第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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さてお待ちかねのシャア×ハマーンです。
さすがに誰の作画でも2枚目。
もててもてて、でもぜんぜん羨ましくないクワトロ・バジーナに新たなる嫁が!!
あんまり困らせると「アクシズもろとも地球を」とか言い出すひとなので、だれか理解者になってあげませんか?




第18話 星の屑(承前)~帰還

 

 

「ハマーン……殿か?」

クワトロ・バジーナはそう呼びかけた。

ハマーン・カーンならば、ジオン本国の大立者、マハラジャ・カーンの娘のはずだ。

粗略な扱いはできない。

 

彼女は大人しくシートに座って、お茶を飲んでいた。

擬似重力ブロックにだけ許される贅沢、ティーカップでだ。

 

「あなたが、シャ……クワトロ・バジーナですね?」

 

モビルスーツでひとりやってきた、ということであったが、着ているものはバイロットスーツではない。黒っぽいタイツのような代物だ。

年齢は……たしかマチュよりひとつ歳上だったか。

 

「その通りです。初めてお目にかかります。アクシズに行かれていたはずですが、いつお帰りになったのですか?」

 

「アクシズそのものは、まだ地球圏到達には日数がかかります。」

ハマーンは答えた。

「わたしは巡洋艦エンドラで一足先に戻ってまいりました。」

 

「そのエンドラはどちらに。」

 

「先にズムシティに入港しているはずです。」

 

話が噛み合わない。

クワトロは、ハマーンの隣で優雅にお茶をすすっているシャリア・ブルを睨んだ。

 

「彼女の指示で、アクシズはてんでに各勢力にコンタクトをとっているそうです。」

クワトロがここにくる間に、彼やブレックス准将とは多少話はしたらしい。

 

「なんのために?」

 

「それはそうでしょう。別に島流しにあってたわけではないにせよ、はるか小惑星帯から帰ってきたばかりです。情報は欲しいはずです。

私たちが擁立した新政権の正統性も含めてね。」

 

「ご心配なく! クワトロ閣下。

アクシズはあくまでも正当ジオン政府の指揮下にあります。ですが。」

 

形のよい唇だが、薄く、笑うとどこか冷酷さを感じさせる。ハマーンは言葉を切り、ティーカップを優雅にテーブルに置いた。彼女の視線はクワトロをまっすぐに射抜き、まるで獲物を値踏みするような鋭さがあった。

 

「ですが?」

クワトロは促すように言った。心の中で警鐘が鳴っていた。アクシズの動きは予測不能だ。ジオン公国を実質的に取り仕切っている者として、彼女の父マハラジャの権力はあまりに大きい。

そしてハマーン・カーン自身は、ただの小娘ではない。ニュータイプの優れた資質を早くから見出され、キシリアのフラナガン機関への囲い込みを避けるために、わざわざアクシズに避難していたほどだ。

 

「ですが、現在の『正当政府』が、地球圏の安寧を保てる存在なのかは、また判断しなければなりません。

デラーズ・フリートの話はきいています。

ジオン本国内すらまとめ切れないならばそれは『正当な』ジオン公国とはいえないでしょう。」

ハマーンは静かに続けた。

「地球連邦内部も一部の過激派がティターンズを名乗って暴走。

こちらのブレックス・フォーラ准将がそれを制するのに、エウーゴなる組織を立ち上げたのはよしとしましょう。

ひとつ間違えば再び戦端は開かれ、人類は今度こそ滅亡に向けて歩むことになる。

あなたもそう思いませんか、クワトロ・バジーナ閣下? いや、シャア・アズナブルと呼んだ方がいいのか。」

 

クワトロの表情がわずかに固まった。彼女は知っている。いや、察している。アクシズの情報網は侮れない。シャリア・ブルが隣で穏やかに微笑んでいるのが、余計に癪に障った。

 

「私の名はクワトロ・バジーナだ。過去の亡霊に縛られるつもりはない。」

クワトロは冷静に返した。

「それで? アクシズの本意は? 各勢力にコンタクトを取っているのは、単なる情報収集か? それとも……同盟の布石か。」

 

ハマーンは小さく笑った。冷たい響きが休憩室に広がる。

「鋭いですね。さすがは赤い彗星。

アクシズは、ジオンの理想を継ぐ者として、地球圏の混沌を正すつもりです。

そのために手を組むのは、ジオン本国なのか、デラーズ・フリートなのか、エゥーゴの新政権なのか、はたまたティターンズと一時的にでも手を組んだ方がよいのか。

選択肢は多い。わたしたちは自らの力を誤った方向に使われたくないのです。」

 

「ティターンズにも、か?」

ブレックスが固い表情で言った。

 

「そうです。ああいった輩はおだて上げて暴走させるのに限る。さすればそのうち勝手に自滅していきます。」

 

へえ。

 

と、マチュが感心したように声をあげた。

 

