「・・・あれ。」
目が覚めた。いや・・・俺・・・ベッドで寝てる。俺は布団派だったはず。なんでベッドに・・・
「気が付いたか。」
「・・・え?」
ふと横を見ると・・・オレンジ色のような、クリーム色のような髪色の頭のてっぺんに耳がある少女が。ここ・・・俺の家じゃない!
「・・・大分魘されていたぞ。水を飲むと良い。」
「あ・・・ありがとう・・・?」
コップの水を渡され、一口飲む。美味い・・・いや・・・思い出した。俺は・・・
「落ち着いたか・・・?」
「・・・はい。」
「君に・・・何が起きたのか・・・教えてくれるか?」
「はい・・・」
人体改造ウマ娘remember
俺は、俺は・・・異世界人。前の世界、俺が住んでいた世界で仕事が嫌になり、エレベーターを使った異世界へ渡る方法を試した。詳細は省く。同じ人が出ない様に。まさか異世界へ本当に渡れるとは思えず、渡った時には後悔した。持ち物はスマホくらいで、財布も持ってなかった。この世界は獣人と共生する社会の様で俺はひとりぼっちになった。衣食住をなんとかしようとしたが、警察に駆け込んでも異世界から来たなんて到底信じてもらえるとは思えない。とりあえずお金を稼ごうとしたが履歴書を買う金も無い。そもそも前の世界とお金が一緒なのかもわからない。そして・・・図書館のインターネットの広告で履歴書不要の治験を見つけた。おおよそ3ヶ月、病院で生活するらしく、これなら衣食住の食と住がなんとかなると思い、喜んで飛びついた。だが、それが地獄の始まりだった。
「・・・なる、ほど・・・な・・・」
「とりあえず・・・こんな感じです。」
病院にたどり着いた俺は、持ち物を、衣服も没収され、何やら薄い服に着替えさせられた。そして・・・手術室のような場所に通され、困惑していると。後ろから殴られて、気絶した。
「・・・。」
「・・・あ、あの・・・」
「ああ。自己紹介がまだだったな。私は秋川やよい。まぁ・・・名家の当主だ。」
「そう、ですか・・・俺は・・・俺は・・・」
「・・・思い出せない、か・・・」
「はい・・・」
病院だと思っていた場所は研究所だった。それも違法な。俺はそこで人体実験を繰り返された。ある時は手術、ある時は薬品、またある時は・・・脳も、体も、精神も弄られまくった。そして俺は獣人に改造させられて、捨てられた。
「とりあえず、名前を考えよう。希望はあるか。」
「希望・・・なんでも。」
「ではこちらで考える。」
捨てられたのは山奥。体も動かせず、ここで死ぬのかと異世界渡りなんかした事を心底後悔していた。あの辛い仕事をしていた方が何万倍も楽だった。でも・・・もう終わりだ。死ぬんだ。と目を閉じた。
「ともかくだ。君は私が保護した。この家・・・マンションだが。君が使ってくれて構わない。私と一緒の生活だが・・・」
「いえ・・・助けてもらったのに嫌なんて言いません。」
「そうか・・・そして君の今後だが、私の目の届く所にいて欲しい。なので私が理事長を務める学園に、編入してもらう事になる。」
「学園・・・」
「うむ。他の学校も考えたが・・・その・・・君の事がバレた時の事を考えるとあまりにもリスクが大きすぎる。なので私の学園だ。すまない。」
「いえ・・・匿ってももらえるなんて・・・感謝してもしきれません。」
「すまないな・・・」
「ありがとうございます。」
「うむ。」
そして俺は気が付いたらこの家にいた。見つけてもらえたらしい。助かった。
「食事にしよう。食欲はあるか。」
「ご飯・・・」
その時ぐぅぅぅ〜〜〜とお腹が鳴った。お腹は空いてるな。
「うむ!出前だが用意してある。食べよう。」
「はい。」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ご飯を食べて、少しした頃。ピンポーンとチャイムが鳴り、やよいさんが玄関へと向かった。誰だろう・・・
「・・・。」
するとやよいさんは2人のヒトを連れてきた。1人は緑色のスーツを着たお姉さん・・・このお姉さん獣人と同じ匂いがするな・・・それと男性、スラックスにワイシャツ、その上にジャージを羽織っている。学校の先生みたいだ。
「君、紹介しよう。私の秘書のたづなだ。」
「よろしくお願いしますね。駿川たづなです。」
「もう1人は学園のトレーナー、中村君だ。」
「中村だ。よろしくな。」
「よろしくお願いします。」
「中村君には君の服を買いに行ってもらったのだ。」
「そうだったんですか・・・ありがとうございます。」
「いや、いいんだ。俺も首突っ込んでしまって後に引けないからな。」
「すみません。」
「それで君達には頼みがある。彼の名前を決めたいのだ。」
「名前ですか。」
「ウマ娘の命名の基準だと・・・二文字以上九文字以内でしたっけ。」
「そうなる。彼にウマ娘の命名基準が当てはまるかどうかはさておこう。」
「ふむ・・・」
「ええと・・・」
なんか・・・違和感を感じた・・・ウマ・・・娘、娘なのに・・・彼・・・?俺の事?
