エレン・ジョーに血のつながってないグレートな弟が存在する概念   作:むーんすとーん

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ある日降りてきたネタを深夜テンションに乗せて放出します。


#1

 

「...遅い...」

 

時刻は夕方、新エリー都内のとある高校の教室の一角にて生徒たちが各々帰宅や部活動の準備をしたりしている中でサメのシリオンの少女エレン・ジョーは仲の良い女子生徒三人と共に雑談しながらとある人物を待っていた。

 

「ウチらのおしゃめはまたあの後輩くん待ってんの?」

 

「エレンほんとあの子のこと好きだよねー。もういっそ付き合ったら?」

 

「付き合うって...別にあたしと丞助はそんなんじゃ...」

 

 彼女たちの言葉に対しエレンが顔を真っ赤にしながら反論しようとすると教室のドアがガラガラと開き男子生徒が一人入ってきた。身長は180cmぐらいで小さなサメの形の銀の飾りのついたワインレッドのベルトのチョーカーが目を引く。

 

「やれやれやっと終わったぜ...帰ろうぜ姉貴、ってうおっ!?」

 

「約束の時間より4分遅い...明日からもっと早く来て。あたしが疲れて倒れたらどうすんのさ。」

 

 エレンは男子生徒が入ってくるなり彼の胸元に飛び込み両腕とサメの尻尾を背中側に回しながらそのまま顔をうずめる。彼は吉良丞助(きら じょうすけ)。エレンが幼少のころから実の弟のように可愛がってきた彼女にとって何にも代えられない存在である。

 

「ご、ごめんな。同じ掃除当番のやつがサボりやがったもんで、そいつらの分までやんなきゃならなくなっちまってさ。」

 

「ふーん...。丞助、優しいのはあんたのいいとこだけどあんたが真面目にやってないやつの分まで引き受ける理由ある?あたしと掃除どっちが大事なのさ?」

 

「それは...「あたしだよね?」えっと「“あたし”だよね?」はい...。」

 

 先ほどまでの口ぶりとはまるで逆の彼女の口から飛び出す丞助に対する独占欲あふれる言葉の数々にエレンの友人たちは複雑な思いで二人を見つめている。

 

「あーあ、見せつけてくれちゃって。二人とも無自覚なのが恐ろしい恐ろしい。」

 

「ってかあれで付き合ってないってマジ?」

 

「ってか姉貴そろそろバイトの時間だろ?ライカンさん達に迷惑かけるわけにいかねえし早くいった方が良いんじゃあねえの?」

 

「良いの...今日は休む...このまま帰ろ...?丞助が来てくれただけであたし十分だもん...」

 

「何が十分なんだよ...。よし分かった!もし姉貴がバイト行ってくれたら今日の夕飯に姉貴の大好きな唐揚げ作ってやる!」

 

「え...!?ほんと?」

 

「ホントだよホント!バイト行ってく「行く!今すぐ行く!」おい姉貴!?」

 

 丞助の言葉に沈み切っていたエレンのテンションは最高潮に昇り、さながら獲物を見つけた鮫の如き速さでバイト先へと向かっていった。

 

「ったく仕方ねえなあ。すんません先輩方!いつも姉貴がお世話になってます!」

 

「ううん全然!」

 

「むしろこっちがエレンのお世話になってるぐらいだし。」

 

「そっすか。なら良かったっす!じゃ俺は夕飯の支度しなきゃなんで帰ります!先輩方お気をつけて!」

 

「うん!丞助くんもね!」

 

 人懐っこい笑みを浮かべて丞助は教室を後にする。エレンの友人たちの間で近々丞助にエレンとの関係を問いたださねばと決まるのはまた別の話。

 

 

 数時間後、エレンのバイトのシフトの時間が終了し、ところ変わってエレンと丞助が住むマンションの一室、丞助はキッチンに立ち夕飯の準備をしてエレンは学校の制服から部屋着に着替えながらご飯ができるのを心待ちにしていた。

 

「ほいっ。出来たぜ姉貴!姉貴が大好きな俺特製の唐揚げだ!」

 

「いただきます。」

 

「おう!いただきます!って食うの早!?唐揚げもう半分ぐらい無くなってるし!?姉貴俺の分も残しといてくれよー?」

 

「大丈夫...もぐもぐ...いっぱい作ってくれたから...もぐもぐ...簡単には無くなんない...」

 

 エレンは出来上がった唐揚げを米と共に空腹の勢いのままかきこむ。家事はもともとエレンが主にやっていたのだが彼女がバイトを始めてから家にいない時間が増えたので自動的に丞助がやるようになった。

 

「まあ姉貴は体質的にエネルギーの消費量尋常じゃねえからな。シリオンってのはみんな姉貴みてえな感じなのか?」

 

「もぐもぐ...多分あたしぐらいじゃない?ボスはあんま食べてるとこ見ないし。」

 

「食いながら喋んのやめてくれ。行儀わりいぞー?」

 