「それで、ひとりでここまで来たんだ? ハマーンさんのモビルスーツってそんなに長い距離を単独で移動できるの?」

 

2人の少女はけっこうよく似ていた。

身長はだいぶハマーンのほうがスラリとしていたが。

赤い髪をショッートカットにしているところなど。

そして、どちらもニュータイプだ。

 

「おまえは?」

 

「わたしはマチュ。」

 

「私が、見出したニュータイプですよ。いまはテストパイロットとして雇っています。」

シャリア・ブルが口を挟んだ。

険悪な空気になるのを避けるためだったが、ハマーンは大人しくマチュの答えに反応した。

 

「アクシズが独自に開発したガザCだ。アステロイドベルトは地球圏ほど狭くは無いのでな。移動可能距離はおそらく地球圏のどのモビルスーツよりも長い。 加速軌道にのるちょうどいいところで、エンドラからきりはなしてもらってあとはここまで一飛びだ。」

 

「すごいよね! それって。」

マチュは目を輝かせた。

「それならどこに持っていっても、ぜったい味方にしたいから、どんな情報でもほいほい渡してくれそうだよね。」

 

ブリーフィングルームに数秒間の沈黙がただよった。

 

シャリア・ブルが口を挟んだ。

「ハマーン殿の行動は実に合理的だ。

たしかにアクシズの戦力は無視できないし、それが味方についてくれるかもしれないという誘惑はどんな連中の口も軽くさせるだろう。」

 

クワトロは内心でため息をついた。

 

「……譲れぬ条件もある。」

ハマーンの視線は鋭い。クワトロの一挙手一投足、どんな表情の変化も見逃さない。

「アクシズはミネバ・ザビを保護している。もし、彼女に危害を加えるものがいれば、わたしは戦う。」

 

「ジオン公国にはマハラジャ・カーン閣下がおります。」

シャリアが言った。

「彼が、ミネバ様に危害を加えることを許すと思われますか?」

 

「わたしはあなたの言葉がききたい。

クワトロ・バジーナ。」

 

クワトロは頷き、立ち上がった。

 

細身のラインを強調するような黒いタイツ姿のハマーンのまえに跪く。

 

「私は、なんの権力ももってはいないが約束しよう。ダイクン家は、ミネバに対してなにも含むところはない。幽閉したり危害を加えることもしないし、彼女の安全を全力で守ろう。」

 

「よろしい。クワトロ・バジーナ。

来てよかった。」

口調が微妙に変化した。

「わたしは別にアクシズの指導者という立場ではない。だが各勢力の正確な情報を得るためにはここでこう行動するのが、適正だと判断した。

マチュの言う通り、だな。」

 

ハマーンは屈んで、クワトロの手を取った。

「そして、わたしが自分でここに来たのはあなたに会うためだ。」

 

クワトロは顔を上げた。

ハマーンの目がうるみ、微かに頬が上気していた。

 

「俗物と罵られるかもしれないが、親が決めたとはいえ、婚約者だ。一刻も早く会っておきたかった。」

 

クワトロは心の中で叫んだ。

“じ、冗談ではない!”

 

「マハラジャ・カーン閣下は、ダイクン家との繋がりを強化するため、あなたにハマーンを娶らせるという考えをもっておられたようです。

実際には計画段階でアルテイシア様がとめたようなのですが、アクシズ側には既定の事実として伝わっていたようですな。」

シャリア・ブルが淡々と言った。

 

「合格だよ、クワトロ・バジーナ。いやキャスバル様。ともに新しい宇宙世紀の礎となろう。」

 

---

 

ラビアンローズに用意されたシュミレーターのモニターに映し出された仮想宙域は、濃紺の闇に星々が散りばめられている。

モビルスーツの影が二機、淡い光を引きながら加速していた。

 

「カミーユ、スロットルの握り方が硬い。腕で制御しようとするな、肩から先は“添える”だけでいい。」

 

アムロの声がインカム越しに届く。落ち着き払った口調だが、隙のない響きがある。

シミュレーターの隣席で彼は腕を組み、カミーユの操作を一瞬たりとも見逃していなかった。

 

「……添えるだけ、ですか?」

「そうだ。機体をねじ伏せるんじゃなくて、反応を引き出す。今のお前の手は、動きを潰している。」

 

カミーユは眉を寄せ、レバーを持つ手に力を込めすぎていたことに気づく。

呼吸を整え、ほんの少しだけ力を抜くと、シミュレーター内のガンダムマークⅡは滑らかに旋回を描いた。

 

「――あっ」

「そう、それだ。機体はもっと素直に応える。人間が意地を張ると、逆に遅れる。」

 

アムロは横目でカミーユの表情を確かめる。真剣さの奥に、まだ少年らしい反発心と不安が見え隠れしていた。

「ニュータイプだろうと関係ない。操縦の基本を疎かにすれば、いつか足をすくわれる。忘れるなよ。」

 