「あ、あの・・・」
「なんだ?」
「ウマ娘・・・って?ウマ娘・・・というのは?どういう獣人なの・・・?」
「ウマ娘というのは・・・」
それから聞いたウマ娘のこと。別世界の名前を授かり、輝かしい未来と共に、ターフとダートを走る。だが疑問に思った。ウマ娘は・・・娘というから女、雌しかいないらしい。俺にはその、ウマ娘と同じ尻尾と耳がある。なのに、彼と言った。そっと股間に手をやると・・・確かにいるムスコ。俺はいったい・・・?
「君はな・・・この世界で初めての雄のウマ娘なのだ。」
「・・・えっ。」
「・・・困惑するのもわかる。だが事実だ。」
「あの・・・」
「なんだ・・・?」
「理事長の学園って・・・」
「・・・ウマ娘の学園だな。」
「女子校じゃないですか!?」
「そうだな!?」
「え!?じゃあ俺、女装して通うんですか!?」
「そうなる。」
「ええーーーーーーーー!!!!!!」
「大丈夫、雄だが見た目はウマ娘だ。凛々しいウマ娘と言ったところかな?」
「うぇ・・・」
「すまない・・・こうするしかないのだ。他の学校には預けられない。君を守るにはこうするしかないのだ。」
「うう・・・」
「理事長!」
「なんだ中村君。」
「良い名前が思いつきましたよ。」
「おお!そうか!」
「彼の名前はティガ!これがいい。」
「ティガ・・・どういう意味だ?」
「インドネシア語で3の意味です。ウマ娘、雄、元人間の3つの要素を持つ事から名付けました。」
「なるほどな・・・良いだろう。君?良いかな?」
「なんでも・・・いいです・・・」
「そうか。では今から君はティガだ。よろしく。」
「よろしくティガ。」
「ティガ君よろしくね。」
名前が決まった。もういいか・・・
「それでは今日はもう2人は戻りたまえ。」
「はい理事長。」
「お邪魔しました。」
「ティガ君。明日から学園に通ってもらう。頼むぞ。」
「はい・・・」
やよいさんは風呂沸かしてくると行ってしまった。たづなさんと中村さんはまた明日ね。と帰ってしまう。俺、どうなっちゃうんだ・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
翌日。
「その・・・ティガ・・・です・・・よろしくお願いします・・・」
俺は、教室で、女の子ばかりの教室で、自己紹介した。ぱちぱちと拍手で迎えられ、席に着いた。うひゃ・・・女の子の匂いする・・・
「よろしくね。私、ヴィルシーナ。」
「よ、よろしく・・・」
「よろしくね。おれ、ケイエスミラクル。」
「よろしく・・・」
ちょうど真ん中の席に座った俺は両隣の子達に自己紹介される。すごい美人だ。俺、やっていけるかな・・・
〜ヴィルシーナside〜
不思議な子だな。と最初は思った。ティガと名乗ったその子は不思議な事に、
「よろしくね。私、ヴィルシーナ。」
「よ、よろしく・・・」
ビクビク、オドオドと挨拶する彼女は少しパーソナルスペースが広いのかな、と感じた。でも仲良くなれそうと思うには十分だった。向こう隣のケイエスミラクルさんと挨拶しているのも見て、安心する。
「(初めての場所だと、まぁこうなるわよね。)」
微笑ましさを感じながら授業へ、普通に数国英理社。他にレース知識。ティガさんの様子を見るとレース知識はちんぷんかんぷんという様子だったが大丈夫だろうか。まぁそういう所は可愛いかもと思った。そして休み時間。ティガさんは隠れる様に教室を出て行った。お手洗いだろうか。彼女は1人で行くタイプか、それとも共に誘う子がいなかったか。少し様子を見ておこうかなと着いていった。
「え。」
「あ。」
そう思ったのは私だけじゃ無かったみたいで、ケイエスミラクルさんも着いて行くようだった。だがティガさんは私達の予想とは別に、トイレを通り過ぎて行くのであった。はて・・・トイレじゃなかったのかしら?と疑問に思うと、彼女はどんどん奥へ行く。とりあえず見つからないように2人で着いて行き、彼女は教室棟から離れた職員用の多目的トイレに入ったのだった。やっぱりトイレだった。でも、なんでわざわざこんな遠いトイレを?とケイエスミラクルさんと顔を見合わせていると、彼女は思ったより早く出てきた。危なく身を隠した。