「ん...ごめん...もぐもぐ...(丞助の作るごはんがどれも美味しいのが悪いのに)」

 

 学生の身分でありながら、過酷なバイトに身を投じるエレンにとって丞助の作る料理は丞助本人と同じくらい日々の癒しなのである。余談だが彼女は最近丞助のご飯を食べすぎて尻尾が二回りから三回りほど大きくなっていてダイエットに打ち込むべきか悩んでおり丞助はそれに気づいているが喧嘩になるのが怖いので声をかけることができていない。

 

「ねえ丞助。」

 

「ん?どした姉貴?おかわりか?」

 

「おかわりなら後でもらうけど、今は違う。その、丞助はさ。彼女とか出来たの?」

 

「きゅ、急だなおい。彼女はそりゃ欲しいと思うことぐらいたまにあるけど、俺あんま自分の好みのタイプとかわかってなくてよ。そういう話にまだ首を突っ込む気になれねんだわ。」

 

「そっか。なら良かった...。」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いや、なんでも...」

 

 読者の皆さんに端的に伝えるとエレンはツンツンした態度でよく誤魔化しているが極度のブラコンで丞助に対して精神的にかなり依存しているので丞助がいつ自分の下を去ってしまうか毎日不安で仕方がないのである。

 

「というか、そういう姉貴はどうなんだ?彼氏とか、まあ彼女でもいいけどできたのかよ?」

 

 一方丞助の方はというと依存の度合いはエレンに遠く及ばず、お互い成人するのも近いのでできることなら自立してそれぞれの夢ややりたいことに注力できるようにした方が良いと思っている。

 

「あたしも、似たような感じ。好きなタイプとかわかんない。」

 

 エレンとしては丞助がいればそれでいいので他の人間に興味はないと言いたかったがそれを言うと丞助が戸惑ってしまうと思い心にもないことを口にしてしまい、エレンの胸にズキンと何かが内側から食い破ってくるような痛みが走る。

 

「ふーん、まあみんなそんなもんだよなあ。「丞助」ん?どした?」

 

「丞助は、もし彼女とか出来たらその人のとこに行っちゃうの?」

 

「その人のとこに行くって、同棲するって意味か?」

 

「うん、そんなとこ。」

 

「うーんどうだろなあ。正直に言わせてもらうと俺が離れちまったら姉貴の暮らしが割と心配なんだよなあ...。」

 

「む...。余計なお世話。」

 

丞助の軽口にエレンは頬を膨らませるが、表情に反して彼女の尻尾は嬉しそうにピチピチと揺れていた。

 

「悪かったよ、とにかく今はまだ姉貴のとこから離れる気はねえから安心してくれや。」

 

「ん、そか。」

 

 丞助が自分のもとにいて、自分に向かって微笑んでくれる。今の自分にとってこれこそが一番の生きる理由なのだとエレンは改めて認識し、夜は更けていった。

 

 

 

 次の日の放課後、丞助はエレンと同じクラスの大企業の御曹司である先輩に屋上に呼び出されていた。

 

「んで、なんなんすかドリアン先輩?俺に聞きたいことって?」

 

「アドリアンだ!全く、単刀直入に聞くが吉良丞助!お前はエレンさんと同棲していると聞いたのだが本当か?」

 

「同棲っつーか、なんつーか。まあ家族みたいなもんなんで一緒に住んでるってのは間違いじゃないっすね。」

 

「ちっ。この僕を差し置いて羨ましいやつめ!とにかく!一緒に住んでいるということは!お前はエレンさんの食や音楽の好みやその他諸々を把握しているんだろう?」

 

 ここまで聞いて丞助はああまたかと誰にも聞こえない大きさで独り言ちる。エレンは長い期間一緒に住んでいる丞助ですら時々見惚れてしまいそうになるほど容姿端麗なので彼女をなんとかして手に入れまいと、同居している丞助に協力してもらおうとする輩が絶えないのである。エレンの友達にも協力してもらって色々対処しているがそれでも三日に一回はこのような感じのことが起きる。内心丞助は俺をどうこうしようとするより直接姉貴に告白すればいいのにと辟易している。

 

「うーんまあ大体は。でもやめた方が良いと思いますよ?姉貴、勘いいからどんな策練っても俺が関わってることバレて幻滅されて撃沈するのがオチっすよ。」

 

「くっ...うるさいうるさいうるさーーい!!!!僕の言うことは絶対だ!いいから教えろ!」

 

 よっぽど頭にきたのかアドリアンは胸元のポケットからカッターを取り出し切っ先を丞助に向ける。

 

「おいおい物騒すぎだろ。先輩、そんなもんしまってくれ。もし本当に姉貴のことが好きなら姉貴の近くにいる俺に手を出すなんて馬鹿なことしちゃいけねえことぐらいわかんだろ?」

 

