第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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束の間の休息をとる戦士たち。
ジオン本国艦隊は、デラーズ・フリートを挟撃すべく、
進撃を続ける。熟練の将コンスコンの胸によぎる不安とはなにか。
ラッキースケベアリのちょっとエッチな今回です。





第20話 強襲!阻止限界点~暗礁空域へ!

「敵の中心にグワジン級戦艦を確認、チベ2、ムサイ多数。」

「正確に数を知らせい。トクベル、アベル! 先行せよ。まずは敵の全容を明らかにする。

偵察にとどめて、無理に仕掛けるな。

モビルスーツ隊が出てくれば交戦は認める。」

「了解しました。第二艦隊はいかが致しましょう。」

「進路このまま、現在の速度なら二時間後には、デラーズ・フリートを挟撃出来る。

問題は……」

 

コンスコンは唇を舐めた。

緊張感は否応無しに高まる。

 

そう、問題はデンドロビウムだ。

 

ガンダム試作三号機。

その実態はモビルスーツに武器庫を背負わせた化け物だった。

前回、グリーンノアでの戦いで、武器庫の部分は破壊したが、中核となるモビルスーツとなによりもパイロットのアナベル・ガトーは討ち取り損ねている。

 

戦艦の主砲を凌ぐビーム砲。

戦艦を真っ二つに出来るロングビームサーベル。

実弾兵器では追い切れない加速力に、ビーム兵器を無効化するIフィールド。

考えれば考えるほど、よく出来た玩具だ。

 

あえて玩具と言ったのは現実問題として、強化人間かニュータイプでもない限り運用が難しいからだ。

化け物には化け物で。

 

こちらも似たようなコンセプトで作られたモビルアーマー、ノイエ・ジールを用意していたのだが、強化したパイロットの精神になにかあったのだろう。

命令を無視して、暗礁空域にむけて突っ込んで行ってしまった。

現在は通信もロスト。

コンスコンは別に人道主義者ではなかったが、軍や一部の研究者がすすめる強化人間という考えには疑問を感じざるを得ない。

 

軍の兵站というのはそれはそれは大変なものなのだ。

武器弾薬はもちろん水や食糧、武器は使えば攻撃を受けなくても損耗する。

そこにさらに兵站物質として強化人間のための特殊な薬物が加わるのだと考えると、胃が痛くなってくる。

 

コンスコン隊のモビルスーツは、あえてビームライフルではなく、実弾のマシンガンを持たせている。

これでデンドロビウムを初めとするデラーズ・フリートのモビルスーツ群に対抗しつつ、艦隊による砲撃戦でカタをつけるつもりだった。

 

「デラーズ・フリートの様子は?」

 

「進路変更なし! こちらの思うつぼです。」

 

コンスコンは臆病ものだ。

たとえ、勝ち筋にはいっても戦局を読むのを決してやめることはない。

 

「すでにデラーズ・フリートも第二艦隊を捕捉しているはずだ。」

 

コンスコンは唇を噛む。

 

「ならば動くはずだ。どちらかを突破するか、あるいはコロニーを加速させる。あるいは。

いや、なにか見落としている、なにか……なにかを。」

 

コンスコンの第一艦隊(規模は第二艦隊の方がはるかに大きかったが、総司令官であるコンスコンがいる以上、こちらが『第一』艦隊だ!)、別方向からデラーズ・フリートに迫る第二艦隊。

もともとデンドロビウムという不安定要素が無ければ、第一艦隊だけでも充分な戦力だったのだ――それを。

 

ん?

コンスコンは顔をしかめた。

 

この航路をとると、第一、第二艦隊が一直線上に並ぶ瞬間がある。

だがそれはデラーズ・フリートから見て、ではなく、彼らがいままで根城にしていた暗礁空域から見て、であり、今後の戦線に影響はないはずだった。

 

---------------

 

 

「気分はどうだ、ハマーン。」

うっかりノックをせずに部屋をあけたクワトロは絶句した。

ハマーンは全裸だった。

 

背はすらりと高い。

バイロットらしく引き締まった四肢をしていた。

 

普通なら叫びだすところだろうが、顔を強ばらせながらもハマーンはニヤリと笑ってみせた。

 

「もう大丈夫だよ、婚約者殿。」

「それは、マハラジャ・カーンが勝手に言い出したことで」

「ほう? ではわたしはいま、婚約者でもない男に裸体を晒している、ということか?

