寄生プレデターはシェイクハンズの夢を見るか   作:紅葉崎もみじ

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8 マスター×マスター

 ──三日後。

 

(‥‥?)

 

 睡眠から意識を覚醒させたノリヤは、違和感を覚えた。

 上体を起こし、確認するように腕を回す。

 しっかりと自分の意思で動く。

 

 目覚めた瞬間、まだ脳が活性化していない状態から体が起き上がり。脚が勝手に動き出すこともない。

 

「いや、普通なんやけども」

 

 生まれてから14年間(13年だっけ?)当たり前に動かしていた身体を、たったの三日自分の意思から離しただけで異常だと認識するとは。

 感覚とはほとほといい加減なものだとノリヤは思う。

 

 自分の状況、肉体。

 考えること、確認することが山ほどあったが。

 

 とりあえず‥‥。

 

「風呂はいろ」

 

 三日三晩、入浴どころかシャワーも浴びず動き回る状態にストレスが限界だった彼女は他を投げうって最優先でそれを選んだ。

 

 ‥‥。

 

 三日ぶりに身体の汚れを落としたノリヤ。

 ちらりと時計を見ると午後4時。

 夜明けまで走り、飯を食って眠る生活ですっかり昼夜が逆転してしまっていた。

 

 これは生活スタイルを戻す必要がありそうだ。

 誰に対しての言い訳なのか、そんなことを思考しつつルームメイトのベッドにもぐりこんだ。(自分のベッドは皮脂などで汚れているため嫌だった)

 たっぷりと眠った直後だったが、やはり肉体以外の部分で疲労が溜まっているのか。横になった瞬間から瞼が重くなり意識が沈んでいく。

 

 心地よく眠りにつく表情には、もう悲壮感も罪悪感も存在してはいなかった。

 

 + + +

 

 寄生プレデターはノリヤ身体の中で思考する。

 

 一旦身体の操作を停止させたが、様子を見るに再度自死を試みることはないだろう。

 操作して三日目にはすでに抵抗することはなくなっていたため、大丈夫だとは思っていたが。

 念のため、止めるための用意はしていた。

 

 二度と抵抗する気が起きないよう、脳に障害レベルのダメージを与える予定だったので杞憂に終わってほっとした。

 

 ともかく、目先のトラブルはこれで解消が完了した。

 

(‥‥)

 

 しかし、寄生プレデターは頭を悩ませていた。

 問題は片が付いたというのに。

 否、この場合問題がなくなってしまったから悩んでいるというのが正しいだろう。

 

 要するに、今後の指針を失っていた。

 

 以前まで、自身に強制された「命令」を素直にこなしていたが。

 その必要がなくなってしまった。

 もちろん、命令自体が無くなった訳ではない。

 だがその強制力が無くなっていたのだ。

 

 この時、寄生プレデターに自覚はなかったが。その理由は自身に明確な自我が生まれたからであった。

 つまり正確には命令の強制力が無くなったのでなく。

 強制な命令に抗う意思を持つことが出来るようになった、と言う方が正しい。

 

 しかしながら、抗ったところで「命令」以外にすることがあるのかと聞かれれば。

 答えは「NO」になる。

 まあ、寄生プレデターは返事などしないが。

 

 これまで何の疑問も持たず、愚直に命令通り人類を殺し続けてきた。

 そこに何の是非もなければ、損得もない。

 それ以外やることがなかったし、やる気もなかったというだけだ。

 

 だというのに、今更命令に抗うという選択を増やされても戸惑ってしまう。

 例えるなら特に主体性もなく親や教師の進めるまま進路を決めてきたため、ろくな将来の計画もない大学生のような状態だった。

 

 そんな人間(ではないけど)が起こす行動は、おおよそ決まってるものである。

 

 

 現状維持(特に何もしない)、だ。

 

 

 寄生プレデターは以前、宿主の身体を改造し学園内のペガサスを出来るだけ多く始末しようとしていた。

 自滅覚悟で。

 

 しかし、寄生プレデターはなにも死にたい訳ではない。

 むしろ壊滅対象であるペガサスに寄生してまで延命しようとしていたくらいだ。

 相当生き汚いと言ってもいいだろう。

 

 そんな存在が、自分が死ぬ前提の作戦を良しとはしない。

 となれば、以前破棄した計画を拾いなおすとしよう。

 

