いまところ、アクシズの動きは、こんな感じです。
ミネバ・ザビ→ズムシティ、アルテイシアのところ
ハマーン→ラビアンローズ。クワトロのとこ
マシュマー・セロ→デラーズ・フリート
キャラ・スーン→バスク・オムと接触
フォン・ブラウン市は、月赤道部の東経23.5度付近のクレーターに建造された最初の月面都市である。その場所は西暦1969年にアポロ11号が降り立った場所と言われる。
人口は5000万を超える。
地球からの定期便もあり、もともと連邦よりの都市と見られていた。
ただし、ジオンはすでに月の裏側にグラナダという恒久月面都市があり、ここを軍事拠点として制圧する必要性を感じなかった。
もちろん、フォン・ブラウン市側の立ち回りの巧さもある。
その地下深く。
大都市である以上、繁華街はあり、その中には酒を飲ませる店も多数存在する。
なかには酒場のふりをしながら酒以外のもの。例えば情報を売る店もあるのだ。
キャラ・スーンは椅子に浅く腰かけ、整った顔に不敵な笑みを浮かべていた。
隣の隣の席に座るのは禿頭にサングラスの大男だ。
「……おまえが連絡をしてきたジオンの女か。俺に何を求める?」
バスクの開口一番は疑念と威圧。
だがキャラは怯むどころか挑発を返す。
「求める? 舐めないでちょうだい。私たちが求めているのは、力をどう使うかを話し合う相手よ。ジオン公国は勝者の座に収まっているが、その椅子に座ってるのは――アルテイシアという娘だ」
バスクの眉が跳ね上がる。
「アルテイシア……そうか、確かにイオマグヌッソ事変で、ギレン・ザビ、キシリア・ザビが相次いで亡くなっている。
アクシズにとっては寝耳に水。知らぬ間にザビ家ではなく、ポッと出のダイクン家を名乗る女が“公王”か。実に滑稽だな。」
「滑稽? 笑い事じゃないわ」
そう言いながらもキャラ・スーンのしゃがれた声は笑いを含んでいる。
「正統なる後継者は誰?──アクシズのミネバ・ラオ・ザビよ。当然でしょ? それを踏み潰して女傑気取りのアルテイシアが君臨している。兵も民も不満を溜め込むばかり。……その爆ぜる寸前の空気を、私たちは利用する」
バスクはふん、と鼻を鳴らした。
「なるほど。それで俺に泣きついてきた、と?」
キャラは身を乗り出す。
「違うわ。――あんた達が“デラーズの残党”と水面下で手を組もうとしているの、私は知ってる。バスク・オム。連邦軍教導部隊ティターンズがジオンの影を借りねば動けなくなるほど落ちぶれて」
一瞬の沈黙。
「でもまだ牙を研ぐのを忘れてはいないところは褒めてあげる。」
バスクの口角が上がる。
「……小娘のくせに、鼻が利くな。ああ、俺はギレンの亡霊どもと接触している。奴らもアルテイシア政権を認めていない。だが、それがどうした?
貴様らアクシズとは立場が違う。口を挟める筋合いはない」
「筋合いなんてどうでもいいのよ」
キャラは声を張り上げる。
「問題は、誰が“アルテイシアを倒したあと”の旗を持つか。ミネバの名を掲げる私たちだけが、ジオンの兵も民も納得させられる旗を振れる!」
バスクはその言葉にしばし沈黙した。思考の熱がその厚い額の皺を深く刻んでいく。
やがて低い声で問うた。
「……つまり、お前たちは正統を持ち出して、アルテイシア政権を倒したあとの主導権を狙う。俺やデラーズにとっては、悪くない“看板”だ。だが同時に、危険な毒にもなる」
「毒の一滴がなきゃ、酒は酔えないでしょう?」
キャラはあざとく笑う。彼女にとって大胆な物言いは息をするようなものだった。
「私はただの兵士じゃない。本国ジオンに抱く失望を、そのまま言葉にしてやる。だから兵士たちは信じる。アルテイシアの似非政権に未来はない、ってね」
「……ふむ」
バスクの口角がぴくりと動いた。
「いいだろう。聞くに値する野心だ」
だが次に目を光らせるのは彼だ。
「問題は、それは結局は“裏切り”だ。お前たちはザビ家正統だのなんだのと唱えてはいるが、結局は自分の権力のために動くのだろう。ミネバを旗にするそれもまた方便だ。
デラーズにはデラーズの意図があるはずだ。
ジオンは、相変わらず安定はしない。」
「それはティターンズにとってはよいことだろう。」
キャラは吐き捨てるように答える。
「お互いに……欲しいのは主導権だろ。あんたらは連邦軍内。わたしたちはジオン公国内部での主導権。旗は道具。正統性っていう建前を武器にして、実際に兵を動かせればそれでいい。……あんた達も同じでしょ?
