第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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えーっと、ガトーさんのサイサリスは強靭な盾も分厚い装甲。ロングヒートサーベル。バズーカはもちろん、核ではなく通常弾頭です。コウ・ウラキのフルバーニヤンはビームライフルの代わりにマシンガン。ヒートサーベル。
フォウのサイコガンダムRはマシンガンに、肩のバインダーがビットとして分離できます。ホントはエネルギーキャップ式でビームを撃てるのですが、クラバあくまで試合なので、ビームはオミット。かわりに刃物を搭載したビットサーベルになっております。

...まだ試合が始まらないので、機体解説を挟んでみました。




第21話 狐の時代~白い悪魔の弱点

「け、結婚おめでとう。ハヤト、フラウ。

お幸せに。」

笑顔は完全に引きつっているのが、自分にもわかる。

アムロは、録画を削除した。

ビデオレターなのだから、なんどでもやり直しはきくのだが、これで11回目である。

なにか、気の利いたことを言わねばと思うほどに、頭のなかが白くなっていく。

 

なんだか本当は祝いたくない気もあるのだろうか。

 

いや。

ハヤトがこんなビデオメッセージを依頼して来たのはそもそもクラバ解禁とともに、アムロの名前が喧伝されたからだ。

 

いまとなっては、ハヤトが一時期、クラバにおいてアムロのM.A.V.として行動していたのも人生における黒歴史ではなく、誇りに値する1ページとなった…そういうことだろうし、たぶんそれは良いことなのだ。

 

 

 

そうだ。

モビルスーツに例えて話してみよう。

 

「ハヤト。フラウ。

結婚おめでとう。

モビルスーツが戦場を飛び回るために欠かせないもの、それは推進剤をためる『プロペラントタンク』です。

燃料がなければ、どれほど性能の高い機体でも、動き出すことはできない。

結婚生活もまた同じです。

若い頃はタンクが満タンで、どこまでも飛んで行ける気がします。

しかし、夢に挑戦し、壁にぶつかり、日々を過ごす中で、タンクの燃料は少しずつ減っていきます。

けれど――結婚というのは素晴らしい仕組みです。

ひとりであればすぐに尽きてしまう燃料も、ふたりで分かち合えば、不思議と減らない。

むしろ相手の笑顔や励ましが、新しい燃料をタンクに満たしてくれる。

だからこそ、長い航海を共にできるのです。

もちろん時には、推進剤が切れそうになる瞬間もあるでしょう。

でも、どうか覚えていてください。

タンクは空になっても、補給する方法はいくらでもある。

それは、感謝の言葉であり、ささやかな優しさであり、そして今日のように皆に祝福されている絆なのです。

新郎新婦のお二人には、この先も互いのタンクを満たし合いながら、どんな宙域でも力強く飛んで行っていただきたい。

そしていつか、お二人の背中を見て育つ子どもたちが、さらに新しい推進力をこの世界に与えてくれることでしょう。

最後に、今日という門出を祝して――

新郎新婦の人生のプロペラントタンクが、いつまでも満たされ続けることを願います。」

 

よし!

これでいいだろう。

“ぼくの好きだったフラウ。お幸せに。”

アムロは録画を停止して、送信ボタンをとした。

 

気がつくと、最近おなじみとなった赤毛の女子高生が、ジト目でカレを睨んでいた。

 

「なにいまの!?」

 

「サイド7にいたときの友だちだよ。結婚式の祝福のメッセージを頼まれたんだ。」

 

 

「なんていうか。」

マチュは、いらいらしたように言った。

「すっごいダサ。ダサすぎ。」

 

「いや、これでせいいっぱい…」

 

「ニュータイプといえども結婚スピーチは訓練をしなければ…」

 

「そんな理屈っ!!

…そもそもニュータイプじゃないし。」

 

本気でケンカしているわけではない。

アムロとマチュはけっこう仲良しだった。

マチュはどうも『向こう側』に帰ってしまった想い人があるらしく、アムロも技術屋らしい朴念仁さで、二人の間に流れるものを恋愛感情と呼ぶにはいささか遠かったのだが。

マチュはなんとなく、アムロがダメなところやダサいところを見せると不愉快になるのだ。

そして、私生活ではアムロはそんなところはいくらでもあった。

 

「シャアさ…大佐が読んでるよ。ガトー少佐がクラバに出るから一緒に観戦しないかって。」

 

「クワトロ大尉が?」

 

マチュは気に入った相手をあだ名で呼ぶクセがあるらしい。

 

アムロは『天パ』だし、シャリア・ブル中佐は『ヒゲマン』。ブライト中尉は『クロメ』である。

クワトロ大尉を『大佐』とよぶのも一瞬のあだ名であるのだろうが、懸命に偽名を名乗っていてもあだ名が『大佐』になってしまっては元も子もない。

 

