…生徒会室。
神宝生徒会とは執行部とも名をつけられ、神宝高校の秩序と安寧を守る…言わば『自警団』のようなものである。
「龍牙くん。どうも怖い顔して…どうしはったん?」
生徒会長…毒島龍牙は本を見ながら、顰めっ面をしていた。その場には龍牙を含め、4人。そのうちの、糸目の男が声をかけた。
「…狩人は狩場を事前に決め、告知している。それなのにだ。…世の中にはとんでもない不出来なものがいるものだ。」
そう言いながら、机の上に写真をばら撒く。そこにはバイオスターと仮面ライダーの姿が映っていた。
「仮面ライダーアニマ、仮面ライダーファントム…両名は本来、その名前に相応しくないものだ。暴力教師と、学校に何のゆかりもないただの保護者。そんな人間が蔓延っているのはどうかと思わないか。翔平。」
「アンタらしいなぁ。まさに正義の味方の言葉や。…俺はアンタに任せるで。」
副生徒会長『羽柴翔平』がニヤリと笑う。その様子に顰めっ面の龍牙はまた頭を抱えた。
「…君たちはどうか。」
「テメェの正義なんてどうだっていい。アタシは暴れられたらそれでいいんだよ。」
そう声を荒げるのは翔平の隣にいる紺色の髪の少女だった。小柄な体とバチバチに開けられたピアス以外は…どこか、詩音の面影を感じた。
「私はよ。暴れられるからここにいんだよ。わかってんの?正義だとかんなもん、関係ない。」
「関係ない…か。これだから、反社の娘は。」
「あ?…テメェ、今なんつった。」
冷ややかな目で少女を見る龍牙。少女は逆に龍牙の胸ぐらを掴まんとばかりに跳ね起き、その顔を睨みつける。
「私のことは良いけどよ。家族のこと、バカにしやがったらテメェからぼこすぞ。」
「…やってみろ。やれるものならば。」
次の瞬間、ガラガラと教室の扉が開く。一触即発の彼らはその音で我に帰ったかのように椅子に座り直した。そこに居たのは…茶髪にパーマがかった男と鈴華の姿だった。
「元気があっていいことだね。」
男は柔和な笑みで龍牙に近づく。…直後。
「ガッ…!?」
…その首を右手で握り始めた。
「聞いたよ。生徒会長。…君、またアニマに先を取られたんだって?」
「な…す…せん…。」
「僕はね。何事も一番が良いと考えてるんだ。だから、この無能な猿どもが居る学校で、最も話が聞けて最も考え方のいいこの生徒会の顧問を預かった。それがどうだろう?…君は無能すぎる…な!!」
そのまま男は龍牙を壁へと投げつける。男の顔から張り付いたかのような笑みは全くもって綻びを見せない。龍牙は壁傳にゆっくりと立ち上がると男をギッと睨みつけた。
「なんとも反抗的な目だ。それでこそ、君たち、正義のハイエナは光輝く。最も…一番は。」
その目は鈴華へと伸びる。
そのまま手は鈴華の頭へぽんっと伸びる。その整った顔は歪に…醜悪に歪む。鈴華の表情はまるでロボットのように無機質だった。
「自身が行っている罪過を知りながら、操られているという言い訳を持ちながら、自身の従兄弟を攻撃するその様はまさに…傀儡。大変、唆る。」
そう言いながら男はその手に紫のソウルカードを握っていた。
「この高校は変わる。」
そう言いながら男はソウルカードに舌を這わせた。
「生物界では一筋縄では行かない。例えば察知能力に長けた生物だってこの世には存在する。意外にもそれは餌と呼ばれたり、人間があまり危険視しないような小さな生物が多い。」
2時限目、生物。
鷹也は1年1組を担当していた。自分のクラスだ。もちろん、そこには神谷詩音や覇道龍夏の姿もある。
「我々人間は底引きや追い詰め、罠などたくさんの知恵を絞るが、生物は知恵と共に自然に溶け込む能力を持っている。蜘蛛は巣を張り、テリトリーを築くとともに飛んできた生き物を捕まえる。粘着質な糸だ。または、擬態能力。代表的なのはカメレオンだが、あれは擬態ではない。いわゆる、色素体と呼ばれる縮小繊維によるものだ。」
