仮面ライダーアニマ〜restart〜   作:紳爾零士

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前回から一部変更
アニマの武器名がリンクウェポンからアニマニクスギアに変更してます。今後はこちらで行きます。


第3話『亡霊出陣、学園の黒い蜜』

「大神…お前…。」

 

…綻びたローブをたなびかせ、仮面戦士は剣を構える。その姿はまさしく虎之助が…いや、大神霊を知る人類が望んだ姿だった。

 

「…仮面ライダーがもう1人…ですか。」

 

合成音声のような音が相対する黒いアニマから鳴る。新たな仮面戦士はその言葉を鼻で笑い、地面に右足を擦らせ、半足引く。

 

「仮面ライダーとは見返りも求めず、ただ人々の幸福のために戦う戦士のことだ。俺は違う。俺はお嬢を命に変えても守る懐刀。…ただの亡霊さ。ドライバーに選ばれなかった無能な…な。…ようやく俺の使命を果たせる。」

 

「…さながら、亡霊(ファントム)ですか。なんとも…。」

 

「あぁ。…それでいいッ!!」

 

地面を蹴り、そのまま仮面戦士は刀を振りかざす。黒いアニマはそれをまともに喰らい、身体から白煙をあげると後退りをした。

 

しかし、それだけでは終わらない。黒いアニマは弓の弦を弾き、紫の矢をいくつも飛ばす。

 

仮面戦士はそれを刃で切り伏せ、距離を潰した。

 

「俺はファントム。…それだけ覚えて冥府へと行けッ!!」

 

「中々に厄介。」

 

仮面戦士…いや、ファントムは再び剣を切り上げる。

黒いアニマは弓でそれを弾くが、切り上げた直後の剣が踵を返し、黒いアニマの肩に直撃した。

 

「ッ!!」

 

「トドメといこうか。」

 

そう言ってファントムは剣のスリッドからウルフソウルカードを取り出す。そのまま再び剣の側面にそのウルフソウルカードを翳した。

 

〈ウルフッ!!…charge…!!〉

 

と共に剣の周りに紫色の粒子が漂う。そのままスリッドにソウルカードを装填し、ファントムはトリガーを引く。

 

〈ウルフッ!!オーバードスラッシュッ!!〉

 

「ふんッ!!」

 

ファントムの目が真っ白に輝くと同時、剣からふり下げられたと同時、紫の斬波が黒いアニマに向かって飛んでいく。その斬撃はまるでチェーンソーのように黒いアニマの身体を削る。そのままファントムは刃を振り上げる。

 

ちょうど×字になるように紫の斬波が飛ぶ。黒いアニマの身体にそれも命中。そのままファントムは剣を腰へと納刀。カチンっという音がすると同時、ファントムの前で大きな爆発が起こった。

 

爆風が砂埃を上げる。叫び声もなく、ただやられる黒いアニマ。その正体を見ようとするファントム。しかし、爆破の後にあったのは…無だった。

 

「…逃げたか。」

 

ファントムは腰から剣を抜くとそのままウルフソウルカードを取り出す。取り出したのち、腰のホルダーに納刀するとファントムのアーマーは粒子のように飛び散り、変身を解除した。

 

「雲居先生ッ!!」

 

「…くっ…。」

 

詩音の声に鷹也の身体が起き上がる。

後ろで起き上がる鷹也に霊もゆっくりと歩み寄った。

 

「あいつは何だったんだ…。アンタも仮面ライダー…?」

 

「…倒した時には既に誰もいなかった。逃げたと見て間違い無いだろう。今はそれよりも丹波清孝の所在を洗う必要がある。奴を放置していれば、また次の被害者が出るぞ。」

 

「そうだ。…アイツ。」

 

…もちろん既に清孝は逃げた後だった。グラウンドには騒ぎに訪れた野次馬しかいない。なんなら、校門前は誰かが呼んだヘラクレスが配備されていた。逃げ場などない…にも関わらず、清孝は逃げた。明らかに足を庇っていた様子もある。