カミーユは小さく息を吐き、視線を前に戻した。

星々の向こう、シミュレーターに投影された敵影が近づいてくる。

 

「……やってみます」

「いい返事だ。次は実戦を想定する。ぼくが敵役をやるから、全力でかかってくるんだ。いいね?」

 

アムロの声は落ち着いていたが、その瞳の奥に鋭い光が宿っていた。

それを感じ取ったカミーユの胸は、不思議な高鳴りで満たされていった。

 

 

前方に、赤い警告マーカーが点滅する。

アムロのガンダムが一瞬で機影を消し、次の瞬間には斜め上からビームライフルを浴びせてきた。

 

「――くっ!」

 

反射的にスラスターを吹かす。カミーユの機体は慣性を利用して急制動し、ビームの直撃を紙一重で回避した。

だがアムロは追撃を緩めない。敵影はすでに真横に回り込んでいる。

 

「遅い、遅いぞカミーユ!」

アムロの声が響く。

 

「わかってます!」

 

カミーユは必死にスロットルを捌き、ビームサーベルを抜いた。白い残光が宇宙に弧を描く。しかしその刃は空を切った。

アムロの機体は、紙一重の距離でかわし、逆に背後を取っていた。

 

「動きに感情を乗せすぎるな。軌道が読まれる!」

 

直後、背後からのビームが機体をかすめる。

警告音がコクピットを満たした。

 

「……っ!」

 

だがカミーユの目は、すでに敵の動きを追っていた。

読み切れないはずのアムロの加速――その先に、かすかな軌跡を感じ取る。

 

「ここだ!」

 

反転しながら突撃するカミーユ。サーベルの光がアムロの機体をかすめ、シールドを弾いた。

初めての手応えに、カミーユの心臓が高鳴る。

 

「よし……今のは悪くない。」

アムロの声が低く笑った。だが次の瞬間、そのガンダムは常識を超えた旋回で真後ろに回り込む。

 

「だがまだまだ甘い!」

 

再びセンサーが真っ赤に染まり、カミーユは思わず息を呑んだ。

シミュレーターの訓練とは思えぬ圧倒的な緊張感。

アムロ・レイという存在が、本当に自分を試している――その重さだけが、カミーユの身体を前へと駆り立てていた。

 

 

二人がシュミレータールームをでたあと一息入れることにした。

 

「マークⅡの性能はどうだった?」

飲み物をカミーユに渡しながら、アムロは言った。

「いいって……いえ、ぼくは大会で乗ってたザクが唯一のモビルスーツ経験ですから。

比較なんて無理です。でも」

カミーユは首を傾げた。

「“素直”なモビルスーツだっていう気がします。たぶんこれをそのままダウングレードしてゲルググⅡが作れるくらいに。」

 

「そうだな。装甲材はもう1段階うえのものがそろそろ出回ってくるし、ムーバブルフレームにももう少し改良の余地はある。」

 

カミーユがアムロをすごいと思うのは、これだけすごいパイロットなのにも関わらず、視点が完全に技術者のものであることだ。

彼が行っているのは「戦闘」ではなくて「試合」であり、相手を葬るよりも「無力化」することを優先している。

 

「カミーユはまえにエキシビションで組んだときよりだいぶ腕を上げたよ。」

アムロはうれしそうにそう言った。

「ちゃんと後ろにも目をつけてるみたいだし。

きっと、クワトロ大尉が言うようにニュータイプなんだろうな。」

 

「アムロさんこそ! きっと凄いニュータイプですよ。」

 

「やめてよ。ぼくはそんな大層なもんじゃない。ちょっとカンがいいだけなんだ。」

 

「いえ、でも。」

 

「ニュータイプなんだったら、クワトロ大尉やそのパートナーのララァさんみたいなひとのことを言うんだろうな。あのひとたちは、ぼくには見えてないものが見える。とくにララァさんはすごいよ。

“夢”を通して可能性が生み出す別世界を“体験する”ことができるみたいなんだ。」

 

それはニュータイプ云々じゃなくてオカルトじゃないか、とカミーユは思った。

 

「ジオンのゲルググを一瞬で蹴散らしたときも凄かったですよ!

アムロさんと“大佐”でほとんどのモビルスーツを瞬殺じゃないですか。」

 

「瞬殺じゃなくて無力化だよ。」

そこらはこの物静かな青年にとってこだわりのボイントであるようだった。

 

「思ったんですけど」

思いのほか、喉が渇いたのだろう。カップからチュウチュウとレモネードを飲みながらカミーユは言った。

「“大佐”とアムロさんてどっちがつよいんですか?」

 

 

 

 




敵味方に分かれていなくてもなんとなく、ライバル関係にしたて上げられるアムロとシャア。やっぱりこいつら「決着」をつけない限り、ファーストの物語は終わらないのでしょうか。
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