第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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いくらトリントン基地がガバガバの設定でも、完全部外者のクワトロが追跡に出動するなんてありえんでしょう!!
と書いてるものは思ったりするのですが、アニメになっちゃうとわりと勢いで見れたりするかもしれません。
金色の試作機がちょうど完成した設定はやめました。
GQは、サイコミュ以外のモビルスーツの開発は全体に正史より遅れ気味の設定なんで0085時点では早いかな、と思いました。


第13話 鼓動~ 出陣

「ドムは使えるんですか?」

 

コウの左腕はまだギプスで固定されていた。先日のテスト中のバイアランの落下事故によるものだ。

 

そうでなければ自分で出撃しただろう。

 

コクピットの相手は頷いた。

 

トリントンにその男が現れたのは初めてではない。

元連邦軍の大尉でクワトロ・バジーナと名乗っていた。

 

ジオンの本国。しかもそのかなりの上層部からの紹介で預かっているマチュとは以前からの知り合いらしい。

謎は多いがモビルスーツのことについては知識が深かった。

 

歳はコウより少し上。

だが違うのは実戦を経験していることだ。

ジオン、連邦のスタッフが混在するトリントンでは独立戦争時代のことについての話は半ばタブーになっていたが、クワトロ・バジーナにはいくつもの修羅場をくぐり抜けてきたものだけがもつ凄みがある。

 

見た目は、金髪の優男である。

物腰も柔らかいし、適度な気配りもできる。

だがそれが必要とあらば、平気で相手を裏切る。殺すことも厭わない。そんな怖さを内に秘めている。

 

「ではくれぐれも気をつけてお願いします。サイサリスの武器はビームサーベルとバルカンくらいです。なんとか足止めしてくれれば、いま用意させてるザクが追いつけます。

サイサリスのバズーカは」

 

「わかっている。地上では使えない武器だ。

だが、自爆覚悟ならば使うかもしれん。」

 

「注意してください。相手はソロモンの悪夢です。」

 

クワトロ大尉の唇が笑みの形に歪みなにかを言った。

コウが読唇術でもマスターしていればそこ唇が“ならばこちらは赤い彗星だ”とつぶやくのを読み取れたかもしれない。

 

コクピットが閉じる。

 

コウは急ぎ、ドムの巨体から離れた。

 

「クワトロ・バジーナ、ドム出る。」

 

 

 

トリントンは騒然としていた。

翌日に稼働テストを予定していた試作ガンダム2号機サイサリスをガトー少佐が持ち出した。

重力下での簡単な歩行のバランサーを見るだけのはずであったが、予定の時間になっても戻っては来なかった。

 

そもそもジオン公国のアナベル・ガトー少佐が、トリントン基地を訪問したのは、彼の属するデラーズ・フリートがエースパイロット用のカスタム機として、ガンダムタイプの試作1号機ゼフィランサスを希望したからである。

もともとジオンのネームドのエースであるガトーがなにかしでかすとは誰も思ってはいなかった。

 

ゼフィランサスの開発資金の出処は、地球連邦の過激派ジャミトフ准将の肝いりによるところが大きい。

 

そうして開発されたゼフィランサスをデラーズ・フリートが所望する。

 

ありえない事ではあったが、なんとジャミトフ准将が実質的に私兵化しつつあるティターンズはそれを承認した。

 

謀殺されたと噂されるギレン総帥のもと親衛隊長であり、グワジン級の戦艦や新鋭のゲルググを多数そなえたデラーズ准将麾下の艦隊は、再三のジオン本国への帰投命令にも関わらず、暗礁空域に居座っている。

それどころか、艦の整備やモビルスーツのメンテ、開発までできる浮きドッグを接収し、宙域を要塞化しつつある。

 

もちろん形式上は、正当なるジオンの跡継ぎであるアルテイシア体制に忠誠を誓っていて、あくまで自分たちは失われたア・バオア・クーにかわる宇宙における打撃戦力の中核として任務を遂行中なのだ。

 

そう主張しながらもデラーズ准将以下の中核メンバーは断固としてズムシティに帰投しようとはしなかった。

 

そのデラーズ・フリートとティターンズが裏で繋がっている、などということはあるのだろうか。

いやこれは意外に「ある。」。

 

