第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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もともと一話で終わりのつもりだったので、「短編」の連作みたいなへんな感じの連載になっております。
ハーメルン使うのは初めてでしたので!!

さて、ゲーム以外ではわりと珍しいガトー対シャアです。ガトーの目的は核弾頭装備の試作モビルスーツをデラーズ・フリートに持ち帰ること。
クワトロ•バジーナこと我らのシャア大佐をこれを阻止する側です。


第13話 鼓動~対決1

ドムは荒涼とした大地をすべるように移動していく。

重力下でのモビルスーツの操作は、経験がないわけではないが、あの「歩く」という動作はなんとも効率が悪い。

一時はかなりの面積を支配下においたジオンではあったが、戦地から戦地へ。

それなりの距離のあるモビルスーツの移動には輸送機や陸戦艇を使うしか無かった。

 

地上における戦闘でもモビルスーツの優位性は充分確保できていたにも関わらず、ジオンの侵攻は一定のところでストップし、しばらくの消耗戦ののち、オデッサをはじめとするいくつかの地域からは撤退せざるを得なかったのである。

 

クワトロは。

この新しいモビルスーツの乗り心地に満足していた。

そもそもザクの後継機として、開発が進んでいたドムには乗ったことはあった。

だが装甲を厚いものにしたドムは、その重装甲をビーム兵器のまえでは活かしきれず、本格的な量産に入る前に、連邦の技術を導入したゲルググが作られることになった。

 

これはそのドムの推進装置である熱核ロケットを熱核ジェットに換装した機体であった。

 

モビルスーツを重力下で飛翔させるというのは技術者の夢ではあったが、飛行というものと人型は相性が悪く、クワトロの知る限り、試験機がいくつか作られた程度である。

それも移動するための飛行というよりは、戦闘時の行動バリエーションをあげる程度の効果しかなかったはずだった。

 

このドムは飛行を諦め、その推力をホバー走行することに注力した。

 

思い切りのよい決断だった。

おかげで、道行は極めて楽だった。

 

識別用のビーコンは切られてしまっているが、モビルスーツほどの巨体が動いたあとはそれなりの痕跡は残る。

それを辿ることは、クワトロにとっては難しいことではない。

 

ゼフィランサスにサイサリス。

次世代のモビルスーツとしての新しいガンダムか。

 

それはクワトロの中の少年の心をくすぐるものがたしかにあった。

 

 

 

アナベル・ガトーは厳しい顔で、パネルの中の光点が近づいてくるのを睨んだ。

 

独立戦争の英雄のひとりとして名高い彼ではあったが己の存在に満足してはいない。

それはソロモンでの戦いで尊敬する上官であるドズル中将を討死させてしまったことが大きいのだろう。

 

……このサイサリスの機動性は悪くなかった。

事前に手元に届いたスペック通り、いやそれ以上の性能だ。

 

モビルスーツがその上にさらに鎧を着込んだような重装甲。巨大な盾。

特殊砲弾を発射する。ただその目的だけのために作られたバズーカ。 それらをひっくるめてもこのモビルスーツは高度な機動性を保っている。

 

問題はこの井戸の底にいるような圧迫感だった。

コロニー内部とは違って飛び上がってもそれは軽減されない。

 

この底なし沼にひきまれるような重さこそが重力なのだろう。

 

それでも。

 

ザクを歩かせるよりは、かなりすばやくガトーはここまでやって来た。

 

海路による物資の搬出入がメインとなるトリントンには移動のための陸戦艇は数機しか置かれていない。

基本ホバーで移動するそれらはガトーが目指す廃棄された宇宙空港には小高い山々をぐるりと迂回しなければならない。

つまりガトーを追えるのは、これも中途半端な航空戦力しかない。

ないはずであった。

 

だが追っ手のモビルスーツだろう高熱源体は、サイサリスの移動速度をはるかに超えている。

重力下でそんな高速移動をさせれば――もし可能だったとしても膝のジョイントが目的地に着く前に破損するだろう。

「人型」であるモビルスーツは人体の構造上の弱点も一部受け継いでしまっているのだ。

 

ならば。

 

“ホバリング移動か!”

 

ガトーはうめいた。早々にゲルググに取って代わられたドムを払い下げてもらって、トリントンでそのように改修している、という話は聞いていた。

だが、実用段階には入っていないはずである。

 

 

接近する高熱源体は1機のみ。

ならば試作機か効果を確認するための実験機なのだろう。

 

“1機だけならやりようがある。”

 

ガトーは岩陰にサイサリスを停めた。

屈むようにして身を潜める。

 

トリントンの偵察機の姿は見えない。

つまり、ここで追跡するモビルスーツを討ち取ってしまえば、十分な時間を稼ぐことができる。

 

目指す廃棄された宇宙空港は設備は活きているものの、モビルスーツを載せられるようなシャトルは1機もない。

だからトリントンの警備隊は、ガトーがどこに向かっているのかはわからないはずだった。

 

だが今回は到着時間に合わせて迎えが来ることになっている。

 

大気圏内への突入と再脱出が可能な希少なザンジバル級巡洋艦リリー・マルレーン。

(理想はミノフスキークラフトを備えたペガサス級なのだろうが、デラーズの艦隊には配備されていなかった。)

 

ガトーは操縦桿から手を離し、持ち込んだ飲み物をひと口飲んだ。

無重力下の癖で、空中にボトルを置こうとしたため、大半は零れてしまっている。

 

サイサリスの武器をもう一度チェックする。

バズーカ。

これは使えない。

威力が大きすぎて、撃ったこちらまで巻き込まれてしまう。

頭部バルカン。

味方のまつ空港まではあと一歩だ。

弾切れを気にせずに使えるのはありがたいが、相手がモビルスーツならば決定打にはなるまい。

 

