第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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あんまり暑いのでちょっと怪談ぽく


ネオ香港奇譚~蛇足

デニムは、また増えた厄介事に頭を悩ませていた。

 

ムラサメ博士は上機嫌のまま、ネオ香港を後にした。

―――ただし、トロワとフォウはおいたままだ。

 

「トロワについては、もともと身体的には特別な処置は必要ない。」

 

そんなあぶない連中を置いていってどうするんだ!

と、デニムは抗議したが、ムラサメはまったく聞き入れなかった。

 

「フォウについては、時折頭痛がするはずだが、この薬を飲ませておいてくれ。」

 

「なにか特殊な薬品ですか……」

 

「ロキソニン。」

 

一般的な鎮痛剤だった。

 

もともと預かっていたドゥーが一番、問題が多かった。これについては必要な医療情報のファイルを渡されている。

 

「肝心なのは、彼らは定期的にモビルスーツに乗せて、なおかつ出来れば戦闘をさせてやらねばならない。その状態が一番、精神的に安定するのだよ。長期間モビルスーツから離れていると精神が崩壊しかねないように条件付けされている。」

 

そんな無茶な!!

 

デニムは呻いたが、ムラサメ博士は笑った。

 

「たしかに面倒な条件ではあるが、きみはクランバトルの主催者だろう。」

 

そうだった。

ほかの者には難しくてもデニムにとっては、実に簡単なことである。

 

 

「モビルスーツの操縦技術、戦闘への忌避感や恐怖心の排除に記憶操作は不可欠なのだが、どうしてもその分、不安定さが増してしまうのが難点だったが、その解決にメドがついた。上位者を『姉』や『兄』として刷り込んでしまえば安定ははるかに増す!」

 

これはイケるぞ!強化人間は新しい時代を迎えるのだ。

ムラサメ博士は小躍りするように帰っていった。

 

それからデニムは、フォウやトロワたちと話をした。

年齢的にはまだ学校に行かせた方がいいようだったが、どこで暮らさせようか……

 

それにはララァが手を挙げた。

客用の寝室を使わせて、学校に行ってない時は、ヴァーニとカンチャナの手伝いをしてもらうことにしたのだ。

 

クランバトルの出場者自身も、若くて顔のいい選手が揃えば、これは興行的には望ましい。

そういえばララァにモビルスーツを貸し出したかのハイブランドも上機嫌で、たんまりと謝礼。それと引き続きクランバトルでの使用を依頼してきた。

 

 

 

「デニムさん。」

あれやこれやと、雑務がたまっている。

珍しく事務所は真夜中近かった。

ジーンはつぎのマッチメイクを考えていたのだがなんとかメドがついたようだ。

「先に帰りますぜ。」

 

デニムは手を振って、彼を帰らせた。

仕事人間、というわけではないのだが、どうにも落ち着かない。

ムラサメ博士とあってからずっとそうだ。

 

なにかを見落としているのか。

 

噂ほどには酷い人間ではなかったのがかえって気になっているのか。

 

デスクのうえのモニターが光った。

 

表示された文字は……ムラサメ研究所。

 

時差はたいしてないはずだから、向こうも夜中のはずだった。

こんな時間に?と思いながら、デニムは応答した。

 

モニターに映ったのは意外にも中年男性の顔だった。

 

「ムラサメ研究所のアメムラといいますが、遅い時間にすいません。」

あまり風采の上がらない男は、早口にそう言った。

 

「いえ、なにか?

フォウやトロワなら一昨日から学校にも行っていますよ。特に問題はありません。」

 

「そこかっ!」

研究員はデスクに突っ伏した。

「クランバトルの試合でそれらしい姿を見たという情報がはいったので、まさかと思い……」

 

「いえ、なにをいまさら。」

デニムは笑った。

「そちらのムラサメ博士自身が彼らを連れてきたのですよ。クラバという環境が彼らに都合がいいからと、ここに預けてくださいました。

ムラサメ研究所にはそのことは伝わっていなかったのですか。」

 

「ムラサメ……博士?」

アメムラ研究員の顔色がかわっいく。

見てはいけないものを見たように。

 

「はい。世間の噂通りの方でしたが、上機嫌で帰られました。おそらくは強化人間たちの性能テストがよかったからではないかと。

その報告はムラサメ研究所にははいってないのですか?」

 

「よく勘違いされるのですが、ムラサメ研究所は、村雨町にあるのでムラサメ研究所なのです。

うちにムラサメなどという研究員はいません!」

 

はあ?

デニムはびっくりして相手の顔を見つめた。

 

「いや、彼女はたしかにムラサメと名乗っていましたよ。背の高い、美人の……そうだ、白衣を着ていたな。」

 

モニター越しにでも相手の顔が血の気が引いていくのがよくわかった。

 

「どこへ行くと言っていました?」

 

「いえ、別にそれは」

 

「何人くらい死にましたか?」

 

「いえ、誰も。幸いにも。いや、変わったというか奇矯な言動の方でしたが、それほど無理難題を言う方でもなかったのですが……あれはムラサメではなかったのですか?」

 

「いえ、間違いなく、ムラサメです。」

 

なんだかよく、わからなくなった。

 

部屋の灯りが不自然にパチパチと点滅した。

 

モニターのなかから顔面蒼白になった研究員は叫んだ。

 

「そいつは、我が研究所を脱走した強化人間です!

名前はゼロ・ムラサメ。

彼女は自身の戦闘力よりもそれを基準に他者を改造することに熱心で、研究費用を横流して非道な人体実験を続けていた。

その作品が、ドゥー、トロワ、フォウなのです。

これまでも幾多のテロや犯罪の裏に彼女がいる。」

 

 

 




明日はまた、本編に戻ります。
デラーズ・フリートに接触したマシュマー・セロと
ティターンズに接触したキャラ・スーンの話しを片付けていよいよ核パルスエンジン点火です!!
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