第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ニュータイプとは。
強化人間とは。
彼らはなぜ生まれ、これからの人類の歴史になにを刻むのか。
その運命の戦いが、意思の炎が南国の孤島を焼き付くしていく。

次回機動戦士Gundam GQuuuuuuX「南海の斬撃」

君は生き残ることができるか。


ネオ香港奇譚6

地上に降り立ったトロワとフォウはジャンプと歩行を繰り返しながら湖を目指した。

 

トロワは舌打ちをした。

目の前の湖はそう大きなものではなかったが、それでも十分な広さと深さがありそうだった。

先ほどのトロワのミサイル攻撃で、湖水の景観は台無しになっていたのだが、そんなことを気にする情緒は強化人間にはない。

先程は、ドゥーの水陸両用モビルスーツが水面から両腕を出して、銃弾を浴びせてきたが、いまは水面はしんとしずまりかえっていた。

 

そのまま、数分が経過する。

 

「トロワ。」

フォウが苛立ったように言った。

「わたしがサイコガンダムRで水中に入るわ。援護して。」

 

「奴らの少なくとも一機は、水陸両用型だ。もう一機は今回が初テストの新型機とのことだが、その特性は未知数だ。

水中に入ってもこちらには有効な索敵手段も攻撃手段もない。」

 

「クラバって一応、時間制限もあったわよね。」

フォウの声に困惑が混じった。

「まさかこのまま時間切れを狙うとか。」

 

「厄介だな。」

トロワは頷いたが、別に本気でそうは思っていないようだった。

「ならば出てくるようにするまでだ。」

 

 

水中では、ドゥーとララァが息を潜めていた。

アッガイの水中機動性はもちろん高い。

調子にのって、水中に入ってきてくれないかと、ドゥーは期待していたのだが、それは流石にうまく行かないようだった。

 

「ララァ、この機体はなに? ゲルググベースって聞いたけど、水中でこんなに動けるのか?」

 

「技術的なことはわからないけど、高級士官用のセミオーダーの高級機になる予定らしいから、手抜きをしてないんでしょうね。」

 

「それにしてもおまえは、モビルスーツに乗るのはホントにはじめてなの?

かなり慣れてるような……」

 

夢見の話をしてもドゥーを混乱させるだけだろう。

「わからないけど、操縦が自然にできるの。まるで体の一部のように。」

 

ドゥーは眉をひそめた。

「それはニュータイプの適性だけじゃない。その機体、サイコミュを積んでるよね?」

 

「そう聞いているわ。操縦系はほぼ思った通りに動かせる。」

 

そのとき。

湖底近くを移動する2機のモビルスーツに凄まじい衝撃が襲いかかった。

残存のミサイル、機銃。ありとあらゆる火器が湖面目掛けて発射されたのだ。

 

 

 

「デニムさん!」

事務所で観戦していたジーンが声を上げた。

「何やってんですか、あのヘビーアームズってやつ。あんな弾のばら撒き方をしたらあっという間に弾切れですよ?」

 

確かに。

湖面で爆発も起こっている。

恐らくは残りのミサイルもばらまいているのだろう。

画面的には派手だし、正直、興行主である彼らにとっては、ドゥーたちがじっと湖に身を潜めていられると困るのだが、絵面的にはよくてもモビルスーツにダメージは与えられまい。

 

デニムもこの意味不明の行動に、ムラサメの方を見やった。

 

ムラサメ博士の目がきらりと光った。

「ほう、これは」

 

「わかるのですか! 博士!」

 

「簡単だよ。ドゥーちゃんたちが潜ったままじゃあ、勝負にならないから、なにがなんでも出てこなくちゃいけないような状況を作ってるんだ。」

 

「い、いえ、でもあれは無駄弾ですよ。」

 

「だからだよ。トロワの機体が弾切れになればさすがに、ドゥーちゃんたちも湖から出てくるでしょう?」

 

 

湖面を覆った爆炎が、ようやく収まりかけた。

そこへ――。

 

水柱が割れ、茶色の機影が躍り出た。

アッガイ。ドゥーの機体だ。

丸っこい頭。全体のフォルムは3等身でどこかユーモラスですらある。

 

