果てしなき死闘の果に、ララァは何を見るのか。
次回機動戦士Gundam GQuuuuuuX「南海の決闘」。
きみは生き延びることができるか。
この女性が、ムラサメ研究所の!?
強化人間、というモノはニュータイプよりも歴史は古いかもしれない。
その意図するところもまた、そもそものジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ論に似ている。
つまり、別に戦争に向いた人類を作り出そうとしたわけではなく、あくまでも宇宙に適応した心身の強化を目的として、強化人間の研究ははじまっている。
だが、ジオン独立戦争とその中での「ニュータイプ」の活躍がすべてを変えてしまった。
ジオンではフラナガン博士を中心とするフラナガンスクールが、ニュータイプの囲い込みを行い、その研究をすすめている。
地球でもいくつかの研究機関が、人工のニュータイプ、強化人間の研究を行い、強化人間や強化人間用のモビルスーツの開発を行っている。
その中でも、とくに悪名が高いのが、極東に本部を置くムラサメ研究所であった。
それは命をも脅かす非道な人体実験としか言いようのない「強化」であり、幾多の失敗(すなわち被験者の死亡)の果てにようやく世に出したのが「ムラサメ」シリーズの強化人間である。
これらとて、まだまだプロトタイプ。
安定した強化人間ではないが、それでもムラサメ研究所はそれを世に出すことをためらわなかった。
そのあまりの非道っぷりにそうでもせねば、必要な投資が集められないところまできていたのだ。
ここまでは、突如、クランバトル運営本部に襲来した白衣の女性が自分で語ったことである。
「いやいや」
白衣の女性―――ムラサメ博士は揉み手をしながら楽しそうである。
「よいねえ、クランバトル!
こんないいものがあるのなら、わざわざバスクの阿呆にサイコガンダムとドゥーを預けなくてもちゃんと性能テストが出来たんだ!!」
「それはまあ。」
デニムは、どう応対したものかわからないままに答えた。
「実際に、モビルスーツの性能テストにはかなり以前から使われてはいたようです。パイロットの方は―――まあ、多少の腕前の善し悪しで新規に軍人を抱え込もうとするものはまずいなかったので。」
「ふふん!」
ムラサメ博士は胸を張り、ソファの肘掛けをばんばん叩いた。
「よいではないか。実によい。余計なしがらみのない実戦環境で、強化人間やモビルスーツの挙動を観察できる。研究者冥利につきるよ!」
「……博士、ここは軍の施設ではありません」
デニムは冷や汗をぬぐった。
「あくまで見世物――興行として行っております。」
「わかっておる、わかっておる!」
博士は手をひらひら振った。
「だがな、クラバのボス殿。思わぬ環境に投げ込まれた時にこそ、ヒトは本当の力を発揮するのだ。
その意味で、クランバトルは―――」
彼女の言葉を遮るように、モニターの画面が一気に切り替わった。
無人島の上空を旋回する観測衛星の映像。
湖畔に並び立つ二機のモビルスーツ―――ドゥーのアッガイ。ララァの新型。
「ドゥーちゃんが乗っているのはあの水陸両用だな?
もう一機は見慣れない機体だが。新型か?
パイロットは誰だ? わたしのかわいいドゥーのM.A.V.を務めるのだからそれなりのものを用意してくれているのだろうなあ?」
カンカンカン!
綺麗にマニキュアを塗った指がリズミカルに肘掛けを叩きだした。
機嫌がいいのは間違いない。
だが、マッドがつく科学者の上機嫌がどんなものなのかは、デニムにもジーンにも想像したくなかった。
ウォン・リーが片眉をあげ、横目でデニムを見た。
デニムは、気が付かないフリをしてクラバ観戦に集中した。
モニターの中で、二機の巨影がゆっくりと構えを取る。
湖面に反射する光は美しく、それが戦火に染まる未来を告げていることを、誰もが直感していた。
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湖畔。
ララァは小さく呟いた。
「始まるのですね……」
ドゥーは彼女の横顔を見つめる。
「――怖いなら、下がっていればいい。ボクがやる。」
「いいえ」
ララァはかぶりを振った。
「ただ、何故こんなに戦いたくないのか。何故にこんなに怖いのか。それがわからなくて戸惑っています。」
ドゥーの視界が極彩色に染まった。
「キラキラ、だ。」
ドゥーは顔を抑えた。
サイコミュの共振。それはニュータイプに万華鏡を覗き込むような不思議な空間を垣間見せることがある。
まるで互いの心をのぞき込むように。
「面白いですわ。わたしには幾多の世界で無数の敵を葬ってきた“記憶”がある。」
「何を言ってるんだ、ララァ!?」
「……それでもいまのわたしは、産まれたばかりの子猫のように無力で、まわりの全てに怯えている。
そうか。大佐がいないから。」
ララァは、気がついた。
大佐と離れないためには、自分もモビルスーツ乗りになるのが一番いい。
そのつもりで、懐かしい機体を提供された事をきっかけで、クラバに出場してみたのだが。
―――自分の戦いは大佐を守るための戦いだったのだ。
いま、シャアのいない戦場はこんなにも孤独でこんなにも寂しく、果てしなく怖い。
「大佐……『邪魔です』なんて言ってごめんなさい。やっぱりあなたはわたしにとって必要なひとなのです。」
「何を言ってるんだよ、ララァ!