モビルスーツ実験運用艦アーガマは、グリーンノアに入港している。

 

デラーズ・フリートとの戦闘で損傷したモビルスーツを修理する…というのがその名目であるのだが、実はアーガマが運用したモビルスーツは『ガンダムマークⅡ』や『百式』などグリーンノアから拝借したものが多い。

『マークⅡ』などは発注元は、そもそも彼らエゥーゴの対立組織であるティターンズである。

ただし、ティターンズは独立した団体ではなく、あくまで連邦軍の教導部隊であり、正規な発注者が連邦軍である以上、アーガマがテストをかねてそれを運用するのがまったくの筋違いかと言われるとそうでもない。

 

グリーンノアの実質的な運営元であるフランクリン・ビダンにとっては痛いところはあったのだが、開発者にとって喉から手が出るほどにほしい実戦での運用データを提供してくれたのと、きちんと開発費は連邦軍から支払ってもらったので、少なくとも表面上はエゥーゴとうまくやっていた。

 

アーガマは最小限のクルーを残してほとんどの乗員はグリーンノアに上陸していた。

 

アムロは、ほとんどの時間をテム・レイと過ごしている。

久しぶりの親子の対面であるが、大学に進学するはずだった息子が、相変わらずクランバトルをやっているどころか、連邦軍の戦艦に乗って現れたことには、彼は特に文句は言わなかった。

 

アムロが開口一番に、エネルギーキャップ式のビット…ファンネルをキュベレイ以外のモビルスーツにも搭載できないかというアイデアを投げかけたところあとは、すっかりその話になってしまったのだ。

 

テム・レイは、とにかく面白そうなアイデアや技術に触れるとほかのことはどうでも良くなってしまう傾向があり、それに呆れながらもつきあってしまうアムロもアムロである。

 

 

これがマチュには不満だったらしく、たいして必要も無いハロのメンテや、今回のクラバ観戦など何かと理由をつけては誘いに来るのだ。

 

アムロは、親友の結婚への祝辞という大仕事を成し遂げていた。

正直、ガトー氏の試合にそれほど興味もなかった。

ガトーは月面を主戦場にするのだろうし、アムロはこれからネオ香港のジオン工科大学に通うのだ。

卒業してからクランバトル以外に仕事がなければ別だが、これからもそうそう接点があるとは思えない。

 

マチュに対する「お付き合い」のつもりでアムロは腰をあげた。

 

アーガマの乗組員のグリーンノア滞在用に借り受けたコンドミニアムは、かなりの広さがある。

戦艦のなかではなかなか得られない個室に、リビングとダイニングを兼ねた広い部屋が別に用意されていた。

 

クワトロ大尉は、モニターが正面に見えるソファに陣取っている。

傍らに座るのは、あのアクシズのニュータイプ、ハマーン・カーンだったが、一応「並んで座っている」だけで、恋人めいた情の共感はそこにはなさそうに、アムロには思えた。

 

「アムロくん、マチュ。

ちょうどはじまるところだ。

ガトーのM.A.Vはなんとコウ・ウラキだ。トリントンのテストパイロットだった青年だ。マチュは、もちろんわかると思うが、アムロ。きみに分かりやすく説明するには、ノイエ・ジールのパイロットだ。」

 

「相手は三連勝。売り出し中の新人だな。」

ハマーンが口を挟んだ。

「データによれば、ひとりは強化人間らしい。フォウ・ムラサメ…ムラサメ研究所だ。」

 

「ドゥーの仲間ってことですか!」

アムロは、ネオ香港に残してきた線の細い少女を思い出した。

 

「いまは、ネオ香港のクラバに参加してもらっている。」

クワトロが説明した。

「もうひとりは…ココ・シャロン?」

クワトロは妙な顔をした。

 

「ハマーン。パイロットの画像データはあるかな?」

 

ハマーンはまったく悪気は無い。

クワトロがネオ香港に残した恋人の名前さえまだきいていないのだ。

まして、その人物がいま行われようとしているクランバトルに出場しているなどとは考えにも及ばなかった。

 

ハマーンが検索した写真は、例の写真集のサンプル画像だったのだ。

仮面。

以前、『赤い彗星』の異名をとったパイロットがつけていたような。現在、シャリアがつけているような仮面をつけた少女。

少女はソファに腰を下ろしている。

 

全裸ではない。

 

透ける布を頭から被っている。

 

「このパイロット。写真集まで出してるのよ。タイトルは『薔薇の真実』。」

 

ハマーンは、クワトロと。アムロと。マチュのひきつった笑顔をふしぎそうに眺めた。

 

「なに? みんながみんなこんなアーリア系が好みのタイプとても言うんじゃないでしょうね?」

 

 

 

 




次こそ!
次こそ、バトル!!
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