 

 長い時間をかけ、未だ自分の能力で補填している宿主の臓器を修復。

 そして寄生状態を解除し、離脱を試みる。

 

 

 その後のことは不明瞭だが、とりあえずの方針は定まった。

 

 こうして、いつまでかかるかも分からない目標を達成するまで。

 寄生プレデターはおとなしく現状維持することに決めた。

 

 + + +

 

 一方、体内に大学卒業後「ビッグなことをする」なんて言って特に行動もしない自宅警備員のような同居人が居る小高 ノリヤはというと…。

 

「あ~~~~…」

 

 だらけていた。

 

 あの後、自殺願望はとりあえず落ち着いた。

 もともと衝動的な行動だったこともあり、時間がたって冷静になっていた。

 

 それよりも先日までのブートキャンプで、そんな衝動など覚えていられる余裕はなかったし。

 

 なにより先日まで自身が行ってきた奇行。

 

 それによって周りへかけた迷惑と、晒した恥によって。

 自殺の動機などどうでもよくなってしまった。

 

 

 あんな醜態を周りに見せたのだ。

 今更自分だけ生き残ったとか、何もできなかったとか。気にする必要もない。

 要は、いろいろな意味で吹っ切れたのだ。

 

 

 その結果、彼女は見事に自堕落生活に突入してた。

 

 

 三日の奇行から、さらに三日がたったが。

 その間、彼女は寝て起きて飯を食い。ベッドの上でだらだらしてまた眠るという生活を繰り返していた。

 

 

 その理由は、奇しくも体内の同居人と同じく何もすることがなかったからだ。

 

 

 死ぬ気は一応なくなった。

 だが生きる理由があるかと言われれば「NO」と答えるだろう。

 

 

 もしも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだとすれば、復讐なんてベタな目的を立てられたんだが。

 あいにく(?)、先輩が相打ちの形で討伐済み。

 

 (てい)のいい口実もなく、宙ぶらりんのような状態だった。

 

「‥‥いや」

 

 そういえば、あった。

 生きる理由ではないが、真っ先に確認する事柄は。

 

 のそりと、ベッドから這い上がり自分の荷物をあさる。

 

「確か、このへんに…」

 

 入学してから、文房具なんかろくに触った記憶が無いため。

 目当てのものは、おそらく入居した時のままの状態で放置されているとあたりをつけ探していると。

 数分程度で、“それ”は見つかった。

 

 するとノリヤは、自分の右腕をまるでまな板に食材を置くように机に乗せ。

 

 ──左手に握られたカッターナイフを思い切り振りかぶった。

 

 + + +

 

(…またか)

 

 寄生プレデターはあきれ交じりにノリヤの左腕を操作。

 振り下ろす寸前の中途半端な体勢で静止させる。

 

 ここ数日、精神が不安定になっている様子がなかったが。

 まだまだ追い込みが甘かったか、と。

 宿主に対する拷問まがいの調教方法を検討し始める。

 

 しかし、寄生プレデターは気づいていなかった。

 ノリヤの顔には以前のような悲壮感も困惑もなく、ただただ自分の意思に反して動きを止めた左腕を冷静に観察していたことを。

 

「‥‥やっぱり止まった」

 

 ただただ走り続けた三日間。

 疲労困憊になりながらも、思考はめぐっていた。

 

 自分を操っているのは「何」なのか。

 自分を操っているのは「何故」なのか。

 そして、「何処」から自分を操っているのか。

 

 走っている間に、一応の仮説は立っていた。

 

 まず何が自分を操っているのかに関しては、可能性が多すぎて判断がつかない。

 とりあえず保留。

 

 次になぜ自分を操るのか。

 これに関しては、割と早い段階で「自分に死なれると困る」という結論が出た。

 どういう理由と理屈で困るのかはやはり分からんが。

 何かが自分を操るのは、決まって自死を行おうとした時だった。

 

 今現在も。

 

 そして最後の仮説。

 

 その何かはどこから自分を操っているのか。

 

 否、何処にいるのか。

 

「‥‥」

 

 瞳を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。

 

 動きが止まった左腕。

 その内部に意識を向ける。

 

 あの時──、

 脚が勝手に動き、起きている間ずっと走り続けている間。

 自分の身体の中にとある感覚があった。

 