「様子見で下手に出ればつけあがりやがって!!いいか!?僕の言うことを聞かなければこいつでお前の無駄に高そうなチョーカーごとお前の首を切り裂いてやる!!」

 

 さすがは大企業の御曹司。普段から高級なものを見る機会が多いのだろう、脅しの材料に丞助のチョーカーを出してきた。だが...。

 

「おい、先輩...」

 

 彼にとってそれは地雷である。

 

「今あんた、このチョーカーのことなんつった?」

 

「ん!?だから...」

 

 言葉を返そうとしたアドリアンの顔面に金剛石の塊が高速で突っ込んできたかのような衝撃が走り、アドリアンはその場にのたうち回る。

 

「ぬがあああああ!?鼻が!?鼻があああ!?」

 

「俺のことはいくらでも馬鹿にしてもいいがよ、姉貴と姉貴がくれたこのチョーカーを馬鹿にしたり危害を加えようとするのは何が何でも許さねえ!!このチョーカーの装飾がサ〇エさんみてーだとォ!?」

 

「ふぇ!?誰もそんなこと言ってな...「確かに聞いたぞコラァ!!!」ぎゃああ!?ごめんなさいいいい!?」

 

 苦しむアドリアンなど気にせず丞助は怒りのままに彼を蹴り続ける。そして怒りが静まり丞助の蹴りの雨が止んだ後。

 

「く、くそぅ...。痛いぃ...。おい!こうなったら訴えてやる!恋愛のアドバイスをもらいたかっただけなのにこれだけの怪我をさせられたんだ!間違いなく僕が勝てる!」

 

 怪我をする原因となったのは誰なのかわかっていないのだろうか。ふてぶてしく法的措置をとろうとしてくるアドリアンに呆れながら丞助は話し始める。

 

「ったく。まだそんな元気あったのかよ。うーむ確かに訴えられたら間違いなくあんたが勝つなあ。姉貴にも迷惑をかけちまうなあ。」

 

「そうだろそうだろ?なら今すぐ...!」

 

「もしかしたらそう言うかもと思ってよ。もう既にあんたを治しといた。」

 

「...は?何を言って...!?え!?」

 

 アドリアンがふと自分の体を確認するとあれだけ顔面や体に残っていたはずの傷や痣、制服についた汚れや破れた箇所がすっかり治っていた。

 

「な、治っている...!?」

 

「動けるかい?動けるだろう?傷はすっかり治っただろう?いいか?今日のことは秘密にしといてやる。その代わり二度と妙な真似すんなよ?特に姉貴に対してはな!!」

 

「は、はいい!?二度としません!?すいませんでしたああああ!?」

 

 アドリアンは情けない顔で一目散に退散していった。

 

「ふう。一件落着っと。てかマジでいい加減にしろよなあ。姉貴と付き合いたいなら姉貴に言えっての!!回りくどいやり方は印象悪いって。」

 

「...丞助、やっと見つけた。」

 

「うおっ、姉貴!?なんでここに...?」

 

「また来るのが遅いと思ってあんたの教室に行ったら丞助があのいけ好かない御曹司に呼び出されて屋上に連れていかれたって話を丞助と同じクラスの子から聞いた。で、急いで来てみたらものすごいスピードで走るあいつとすれ違った。丞助、あいつと何があったの?」

 

「そ、それはかくかくしかじかで...」

 

 丞助はエレンにここで何があったかをできるだけマイルドな表現で伝えたが、彼女の尻尾は不機嫌そうにブンブンと高級なコントラバスの如き美しい低音を奏でながら揺れている。

 

「ふーん、まだそういうやついたんだ。けど丞助、よく言ってるけど無茶なことはしないで。」

 

「わーってるよ姉貴。まあ確かにあいつが子分みてえなの連れてきたりしてたらやばかったかもな。」

 

「でしょ?丞助になにかあったらあたし...。」

 

「ちょっ、姉貴!?」

 

「ほんとに、ほんとに心配したんだから...!」

 

 緊張が解けたのかエレンは今にも泣きそうな顔で力なく丞助に抱き着く。そんな姉の様子に丞助はこれは困ったなと片手で頭を抱えながら優しい声色でエレンに話し始める。

 

「姉貴、心配かけてごめんな。これからはああいうのは出来るだけ無視するようにすっからよ、今回はそれで許してくれねえかな?」

 

「...晩御飯にチーズインハンバーグ作ってくれたら許す。」

 

「んだよ、そんなのでいいのか?お安い御用だぜ。この吉良丞助にお任せあれってな!」

 

 丞助は誇らしげに自分の胸に手をポンと当てる。

 

「やった。今日はバイトのシフトも入ってないし一緒に帰ろ、丞助。」

 

「おう!」

 

 優しく光る夕陽を背に二人は帰路についた。後日まだ懲りていなかったのかアドリアンが子分たちを引き連れて丞助をリンチしようとして返り討ちにあうのはまた別の話...

 

 

 




ってな感じです。正直続けるかは未定です。
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