東方二次創作劇場 「巫女と巫女」 - 東方風神録より -   作:俄かさん。

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貧血で倒れた霊夢と奇跡の勝利を収めた早苗。笑いと涙、信念のぶつかり合いが幻想郷を騒がす!



東方二次創作劇場 「巫女と巫女」 (中編)

ぷーくす、げらげら、あっはっはっ。

 

迷いの竹林、そのさいはて。

幻想郷唯一の診療機関である「永遠亭」の病室にて不謹慎な笑いが木霊する。

 

「なによ、魔理沙?そんなに笑わないでちょうだい」

「いやだってよー、霊夢。まさかおまえが貧血でぶっ倒れるなんてよ?意外っつーか傑作つーか?」

「それ笑えるはなし?冗談じゃないわよ」

 

病室のベッドで横になりつつ幼馴染みの霧雨魔理沙をジト目で睨む霊夢。

その左腕には点滴が打たれている。

 

「そうよ笑いごとじゃないわよ。ほんとあんたちゃんと食べてるの?」

 

そんな二人の間を割って入るように、白衣姿の八意永琳が霊夢に問いかける。

この女、この診療所の院長にして、蓬莱の薬師でもある。

時に名医、そして時にマッドサイエンティストの顔を持つ女でもあるが、それはさておき。

 

「あー、そうね。毎日お粥ね。最近不景気よ。っていつものことか」

「あんたねえ?」

「いやーほんと貧乏だな、おまえ?」

「魔理沙、うっさい」

「まあそうじゃけんにすんなよ、今日はあたし、そんなおまえのために差し入れを持ってきたのぜ?」

 

でんっと突きつけられるなんとも香ばしい香り漂うその手料理。

カラフルないかにも怪しいキノコのぎっしり詰まったスープを前に、霊夢は何故か不吉な予感を覚える。

 

「ね、ねえ、魔理沙、こういうのアレだけど、大丈夫、これ?」

「おん?あたしの手料理が食えねえってのか?失礼な奴だな?」

「え、えーと、どうしても食べなきゃだめ?」

「んだよ、食えよ?ほれ食えっ」

「むきゅううううう?!!」

 

魔理沙に強引にスープを掬ったスプーンを口の中に突っ込まれ、ごっくんしてしまう霊夢。

そのさまをによによしつつ眺める魔理沙。

 

「どーだ美味いか?」

「………」

「なんだ、美味すぎて言葉も出ねーのか?」

「ぷっ」

「ぷっ?」

「っきゃははははははっ!!!!」

 

突然笑い出す霊夢。

お腹を抱えてゲラゲラ笑い出す始末だ。

 

「ちょっとちょっと、あんた何食わせたのよ?」

「あー?普通のキノコスープだけどなにか?」

「ちょっと見せなさい、それ」

 

スープの盛られたカップを引ったくり、検分する永琳。

そしてすぐに頭を抱える。

 

「あんたこれワライダケよ。何食わせてんの?!」

「あ?なんだ毒キノコだったか、これ?あたし食ってもなんともなかったけどよー?」

「はあ、あんたの胃袋、どうなってんのよ?」

 

そんな二人のボケツッコミをよそに、霊夢の笑いのテンションは怪しい方向へとぶっ飛んでいく。

 

「きゃはははははっ、そうよみんな貧乏がいけないのよっ、きゃはははははっ!!!!」

「うわー、霊夢がぶっ壊れたー!!」

「ちょっとちょっと、すぐに解毒剤をつくるわっ、あんたはこの自虐巫女をしっかり抑えときなさいっ!!」

 

そんなこんなで今日も幻想郷は平和だった。

 

 

「号外、号外ですよー(ばさばさっ)」

 

秋晴れの空の下、射命丸文なる烏天狗によって郷中にばらまかれる「文々。新聞」。

 

「守矢の奇跡発動!ついに博麗の巫女に勝利する!!」

 

そのセンセーショナルな見出しに誰しもが驚き熱狂する。

人里に行けば、早苗はあっという間に大勢の人々に囲まれるようになっていた。

 

「あなたすごいわね?」

「おねーちゃん、かっこいい!」

「これからも応援するよ、頑張れ」

「あ、ああ、はいっ、で、でも、違うんですっ」

「え?どこが違うの?」

「わあっ、ごめんなさいっ!!」

 

いちやく街のヒーローになった早苗だが、その胸中は穏やかではない。

そして気付いたら、その輪の中から逃げだしてしまうのだった。

 

 