 

「…とすると学校内にまだ居るはず…か。」

 

「手分けして探すぞ。…覇道さん。2人を頼む。」

 

「わかった。」

 

その言葉と同時に霊と鷹也は学園内へと散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…神宝高校、3階にある暗い部屋。そこに清孝は居た。冷や汗をかきながら、その前に座る1人の男子生徒を見ている。

 

「狩人はただ呆然と獲物を待つわけではない。」

 

清孝の首筋には小型のナイフが突きつけられていた。男子生徒はただ真っ黒な瞳で清孝を見る。

 

「…貴様は私利私欲の為に人々を襲う害悪に過ぎん。それを野放しにしている理由がわかるか。」

 

「…っ。」

 

「あの方がもし、貴様の今の姿を見たらなんとおっしゃるかな。」

 

その言葉に激しく清孝は動揺する。動悸が身体中を駆け巡り、ぶわっと身体が発汗する。

 

「ソウルカードもタダではない。我々に超常的な力を下さるのはあの方の采配と慈悲に過ぎん。貴様のような一介の穀潰しに対して不執行の権利を与えた。貴様はあの“狩人”どもを消す他ないのだ。」

 

男子生徒の眼鏡が怪しく光る。その場には2人以外何もいない。背後から前へと移動し、机に座る。机の上で足を組みながら男子生徒はただ清孝を見下す。その時、ガラガラと教室の扉が開かれる。

 

「お取り組み中のようだね。毒島くん。」

 

そこに居たのは…あの、神谷刃だった。柔和な笑みを浮かべ、刃はゆっくりと清孝の背後に移動し、肩に手を置く。

 

「丹波清孝先生。…私は貴方に期待をしているんですよ。」

 

その声は凛と澄んでいて、とても優しく…そして、威圧感があった。清孝は喉が異常に渇く感覚と、身体から汗が異常に噴き出す感覚を覚える。まるで蛇に睨まれた蛙だ。

 

「…貴方の陸上部員への異常な執着…それは貴方の生きる意味、生きる力です。貴方は力を手にした。力を手にしたものは夢を叶える力を持っている。貴方は陸上が嫌いだ。だから、私は貴方を陸上部の顧問にした…貴方は私の願いを引き受けてくれた。だから、私は貴方に力を与えた。…貴方は好きにやればいい。次は彼らに勝てる。そうでしょう?」

 

「…はい…はい…。私は…成し遂げられますっ…!!私はまだ…!!」

 

「わかってます。…頑張ってくださいね。」

 

開かれた真っ赤な目は真っ暗な室内に怪しく光っていた。清孝はその場から逃げるように出ていく。その場には毒島…と呼ばれた男子生徒と神谷刃しかいなかった。

 

「…あの男にアニマが倒せるでしょうか。」

 

男子生徒は刃の隣に歩み寄る。

その目はナイフのように鋭く、まっすぐ扉を見届ける。

 

「逆にできると思いますか?」

 

「いえ、100%不可能です。」

 

「…ええ。だからこそ、邪魔なのですよ。」

 

刃は口角を上げて微笑みながら、ハンカチで手を拭う。その後、そのハンカチを教室のゴミ箱に捨てた。その後、刃は窓枠に腰をかけ、ミルクティーのペットボトルの蓋を開け、口をつける。

 

「毒島くん、人間が他の生物に最も負けている部分は何だと思いますか?」

 

「…そんなもの、いろいろありますよ。生物としての機構、生きるための知恵も…人は最も弱い生き物です。」

 

「ええ。…ですが、50%不正解です。この問題の正解は『執念』。人はどんなにくだらないことでも、少しでも気に食わなければ相手を恨み、追い詰めることができる。…しかし、すぐに諦めてしまう。馬鹿らしいや、人からの叱責を食らってね。…だが、動物は違う。獅子はウサギを狩るのにも全力を出すもの。ソウルカードはその本能を…最も暴力的なまでに飛躍させる。…彼はどこまで抗える器かな。」