 その感覚をどう表現するべきか。

 まるで心臓を自分の手足のように動かす感覚があるような。

 まるで手足を動かすための電気信号を、皮膚をなぞる指のように知覚できるような。

 ともかく奇妙な感覚であった。

 

 自分の内部。

 手足…否、筋肉へ命令を下す“糸のようなもの”が自分の身体に複雑に張り巡らされているのを感じるのだ。

 おそらくその糸が、自身の運動神経。

 あるいは筋肉そのものに干渉して、肉体を操っている。

 

 そして無数の糸が一点に集中する場所。

 自分の背中、首の付け根に近い部分に「それ」はある。

 

 否、

 

 “居る”。

 

「‥‥」

 

 ノリヤは推察する。

 存在を感じるということは、神経がつながっているということだ。

 つまり神経を通して脳へ何らかの信号が伝わっている。

 

 だとすれば…。

 

 

 逆にこちらから信号を送ることが出来るかもしれない。

 

 

「‥‥っ」

 

 頭に静止した左手が動くイメージを思い浮かべる。

 

 集中。

 

 腕を振り下ろす。

 

 そのための筋肉のしなり。

 

 そのための骨格の動き。

 

 そのための血管の躍動。

 

 そのための神経の煌めき。

 

 詳細なイメージをその“存在”へ送る。

 

 否、命令する。

 

 

(‥‥なっ)

 

 寄生プレデターは驚愕する。

 

 静止の命令を出した左手が、小刻みに震えだす。

 自身の支配に抗うように…。

 

 違う。

 抗っているわけではない。

 命令が無くなったわけでもない。

 

 ただ単に、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして、

 

(‥‥!)

 

 命令の通り、ノリヤの左腕は思い切り振り下ろされ。

 無防備な右腕にカッターナイフが突き立てられた。

 

(‥‥くそっ)

 

 寄生プレデターは右腕内部の「手」を硬化させ、いつぞやのように刃として展開しカッターを防いだ。

 

 自分の肉体から飛び出した異業を目の当たりにしたノリヤ。

 しかしながら、その表情には笑みが浮かぶ。

 

「…やっぱり、ウチの中(そこ)におったんか」

 

 まるでいたずらに成功した子供のように弾んだ声色。

 そこには自分の予想と、目論見が当たった喜びがありありと表れていた。

 

 ──と。

 

「うおっ!」

 

 右腕は弾かれる様にひとりでに動き出し、内手首の刃をノリヤに向ける。

 

 今度は、ほとんど無意識だった。

 

 一度でコツを掴んでいたのか。

 はたまた火事場の馬鹿力ってやつなのか。

 

 ノリヤは再度「背中」に命令し、自身の反射以上の速度で右腕を逆手でつかみ刃を止めた。

 

「やるぅ」

 

 感嘆するのもつかの間、自分の足に軸足を払われ体勢を崩す。

 

 すると反旗を翻していたはずの右手が、今度は床に着き素早く上体を支えた。

 かと思えば、左手が横っ面目掛け掌底を繰り出す。

 

 上体を反らして躱すと、その反動を利用し頭部を床にたたきつける──。

 

 

 その後、数十分ひとりの攻防が続いた。

 

 自分で自分と喧嘩しているようなものなのだから、その様子は滑稽なものだった。

 その場が自室で他者の目がなかったことは、ノリヤにとってせめてもの救いである。

 

 家具、私物がめちゃくちゃになった部屋で荒い息を吐く。

 まるで上下がひっくり返ったような惨状になっているのだから、隣近所に先の騒動は伝わっていると考えて相違なかろう。

 

 ‥‥まあ、散々醜態と恥辱をさらしている現状では今更だと。

 ノリヤはあきらめの境地だった。

 

 そして、その肉体の内部に居る寄生プレデターも全く同じ気分を味わっていた。

 

 まさか宿主を支配できないどころか、逆に能力を利用されるとは。

 自身が積み上げてきた自負と尊厳を滅茶苦茶に踏み荒らされた気分だ。

 

 これでは、現状維持などできるはずもない。

 先の方針は、宿主が(支配は出来なくとも)自身に操られ何も抵抗できないことが前提の指標だった。

 こうなっては、その目論見は完全に崩壊だ。

 