まだ入院中の博麗の巫女。

そこに飛んでくる幼馴染み。

 

「おーい霊夢っ!」

「なによ魔理沙」

「この号外見ろよっ?!」

「あらあら、ふーん?」

「ふーんってなんだよ、おまえ?」

「どうでもいいわ、おやすみっ」

「おい霊夢ー?!!」

 

 

そうそれはまさしく「奇跡の勝利」。

しかし皮肉にも早苗はそれが自身の能力によってもたらされたものだと知るよしもない。

 

早苗からしてみればあれはただの「偶然」。

自分は何もしてないのに、向こうが勝手に「貧血」もよおして先に倒れただけ。

しかしその事実を知っているのは自分だけ。その事実が脚色されて郷中に広まり皆が皆浮かれ騒いでる。

 

(こんなの、こんなの。わたし、どうしたらいいの?)

 

走って走ってただ走り続けた。走り続けながら自問する。

分からない分からない。いくら走ってもいくら考えても答えなんて見つからない。

 

ただ闇雲に走り続ける中で、早苗はいつしか既視感を覚え始めていた。

いまの状況はかつての外の世界にいたときとまるでおなじだった。

 

「神さまを信じるかだって?新手の宗教勧誘かなにか?」

「神さまが見える?神さまと話せる?うそばっかり」

「なにあの子、キモチワルイ。近寄らないで!」

「ほんとに変な子。親の顔が見てみたいわね。……ああ、もう、その親もいなかったんだっけ?」

 

どんなに誠心誠意説明して訴えても周りからの理解を得られない。

いつしか外の世界では自分の異場所はなくなっていった。

大切な友達も大人たちもみんな自分から離れていった。

周りの無関心と無理解に晒されて気付いたら独りになっていた。

 

誰も分かってくれない。

本当の自分のことを。本当の自分の気持ちを。

 

 

 

 東方二次創作劇場 「巫女と巫女」 〜 東方風神録 より 〜

 

 コンセプトイメージテーマ:奥田民生 / 「風は西から」

 執筆:俄かさん。(2025〜)

 

 

 

(あ、あれ、ここは?やだ、どうしよう?)

 

駆け抜けて人里界隈、その奥深く。気付いたらそのうち迷子になっていた。

迷子になって誰かとぶつかった。

 

「あ、ごめんなさいっ」

「いいのよ、あなたの方こそ怪我はなかった?」

「あ、はい。って、あなたは」

「……奇遇ねえ、こんなところでまた会うなんてね。それよりそんなに泣いてどうしたの?」

 

早苗がぶつかったのは日傘差す緑髪の女。

その顔は忘れもしない、博麗神社で初めて博麗の巫女と対峙した時に居合わせた女だ。

その女の優しげな顔を見るなり、また早苗は大粒の涙を溢れさせるのだった。

 

 

「ふーん、あなたも大変ね。神さま二匹と一緒に外の世界から来て布教活動やってるなんてね」

「はい、そうなんです」

 

人里表通り、ドブ川沿いに構える甘味処「餡蜜堂」のベンチで語らう風見幽香と早苗。

早苗が迷子になっていたところを保護したついでに、幽香は面倒見のいいお姉さんポジを確立していた。

 

「それであの勝負のくだりね。事実は小説よりも奇なりというけど、そんなオチとはね」

「うううっ、そうなんですよう」

「どーでもいいけど、あなた、泣くか食べるかどっちかにしなさい。せっかくのおぜんざいがだいなしよ」

「は、はわわっ(はぐはぐっ)」

 

やれやれとため息つく幽香。泣くのと食べるのとで忙しい早苗。

なんともゆるい雰囲気が漂う中、幽香は指一つ立てつつ「でもね」と切り出す。

 

「運も実力のうちっていうじゃない?でもそれじゃ、納得できないわけね」

「はひっ、そうなんです」

「ふーん?……だってさ、紫?あんたなんとかしなさい」

 

唐突に背後の何もない空間に向かって声かけする幽香。

するとその空間が裂けてスキマから道士服姿の女がそろーっと顔を出す。

 

「あらやだ、なんでわたしがついてきてること気付いたの?」

「わからいでか?わたしもここに伊達に長くはいないわよ?あんたの胡散臭い気配なんか気付かないと思って?」

「あらあら、そーなの?」

 

苦笑いする道士服の女、八雲紫に呆れる幽香。

そんな二人は「旧知の仲」。

 