 

刃は微笑みながら、その手には血よりも真っ赤なソウルカードを持っていた。毒島はただ彼の姿を見るだけ。その顔にはなんの表情もない。

 

「そう言えば、新しい顧問はどうです。生徒会執行部の役割、理解して動いてくれてますか?」

 

「…勿論です。故に我々もそろそろ動かなくてはならない。」

 

「頼もしい限りだ。期待してますよ?毒島…龍牙くん?」

 

耳元で囁く刃。

毒島…もとい、毒島龍牙は初めてニヤリと笑った。その近くの机にはアタッシュケースが置かれており、彼もまた紫色のソウルカード…いや、どこか、他とは違うカードを持っていた。

 

「…生徒会執行部は常に神宝高校の安寧と秩序を守らなければならない。バイオスターもアニマも…全てを終わらせねばならない。」

 

「どうか、君は私を失望させないように。」

 

そう言うと刃はその教室から出て行った。龍牙は眼鏡を取り、舌なめずりをする。その目はカーテンの隙間からグラウンドを眺めていた。首から下げたロケット付きのネックレスを握る。

 

「…たとえ、この身が砕けようとも…成し遂げる。」

 

…そう自身に言い聞かせるように言うとアタッシュケースを持ち、その場から逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わってこちらは校内…一階廊下。

 

「見つけたぞッ!!丹波ッ!!」

 

鷹也の声が校内に響き渡る。そこにいたのは汗を拭きながら現れる…丹波清孝。その手にはオレンジ色に光り輝く『チーターソウルカード』を握っていた。

 

「逃げも隠れもしないよ。雲居先生。」

 

くいっと眼鏡をあげ、堕落したかのように鷹也を見る清孝。鷹也はいつでも戦えるようにアニマドライバー・ネオを握る。

 

「貴方は俺から見ても教育熱心ないい先生だったはずだ。…それがなんで。生徒を傷つけるッ!!」

 

「…雲居先生。世の中は…そんな綺麗事じゃ務まらないんですよ。」

 

重々しく、そして、ゆっくりと話す清孝。

 

「…私はね。昔、陸上の選手だった。それはそれは…自分で言うのもなんだがね、大会でも優秀な成績を収めていたよ。可愛い彼女もいて、順風満帆…そんな折だった。…私にドーピングの疑いが出てね。」

 

「…ドーピング…?」

 

「なんとも…私のカバンから薬の瓶が見つかったそうだ。私は勿論やってなかった。だが、世の中は懲悪理論。私を信じるものはおらず、大会からは永久追放…彼女や家族も蔑まれ、ある日家に帰れば…家族は皆、首を吊っていたよ。」

 

絶望したかのような…全てを諦めたかのようなその顔に鷹也は唾を飲む。それと同時に疑問にも思えた。この男は陸上そのものを恨んでいる。なのに、陸上部顧問をしている。話は続く。

 

「絶望した私は陸上そのものを恨むようになった。元々、教員職は取っていたし、その日は先生になったことを報告する日だった。どれだけ蔑まれ、妬まれようと私は頑張ったのだと。…だが、現実はひじょうだった。家族を殺したようなものと世間は私を揶揄し、そして、もう少しで夢すらも失いかけた。そんな私を…理事長は救ってくれた。」

 

そのまま…清孝はソウルカードを胸に近づける。

 

「よせッ!!」

 

「…私はね。ここに居られることが本当に幸せなんだよ。あのキラキラしたガキどもを見ると…昔を思い出す。でもね、彼女らは私に何をしたかわかるかい?私は彼女らをしっかり羽ばたかせてやろうと精進したってのに。彼女らもまた、世間と同じだ…。背格好や見た目だけで『キモい』だの『ウザイ』だの。ただの言葉だと思ってべらべらべらべらと………。」

 