そこまでで高校のチャイムがなる。
鷹也は息を吐くと、髪をかきあげ、教科書を閉じる。
「以上、本日の授業を終了する。ちゃんと復習しとけよ〜。」
そう言って教室から出る。と、隣の教室の扉も開く。そこから胸元を開けたスーツ姿の稲荷が現れた。鷹也はため息を吐く。
「…合コンにでも行くんですか?富士野先生。」
「ふっふーん。…気になる?」
「別に。」
ポーズをしていた稲荷だったが、鷹也のそっけなさに昭和顔負けの倒れ芸を披露する。鷹也はそのまま職員室に向かおうとすると上の階段から鷹也の行き先を遮るように足音が聞こえた。
「これは…雲居先生。」
「茄子川先生。」
そこに居たのは茶髪のパーマ髪の男…1年3組担任の茄子川響紀だった。響紀は鷹也の肩に手を置くとニヤリと笑う。
「最近、どうですか?…超常現象解明部…でしたっけ。理事長の新設した部活動の顧問は。」
「どうも。…部員にこき使われて散々ですよ。」
鷹也がそう言うと響紀の口元がいやらしく歪む。
鷹也は彼をあまり好きではなかった。茄子川グループの御曹司。神谷プライズの大きな資金袋でもある。要は影の支配者のような存在だった。それゆえにエリート気質の彼と鷹也は反りが合わなかったのだ。
「それでは。次の授業の準備がありますので。」
鷹也は彼の手を跳ね除けるとそのまま職員室のある2階へと入っていった。稲荷も鷹也を追いかけるように2階へと登っていく。響紀はその様子をただ見届けるのみだ。
「さて。」
そう言うと響紀は廊下の奥へと消えていった。
「暇ね。」
「そうだねー。」
生物室。鷹也の不在時でも詩音なら入ることができた。ゆえに詩音と弓道部のない時の龍夏、及び、霊は放課後に訪れては雑談をしていた。足をバタバタさせる詩音とは違い、龍夏は足を閉じてただ静かに本を読んでいた。
「はしたないわよ。」
「暇なんだもん。」
「…また勝手に。」
生物室の扉を開けた鷹也はため息を吐きながらクッキーを貪る2人を見る。龍夏はお辞儀、詩音はにっこりと笑いながら手を振った。鷹也は頭を抱えるものの、そのまま事務椅子に座る。
「先生。暇。」
「いいことじゃないか。神谷。…俺たちが暇だってことは大きな事件は起きてないってことだ。」
「それ、大神さんにも言われたぁ。」
ぶうたれる詩音に鷹也は何度目かのため息をつく。机の下の冷蔵庫を開け、中に入っている缶コーヒーを開けた。
「…雲居先生。あの、ジェノスの言っていた言葉。」
「…狩人…か。」
鷹也の脳裏に浮かぶ言葉…黒いアニマことジェノスは仮面ライダーたちを狩人と呼んでいた。更にジェノスは人を殺めていた。…これを加味して勿論、アニマ達にとってジェノスは敵ということになるが…。
「アイツも俺たちと同じくバイオスターを倒していた。経緯はどうあれ、やっていることは…。」
「…これはヘラクレスに少しカマをかけてみるか。」
そう言って霊は布に巻かれた刀を握り、生物室を出ようとした。その時だった。校庭で大きな音が鳴る。鷹也たちは急いで校庭へと出る。
「…おいおい。なんだよ、これ。」
その様子は悲惨だった。
真ん中で焦げ、裂けた木。それが男子生徒を1人踏み潰していた。
「泉くんっ!!泉くんッ!!」
青ざめた顔で男子生徒へと駆け寄るのは稲荷だった。…そう、木で踏み潰されていたのは、稲荷の担任する1年2組の生徒である泉だった。稲荷の姿を見た鷹也はすぐさま駆け寄った。
「何がありましたッ!?」
「わからないわよッ!!」
「取り敢えず退けましょうッ!!」
騒ぎに集まってきた男性教員で倒木を上に引き上げる。倒木は中央から焼かれたように焦げていた。何かに撃ち抜かれたかのように。
