短めにおわらせますね。
なんとなく書いてみたくなりました。
一応、デラーズ紛争の間、ほかでなにがおこっていたのかもさらっと触れたいです。
グリーンノアはコロニーそのものがほぼ丸ごと研究施設である。
かといって、出入りが厳重かと言われるとそうでもない。
昨今のモビルスーツ開発技術の加速は、ひとつの研究施設、あるいは研究課題に複数の資金が流れ込むのが通常である。
ジオン、連邦あるいはアナハイム・エレクトロニクス、ジオニックなどのメジャーどころは有望な施設ならば必ずスポンサーに名を連ねている。
人手も足りない。
優秀な技術者は引っ張りだこであり、名のある研究者などは三顧の礼をもって迎えられる。
少し前まではそこまででもなかったのだが、現在このグリーンノアに所属しているテム・レイ博士の成功が、拍車をかけた形だ。
なにしろ、着任早々に、ガンダムマークⅡ、さらには変形機構をそなえたまったくの新基軸“百式”を開発し、さらに、すぐさま実戦において高い成果をあげてみせたのである。
(実際にはガンダムマークⅡはテム・レイとは違う開発チームの手によるものであり、百式はもとの設計書は、彼のチームに所属するナガノによるものであった)
それにしても試作機ロールアウトの直後に、そんなに都合よく、実戦テストにちょうどいいシチュエーションなどあるものだろうか。
しかも相手は、これまでの新鋭標準機であるゲルググと、さらに新型開発についてはもっとも先行していたと評価を受けていたトリントンとアナハイムの試作ガンダムであり、それをテム・レイ博士の旧型と新型が圧倒するという実に分かりやすい見せ場までつくって…。
やらせだ!
と、一部の識者は断言した。
戦闘のわりに死者の数があまりにも少なかったという事実がそれに拍車をかけた。
これは根強い噂となってネットに広まったが、
そうなると、もう「そう」としか言えないガセも真偽定かならぬまま、広まってくる。
曰く。
テム・レイ博士が半年まえに開発した“ガンダム”タイプの試作機であり、この戦闘でも優秀さを現した『ガンダム』のパイロットは、博士の一人息子のアムロ・レイである。
ちょうど、ジオンの元首であるアルテイシア姫がこのときテストパイロットと偽ってグリーンノアに滞在していた。
実質的に新型モビルスーツのテストやお披露目会場となっているクランバトル。その大立者、クワトロ・バジーナもこの場に居合わせている。
いや、アムロってたしかクラバの選手だぞ!?
サイド6のクラバじゃ無敵だぞ!
てもあそこを仕切ってるのは「ポメラニアンズ」っていうクランで……
情弱キタワァ━━━━━━(n’∀’)η━━━━━━ !!!! いまはアムロはネオ香港のクラバに所属しているぞ!
ネオ香港って、オーナーはクワトロじゃね?
つながった!! すべてつながった!!!
というふうに思い込んだ一部ネット民は、デラーズ・フリートの決起もティターンズによるソーラーシステムの占拠も、なにもかも新型モビルスーツの開発テストとその宣伝のための陰謀と思い込んだのであるが…。
それはある意味幸せな考え方だったのかもしれない。
さて、そう言ったわけで、グリーンノアは比較的出入りは自由である。
とくにパイロットや技術者、研究者といった者たちはどんどん人数が増えてることもあり、それっぽく見えるものが、保安部に誰何されることなどまずありえない。
それにしたって限度というものがある。
テム・レイは、“百式”の強化パターンについていくつかのアイデアを持ち寄ったあと、ひとり研究室にこもった。
なんどか書いたように彼は悪い人ではないし、性格も温厚な部類だ。だが、こと研究に関しては、没頭してしまうと家庭までも顧みなくなってしまう一面がたしかにあり、妻とは別居状態。
自分の手元に引き取ったアムロも、当時サイド7でお隣りだったボゥ家がなにかと面倒を見てくれていなければかなり悲惨なことになった可能性が高い。
なので、彼がひとりでなにかに没頭し始めたときは誰も声をかけないのは、彼のチームの不文律となっていた。
女は。
白衣の裾を翻してさっそうと歩く。
いかにも研究者然とした彼女は、誰にも見咎められることなく、テム・レイの工房に進入した。
いや何人からの警備員ははっきり彼女を見ていたのだが、あまりにも自信たっぷりな態度と、自信過剰な胸の膨らみに気を取られて、まったく声を掛けられなかった。
女は、ドアを開いてから、ノックをした。
「テム。テム・レイ先生。」
嫌そうな顔をしてテム・レイは振り向いた。
部屋は彼が集中するときの癖で薄暗くしてある。
廊下は明るいので、女の顔は逆光になり、陰に沈んでいた。
「誰かね?」
「ふうん。それが“百式”の武装強化型ね?」
「ムーバブルフレームは設計し直した。
フランクリンのご子息がいいアイデアを出してくれた。
」
テム・レイはモニターに映る画像を、女が見やすくするために少し身体をずらした。
「単独での大気圏突入ならびに大気圏内での飛行も可能になっている。
型式番号も新しくしている。MSZ-006だ。内々では“ゼータ”と呼んでいる。」
「取り回しが難しそうね!」
女は身を乗り出した。
メガネがキラリと光る。
「トップエースか…ニュータイプでないと操縦は難しそう。」
「コストの面でもそうそう大量生産できる機体にはなるまい。たしかにご指摘の通り、特別なパイロットのためになるだろう…
ところで、きみは?」
あら、ご挨拶が遅れて。
と、女は笑った。
「その特別なパイロットの開発をやってるものよ。名前はゼロ・ムラサメ。」
少しだけ続きます。