第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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下手をすればコロニー落としによる大惨事。
コロニーレーザーによるジオン公国軍の半壊。
過激派のデラーズ・フリートとティターンズによる支配権の確立。
と、正史よりも悪い形で進行するところだったのが、ほとんど「裏」だけでかたがついて、表面上はなにもなく、宇宙は歴史を歩んでおります。
さて、ここらの説明のために、あれとこれを会話させたりしていると物語の進行が遅くなる。
今回はネオ香港事情を少し。





第21話 狐の時代~ネオ香港

アーガマのグリーンノアへの滞在は、しばらくかかることになっている。

なにしろ、最小限のテストもなしに実戦投入したマークⅡである。

回収されたデータを元に、改修すべき点は山ほどあった。

もともとネオ香港のクランバトルでメカニックをしていたアストナージは、ここでけっこう株をあげた。

フランクリン・ビダンからは高額のオファーがあったようだが、彼は今後「アーガマ」のクルーとして残ることを選んだ。

 

「引き止めたいとは思ったのだが。

アストナージのキャリアのためにも連邦軍テスト艦の技術職というのは悪くない。」

クワトロは、いったんアーガマを離れて、地上に戻るつもりでいる。

彼が使った百式も、地球の重力下でも単独飛行が出来るよう改修が進められている。

 

今後、ありうるのはティターンズによるテロ活動だったから、これは持つ価値が充分にある。

そして、百式のフライトテストなどについてはきちんと自分も関わるつもりでいるクワトロだった。

「あっちの方が強そう」

はその場のノリであって正しい手続きがわからないわけではない。たぶん。

 

「もう少し誇らしげになっていただいてもけっこうかと。」

通話の相手はデニムだった。

 

もともとジオンにいたときは、彼の部下である。

いまはネオ香港でのクランバトルの「支配人」という立場だ。

「あなたは地球を救った英雄ですぜ?」

 

「どっちにしろコロニーは落ちなかったさ。ソーラーシステムで温められて内部からボンだ。」

 

「計算上はね。それでもかなりの大きさの破片の落下はあるでしょうし。

ジオンの艦隊も大ダメージは免れなかったんじゃないですか?」

 

たしかに。

コロニーレーザーが。

あるいはデンドロビウムが予定通りの性能を発揮すれば。

ジオン艦艇の相当数が破壊されていた可能性はある。

とすれば、彼らは地球、ジオン双方に恩をうったことになるのだ。

 

「そちらは変わりはないか?」

 

「概ね、順調ですよ。パイロットのグッズ販売がなかなか好評でしてね。海賊版も出回ってるくらいです。」

 

「グッズ?」

 

「あのドゥーって強化人間ですよ。

トロワとフォウってのも加わって、美形揃いだ。この3人がけっこうファンがつきまして……」

 

「あまり大っぴらに宣伝して大丈夫なのか?

ドゥーは、たしか…」

 

「それについては解決です。」

解決、と言いながらデニムは顔をしかめている。

「というか、解決しているようです。

トロワ・ムラサメとフォウ・ムラサメを連れてきたムラサメ博士が」

 

「ムラサメが?」

 

「くわしくは戻られたときにお話ししますよ。ムラサメ研究所は、ドゥー、トロワ、フォウをクラバに出場させることを望んでいます。

どうもクランバトルは、機体性能だけではなく、強化人間の性能テストにも利用されることになったようです。

今日、オーガスタからも自分の所の強化人間をクラバに参加させたいという申し出がありました。」

 

「それと…ララァはどうしている?