「泉くんッ!!泉くんッ!!」
口から血を吐き、悶え苦しむ泉という男子生徒。悲痛な顔で稲荷は彼を揺する。…救急車が来たのはそれから数分後の出来事だった。
「…何が起こった。」
泉が運ばれてから、霊はその場に残った。現場処理ということで霊の呼んだ対バイオスター特殊武装組織『ヘラクレス』がその場を取り仕切っていた。腕に特殊な武器をつけているフルフェイスの部隊を取り仕切るのが覇道虎之助である。
「虎之助長官。」
「大神。」
「…我々が駆け付けたのは大きな爆発音を聞いてからだ。そしたらこいつが。」
倒れている木を指差す霊。
倒木は大木とは言わないが、男子教員が6人がかりでやっと持ち上がるほどの大きさはしていた。それに、不自然なまでに簡単に倒されていた。断裂面は焦げており、焼きながらも根と木の先端で叩き折ったような…整っていない断面をしていた。
「…ふむ。」
虎之助は頬に手を当て、眉間に皺を寄せる。
今回の事件は難解なところしかない。病院に運ばれた泉は意識不明。その付き添いで行った富士野稲荷が見た時には泉はすでに大木の下敷きになっていた。普通の校内の道でである。しかも、根っこから掘り起こされたのではなく、中腹から破壊されている。
「爆発物の類はなし。」
「城山。」
「長官。…大神元副隊長はお久しぶりです。」
そう言って走ってくるのは赤髪のスワットスーツに身を包んだ青年だった。現ヘラクレス副隊長である城山勇輝である。彼は霊に一瞥するとすぐに見立てを述べ始める。
「害者は泉林助。神宝高校の1年生で部活動は剣道部。歩いていたところに突然の爆発音と共に木が倒れてきたと見られてます。目撃証言から見るに周囲にはおかしな様子も何もなく、突然木が破裂したとしか。」
「…なるほど。」
明らかにおかしなことだ。
それでも虎之助が否定をしないのはバイオスター絡みと見ているからであろう。虎之助は勇輝に聞く。
「防犯カメラ等は。」
「この場所を見ている防犯カメラは一台。しかし、その防犯カメラにも何も映っていませんでした。…先の2件と同じです。」
「先の2件?」
霊が言葉を差し込む。
しかし、現在は部外者である霊に対して勇輝は口をつぐんでいた。当たり前だ。先ほどの見立てはさておいて、そう易々と捜査報告を部外者には伝えられない。ヘラクロスの信用の問題でもあるのだ。しかし…。
「この数日で2件、殺人事件が起きている。」
「…なに。」
虎之助の言葉に眉間に皺を寄せる霊。このことは小さな王羅の中でも全く報道されていなかった。
「王羅西の王羅西ビルの倒壊事件、そこでは1人の男性が絞殺されていた。ビル内は完全に瓦礫の山…よって監視カメラは息をしていなく、現場には凶器らしい凶器はなかった。2件目はアナウンサーの自宅での刺殺事件。場所は王羅3丁目のマンション内だった。荒らされ具合から空き巣殺人だと警務局*1は見ているが…。」
「…刺殺の凶器は見つかってないんですね。」
「まるで回転しながら肉を削ぎ取られたかのようなものだ。胸に大穴…普通のナイフなどでは不可能な傷跡。…警務局長はヘラクレスを動かした。それが意味することは。」
「バイオスター事件…か。」
霊のその言葉に虎之助は頷いた。
霊は少し目を閉じて考える。倒壊したビル、胸に大穴が空いた男性の遺体、そして、間で爆ぜるように避け落ちた木…一見、なんのつながりもないように見える。
「先の2件は殺しだ。…泉も狙われてる可能性が高いな。」
「まるで同一犯だと思ってるような口ぶりだな?」
虎之助の言葉に霊は一呼吸置く。
「繋がりがなければ…貴方はこの事件を俺に明かさない。」
「…後出しで申し訳ないが、木の根のところを見てくれ。」