そうニナはマチュとニャアンに力説した。

 

 

もともと戦争終結後のギレンにとって最大の敵は、地球連邦ではなく、キシリアだった。

そのキシリア暗殺のため、サイド6に地球連邦のモビルアーマーを持ち込ませたのがギレンであり、実行したのは、ジャミトフの腹心であるバスク・オムなのだ。

それは現在も続き、ギレン亡き後のギレン派と連邦のジャミトフ派はある種の蜜月関係

が持続しているのだ。

聞かされたマチュは無理やり笑顔をつくったが、かなり引きつったものになってしまったのは自分でもわかった。

ニャアンは見事な無表情である。

 

2人はまさにその現場に居合わせたのだ。

 

とは言え、そのときマチュは現金強盗。ニャアンはその身代わりでジークアクスに乗り込んでクランバトルに出てたり、ゼクノヴァがあったりと、まるで情報量過多のアニメでも見せられたような塩梅で、あとからああ、あれはそういうことだったんだと知ったような次第だった。

 

 

「でもじゃあなんでなんで予定してたゼフィランサスじゃなくてサイサリスを持ち出したのかな。」

マチュはもっともな疑問を持ち出した。

 

「わかるもんですか、あの人の考えてることなんて!」

ニナは吐き捨てるように言った。

 

 

 

ララァは浮かない顔である。

 

数奇な運命の果てに巡り会った相手が、試作モビルスーツが持ち逃げされたと聞いた途端に嬉々として(としかララァには見えなかった)追跡に飛び出してしまったのだ。

 

「まったく男の人というのは仕方ないものですね。」

ララァは、ニナを慰めるようにそう言った。

大佐は指導者とか政治家という前にモビルスーツパイロットなのだ。

おそらくはそこが一番輝く男なのだ。

「こんなときは女は待つしかありません。お互いに困った男を愛してしまったものだと諦めましょう。」

 

ニナは不承不承頷いたが、今度はマチュがへんな顔をした。

 

「え!? ニナさんってガトー少佐とそういう……ニンジンマンと付き合ってたんじゃなくって…」

 

 

「マチュ。いまゼフィランサスの換装をさせています。準備が出来次第、出撃を」

ニナがそう言い出したのは、ひょっとしたら話題を変えたかっただけかもしれない。

トリントン基地の防衛の主力はザクだ。あとは改修した軽キャノンが数機。いずれも先行するサイサリスには追いつけない。

 

ゼフィランサスはドムのように移動手段としてのホバリング機能はないが、重力下での軽快な移動を可能にするバーニヤは強化されている。

サイサリスよりもかなり移動は早いはずだ。

 

「ニナさん。大佐はマチュを戦争に巻き込みたくなくて自分が出撃しました。」

ララアは静かに言った。

 

「大佐?」

 

「大尉です。クワトロ・バジーナ大尉。」

ララァは言い直した。

「大尉はこの子に人を殺させたくないのです。戦争の道具にならないニュータイプは彼にとって光なのです。」

 

「なら、わたしが行くよ。」

ニャアンが手を挙げた。頭の上に乗ったみかん箱が脚を生やしたようなロボットも一緒に脚をあげた。

「わたしならもう」

 

 

「よしなよ、ニャアン。そいう意味じゃないって。」

マチュがきっぱりと言った。

「わたしは別に人を殺したくなんかない。

でも戦いはできるよ。

それにモビルスーツをとめればいいんでしょ。メインカメラを吹っ飛ばして片方の腕でも切り落としてやれば」

 

「それでも止まらないパイロットもいるのよ。」

ララァはため息をつきながら言った。

 

 

 




今回はちょっと短めですね。
勢いで「ソロモンの悪夢」vs「赤い彗星」なのですが、サイサリスって普通の戦闘、書きにくいですよね。
ちなみにガトーの向かってる先は、最寄りの宇宙港。
ここらはしっかり予定の行動で、サイサリスを積んで宇宙に戻るため、ザンジバル級が一隻。待機してたりします。
なぜふつうにゼフィランサスを受領して帰らなかったのかは、サイサリスの核バズーカが欲しかったからです。
宙域に展開した艦隊に大ダメージを与えられる核バズーカを使えば。たぶんズムシティごとアルテンシア派を抹殺できそうですもんね。
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