長編ではなくて、恐らく中編程度の長さになる予定です。
魔法使い。人には決して触れれない法を用い、人には決して出来ない事をする存在を人はそう称した。
曰く、魔法使いに壊せぬ物は無いらしい。とある国がたった一人の魔法使いに戦争を仕掛けた。屈強な戦士も、聡明な策士も、堅牢な城壁も、戦争に必要な物は全て所持していた国が負ける筈が無かった。
国と魔法使いとの戦いは誰もが予想した通りの虐殺であった。けれど、それは誰もが予想しなかった虐殺であった。なんて事は無い、それは魔法使いによる単純な虐殺であったのだ。
曰く、魔法使いに治せぬ物は無いらしい。現存していた医者達が首を横に振り、死をただ待つだけだったお姫様。ふらりと立ち寄った一人の魔法使いは首を傾げて、肩を竦めて、ふわりと指を振るう。
すると、どうだろう。お姫様の病はたちどころに癒えたのだ。医者達は奇跡だと言い、お姫様も王様も涙を流し魔法使いに感謝をした。
まるで御伽噺の様な、不思議な出来事。語り継がれたソレ。
「あぁ……」
女はもぞりと布団を揺らした。
長くなった黒い髪を寝癖で跳ね上げ、寝起きの頭を枕に押し付けながら手を伸ばす。日の光を遮る布を掴み、軽く横へと動かした。
橙色に輝く太陽。それに照らされた黄金にも似た色の雲。
その日差しはしっかりと女の顔に当たり、女は顔を顰めた。
「んぅ……朝日が眩しい」
夕日の間違いであることにツッコミをいれる人間が居ない事を知りながら女はそう呟き、背筋を伸ばしながら大きな欠伸をしたのであった。
そしてそのままベッドへと倒れこむ。もぞもぞと布団に身を擦りつけ、布団へと潜り込んでいく。
「まだ……もう少しだけ……」
もぞもぞと動く布団が数刻程経ち動かなくなる。
日は沈み、星が煌めき、月が地面を照らした所で布団はもう一度もぞりと動いた。
中からはやはり黒い髪を逆立て、瞼が重いのか黒い瞳が半分程しか見えていない女が現れる。野暮ったい黒いローブの上から腕を擦り、また欠伸を一つ。
「もう夜か……ふぁ……ふぅ」
月を見上げてから口を大きく開けて欠伸を一つ。黒い瞳の中に丸い月が映り溜め息を吐き出した。
凝り固まった肩を持ち、首を動かす。骨が小気味よく鳴り、女の口から息が漏れる。
そしてそのまま横に倒れる。女を待っているのは脱出した布団だ。
「夜なんだ……寝るに限る」
そうして女はまた瞼を下ろして呼吸を整えていく。数刻程すればまた穏やかな呼吸音が部屋の中に響いた。
これはそんな怠けている魔法使いの一人、『黒の魔女』のお話なのである。
>>概要
ほのぼの六割、魔法要素二割、残りは適度に埋める予定です。
>>黒の魔女さん
黒い髪と黒い瞳の魔女さん。
文中で表しているが、極度の怠け者。