霊がその場を見るとそこにはバスケットボールほどの大きさの三本指の足跡が付いていた。およそ人間のものではない。そこの部分だけ押さえつけたかのように青草が折れているのである。
「アナウンサーの自宅では血で掠れた同一の足跡のようなものが、倒壊したビルにはその形にだけ綺麗な部分があった。恐らく上からチリが落ちてきていたのだろう。…まるでカエルなどのように見える。」
「…両生類か爬虫類のバイオスターの類による反抗か。ならば…ッ。」
霊はハッとしたかのように急いでバイクに乗り込む。その先は泉の運ばれた王羅町3番地の王羅病院だった。霊はまた彼が狙われることを考えていた。しかも病院という大勢の犠牲が伴うものだ。雲居鷹也並びに詩音もついて行ったと聞いている。
(…間に合ってくれ)
そう心に思いながら、ただ突き進んでいた。
王羅町3番地、王羅病院。
王羅の中でも最も大きな総合病院で、王羅の人々がよく利用しているところである。泉はそこに搬送され、意識不明の重体であった。
「富士野先生。」
泉には担任である稲荷が付き添っていた。包帯で巻かれた教え子を見て稲荷の顔は酷く青白かった。外は燦々と照らしていた太陽が雲に隠れている。まるで稲荷の心を表したかのようだった。
「雲居先生…。よろしかったんですか…?授業などは…。」
「今日は俺の授業はありません。本来ならクラスにいない担任を責めるでしょうがなにかあると神谷が俺を連れ出してくれました。神馬教頭*2が了承を出してくれました。勿論、すぐに戻りますが…。」
「そうですか…。」
扉の向こうに詩音の姿もあった。稲荷の様子を案じているかのようだった。
「…なんでこんなことに…。泉君は…久しぶりに学校に来てくれたんです…。家があまり裕福ではなく…入学式の時も来れていませんでした…。最初のうちは慣れる為に…数回…教室に顔を出してくれて…中学からやっている剣道部になら顔を出していたんです…。まだ若いのに…ずっと家のためにバイトをしてて…。」
なんでそんな子が…そう言いながら稲荷は震えていた。
鷹也はただその様子を見ているだけだった。鷹也はコーヒーを買ってくると言い、その部屋から出た。コーヒーの売っている自販機のあるロビーまで詩音と共に降りると何やらロビーが騒がしかった。
「せやから、泉林助の部屋は何処や言うてんねん。」
「ご家族様以外の面会の時間は限られておりますので…。」
ふとその様子を見るとそこにいたのはギラギラとした黒いスーツに身を包んだ男だった。勿論、まだ面会は出来る。しかし、その人間の異様な様子を受付も感じていた。だからこそ、穏便に諦めてもらおうと考えていたのである。
「そんなこと知るかぁ…。俺ァ関係者や。関係者も面会できやんってか?え?」
「ですから…また後日に…。」
「後日もへったくれもあるかい!!地獄に逃げる気か?あのクソ坊主。…早よ合わせんと姉ちゃんどうなっても知らんで?」
男の眉間には無数の皺が刻まれていた。
明らかにその手の人間だった。鷹也はその男の元へとゆっくりと歩み寄る。
「泉くんがどうなされました?」
「…あ?なんや、兄ちゃん。」
「私は泉君の学校の先生をしています…雲居鷹也と申します。先ほどからただならぬ様子で泉君を探しておりましたので。」
…男は鷹也の名前を知ると口角を大きく広げてニタァと笑った。細めのメガネの奥の目が爬虫類のようにぎょろりと動く。
「そりゃあええ情報をどうも。やっぱここにおんねんな。俺は蛇目工業*3の
「こんなところで騒げば…ヘラクレスが来るのでは?」
あくまで鷹也は声を低くし、冷静を保つ。詩音を守るように体で隠しながら。男…戸羽穣はその顔から笑みを絶やさない。明らかに関わっていい人間ではない。それは鷹也もわかっていた。だからこその脅しの台詞である。穣はゆっくりと鷹也に近づいてくる。