そのまま清孝は胸にソウルカードをかざし、押し込んだ。清孝の体に亀裂が走り、そのまま粉のようなものが立ち上がり、清孝の体を包み込む。熱と風。立ち上がるそれに鷹也は腕を上げ、顔を隠しつつもしっかりと見届ける。

 

『cheetah…』

 

どすの利いた声が周りに響く。

そこに居たのは…先ほど下で戦った怪人『チーターバイオスター』だった。

 

「世間も彼女らも私がどれだけ尽くしてきたか…。それを知らない恩知らずどもに私は全ての罪を清算する…!!誰が相手であろうと構うものか…!!私は…この力を持って全てを変える…!!生意気なあのガキどもを教育し、陸上部そのものを無くし、そして、私はあの世へと向かうのだッ!!」

 

そう叫ぶとチーターバイオスターは鷹也へと走り、その爪を鷹也の首目掛けて飛ばす。鷹也はそれを掻い潜ると、即座にドライバーを腰に巻いた。

 

「変身ッ!!」

 

〈シャークリンクッ!!〉

〈アニマ…ゴーイング…オンッ!!〉

 

仮面ライダーアニマ…シャークリンクは、左腕の背鰭カッターでチーターバイオスターの身体を切りつける。

 

白煙が上がるとチーターバイオスターは横の教室の扉を破壊し、横転。幸い、誰も居なかったから良かったが、誰かいたら大惨事だったろう。

 

〈アニマニクスギアッ!!〉

〈モード:ガン〉

 

アニマはアニマニクスギアを取り出すとチーターバイオスターに向かって引き金を引く。

 

チーターバイオスターは近くの机を爪で切上げ、アニマへと投げつけるが、アニマはそれすらも冷静に迎撃。木片が空中に舞うが、目眩しにもならず、銃弾はチーターバイオスターを捉えた。

 

「ぐっ!?」

 

そのままチーターバイオスターは逃げるかのように窓ガラスを破り、ベランダから飛び降りる。アニマも追いかけるように割れた窓から走り、ベランダから飛び降りた。

 

「来るなッ!!」

 

チーターバイオスターは爪で空気を割き、アニマに向かって斬撃を飛ばす。

 

アニマは冷静にトリガーを何度も何度も引く。幾度となく出る光線が斬撃をかき消しながら、チーターバイオスターに何度もヒットする。白煙が上がり、チーターバイオスターが地面に尻餅をつく。

 

白煙が晴れた時、チーターバイオスターの目の前にいたのはゆっくりとこちらに向かってくるアニマの姿だった。

 

「俺たち教師だって人間だ。…時折、全てが嫌になって終わることもある。人を恨み、そして、人を妬むこともある。」

 

「来るなッ!!来るなァッ!!」

 

後退りするチーターバイオスター。

しかし、アニマはゆっくりと彼を追い詰める。

 

「アンタにどんだけ辛い過去があったかはわかった。だが、それを無関係な生徒に押し付けるなんて…アンタは教師の風上にも置けない。アンタのなりたかった教師ってのは…夢ってのはッ!!そんな薄汚れたもんだったのかよッ!!」

 

「黙れェッ!!貴様に何がわかるッ!!」

 

そう言うとチーターバイオスターは近くにあった木を爪で叩き切る。即座に丸太を足で蹴り、アニマに向かって飛ばした。アニマは冷静にドライバーのボタンを押す。

 

 

〈チャージオンッ!!〉

 

「…わかりたくねえよ。アンタの八つ当たりなんてよッ!!」

 

両腕の背鰭カッターが水色に輝く。

そのまま音速を超えるカッターをアニマは両腕から放った。

 

〈シャークッ!!シャイニングブラストッ!!〉

 

「ッ!?グァァァァッ!!」

 

その一撃は逃げようとしたチーターバイオスターを飛ばされた丸太ごと一刀両断。背後から斬られたチーターバイオスターは爆散し、からんからんとソウルカードがアニマの元へと飛んできた。変身を解除した鷹也はそれを懐へと入れる。