「さすがに出てきたか。」

トロワはヘビーアームズのコックピットで、淡々とナイフを抜いた。

長大なアーミーナイフが両手のマニピュレーターに握られる。

――弾薬は尽きた。

わざとそうしたのだ。

徹底的な不利。だがそれはトロワがわざと作った状況だ。

 

「やっと隙を見せたな!」

ドゥーの声が通信回線を裂く。

アッガイのクローが閃き、鉄爪が振り下ろされる。

 

ヘビーアームズは巨体をひねり、紙一重でかわす。

しかしクローの切っ先が肩アーマーを抉り、火花が散った。

 

「ちぃっ……!」

トロワはすかさずカウンター。

ナイフが弧を描き、アッガイの腕に鋼の火花を走らせる。

 

湖畔に響くのは、爆炎ではなく、金属がぶつかる甲高い音。

重厚なヘビーアームズと、地上でも機動の軽さを残すアッガイ。

 

対照的な二機が、刃と爪で組み合った。

 

「弾も尽きたモビルスーツなんか、ただのでく人形だ!」

ドゥーは叫び、体当たり気味にクローを押し込む。

「ボクが叩き潰してやる!」

 

「……勝とうという意識が強すぎるな。」

トロワの声は冷たい。

「勝利というのは、結果だ。最後に立っている方が、勝つ」

 

ガギン! ガギギギッ!!

ナイフとクローが火花を散らし、互いの腕部に食い込んでいく。

 

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観戦室で、ムラサメ博士が身を乗り出した。

「そうだ……そのまま! ドゥー、トロワ!

どちらも負けるんじゃない!

お前たちは私の宝石だ……!

強化人間こそが人の正当進化だと証明しておくれ。」

 

---------------

 

 

「うるさい! ボクはボクだ! ボクがボクであることを自分で選んだんだ!!」

怒号と共に、アッガイのクローがナイフを弾き飛ばした。

白刃が宙を舞い、地面に突き刺さる。

 

ヘビーアームズはすべての武器を失った。

 

ヘビーアームズの両手は空を切り、冷たい湖風が戦場を吹き抜けた。

クローの切っ先が喉元に迫り、ドゥーの勝利が決まったかに見えた――。

 

「……いや、まだだ」

 

トロワの声が低く響く。

 

次の瞬間、ヘビーアームズの巨体がぐっと沈み込む。

脚部スラスターを最大噴射。土煙と湖水が弾け、アッガイのクローの軌道がわずかに逸れた。

 

「っ!?」

ドゥーの目が見開かれる。

 

体当たりされたアッガイが大きく揺らぐ。

 

その僅かなスキに落としたダガーを、拾いにヘビーアームズが走る!

 

させるか!!

 

ドゥーはアッガイを加速。落としたダガーを先に確保すべく動く。

アッガイのクローアームは、伸縮がきく。

ダガーまではドゥーのほうが早いはずた。

 

ヘビーアームズの目標は落としたダガーナイフではない。

それに向かって動くであろうドゥーのアッガイを目標にしていたのだ。

 

モビルスーツの「手」は精巧なマニュピレーターである。パイロットはともかく、整備をするものたちで殴り合いに使って欲しいと思うものは皆無だろう。

 

だがヘビーアームズの拳には手甲がはめられていた。

 

ドゴッ!!

 

鈍い音はアッガイのモノアイを破壊した。

そこまでの打撃を繰り出せば、拳も破損する。

 

だが、ヘビーアームズの拳は追加装甲らしき手甲で守られていた。

アッガイの身体がゆらいで、平衡を失う。

 

膝をついたアッガイのまえに、ダガーナイフを拾ったヘビーアームズが仁王立ちした。

 

ザアッ。

水面が割れて、濃緑色のモビルスーツが躍り出る。

アッガイとヘビーアームズの間に、両手を広げて立ちはだかった。

 

「ジャマをするな。」

 

「クランバトルはM.A.V.戦です。

ここからはわたしがお相手しましょう。」

 