「一丁前に脅しか…なかなか肝が据わってる兄ちゃんや。せやけどなぁ。」
穣の顔が鷹也の耳元まで迫る。
「…借りた額が額や。返済期限も当に過ぎとる。これで逃げられたら俺らめっちゃ可哀想やん?せやから、親の責任を息子に取らせよう言うてんねん。ちゃんと働いてくれたらそれなりに高待遇にはするで。今のご時世、こっちも苦しいからなぁ…。それにや…。」
穣の指が詩音に向けられる。詩音は何が起こってるのかわからずその場にポツンと立っていた。鷹也の目がきっと見開かれる。
「…あれ、神谷のご令嬢やろ?体は貧相やけど…顔はめちゃくちゃ綺麗や。売るのは足がつくから御法度やけど…そういうのが出来る足のつかん方法ならいくらでもある。俺らに逆らうってことは…新しい犠牲を出すっちゅうことや。」
「…。」
鷹也の顔から表情が消えた。
穣はただニタニタと笑うだけ。まるでカエルを睨む蛇のような顔だった。
「わかったら早う…」
次の瞬間だった。病院内で警報音が鳴った。ガラスの割れる音と共に目の前の穣の身体がカウンター内に飛ばされた。カウンター内もロビーも悲鳴一色に染まっていた。ロビーの騒ぎに現れたドクター集団もその状況を見て阿鼻叫喚していた。咄嗟に詩音の身体を庇う鷹也の体にガラスの雨が降る。
「チッ…!!」
頭上から何やら這いずるような音が聞こえた。鷹也が2階の病室に行こうとした時、目の前にドスンという音と共に何者かが現れた。
「…バイオスター!?」
「…蛇目ノ手ノ者メ…貴様モ殺ス。」
鷹也は懐からアニマドライバー・ネオを取り出し、そのまま腰に巻きつけた。
…外は雨。まるで先ほどの惨状を洗い流すかのように地面を濡らしていた。
「…遅かったか!!」
ロビーではアニマホークリンクが奇怪な何かと戦っているのが見える。いつものバイオスターよりも少々大きいため、顔はよく見えない。加勢をと、布に巻かれた長物『ファントムブレイバー』を取り出してバイクから勢いよく飛び出した。
病院内に足を踏み入れようとした時…彼の行手を遮る黒い影が現れた。
「貴様は…。なんでここにいるッ!!」
「言ったでしょう。高校の秩序を守ると。泉林助は私の理想とする高校に不必要な存在。何処に居ても狩人の手からは逃げることはできません。」
「…どういうことだ。貴様はバイオスターを消すのではないのか?」
「問答は無用です。…邪魔をするなら排除する。」
ジェノスはそう言うと弓形の武器『ジェノスナイパー*4』の弦を弾く。放たれた青色の矢はファントムブレイバーによって弾かれた。
「…貴様を倒し、全て吐いてもらうぞッ!!」
ファントムブレイバーにソウルカードを翳し、逆手で振り上げた。飛んだ紫の斬波がジェノスナイパーの矢を切り裂き、そのまま突っ込んできた霊にまとわりつく。
首を狙ったジェノスナイパーの斬撃を白い襟元のアーマーが受け止めた。
〈狼月一閃、ファントムッ!!〉
ファントムの薙ぎ払いにジェノスが飛び退く。と同時、ジェノスは弦を弾くと共にいくつもの矢がファントムに向かって飛んでいった。
ファントムはそれをファントムブレイバーで切り裂きながらジェノスに向かって進む。
ファントムが懐に入ると斜めがけにファントムブレイバーを振り下ろす。ジェノスはそれをジェノスナイパーで受け止めた。刃同士の競り合いに火花が散る。
「そこを退けッ!!雲居先生だけじゃない。お嬢も…大勢が死ぬことになるぞッ!!」
「秩序に犠牲はつきものです。それにこれは泉林助が呼び込んだこと。」
「泉が何をしたと言うのだッ!!」
「…言ったでしょう。問答は無用ッ!!」
そう言うとジェノスはジェノスナイパーを振りかざす。そのままジェノスは腰のベルトのソウルカードホルダーからソウルカードを一枚取り出した。
