俺、○○になっちゃった!! 作:シグナー信者
「レグルス……こんな傷になるまで、たった一人で戦っていたなんて……恐がらないで、あなたを傷つけたりはしないから……」
龍可が前に出てレグルスに近づこうとした瞬間、レグルスは龍可に向かって大口を開くと、鋭い牙を見せながら吼える
「イヤァ!?」
怯えてのトルンカ背に隠れる龍可
「お止めくだされ!この娘はエンシェント・フェアリー様を救う為、はるばる異世界からやって来られたのですぞ!」
レグルスを止めようと声を掛けるトルンカ
「何だと?」
「そうなの!だから安心して……」
「ふざけるなァーーー!!!」
龍可が喋り終わる前に、レグルスはその鋭い牙を向け、二人に対して飛びかかってくるが、それを躱し木の陰に隠れる
「やはり無理じゃあ……ここは一先ず逃げよう!」
「お願い信じて!私……エンシェント・フェアリーと約束したの!この精霊界を守るって!」
「…やはりそうか。貴様もこの私を捕らえ、エンシェント・フェアリー様の力を悪用しようとしているのか…!」
「え…」
「はて?さっきから話が嚙み合っとらんような」
「はっ!トルンカ!あれ見て!!」
龍可はレグルスの左後足に妙な物が付いていることに気付く
「あ!あれはカースド・ニードル!?針がマイナスになっとるっちゅー事は……」
「さっきから、私達の言葉が反対に聞こえてたのよ」
「何ちゅーこった!レグルス殿のご乱心はアレのせいじゃったんじゃ!」
トルンカは頭を抱えて嘆くと、レグルスが再び唸り声を上げる
「精霊界を汚す悪党共め!貴様等の好きにはさせんぞぉーーー!!!」
「誤解よレグルス! 私はあなたの敵じゃない!」
「ウガァァァーーー!!!」
獰猛な雄叫びを上げながらレグルスが襲い掛かって来て、二人は逃げ出す
「トルンカ!あなた魔法使い族なんでしょ?何とか出来ないの?」
「無理なんじゃ!子供のままでは魔法が使えん!」
「どうしよう」
「待て!良い考えがある!レグルス殿には、言葉が反対の意味で聞こえるんじゃろ……ならば!」
トルンカは立ち止まり、レグルスに振り向く
「やーい!お前なんか大っ嫌いじゃ!レグルスのバーカバーカ!不細工ライオン弱虫ライオン!」
レグルスはトルンカに対して怒りの雄叫びを返す
「どわぁぁぁ!?ヒィィィ!?」
「私にその様な浮ついた世辞が通じるとでも思ったか!」
「駄目じゃった~」
「一体どういう意味に聞こえていたのかしら……」
龍可はレグルスの左後足を見る
「(なんとかして、マイナスを元の針を元に戻すことが出来れば)」
するとレグルスは何かに気付いた様に顔を上げる
「何かが来る…!」
「「えっ?」」
その瞬間、ゼーマンの部下の猿達が次々と現れ、レグルスを取り囲んだ
「また貴様等か……」
龍可とトルンカは倒木の陰に身を潜める
「とうとう見つけた」
「ゼーマン様ご命令!今度こそ捕らえる!」
ジリジリとレグルスに詰め寄る猿達。それを倒木の陰から見守る龍可とトルンカ
「マイナスになれ~!」
「馬鹿!よせ!忘れたか?奴の足!マイナスのカースド・ニードルある!」
「っ!?そうか……マイナス同士接触させる!強力なプラスエネルギー変わる!」
レグルスは包囲網を破ってその場から逃げ出す
「逃げたぞ!追え~!!」
猿達は全員でその後を追っていった
「マイナス同士を接触させると、強力なプラスエネルギーに変わるのね!よし!」
「あっ!龍可ちゃん!待ってくれ!」
倒木の陰から出てくる龍可とトルンカもレグルスの後を追う
レグルスを見失った猿達は手分けしてレグルスを捜し回る
「ん?」
その内の1匹が跳ね回りながら森を捜索していると、目の前に現れた龍可を見つける
「やーい!捕まえてみなさいよぉー!」
「お前!シュバンクの街に居た小娘!なぜこんなところに!?」
猿は龍可を捕まえようと追いかける
「トルンカ!今よ!」
「ほいさ~!」
トルンカが仕掛けた罠を発動させる
「ん?え?」
マイナスの針はモンスターを上空へと吹き飛ばし、その衝撃で猿はカースド・ニードルを落とし、龍可がそれをキャッチする
「これを使えば……」
「大成功じゃったな……」
そうして二人はレグルスを追いかけるのであった
同じ頃
「……ここか」
夜の帳が降りる世界蒼白い月が薄雲を透かして照らし出すのは、一面に広がる荒野と、そこにそびえる黒き山だった。
「……ここ、だったよな。【エンシェント・フェアリー・ドラゴン】が封印されている場所って……」
ゼーマンの部下に連れられて、龍亞は【エンシェント・フェアリー・ドラゴン】が封印されている山に着いた
「ありがとう……ここまででいいよ」
そういうと、猿にお礼を言って、帰らせた
「……」
かつて明るかった瞳は今、深い闇に染まっている龍亞は【エンシェント・フェアリー・ドラゴン】に視線を向ける
「エンシェント・フェアリー・ドラゴン……聞こえるか?龍亞だよ……龍可の兄の」
声を上げる。だが、返事はない。ただ風が、木々の間を寂しく抜けていくだけだった。その風の音に、龍亞は小さく眉をひそめる
「どうしてこうなっちまったんだろうな……」
独り言のような声が夜気に溶ける。ひとつ息を吐いて
「……なあ、答えてくれよ。どうして……どうしてオレは、ダークシグナーなったの?オレだって、龍可を守りたかったのに……!」
風が鳴くが、封印の奥からは何の反応もない
「龍可の約束を破ったから?変なカードばかり作るから?」
声が少し震える。それは怒りでも悲しみでもなく、ただ、胸の奥を締め付けるような痛みだった
「……信じられなかったよ!夢かと思ったよ!だけど現実は、違ったんだ。龍可はシグナーで、オレは……ダークシグナーに堕ちた。どうして、そうなっちまったんだ……」
叫びは虚空に響いた。だが山は沈黙を貫く
「……わかってるよ。お前はオレを拒んでる。今のオレが闇のダークシグナーだから……そうだろ?」
静かに笑う。それはどこか寂しげで、皮肉の混じった笑みだった
「それでいい。オレの道は、もう決まってる」
胸の奥では何かが確かに疼いていた。それが悔しさなのか、悲しみなのか、もう自分でもわからない
「龍可……オレはもう、お前とは違う場所を歩く。けどな……それでも、願ってるよ。お前が……シグナーがこの世界を、守れることを」
ただひとつ確かなのは、ダークシグナーでもなお、龍可を妹を思い続けているという事実だった
「……いずれ戦うことになっても、俺の中にある光の命を使って、このカードを完成させるよ」
そういうと何も書かれていない白いカードを取り出しながら言う。そして彼はゆっくりと踵を返し、山を背に歩き出した。が【エンシェント・フェアリー・ドラゴン】一瞬だけ青白く光り、山に淡い風が流れた。その風はまるで、かつての龍可を包んだ優しい声のように、何も言わず、ただ、彼を見送っていた