ずいぶんと残酷なことを言ってくれる。」

 

クワトロは部屋に掛けてあったタオルを放った。

 

別にハマーンは自室では全裸を過ごすタイプではない。

濡れた髪が額に張り付いている。

 

シャワーを浴びていたところに、クワトロが乱入してしまったらしい。

 

タオルを巻き付けると、ハマーンは手で早く出ていけ、と告げた。

クワトロが言われた通りにすると、ドアが閉まる直前に

 

「ぎゃああああっ!!みられたあっっ!!」

という悲鳴が半分だけ聞こえた。

 

 

再びドアが開くには5分もかからなかった。

あのタイツのような衣服に、乾かした髪は毛先が肩の当たりで跳ねている。

 

「戦況に変化は?」

冷徹ともいえる視線で、クワトロを睨みながらハマーンは言った。

 

「デラーズ・フリートの本隊らしき艦隊をキャッチしている。」

「間違いないのか?」

「想定されるほぼ、全軍、プラスコロニーを引き連れている。間違いないだろう。」

「キュベレイの修理は?」

「ファンネルユニットは交換した。補修も済んでいる。」

「わかった。ならば反逆者狩りと行くか。今度は醜態は見せぬ。婚約者殿。」

 

いい加減に話しておいた方がいいだろう。

クワトロは決意した。

「ハマーン……こんなときに言うのもなんだが、私は地球に想い人を残しているのだ。」

 

ほう?

と、その目が光り、口元が残忍そうな笑に釣り上がった。

 

「それなら、わたしとそいつ、どちらを選ぶかだな。そいつはニュータイプなのか?」

「……まあ、そうだな。」

「ならばモビルスーツ戦で勝負を決めようじゃないか。」

 

ララァにモビルスーツ?

 

「いや、彼女は戦いを好むタイプではない。」

「シャア・アズナブル。あなたは誤解している。わたしも好きこのんで戦いをしたいわけではない。」

ぐっと握った拳をクワトロの前に突き出す。

「欲しいものを手に入れる手段をほかに知らないだけだ。」

 

 

-------------

 

 

「ニャアンは……その、いろいろ無理をしてるから。」

マチュとアムロは、ソドンの食堂にいる。

トレイにベタベタと張り付いたペースト状の食事をとり、これも栄養バランスだけを考えたドロリとした飲み物をとる。

たぶん――1時間のうちにはまた出撃するのだろう。

十代の少年だったら不満のひとつも漏らすのだが、この間にも機体のメンテをしてくれているはずのメカニックのことを考えるととてもそんな気分にはならない。

 

「マチュたちはイオマグヌッソにいたんだね…」

「うん。いた。」

 

マチュはペースト食を無理やり流し込んでいる。彼女自身はサイド6の出身らしい。

とすれば、直接戦火の被害を受けることはなかったはずだし、どうも言動の節々にけっこう経済的には恵まれた家庭で育ったように思える。

ニャアンは難民で。

一緒にポメラニアンズのアンキーのもとでクランバトルに参加していた、と。

 

「天パもアンキー絡みだったなんてね。奇遇……だよね。」

「マチュのいたころと違って、アンキーさんはけっこうな大物なんだよ。」

 

アムロは、ペースト食をドロドロで流し込みながら言った。

 

「サイド6のクラバはほとんどアンキーさんが仕切っていたからね。

ぼくを“白い悪魔”呼ばわりし始めたのも彼女なんだ。」

「あの――アンキーが」

 

マチュのいたころのアンキーのクランは払い下げのザクを1機で勝ったり負けたり。

もちろん、クラバそのものも非合法だから、軍警察からも逃げ回っていた。

そこに、マチュが拾い物とはいえ、最新鋭のモビルスーツを持ち込んだものだから。

 

「どういわけか、ジークアクスは、わたしにしか操縦できなくってね。」

マチュはすこし誇らしげに胸をはった。

パイロットスーツは体のラインがくっきりとわかる。

誇らしげな部分から視線を逸らしながら、アムロは言った。

 

「ニャアンがイオマグヌッソを撃ったって。」

 