そのままソウルカードをドライバーの前にかざした。
「…なぜ貴様がそれを持っている…それは旧式のアニマドライバー*5だッ!!」
「…質問ばかりですね。リンクチェンジ。」
そのままドライバーに装填し、上面のボタンを左の親指でゆっくりと押した。ジェノスの周りを黒い竜巻のようなものが包み込む。
〈リンクッ…オンッ!!〉
〈ザクっと切るキル、拝みますッ!!〉
〈マンティスリンクッ!!〉
〈ジェノス…ゴーイングオーバー…!!〉
次の瞬間、竜巻が幾度もの斬撃に切り刻まれるとそこにいたのは少し暗い緑の逆三角形のバイザーをつけたジェノスでその額からは逆ハの字に触覚が伸びている。肩パーツや肘アーマーはカマキリの腹部のような細長い楕円のようなものがついており、背中から真緑の長いマントのようなものが2枚生えていた。
仮面ライダージェノスマンティスリンクはジェノスナイパーを鎌モードに切り替えるとそのまま空間を割くように振り翳した。
ファントムは即座にそれに合わせてファントムブレイバーの刃を立てて受け止めるもののそのまま後ろへと地面を滑った。
「あちらも大詰めですか。」
ジェノスがそう言うとファントムは病院内の様子をチラリと見た。そこではアニマホークリンクが見えない何かと戦っている様子だったが、劣勢に違いなかった。アニマの胸元から白煙が舞う。ファントムの第六感が警鐘を鳴らす。
「…いずれにせよ、貴様を退かなければならないのは確かだな。」
そう言うとファントムはウルフソウルカードをファントムブレイバーに翳して装填した。
〈ウルフ…charge…!!〉
「退け。俺は己の道を切り拓く。」
ジェノスも紫の粒子に包まれた剣先を見てドライバーのボタンを左の親指でゆっくりと押す。
〈チャージ、オン〉
緑色の電撃のようなものがジェノスの右足に集まっていく。
そのままお互いトリガーとボタンを押した。
〈ウルフッ!!オーバードスラッシュッ!!〉
〈マンティスッ!!ダークネスジェノサイドッ!!〉
ジェノスがゆっくりとファントムに迫ってくる。ファントムは居合いのような構えを取り、そのまま振り翳した。ジェノスは迫ってくる斬波に対して片足の回し蹴りを放つ。二つのエネルギーは凝縮し、爆発。2人の目の前に黒煙をあげた。
煙が晴れるとそこにはジェノスはいなかった。ファントムは気にも止めず、病院内へと駆け入った。
「大神さんッ!?」
「俺も加勢するッ!!」
「助かる…!!だが、アイツデケェ上に早えんだよ!!しかも透明になりやがるッ!!」
目の前には揺れる天井。ただ何かがいることがわかっているだけ。直後、ファントムの第六感が警鐘を鳴らす。透明な攻撃に刃を合わせるも後ろへと吹き飛ばされた。
「…重いッ…!!」
「…面倒ダ。ダガ、蛇目ノ若頭ハ殺シタ。次、邪魔ヲスルナラバ貴様ラモ殺ス。」
外から鳴るサイレンの音に気が付いたのか、透明な影は荒れ果てた病院内から姿を消した。変身を解除するアニマとファントム。
「大丈夫か!!神谷!!」
「はいっ!!先生こそ!!」
物陰に隠れていた詩音の安否を確認すると糸が切れたかのように鷹也は膝から崩れ落ちる。それを霊が支えた。
「上の…泉と富士野先生の様子を見ないと…!!」
「…そんなボロボロの体で何をするって言うんだ。一度、何処かに。」
そう言って霊が鷹也を待合室のソファーに座らせる。
…現場は散々な様子だった。ヘラクレスが病院内に入ってきたのはその直後だった。
アイテムや本作の設定について脚注をつけてみました。わかりづらかったら言うてください。改善します。広げた風呂敷をなんとか折りたたむ次第。もっと複雑になってく予定なんだよなぁ。失踪するなよ。はぁい。