「だ、メ、だ……」

アッガイが立ち上がる。

ドゥー自身も、殴られた衝撃で胸をうっていた。呼吸が苦しい。

「こいつは、ものすごく……たたかいなれしてる。ボクらが湖に潜んだときから……この展開に誘導されたんだ。」

 

「そいつの相手はわたしがするわ。」

 

サイコガンダムRがあゆみ出た。

クローアームとダガーの接近戦では手を出しにくかったため、傍観していたのだがちょうどいい。

 

フォウ自身も、ムラサメ博士からの指示は理解している。

このクランバトルの目的は―――性能テストだ。

機体と。自分たち自身の。

 

「さっきから脳内に変な音を響かせてたのはおまえだな?

わたしはフォウ。あまり気に入った名前ではないから呼ぶ必要はない。その前に、わたしがお前を破壊する。」

 

「わたしも名乗る名前はないの。

白薔薇仮面とでもよんでもらえばいいわ。」

 

ヘビーアームズがせまる。

鋼の火花がほとばしり、アッガイの爪と新たな刃がせめぎ合う。

まるで死神が二度目の鎌を振るったかのように。

 

「こいつ……!」

ドゥーは歯噛みする。

 

「おまえの『性能』は悪くない。」

トロワの声は相変わらず無機質だった。

「もしおまえが、命を落としてもおまえという存在は成功例だったと……博士にそう報告しておく。」

 

再び組み合う二機。

爪と刃、重量と機動、力と速さ。

だがそれはもはや互角の戦いではなかった。

アッガイが受けたダメージ分、動きが鈍い。

 

「よそ見をしている時間はないよ。」

 

とっさにララァは身をかがめた。

頭上をなにかが。通り過ぎていく。

 

------------

 

「あれをかわすか!!」

ムラサメ博士は体を乗り出した。

暑いのか、プチプチとシャツのボタンを外していく。意外に豊かな胸の谷間から視線をそらしながら

「あれはなんです?」

デニムが尋ねた。

 

「まあビット兵器だよ。脳波コントロールで動き相手を破壊する。」

 

「ビットってあの……ガンダムが使ってた。」

「そうだ。まえにバスクに貸し出したものは全身の装甲の殆どをパージして、それ自体を質量兵器として相手にぶつけたり、本体内蔵のメガ粒子砲のリフレクターとして使用できたが、数が多くなればコントロールも大雑把になるし、装甲をパージすることで、本体の防御力も下がってしまう。」

 

ムラサメは自慢げに話した。

 

「サイコガンダムRは切り離し可能なパーツはショルダーバインダーのみだ。

モビルスーツ装甲にも有効なヤイバを備えてある。重力下での飛翔時間は短いが、モビルスーツを屠るには絶好の武器だろう?」

 

そのまま、眉をひそめた。

 

「……しかし、よくかわすな。

あの見慣れないモビルスーツのパイロットはなにものだ?」

 

 

-----------

 

 

「当たれ!」

 

サイコガンダムRが装備したビットは2機。

もともと宇宙での戦いを想定した武器である。

1Gの重力下では、コントロールが難しいがそれにしても。

 

一機は真横から、一機は足元から。

致命の斬撃を繰り出すビットソードの攻撃を、新型機がかわしていく。

 

ヘッド部分は、かの有名ブランドの新作の帽子を思わせるようなクチバシと、後頭部にアンテナを備えているが、全体のフォルムはゲルググのものである。

 

それにしても運動性能がよい。

良すぎる。

おそらくはマグネットコーティング。

いや、このあまりにも人間的な動きは。

 

そしてさっきから聞こえる。ララ……ラ

の異音。

 

「アッハッハッハ!!

楽しいね! おまえはニュータイプなんだね?

その機体はサイコミュを積んでるんだ!?」

 

フォウは狂笑した。

 

「いいじゃないか。わたしが。強化人間が、ニュータイプよりも優れてることを教えてやるよ。」

 

 

 

 






番外編終わって、星の屑書きたいのに止まらない!
時系列的には、デンドロビウムとノイエ・ジール、ガーベラの修理、破損したマークⅡの修復、ヤザンさんの傷の回復待ちなので、作中の時間経過そのものは少しあるんですけどね。
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