「ニャアンは一時期、キシリアのとこにいたのよ。イオマグヌッソを動かせる特別なサイコミュをもったジフレドはニャアンにしか扱えなくて。

でもニャアンはあくまでもアレはイオマグヌッソの稼働実験としか聞かされてなかったみたいよ。決められた数値をセットして、イオマグヌッソを動かす。その数値が、座標で結果がア・バオア・クーをゼクノヴァなんて思いもよらなかったんだ。」

 

マチュはうんと顔をしかめた。

 

「……ちなみにニャアンが入力するように言われてた数値はもうひとつあって。

わたしもそれ見たんだけど、どうもあれが座標だとすると目標はアレだよ。」

 

マチュはソドンの窓を指さした。

窓ではなく、実際にはモニターに外の空間を映し出して居るだけであったが。

 

そのに映るのは青く眠る水の星。

 

「場所的にはジャブローだったみたいだけどね。ア・バオア・クーと同じ質量を消滅させたらコロニー落とした以上の破壊が起こったと思うよ。」

 

「このことを知ってるのは?」

 

「シャアさんとヒゲマン。だからジオンの上層部はわかってるんじゃないのかなあ。」

 

「ちょっと聞きたいんだけど。」

 

「あんまりキツいことはヤだよ。わたしだって、あそこでは大事なものを守って大事なひとを失ってるんだから。」

 

この天真爛漫な火薬のような少女にもそういう体験があったのか!

意外に感じつつ、アムロは尋ねた。

 

「ニャアンがキシリアから任されたジフレドはどうなったんだ?」

 

「……でっかいガンダムに握りつぶされた。」

 

「でっかいガンダム?」

 

「そだよ。天パの『ガンダム』にそっくりの。シュウジが『向こう側』から呼んだんだ。わたしとニャアンが二人で相手をしてたら大きくなった。」

 

なにかの猥談かと思ったが、赤毛の少女にそんな意図はまるで無さそうだった。

 

「でもニャアンは脱出できて。ソドンが救助してくれた。

わたしとニャアンはヒゲマンにトリントンのテストパイロットの仕事をもらって。」

 

「握りつぶされたジフレドの機体は?」

 

「それはわからないよ。完全に爆散はしてなかったけど。」

 

「アンキーさんたちはあの空域で、モビルスーツの残骸から、サイコミュとビット兵器を回収してるんだ。それを唯一もっていたゾックに搭載してるんだ。」

 

マチュの目が大きく見開かれた。

 

「それって、あの……」

 

「そうだよ。いまニャアンの乗っているゾックだ。」

 

 

---------------

 

 

 

「作戦そのものは順調であります、准将閣下。」

モニター越しにドレンは敬礼をした。

「デラーズ本隊は、コンスコン閣下の艦隊が数倍の戦力でこれを殲滅いたします。

我々は、保険として、空になった暗礁空域『茨の巣』へと侵攻し、やつらの逃げ場を断ちます。」

 

「心配が無さすぎるのがかえって心配、と言うところだ。」

ブレックスはヘンケン艦長にそう言った。

 

「ハマーン、体調は大丈夫か?」

ブリッジに入ってきたハマーン・カーンにヘンケンが声をかけた。

「ファンネルラックの不調の原因はアストナージが見つけ出した。次からはあんな事故は起こらないはずだ。」

 

「それはありがたい。」

ハマーンはつかつかとブリッジの真ん中まで出ると、モニターのドレンを睨む。

「暗礁空域に侵攻すると言っていたな。」

 

「ああ。」

マハラジャ・カーンの娘だと聞いているからあまり無下な扱いも出来ない。

「それはその通りです。」

 

「ならば早速、作戦行動に移ろう。

わたしとシャ……クワトロ大尉をM.A.Vで出撃させてくれ。」

 

「それはまたどういう……」

 

「クワトロ大尉は地上にいい仲の女性がいるらしい。

婚約者としては格の違いを見せつけてやらねばな。」

 

ドレンは誰かこの田舎育ちのお嬢さんにモビルスーツ戦におけるM.A.V.の意味を説明してやってくれ、と願ったが、ソドンのクルーたちは一様にそっぽを向いていた。

 

 

 




ガトーさんのことを忘れてる訳ではなくて、彼は核ミサイル満載のデンドロビウム内で待機中です。
デラーズさんの合図で、ソーラーシステムを薙ぎ払うように言われてる。

のですけどもお。
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