すると使えるのはビームサーベルのみか。

 

追っ手がドムの改修機であるのなら

その主兵装はバズーカのはずだった。

実質的に射撃武器のないサイサリスは圧倒的に不利であったが。

 

やれる。

ガトーの唇に野太い笑みが浮かんだ。

 

誰が相手であろうと1対1で遅れをとる相手がそうそういるとは思えなかった。

 

自分の中に芽生えた微かな高揚感をガトーは笑う。

この任務をガトーは必ずしも好んではいなかった。

ゼフィランサスを受領すると称して、サイサリスを強奪する。

ゼフィランサスまでは単に高機能なモビルスーツを陣営に加えるということで言い訳はたつだろう。

だがこの試作機は目的がはっきりしている。

拠点目標への強襲。

それがどこかはデラーズは明言しなかったが、宙域に展開した艦隊に大打撃を与えることを想定してつくられたモビルスーツである。たとえばだがズムシティに対して使用すれば。シェルターもクソもない。

即座に使うとはガトーも思ってはいなかった。だがデラーズ・フリートに対して新政権が強行手段に出ればそういう報復もできる、と。

政治的な駆け引きの一環ではあるのだろう。だが、それはガトーの好むところではない。

そして、その考えをデラーズに吹き込んだシーマ・ガラハウという女も。

 

追跡者のモビルスーツは目視が出来る距離に近づいた。

ドムだ。

光学的な拡大でもその姿ははっきり見えた。

 

外見的な変更はほとんど見られない。

ホバー用のジェットが積まれているくらいだろう。

ガトーも以前に使ったことのある機体だった。ガトーが使用したのはビームバズーカを装備したエース用のカスタマイズ機だったが、このドムは実弾のままの標準仕様のようだった。

 

 

これは――。

追跡者には気の毒な結果となるだろう。

サイサリスはその主武装である超戦略級の核攻撃からその身を守るための装甲を装備している。

ドムのバズーカ程度なら一発二発は盾が受け止めてくれる。

その瞬間に間合いを詰めて、ビームサーベルで相手を両断する。

 

ドムは、500メートル程度のところで停止した。

ホバリングによる機動性を活かしてそのまま攻撃をかけてくると踏んでいたガトーには少し意外だった。

 

「ガトー少佐。」

 

通常の通信回線を通じて聞こえた声は、若い男のものだった。

「わたしはクワトロ・バジーナだ。

トリントンの守備隊から、お散歩中に道に迷ったあなたを連れ戻すように頼まれている。」

声は落ち着いている。

 

以前に聞いたことがあるような気がして、ガトーは首を傾げた。

あるいは昨日、ガトーの到着を祝って開かれたパーティの席にいたメンバーのひとりかもしれない。

 

それは――

けっこう楽しいひとときだったのだ。

 

ジオンの軍属や技術者はもちろん、彼を大歓迎してくれたが、連邦軍上がりのものたちも、アナハイムやジオニックといった民間の技術者たちもおっかなびっくり途中から加わり、パーティは大いに盛り上がったのだ。

 

「連邦」と「ザビ家」さえなくなればスペースノイドとアースノイドの融和は可能なのではないか。

ガトーほどの男にそう思わせる程度には。

 

「……思い出した。」

ガトーは言葉を返した。

「昨日会ったな。たしかネオホンコンで、クランバトルを主催しているという。元連邦軍の大尉だったな。」

 

そう。彼とはパーティの席上で短い時間ではあったが、モビルスーツ同士の戦闘について興味深い会話を交わしたのだ。

もう少し話をしたかったがそれ以上話せば、実際の戦闘経験にまで踏み込まざるを得ない。

ジオンのエースと(おそらくは)連邦軍のモビルスーツパイロットであったであろうクワトロとその話はとてもできなかった。

 

単騎で追跡してきた以上、彼もまた腕に自信のあるパイロットなのだろう。

ガトーは彼を殺したくはなかった。

 

「……わたしはあなたを殺したくはない。」

そう言ったのはクワトロの方だった。

「ジオンの英雄であり、武人として尊敬できる人物だ。

そのサイサリスがどういう機体か分かったうえで持ち出しているのか?」

 

「承知している。

トリントンが納得ずくでこれをデラーズ・フリートに提供したのなら、責任問題となるだろうが、わたしが勝手に持ち出したのならば、それは免れる。」

 

 

「そこまでわかっていて猿芝居に加担するのか!

“ソロモンの悪夢”とまで呼ばれた漢が!!」

 

「これ以上の問答は無用だ。」

ガトーは岩陰からサイサリスを出した。

「わたしもきみに恨みはない。だが大義のためだ!」

 

「人を殺すことが大義ならば、もう一度コロニーでも落としたらどうだ?

それともいっそ小惑星でも落とすか?

アクシズクラスの小惑星でも落とせば、地球は少なくとも数百年はひとの住めない環境にできる。」

 

ドムは。

そのバズーカを投げ捨てた。

ゆっくりと背のヒートサーベルを抜きはなつ。

 

「……なんのつもりだ?」

 

「あなたのバズーカは地上では使えない武器だ。わたしだけが射撃武器をもって戦うのはあまりにも不公平ではないかね?」

 

ガトーは痺れるような高揚感を感じた。

このクワトロ・バジーナというのは――漢だ。

 

ガトーもバズーカを外した。

巨大な砲身の重量がなくなった分、サイサリスの機動性は数倍になる。

 

「ならばここからは戦いで語り合おう。」

 

 




盛り上がるか!?
盛り上がってるかなあ。
自分、得意とするのは腹に一物あるおっさんたちの会話劇であってバトル描写は苦手だったりするのです。
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