そのあとは当然、敵同士に戻る。当然よね。」
だがバスクは嗤った。
静かなバーの中でその声はいやに響いた。
「そこまでわかっているのならいい。
愉快だ! ――そうだ、その通りだ。あるいは俺も連邦もとっくに死んでいて残った“復讐心”だけで動いているのかもしれない。ならば、正統だの理想だの振りかざして兵を集めるお前たちと、勝利のためになら何でも噛みつく俺と、どれほど違うというのか」
「違うのは……誰の旗が最後に残るか、だけでしょ」
キャラの紅い唇に、不敵な笑みが滲む。
「いいだろう」
バスクは大きく頷いた。
「デラーズの連中と進めている計画に、お前の名を加えてやる。ただし警告しておく。俺を裏切れば、ティターンズの残兵を使ってでも焼き払う」
「脅しは聞き飽きたわ、オッサン」
キャラは椅子から立ち上がった。
「私が裏切る時はね、勝ったあとよ。つまり、今裏切られる心配はない。
で、なにをするの? いつやるの?」
堂々とした虚勢。激情の炎が彼女の姿を大きく見せる。バスクはしばらく沈黙し、そして口を大きく歪めて笑った。
「……そうだな。ひと月のうちには決行する。アクシズはまだ地球圏には到達する前になるが」
「先遣艦隊が発進している。ひと月あれば充分よ。」
キャラとバスクの笑い声が交錯した。それは同盟の成立を意味するものではない。むしろ、互いを利用し尽くすための狼の遠吠えに等しかった。
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艦橋に足を踏み入れた瞬間、マシュマー・セロは背筋を伸ばした。
ギレンの亡霊――ジオン本国軍以上の戦力を誇ったギレンの総帥親衛艦隊。その残党艦隊、デラーズ・フリート旗艦である。
壁にはジオン公国軍の紋章とギレン総帥の肖像画が掲げられ、艦橋を取り仕切るクルーはみな親衛隊の制服を着ていた。抑えきれぬ怨念と信奉。その全てがこの空間を重苦しく染め上げていた。
艦橋中央に立つのは、猛禽の目をした壮年の男――エギーユ・デラーズである。
その目は炎のように濁らず、だが怨嗟を湛えた深淵さを放っていた。
「……ほう。アクシズから使いが来るとはな」
低く、しかし雷鳴のような響きを持った声。
その前に立ち、マシュマーは正礼を取り、胸を張って答えた。
「マシュマー・セロ。我らアクシズは、ミネバ・ラオ・ザビ様の御名に忠誠を誓う者です! 本国を名乗るアルテイシア政権の簒奪を、座して見過ごすことはできません!」
艦橋に声が朗々と響く。若き将校の誇りと炎は、場を満たす怨念と衝撃の音を立ててぶつかり合った。
デラーズは椅子に沈み、長い沈黙を落としたままマシュマーを眺めている。
その背後の将兵たちはくぐもった笑いを押し殺し、「血気にはやる若造だ」と目を細める者もいれば、「清廉に過ぎて危うい」と囁く者もいた。
やがてデラーズが立ち上がる。
その歩みは重々しく、マシュマーの目の前で止まるとその肩に手を置いた。
「……純粋だな。見上げた忠義よ、マシュマー・セロ。我らもまたザビ家こそがジオンの正統と信じるものだ。
だが問おう。おまえは我らが進めようとしている計画を理解しているのか。」
マシュマーはとまどったように言った。
「いえ、さすがにこの戦力ではいますぐにズムシティに進軍して正統ジオンの旗を掲げるには戦力不足かと。」
艦橋にざわめきが広がる。兵たちが振り返り、若造の口にした言葉が空気を切り裂いた。
だがマシュマーの瞳には曇りがなく、恐怖の色も浮かんではいなかった。
「……そのためにアクシズを売り込みに来たのではなかったのか?」
デラーズの問いは静かで、しかし心を刺す。
「残念ながらアクシズは小惑星です。独自のモビルスーツや艦艇はありますが、数ではジオン本国に劣るでしょう。なにより同軍が、相打つことでこれ以上戦力を減らすのは得策ではありません!」
マシュマーは声を張る。
「戦場とは命を捨てる場です。ましてやジオンの正義を取り戻すための業火なら、私の命など惜しくはありません!
ですがそのために同胞の血を流すのは」
その言葉に、老将の眼差しが深く揺れた。
怨念と憎悪を糧にしてきたデラーズにとって、この若者の潔癖な忠義は異質であり、同時に懐かしいものだった。
「……我々も同じ意見だ。」
デラーズは頷いた。
「だからこそ、表立ってアルテイシア政権に反旗をひるがえすことなく、地道に連邦のモビルスーツ開発や衛星軌道上への戦力投入などを阻止する活動を続けてきた。」
「すばらしい! その志は受け継がれ、ミネバ様を未来に導く礎となるはず。」
「だが、残念ながらジオン本国でも我々への支持は好転しない……」
デラーズは微笑した。
「よかろう、それならそれで我らはもっと、大きな示威行動を行うしかない。
先の大戦でジオンの悲願であったジャブローの解体。それを我々がやってみせよう。」
マシュマーは目を輝かせ、胸を叩き、朗々と答えた。
「はい! ミネバ様のためなら、幾千の屍を越えてでも剣を振るいます!」
アクシズの現在に勢力。
巡洋艦エンドラ一隻。搭載モビルスーツ、ガザC三機。
なんかすごい戦力ありそうですが、ティターンズもデラーズ・フリートもころっとだまされております。