もう敵が来てる!!」
ドゥーが叫んだ。
ドゥーもまた生まれて初めての体験をしていた。
ペアを組んだ相手が自分より精神的に不安定だという恐怖。
「クランバトル。クランバトルを開始いたします。」
機械音声が流れた。
ドローンからの配信に。
賭けをしているものも。単純にクランバトルをショーとして楽しんでいるものも。固唾をのんでその瞬間を待ち受ける。
「試合開始まで、5……4……3……2……」
雲を割って、輸送機が降りてきた。
すでにハッチが開いている。
ドゥーは歯噛みした。
このまま、試合が始まるらしい。
ならば。向こうからこちらの居場所は特定されている可能性が高い。
ドゥーは“ヘビーアームズ”タイプのモビルスーツについての知識はあった。
実弾兵器を中心に、ハリネズミのように武装した機体。
相手の居場所が、確認出来ればその行動は決まっている。
湖畔の静けさは、一瞬で破られた。
空を裂く轟音。
ガンダムヘビーアームズの全弾発射――肩、胸、脚部のハッチが一斉に開き、数十を超える誘導ミサイルが白い尾を曳いて飛び出す。
「来たッ!」
ドゥーの瞳孔がきゅっと縮む。
キラキラの中でドゥーの洞察力は数倍に拡大している。
避ける。避けられる。
だが、心配なのはララァだった。
クラバのボスの愛人がなぜ試合にでてきたのか。
ニュータイプなのはわかった。
だがそれにしても。
「ドゥー」
ララァのモビルスーツの腕が、ドゥーのアッガイの腕をつかんだ。
そのまま、後ろの湖に諸共にダイブする。
次の瞬間、爆炎が湖畔を覆った。
ミサイル群が木々と砂浜を焼き尽くし、衝撃波が湖の水を盛大に跳ね上げる。
水柱に紛れ、二機の姿は消えていた。
「なにすんだよ! ボクは回避できた!
逃げるならララァだけで充分だろ!」
「ミサイルは目眩しです。回避行動をとったところに銃撃が来ます。」
「それで正解だ。ドゥー・ムラサメ。」
トロワは冷静に照準データを走らせる。
「だが、逃げ場はない」
残りの弾倉からマシンキャノンを連射。水面に弾痕が踊り、熱で白煙が立ちこめる。
「全弾撃ったわね、トロワ。」
サイコガンダムリファイン。
ミノフスキークラフトとIフィールド、本体内蔵のメガ粒子砲を無くしたかわりに、本体を通常のモビルスーツ並にサイズダウンした機体。
その機体を操るエメラルドグリーンの髪の少女、フォウ・ムラサメは相棒を責めるように言った。
「それになによ、この音は―――ラ、ラ、ラ
……」
「ミサイルはここが使い時だ。」
トロワの口調にはどこか戦いを楽しむような響きがある。
「これだけ地形が複雑では、相手の位置を特定するのが一苦労だ。
確認できた今、最大火力をつぎ込むのは間違っていない。
これで、迎撃しようとしてくれたら、狙撃でケリをつけられたのだが。」
ざばっ。
湖底から、巨影が突き上がった。
丸っこい頭はどこかユーモラスな印象を与える。
クローを備えた両腕を突き出して、備えたバルカンをトロワとフォウにむけて発射した。
ガンダムヘビーアームズもサイコガンダムリファインも、飛行能力はないが、空中での機動性がないわけではない。
もともと正確とはいえないバルカンの射撃を、2人は楽々とかわした。
トロワのヘビーアームズの腕の機銃が湖畔を抉るがすでに、水陸両用モビルスーツは、水面下にその姿を隠している。
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「うむうむ、よいねえ、実に良い。」
パチパチとムラサメ博士は手を叩いた。
「実にトロワらしい攻撃だった。」
「失礼ですがどこらへんが……」
「うむ。もっともな質問だ。」
ムラサメ博士は、白衣を腕まくりした。
「私の命令は、トロワ、フォウ、ドゥーの性能テストをすることだ。
つまり、敵を見つけたと同時に、全弾発射して相手を粉々に吹き飛ばしてしまっては、テストにならない。
私の命令よりも戦闘における合理性を追求するところが実にトロワらしい。」
「失礼ですが、それだと命令無視ということになりますが……」
「いいんだよ!
もちろん、命令には絶対服従するように何度も何度も刷り込みをしているが、それでも己の信じる方法を優先するというのは、人間の個性というものだ。
踏み潰して、摩り下ろしても残ってしまうその人間特有のパーソナリティ。実に愛おしいものじゃないか!」
ララァのモビルスーツは単純にシャロンにしときましょうか?
理屈としたはシャアに龍の意味のロンをいれてなんかカッコ良い名前、ということで。