 

「返せッ…!!それは…私のだッ!!」

 

這いつくばりながら、鷹也へと向かってくる清孝。砂まみれになり、血みどろになったその姿はとても哀れに見えた。

 

「…こいつはアンタにとって救済でもなんでもねえよ。」

 

「それがないと…私は…私は…!!」

 

「いい加減目を覚ませッ!!」

 

鷹也は足を両腕で握る清孝の胸ぐらを掴む。どこか、目線は空で放心状態の彼を見て、鷹也は憤りを感じていた。

 

「アンタは何にも悪いことしてなかったんだろうがっ!!なんで…もっと正当な方法で見返そうとしなかったッ!!手を汚してもなんともなんなかったろうがッ!!」

 

「…ふっ…ふふふふっ…。」

 

叫ぶ鷹也…それに対して清孝はまるで壊れたかのように笑った。

 

「…本当に…甘い…。甘すぎるな…。この高校は…君も私も思ってたよりも…ずっと根深いんだ。」

 

「…なに?」

 

鷹也の手がゆっくりと緩む。清孝は頭を抱えながら青ざめた顔でゆっくりと後退りした。

 

「ははっ…ハハハハハッ!!!!!!全て…後の祭りだッ!!貴様が何をしようとッ!!この街には勝てないッ!!この黒い蜜は…人々をずっとずっとずぅっと蝕み続けるッ!!我々を虫歯と呼ぶなら呼ぶといいッ!!だが、本質は私も君も変わらない…!!化け物は化け物なんだァッ!!ハッハッハッ!!」

 

その大きな声に虎之助や霊たちもやってくる。目を大きく開き、汗をかき、涙を流しながら大きな声で笑うその様はまさしく異形。ゆっくりと清孝が下がる。虎之助は前へと出て、その懐からピストルを抜き、清孝を狙う。

 

「…答えろ。お前にソウルカードを渡したのは誰だ。」

 

「言えるはずがないッ!!それは高校に対する反逆だッ!!街に対する反逆だァッ!!私は…まだ、死にたくないのだァッ!!」

 

そう言うと清孝はまた逃げるように走り出す。虎之助は足を狙おうと発砲しようとするが…。

 

「どこへ行く。」

 

「ヒッ!?」

 

突如、清孝の目の前にあの黒いアニマが現れた。機械音声のような声が鷹也たちの耳に残る。

 

「黒い…アニマ…。」

 

「貴様は我が主人を置いて逃げると言うのか。恩知らずはどちらだ。」

 

「ひっ…ひぃぃぃッ!!」

 

その手には大きな弓を持っていた。清孝は黒いアニマに背を向けてその場から逃走を図る。

 

「やめろッ!!」

 

鷹也の静止も聞かずに黒いアニマは弓を引き、清孝の胸を大きな矢が貫いた。

 

「ぐっ!?」

 

「キャァァァッ!!」

 

薫子の悲鳴が学園内に響き渡る。

清孝は何も言わずに粒子となり、そのまま消えていった。

 

「…死んだのか…?」

 

「否、消したのみ。」

 

「なんでそんなことを…。」

 

黒いアニマは呆然とする鷹也に向かって小首をかしげる。

 

「私はこの高校の秩序を守るもの。狩人だ。不穏分子は狩り尽くすのみ。」

 

「人が死んだんだぞッ!!」

 

「だからなんだ。…私は任務を遂行したのみ。それに…あれはもはや人ではない。」

 

そう言いながら立ち去ろうとする黒いアニマ。鷹也はドライバーを、霊は剣を握る。

 

「…今は張り合う気はしない。私はジェノス。狩人ならば、何度でも立ち会うだろう。さらばだ。」

 

