第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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用意された2基のコロニー。
デラーズの秘策は圧倒的物量のジオン公国軍に通じるのか。
そして、アーガマ艦隊から先行したソドンのまえに、デラーズ・フリートの前衛艦隊が立ちはだかる!!





第19話 星の屑〜発進

「マ・クベ!!」

 

災難なのはウラガンである。

乱入してきたシーマ・ガラハウに押しのけられた彼はあやうく転倒しかけた。

マ・クベの執務室は、古代の貴重な磁器がさりげなく、そこここに展示されている。

 

それらを破損させないように身体をひねって倒れ込んだために、左脚が妙な音をたてて、激痛が走った。

マ・クベは冷ややかな目で、痛みを押し殺したウラガンを一瞥した。

こんなところが人望のない理由なのだろう。

 

とはいえ、あとで見舞金を振り込んだりしてくれるのだが、とにかく「今すべきこと」を最優先にするのがこのマ・クベという上司だった。

 

 

「なにかな、シーマ・ガラハウ中佐。」

視線はデラーズ・フリートから投降したばかりの女傑を見ようともしない。

 

「私の艦隊も出撃させろ。」

 

「君たちは公王府直属となっている。私の管轄外だ。」

 

「ふざけるな。戦力は少しでも多いほうがいいはずだ。」

 

 

それは当然である。

戦力比としては、ジオン本国の艦隊は、デラーズ・フリートを大幅に上回ってはいるが、それでも損害を少なくするためには、数の優位は少しでも確保しておいた方がいい。

まして、シーマの海兵隊は精強をもって知られている。

 

「君たちが信用出来ないからだ。」

 

身も蓋もないことを言われて、さすがのシーマも黙り込んだ。

 

「裏切って投降してきたものなど、また裏切るかもしれん。そんな奴らと砲列をそろえて戦うことなどできないのでな。君たちはお留守番だ。」

そう言って、マ・クベはデスクのパネルをタップした。

「ウラガン少佐が負傷した。衛生兵を。」

 

「閣下、このくらいは」

 

「だろうな。処置が済んだらすぐに執務に戻れ。傷病休暇はデラーズのバカどもの処理が終わってからだ。」

 

フンと鼻をならして、マ・クベは、シーマを見つめた。

 

「それに今回は全軍で押し出せばいいと言うものでもなさそうだ。

改造済みのコロニーが2基あるらしいということを含めても、なにかデラーズ閣下が絡め手を仕掛けてくる可能性も大だ。

まあ、そのときには君たちにも活躍してもらうことになるが。」

 

いくぶん低い声で、この知将はぽつりと言った。

 

「だがそうなったら、この戦は負けだな。」

 

 

 

-------

 

 

 

「ただでさえ、少ない戦力を分散させてしまうのはいかがなものかと。」

生真面目そうな中尉はそう言った。

 

ソドン艦長ラシットは、その実直さを好ましく感じた。

とは言え、ここはジオン公国軍の強襲上陸艦ソドンの中で、彼は連邦軍の中尉である。

艦橋のクルーたちが白い目で睨む気持ちもわかるのだ。

 

「ブライト中尉。投降したシーマ艦隊からコロニーは2基あるとの情報が入っている。

いきなり全軍を投入するわけにはいかないのだ。」

 

「しかし」

ブライトは金髪の女性を見やる。

名前はアルテイシア・ソム・ダイクンといって、ジオンの元首である。

「失礼ながら、ソドン単艦での先行は、あまりにも危険では。」

 

これには傍らに控えたランバ・ラルも大きく頷いた。

 

「かまいません。」

短くアルテイシアは答えた。

「わたしがソドンに乗っていてなおかつそれに砲火を向ければ、それは明確にジオンへの反逆を意味します。そこまでの決意がデラーズにあるかどうか。一度問うて見る必要はあります。」

 

「御身はわたしが命にかえても御守りいたしましょう。」

タイトなボディスーツに身を包んだ赤毛の少女は、きっぱりとそう言った。

 

「まあ、大丈夫だよ。」

小柄な方の赤毛の少女は曖昧に言った。その影に隠れるようにしていた長い黒髪の少女が同意するように頷いた。

 

「ソドンに手を出すやつはひとり残らずブチ殺してやるから安心しな。」

浅黒い肌の男が猛獣の笑いを浮かべて言い切った。

 

「ヤザンさん。殺さずに出来るだけ相手を無力化してください。」

巻毛のパイロット__というより、実直な技術者のような佇まいの青年が言った。

 

そんなストレスのかかる戦い方があるか、と男が食って掛かるのを、まあまあと仮面に髭の怪しげな男が諌めた。

 

「なによりもソドンとアルテイシア様の安全を。次にご自身の安全を優先して下さい。その上で余力があれば無力化でもなんでもお好きなように。

エグザベ中尉もそれでよろしいですね。」

 

はい。

と若きジオンのパイロットは答えた。

 

アルテイシア・ソム・ダイクンは満足そうに微笑んだ。

 

「そして、これがわたしとキュベレイの初陣となるわけですが」

 

 

「絶対にダメです。」

 

艦橋の全員が。

ジオンも連邦も。

軍人も民間人も。

ニュータイプもオールドタイプも。

ブライトもハマーンもマチュもニャアンもヤザンもアムロもシャリア・ブルもエクザベも。

 

全員の心がひとつになった瞬間だった。

 

 

 

アルテイシア・ソム・ダイクン。

 

ジオンの最高権力者は、ぐるりと艦橋を見回した。

誰も味方がいないことに気がついた彼女は、デラーズ・フリートより先にこいつらを反逆罪で訴えようか真剣に考えたが、そんなことは出来るはずもなく。

 

「わかった。」

アルテイシアはため息をついた。

「ハマーン」

 

「はい、アルテイシア様。」

 

「キュベレイをあなたに託します。スペックはあなたが考えていた通りに仕上がっているはずです。ただし、モビルスーツの進化は想像以上に早い。

装甲やジェネレーターは、最新鋭機には劣る部分もあるかもしれません。」

 

「アルテイシア様!

キュベレイとはあのキュベレイなのですか!?」

 

「そうです。あなたが昔考えたニュータイプ用のモビルスーツ。わたし用に作ったモノですが、はっきり言って扱いにくいモノに出来上がっています。でもあなたなら」

 

「お任せください、アルテイシア様。」

ハマーンの瞳が燃え上がった。

「お預かりしたキュベレイ。必ず初陣を飾ってまいります。」

 

 

 

-------

 

 

 

「暗礁空域より、発進の艦隊を確認!

チベ級重巡洋艦1、ムサイ6。」

「よし、ミノフスキー粒子、戦闘濃度へ散布。主砲スタンバイ。モビルスーツ隊はどうか、ブライト中尉。」

「発進準備できてます。」

「よし。準備でき次第発進せよ。」

 

 

「あの」

オペレーター席に座ったコモリ少尉がおずおずと言った。

「ジークアクスがもう発進シークエンスに入ってます。」

 

 

 

 




えーと、チベとムサイ6隻だとモビルスーツは、20機くらいか。


うーん、ハマーンひとりで壊滅しそうな気がするな。
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