 とっさに肉体を操作し攻撃を加えるも、もう現状を打破する可能性など残ってはいなかった。

 寄生による支配はできない。

 寄生を解除して脱出することもできない。

 暴力で抵抗しようにも、そもそも宿主の命に自身の生命を委ねている特性上。万が一を考えれば、本気の抵抗などできるわけもない。

 現に宿主に軽くあしらわれ、文字通りの無駄な抵抗に終わった。

 その上、これにより自身が完全に敵対的な存在であると宿主も認識することになるだろう。

 

 寄生プレデターが阻止していた、他ペガサスへ助けを求める行為も今のノリヤなら問題なく行うことが出来る。

 

 総じて──詰み。

 まさにお手上げだと、寄生プレデターは投げやりな思考に陥っていた時。

 

「心配せんでも、あんたをどうこうせえへんよ」

 

 ノリヤは身体に巣食っている得体のしれないはずの存在へ言葉をかける。

 それは、通常であればあり得ない発言であろう。

 

 これにはいくつが理由があった。

 

 ひとつ、ノリヤは未だ自分の体内に居る存在がプレデターであると認識していないこと。

 もちろん可能性の一つとして考えたことがないわけではないが。

 そうだとすると、ペガサスの持つ「プレデターは例外なく人間を攻撃する」という常識がその答えを否定する。

 理由は不明だが、自分が死のうとするのを止めた存在が。人類を抹殺する敵対生物だというのは矛盾している。

 まさか旧時代の映画のように、未来で人類の指導者になる自分を守るためにタイムマシンでやってきたって訳でもあるまいし。

 

 そしてふたつ、こちらの理由の方が比率としては大きなものになる。

 

 ノリヤは自分が近々死ぬことになると達観しているためだ。

 現在、彼女の活性化率は【80%】を超えている。

 抑制限界に至るまで、長く見積もっても半年が限界だろう。

 

 不謹慎な例えだが、死刑囚が不治の病に発症するようなものだ。

 そんなものでどうこうなるより先に、首をくくってお終いだろう。

 

 要するに、今のノリヤにとって今の状況はすべて些末なことになってしまっている。

 ということだ。

 

 

 なので、先ほどの行動にも深い意味はない。

 ただ、自分を操っていた存在が体内に居るのかどうか。純粋な好奇心で確かめようとしただけだ。

 

「ただ──」

 

 ノリヤの口元に、にんまりとした笑みが浮かぶ。

 

「ちょーっち、()()だけ払ってもらおうかと…な」

 

 + + +

 

 所は変わって、アルテミス女学園の校舎。

 その一角に存在する、シミュレーション施設にノリヤの姿はあった。

 

 ここは最新のAR技術を利用した仮想戦闘を行える訓練施設である。

 入学した新入生は、まずはここで戦闘のイロハを学ぶことになる。それはノリヤも例外ではなく、ここで「近接戦闘に適正ナシ」の烙印を押されてから実に10ヵ月ぶりの場所で。もはや懐かしさすら感じていた。

 

 と、それだけ長い期間シミュレーション施設に立ち入っていないノリヤを不真面目に感じるかもしれないが。

 むしろもうすぐ進級という時期に再び訪れる彼女の方が異端なくらいだ。

 

 というのも、ここはホログラムによって訓練を行うわけだが。

 その内容は本当に基礎的な内容であり。

 例えば武器の扱い方から始まり。街森での移動の仕方、集団での立ち回り方など。

 ゲームで例えると、チュートリアルのようなものばかりだ。

 

 一応、プレデターのホログラムとの擬似戦闘も行えるが。

 その内容はワンパターンで単調であり、なおかつ戦闘の緊張感も感じられない。

 結果、はじめての実戦を経験したペガサスからは「特に意義を感じられない」と判断され自然と足が遠のいていくという訳である。

 

 しかし、まったく無意味な施設という訳ではない。

 ごく稀にだが、何らかの心境の変化で使用する武装を変更するペガサスもいる。

 その場合、流石にぶっつけ本番で新しい武器を使う訳にもいかないため。ここである程度仕様を確認するという訳だ。

 

 今回ノリヤが訪れた目的も、似たようなものである。

 確認するものが武器か己の身体かの違いはあるが。

 

 

 ノリヤは操作パネルをいじりつつ、施設で使用できる「ALIS」のレプリカを物色する。

 