先だって、ドゥーと一緒にクラバに出場した話はきいたが。」

 

「さすがに、だいぶ恐ろしかったようです。モビルスーツを提供した例のハイブランドショップは第2戦も要求してきましたが、断っていました。」

 

「そのまま、諦めてくれそうか?」

 

「一応は。

ブランドの方はテストパイロットは別に見つけたようです。ただ、M.A.V.をこちらから出してくれないか、と。

しかももともとの機体がサイコミュ搭載機になるのでM.A.V.もニュータイプかそれに準ずるものが、望ましいと。」

 

「…それはまたずいぶんな無理難題だな。結局ララァが欲しいのか?」

 

「ポメラニアンズを通じての依頼だったので単純に断ることもむずかしかったのですが」

そもそもアムロやマチュ、ニャアンはポメラニアンズの所属。ニャアンの使っているゾックもポメラニアンズの所有物である。

「幸いにも…といいますか、いまネオ香港のクラバには、ドゥーやトロワ、フォウという『ニュータイプに準ずる』パイロットがいるため、そこから一名を貸し出しております。」

 

「そうか…で肝心のララァは?

変わりはないのか。」

 

「ヴァーニとカンチャナが張り付いていますから、めったなことは出来ませんよ。まあ、自分もこのところ会ってはいませんが。」

 

マチュが聞いたら、またヤな顔をしたかもしれない。

カンチャナは、マチュとララァをカバスの館から逃がそうと火付けをしたことがあったのだ。

 

「そうか……昨夜、久しぶりにメッセージを送ったが、見てはくれているのだが、返信がないようで。」

 

「なら、自分が直接連絡をとってみます。」

デニムが、安請け合いをした。

 

 

 

「まだお休みになってます。」

ホログラムのカンチャナは、無表情だ。

同僚のヴァーニはともかく、カンチャナは成人男性をすべて潜在敵と見なしているようなふしがある。

 

「体調でも悪いのか?」

 

「いえ…昨晩、“大佐”から『久しぶり』のメッセージを受け取って、舞い上がってだいぶワインがすすんでしまって…」

 

「変わりなければけっこうだ。」

デニムは言った。

カンチャナのこの態度は、彼女にとっては平常運転であって、本当に警戒した相手にはこの上ない愛想笑いを浮かべる。

そう思えばこれでもだいぶ、マシになったのだ。

 

起きたら“大佐”に返信を入れてもらうよう伝えてくれ、と言い残してデニムは通信を切った。

 

 

 

カンチャナは、完全に通話が切れたのを確認してから、そろそろとララァの寝室に覗きに行った。

布団はもぞもぞと動いている。

 

「お姉さま…」

という声に、カンチャナは容赦なく布団をはいだ。

 

ヴァーニがびっくりしたようにこちらを見ている。

 

「ベッドメイキングだろ?」

「ベッドメイキングラヴよ。」

 

わけのわからないことを言いながら、ヴァーニは体を起こした。

 

「お姉さまからの連絡は?」

 

「転送はしてるし、見てるはずだよ。でも昨日はクラバのはずだから、とても返信する余裕はないでしょ?」

 

カンチャナは、自分の手元のスマホを覗きこんだ。

月面でのクランバトルの結果がもう、動画付きで配信されている。

 

“仮面の戦士ココ・シャロン&フォウ三連勝!!”

 

もちろん、デニムはこのふざけた名前のクランバトルの選手がたったいま問い合わせのあったクラバオーナーの情人ララァ・スンであることなど知らない。

 

形としては、引き続き例の新型のテストを行うために、某ブランドが見つけてきたのが「ココ・シャロン」であり、そのM.A.V.をなんとかできないか。

ポメラニアンズのアンキーを通じての依頼に答えて派遣したのがフォウだった。

 

M.A.Vを誰にするかは一悶着あったのだ。

ヴァーニとカンチャナは自分たちがついて行きたかったが、なにしろ彼女たちはモビルスーツの操縦はできない。

 

ドゥーは行きたがった。

行先は月面を予定していたので、彼女の体調管理の問題もなんとかなると言うのがその主張だったが、「なんとかなる」程度の不安定さではないので、デニムは候補から外した。

トロワは肉体的にも精神的にも、三人の強化人間ではもっとも安定していたが、彼自身が地上以外を戦場とすることを嫌がった。

 

ゆえに消去法でフォウが派遣されることになったのだ。

 

 

 

 




さて!
次こそはガトー対ココ・シャロン!
と思ったんですが、ガトーのM.A.Vが決まってなかった!!
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