「ティガさん・・・なんでこんな遠いトイレに?」
「さぁ・・・その・・・女の子の日・・・とか?」
「それでも普通のトイレ使うんじゃ・・・」
「匂いとか気になる子なのかな・・・」
2人で考えるが答えは出ない。そのまま彼女はハンカチで手を拭きながら教室へ戻った。完全に話しかけるタイミングを失った。
「・・・。」
「・・・ヴィルシーナさん。」
「なに?ミラクルさん。」
「もうちょっとティガさんを観察してみない?」
「そうね・・・」
それから私達はティガさんを追う生活になった。
〜ケイエスミラクルside〜
ティガさんは不思議な生徒だ。ある日、変なタイミングで編入してきて、ちょっとそっけなくて、不器用で、優しい。そんな子。それだけじゃ不思議とは言わないか。不思議な点をあげよう。
「今日もだ・・・」
「そうね・・・」
おれはヴィルシーナさんと一緒にティガさんを尾行している。今日もティガさんは教室棟から離れた職員用の多目的トイレを使っている。トイレはいつも。それだけじゃない。午後の体育の時、みんな更衣室に行けば良いのにめんどくさがって教室で着替えるけどティガさんは誰よりも早く出ていき、更衣室に向かわず、また遠く離れた倉庫で着替えている。突入しようかと思ったけど内側から鍵がかかっててダメだった。いや、着替えに突入するのはどうなんだと言われたら・・・そうなんだけど・・・ともかく、ティガさんは肌を見せたがらない・・・なんてことはなく。教室でくつろいでる時はスカートなのに足を広げてるし、よくリボンを外して胸元を仰いでいる。みんなチラチラ見てるくらい気になってる。無防備なのに、用心深い。一見矛盾してるようなのがティガさんだ。
「ヴィルシーナさん・・・」
「ええ、わかったわ。」
今日は、ちょっと強行手段に出る。可哀想だとは思うけど、仲良くなりたいから、体育の後、捕まえて教室に連れていく。
「よぉし!!今日はこれで終わりーーー!!!」
教官が号令をしてありがとうございましたと礼をする。そしてすかさずティガさんを捕まえた。
「ティガさん。」
「ティガさん!」
「は、はひ!」
無事捕まえられた。後は連れて行くだけ。
「早く帰って着替えましょ。」
「ね?行こう?」
「い、いいいいやいや待って、俺は、別な更衣室で着替えて・・・」
「嘘。ティガさん貴方更衣室にはいなかったじゃない。」
「いっ!?」
今日は逃さない。ヴィルシーナさんもいつもは教室で着替えるがティガさんの退路を断つ為に更衣室で着替えてもらった。
「ティガさん・・・行こ?」
「行きましょう・・・?」
「あうあうあうあう・・・」
腕をがっしりと組む。逃さない。秘密を暴くのはちょっとどうかなと思うけど・・・裸の付き合い・・・ともちょっと違うけど。ティガさんともっとお近づきになりたい。ヴィルシーナさんとそれで意見は一致した。
「あ〜〜〜〜〜!!!」
「えっ。」
「うわぁっ!?」
次の瞬間。がっしりと組んでいた筈の腕はぐるん!と外され、おれは転がってしまう。ヴィルシーナさんも尻餅をついてしまっていた。
「ごめぇ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
そう言って、すごい速さでティガさんは走り去ってしまった。・・・失敗しちゃった。
「ヴィルシーナさん大丈夫?」
「ええ・・・びっくりしたわね。」
「うん。すごいパワーだった。」
ティガさんは体育では普通だった。みんなと走ったり、筋トレしたりしているがとても普通。特段速いとか力が強いとかそんな感じはしなかった。だから、今のパワーには驚いた。おれは結構な力で掴んでいた筈。
「ティガさん・・・なんで・・・」
「ミラクルさん、やっぱり可哀想よ。何か事情があるのを暴こうとするのは。」
「そうだよね・・・もうやめよう。」
それから着替えて教室に戻ったら見るからにおれとヴィルシーナさんを警戒するティガさんが居て、ちょっと笑ってしまった。