 ALIS。

 討伐したプレデターの遺骸を加工した素材「プレデターパーツ」を使用し、現代の科学の結晶が惜しみなく使用されたペガサス専用の対プレデター用特殊兵装の総称である。

 

 ‥‥詳しい仕様を説明をすると、下手な論文一本分を軽く超えた文量となるため省くが。

 

 簡単にまとめると、プレデターパーツを使用することにより従来の兵器よりも高い効果を発揮することができ。

 アシスト機能により戦闘の補助まで行えるうえ。

 P細胞には発熱発電する機能もあるため、バッテリーなど動力源も必要としない画期的な未来武器なのである。

 

 ‥‥。

 もちろん、都合の良い話などそうあるわけもなく。

 いろいろときな臭い事情も存在しているのだが、今は割愛する。

 

 

 ともかく、ノリヤは訓練で使う武器を選んでいた。

 

 元々ノリヤは近距離戦が苦手であったため弩──クロスボウ型のALISを使用していた。

 

 実のところ、遠距離型のALISはアルテミス女学園において人気がない。

 理由はシンプルに、いくらアシスト機能があるとはいえ戦闘で使用および命中させるのにそれなりの技量が必要であるため。

 

 そして、戦闘で使用した矢などの消耗品は自己負担であるためだ。

 要は撃てば撃った分だけ、支給される電子マネーの量が減る。

 

 もちろん武器であるため剣などの近距離型のALISもメンテナンスや修理などの費用がかかるが。

 それは遠距離型も同じことであり、単純に必要経費+消耗品代と追加の費用がかかるのだ。

 

 それを嫌がり入学当初、急に近距離型に転向するペガサスは一種のお約束になっていた。

 

 閑話休題。

 

 今回、ノリヤが選んだ武装は大剣──クレイモア型である。

 選別に特に理由はない。ただ単に、アルテミス女学園にて一番使用率の高いポピュラーな武器なので手に取りやすかっただけだ。

 

「‥‥」

 

 子気味のいい効果音と共に、訓練が始まる。

 室内の様相が拡張現実によって様変わりし、数体の敵影が出現した。

 

 ──初めての時は、ホログラムとはいえ驚いてすっ転んだんやっけ。

 

 目の前に敵が迫るも、ノリヤの内心にはそんな場違いなノスタルジーが沸いていた。

 攻撃が彼女の体に触れる寸前、

 

 す‥‥っ。

 

 なんて、オノマトペが聞こえそうなほどあっさりした様子で躱した。

 

「…うん、いける」

 

 そして返す刀で、首を両断した。

 

 何故、そう疑問に思うことだろう。

 多少なりともスポーツの経験があれば、不得意な動作を改善させることは難しいことは分かるはずだ。

 では現在ノリヤの身に起こっているこの現象をどう説明するのか。

 

 ずばり、寄生プレデターの肉体操作である。

 現在のノリヤは目で見た情報から、最適な動きをイメージし体内の寄生プレデターへ命令。

 命令を受けた寄生プレデターは、その通りにノリヤの肉体を操作するというカラクリだ。

 

 いや、操作というのは流石に誇張だ。

 寄生プレデターが現状行えるのは、ノリヤの筋肉に擬似的な電気信号を流し反射を起こすことだけだ。

 せいぜい動きの補助になっているくらいであろう。

 

「っ!」

 

 飛び込んでくるような体当たりを、その下に潜る様な形で回避し。

 尚且つ、すれ違いざまに剣を振りぬき。敵を二枚におろした。

 

 それでも。

 そのわずかな補助が、確実にノリヤの動きを改善させていた。

 

 その後も危なげなくノリヤは敵を全滅させ訓練を終了させる。

 訓練の内容が、入学したての初心者向けのものだったとしても。以前までの壊滅的な成績に比べれば大きな進歩といえよう。

 

「これなら、なんとかやれる…」

 

 壁にかかった時計、時間と合わせて表示された日付を見ながら。

 安堵とも、達成感の発露ともいえる息を吐きノリヤは満足そうに頬を緩ませた。

 

 

 時に一月下旬。

 

 冬の大規模侵攻が間近に迫っていた。




簡単に言うと
ZETMANの強化版アルファススーツみたいな理屈である

※遠距離型ALISが不人気云々と
 消耗品がペガサスの自己負担である設定はオリジナルです
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