「———」
誰かがアナタの名前を呼んでいる。
「——そろそろ起きなさい」
隣から聞こえるやわらかな響く声で意識が徐々に鮮明になっていく。貴方は車に揺られて、いつの間に眠ってしまったようです。
「—-おはよう。長旅で疲れていたようだな」
目を擦りながら起きると、軽トラックを運転している貴方の父親が穏やかな声で出迎えてくれました。
童顔と黒ぶち眼鏡を掛けている以外特徴のないこの人が貴方のお父さんです。
お母さんは先に引っ越し先に居ますのでこの軽トラックには乗っていません。
貴方のお父さんの言う長旅とは、現在引っ越しの最中であることを指しています。貴方たち家族はとある事情で首都から引っ越すことになりました。
引っ越すといっても、一時的に滞在するといった方が正しいかもしれませんね。
「外の景色を見てご覧?素晴らしい景色だ」
貴方はお父さんの言葉に釣られて視線を窓へと向けると、そこには豊かな自然がありました。
都心では決して見られない絶景目を奪われました。水が張られた一面に広がる田んぼや畑。窓を開ければカナカナカナと蝉の鳴き声が聞こえてきます。
都会では経験のしたことのない、自然に驚きと喜びが混じった声を上げます。
「そうかそうか。ここ気に入ったんだな」
貴方のそんな様子を目撃したお父さんは大層嬉しそうに笑いました。貴方がここを一目で気に入ったと見抜いたようです。
この人の洞察力の高さは実の息子である貴方は慣れているので特に動揺することはありません。むしろ、観察力の高さをどうしてお母さんに発揮しないのか常々不思議に思っています。
「……いや。うん。それはゴメンナサイ」
疑問を持った視線に居心地の悪さを悪さを感じているようで、片言で謝罪をします。
お父さんと家族の親睦を深めていると、目的地である新しい我が家にたどり着きました。
貴方たち家族が引っ越してきた場所は雛見沢。とある山奥の寒村した村ですが豊かな自然環境があります。
貴方たち家族、特に貴方には適した環境といえるでしょう。
「ここが新しい自宅だよ」
車から降りた貴方たちの眼前には2階建ての古民家が在りました。
ここが生活していく新しい家のようです。
前に住んでいた広大で洋館のような家に比べたら質素に見えますが、普通に暮らしていく分には困ることはないでしょう。
「それじゃあ荷物下ろそうか。手伝ってくれるか?」
お父さんからのお願いに貴方は頷きます。
さっきまで寝ていたのでこれぐらいは平気だと笑うと、お父さんは嬉しそうに笑い頭を撫でてきました。
貴方はもう中学生。思春期特有の恥ずかしさでつい口尖らせてしまいます。
「——あー!やっと着いたんだ!もうっ!ずっと待ってたんだからね?」
父さんと一緒に軽トラックに積んでいる荷物を下ろそうしたら玄関からハリのある声が聞こえます。
貴方は視線を向けると、そこには先に向かっていたお母さんの姿が在りました。
貴方のお母さんは前髪のインティークにアホ毛。首元まで伸びたショートカットの金髪と特徴的な要素が多くお父さんとは真逆。しかも目を奪われるような美貌の持ち主です。
こんな綺麗な人が平凡的なお父さんと結婚をしたのだろうか?っと貴方は常々不思議に思っています。
「どう?体調は悪くなってない?」
お母さんは貴方の側まで近づいて体調は大丈夫かと心配そうに顔色を伺います。
こくりと頷けば、満足そうな顔を浮かべて我が子を愛おしそに優しく抱きしめました。
お母さんに抱きしめられるのは頻繁にありますが、美人でスタイル抜群なので顔を赤くしてしまいます。
思春期の貴方にとって一位、二位を争う恥ずかしい状況ですからお父さんに視線で助けを求めます。
「こほん。荷物を片付けたいから、その辺にしてくれ」
「なによー!大事な息子とスキンシップをしてるだけじゃないー!」
お母さんの標的がお父さんに変わって、熱い抱擁から解放されてホッと貴方は安堵します。
いつものように2人がイチャイチャする気配を感じ取ったのでそくさくと退散しました。
自分でも持てそうな荷物を荷台から下ろし、自宅に足に踏み入れると見慣れない景色に声を上げます。
貴方は豪勢なお部屋や、シャンデラなど。多くの高い物は見てきましたが年月が経った普通の家は初めての経験で胸が弾みます。
中学生になりましたがやはり男の子。未知の空間に、新たな発見があるのではないかと冒険野郎の血が滾りますね!
外でイチャイチャする両親は放っておいて、貴方は新しい我が家の探索が始めます。
居間にはちゃぶ台に台所。和室と野外を繋ぐ縁側があったりと、2階に上がれば自室や両親の寝室と。
どれもこれも新たな発見に目を輝かせてしまいます。鼻息を荒くしてついガッツポーズを取るぐらいにはテンションが上がります。
貴方は冒険野郎として興奮していましたが、やけに家が綺麗に片付いていることに気づきました。
お母さんは後片付けが苦手どころか、壊すのが得意なお転婆娘なのを知っているので疑問が浮かびます。
貴方はここまで綺麗に片付けられる人物に1人心当たりがあったりしますが気にしないことにしました。
このまま探索を続けていたいですが、まだまだ後片付けの途中なので断念をして再開しましょう!
「手伝ってくれてありがとうな。ちょっと外で涼んでるといい」
「はい。お茶を飲んでゆっくりしててね。あとでご褒美のハグしてあげるから!」
軽トラックの荷物を両親と一緒に片付けていた貴方ですが体力が尽きてへばってしまいました。
お母さんとお父さんの言いつけを守り、新居の前の通路で麦茶の入ったコップを片手に休んでいます。
貴方は生まれついての病弱で、男子中学生でありながら体力が少ないのです。朝も弱くて、無理をしたら体調を崩して倒れるなんてこともよくあります。
貴方は若い頃のお父さんに瓜二つと周りによく言われます。特徴的なアホ毛と赤い瞳以外がないとお父さんと見間違えてしまうそうです。
なので病弱体質と眼鏡をかけてしまうのは偶然ではなく必然だったのです。
貴方はそれに悲観的になることもなく、不便な身体と割り切っているので特に気にもしていません。
「——あれれ?もしかしてお隣さんの人かな?かな?」
カナカナカナと鳴いてる蝉の演奏に耳を傾けていたら貴方はセーラ服を着た少女に声をかけられました!