そう言いながら黒いアニマ…もとい、ジェノスはその場から消えた。その場には全員、呆然と立ち尽くしていた。サイレンの音が聞こえるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丹波清孝は原因不明の失踪ということでこの事件は幕を閉じた。薫子は少しだけ人の死を目の当たりにして元気を失っていたが、今は国体に向けてなんとか元気を取り戻しているらしい。当分の間、陸上部顧問は違う先生をつけるそうだ。

 

「なんか腑に落ちないなぁ。」

 

詩音がお菓子を貪りながらそう言う。

鷹也はカタカタとパソコンで作業をしながらその様子を見ていた。

 

「何がだ。」

 

「なんで丹波先生は陸上部を襲ったんだろう。ほら、陸上部だけを襲っても何にもならないじゃない。例えば、大会の人を襲えばまだ腑に落ちたけど。丹波先生は陸上部だけを襲った。なんで?」

 

「…さぁな。」

 

鷹也はそう言いながら缶コーヒーを少し飲み、近くにあったクッキーを齧った。

 

「…ただ先生も生徒も同じ人間だ。立場があろうと、それは変わらない。ムカッ腹が立ったんだろう。近くにいた女生徒の暴言が丹波先生の中の凶暴性に火をつけた。だが、彼女らは真の意味であの人を慕っていた。教育熱心な人だったってな。…だから、あの人はどこか壊れちまっていたんだろう。」

 

そう言って生物室から空を見上げる鷹也。ブラックの缶コーヒーの苦味が舌を刺激する。ふと、物思いに耽っていると突然、扉を叩く音が響く。

 

「はい。」

 

その声に応えるように扉があると…そこには白と見紛うほどの銀の髪の少女…まさに絵に描いたような美少女が立っていた。

 

「ここが超常現象解明部…かしら。」

 

「意外だね、そういうの…君は信じないタチだと思っていた。」

 

鷹也はにっこりと微笑むと少女に座るように言った。まさに冷静な彼女はソファーに座ると周りを見ずに詩音を見る。

 

「…のんきね。」

 

「ほんとにな。」

 

「2人してひっどぉ。まぁ、考えすぎも酷だけどねー。」

 

鷹也は詩音の隣に座ると少女に紙コップに入ったお茶を与えた。少女は静かに一礼するとそのお茶を音も立てずに飲む。

 

「流石に弓道部の次期エースは違うな。」

 

「持ち上げないでください。世間話をしにきたわけではないのよ。」

 

そう言いながら少女は髪を掻き上げ、鷹也を見る。

 

「父に聞いたわ。私も仲間に入れて欲しいの。」

 

まっすぐな目で見つめる少女。鷹也は正直に言うと目の前がクラクラした。面倒ごとが増えるのは本来、鷹也にとってはあまり望まないことだ。しかし、胸を痛めるのはそれだけではない。隣でキラキラと目を輝かせる詩音も原因の一つである。

 

「覇道家の長女として…私は母の事件の真相を知りたいの。生徒会もあるから、それほど毎日は来れないけれど…何かしらのことはするつもりよ。お願いします。」

 

「…危険すぎる。お父さんに止められなかったのか。」

 

「止められたわ。でも、そんなことどうでもいい。私は私が知りたいことを知りたいだけ。母の死の真相を知りたいの!!」

 

そう言って頭を下げる少女を鷹也は無碍にはできなかった。

 

「わかった。…仕方ない。」

 

「ありがとう。…流石はうちの先生ね。」

 

…自身が担任を持つ生徒はこんな変わり者しかいないとつくづく担任を持ったことを後悔する鷹也。しかし、キラキラの笑顔を示す少女…覇道龍夏の顔を見るとふと肩の荷が降りた気がした。




感想ありがとうございます。励みになってます。どんな些細なことでもどうぞ。

ジェノス、ファントム、そして、龍夏や生徒会の存在。
前回とは違い、バイオスター側の人間にもしっかりと焦点を当てて、学園ドラマにしたいと考えています。はたして、街の闇に鷹也達は戦えるのか。駄文で申し訳ありませんが、完走したいとは考えてます。ではまた次回。お楽しみに。
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