるのはその命令を行ったものだからだって……」

 

「それは一面真理ではある。」

クワトロは、百式を受領するために出会ったテム・レイの顔を思い出していた。

研究者としてまっすぐ過ぎるだけで、なかなか良識もあり、決断力もある人物だと感じたが、その印象は間違ってはいないようだ。

「ニャアンの故郷を戦火にさらしたのは、確かにシーマの率いる海兵隊がその中心にいたが、計画し、命令をくだしたのは、ギレンの一派だ。

その意味ではニャアンは、ある意味復讐をすでに果たしている。」

 

「どういう意味です?」

 

薄暗い食堂の照明のなかで、クワトロの表情は闇に沈んでいた。

 

「イオマグヌッソでア・バオア・クーを崩壊させたのは彼女だ。」

 

 

 

 

 




ギレン自身はキシリアの毒ガスで殺られてますけど、ギレン派そのものは、ニャアンとジフレドが作動させたイグマオヌッソで消滅してるわけで。一年戦争初期に、毒ガスやコロニー落としなどを立案計画し、命令した連中は、その戦争難民であるニャアンに一掃されてるわけなので、まあGQ'世界線はかなりきれいにまとまった物語だと思うのです。
ニャアン自身は、「撃った」感覚すらなくて、合われた通りの座標数値を入力してイグマオヌッソを作動させただねなんでしょうけど
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