「ま、どーせ今回の騒動もあんたが仕組んだんでしょうが?やるなら最後まで責任取りなさい。でないとぶっ飛ばすわよ?」

「うーん?さーて、どうしようかしらねえ?」

 

ものそっい圧で旧友に睨まれても、紫は全く動じずにここぞとばかりにとびきりゲスい笑みを浮かべるのだった。

 

 

入院三週間後にしてようやく退院する博麗の巫女。

高額な入院費用をツケでかわしつつ、のんびりと空を飛んで帰る。

 

「あーあ、とんだ出費ね。めんどくさっ。でもま、いっか?」

 

ぼやきつつ目指す先は我が家。

向かう道中でいろいろ思うところはあるが気にしない。

 

「それにしても戸締まりちゃんとしてたかしら。空き巣にでも入られたら厄介ね。まあでも、盗まれて困るようなものは……ないか。まっいっか」

 

程なく辿り着く博麗神社上空。

そこで見た我が家の変わり果てたさまに目をまんまるにする霊夢。

 

「え、え?どういうこと?」

 

地に降り立つと明らかになるその全貌。

ぼろっちかった本殿やら何やらは綺麗に修繕されていた。

屋根や床、壁、外装のみならず内装の隅々まで。 これが流行りのリフォームというやつか。

雨降れば雨漏り、風吹けばそのまま飛ばされてしまいそうなオンボロ神社は新築さながらに生まれ変わっていた。

あまりの劇的ビフォーアフターぶりにほけっとする霊夢。何より目を引いたのは。

「なにこれ」

 

境内にででんと山積みされた大量の米俵。

それは見上げるくらいに高々と山のように積み上げられている。

 

「……誰のしわざよ、これ?」

 

その疑問符はすぐに解消される。

吹き抜ける一陣の風とともに現れたのは。

 

「早苗」

「待ってましたよ、あなたが帰って来るのを」

「ふーん?これ、あなたのしわざ?」

「そういうことになりますね。正確には、わたしたち、といったところですけど」

「どういうつもり?」

「……敵に塩を送るというやつです。わたしはあなたと五分の闘いがしたい。ただそれだけです」

「へえ?」

「受けてくれますよね、弾幕勝負」

「……いいわよ。だけど容赦はしないわ」

「望むところですっ」

 

そして二人は激しく睨み合い、砂塵蹴り上げ早九字切りて螺旋を描きながら空高く舞い上がる。

 

「わたしには使命がある。守矢の信仰を広める。大切な神さまのために」

「へえ、そう?」

「それが巫女としての役目のはず。あなたにはその自覚がありますか?」

「どうかしらね。ただ騒ぎが起きれば鎮める。それがわたしの仕事。神さまがどうとか関係ないわ」

「そんないい加減な?適当すぎですね、あなた?」

「そうね、それがどうかした?」

「よろしい、ならばその性根から叩き直して差し上げます!」

「へー、面白い、やってみなさいっ!!」

 

早苗の啖呵に真っ向から反発する霊夢は、いつものように弊をタクトのように振り上げ、十八番の「夢想封印」を放つ。

放たれる巨大な陰陽玉にぶっ飛ばされるのが早苗の負けパターンなのだが。

 

「開海『モーゼの奇跡』!!」

 

 ず ば ん っ 。

 

「なっ?!」

 

大海を寸断するかのような風の刃が迫る陰陽玉を真っ二つにする。

それを背景にぎっと早苗は霊夢を見据える。

 

「いつまでも同じ技で倒されると思うなっ!!」

「……へえ、やるわね?」

 

それはまさしく五分の闘い。互いに実力伯仲にして一歩も譲らない。

この子、ここまでできるんだ、と早苗の秘めたる実力を認めざるを得ない霊夢。

そしてまた早苗も不退転の覚悟でこの勝負に臨んでいた。

 

「これでわたしは残り一枚。あなたは?」

「そうねわたしも」

 

ここで両者は手札を残り一枚とする。

それは文字通りの最終決戦。

 

「あなたは倒すべき敵。そして越えなければならない壁。わたしはあなたを越えて守矢の名を轟かせるっ。すべてはわたしの大切な神さまのために。わたしの大切な家族のためにっ!それがわたしのすべてなんだっ、すへてなんだっ!!」

 

それは早苗の心からの叫び。その言葉だけで周りの空気が次々に爆ぜる。

 

「くらえっ、先手、大奇跡『八坂の神風』!!」

「っ、そんな大技?いつの間に?!」

 

急激な早苗の成長に驚く霊夢だが、怯みはしない。

数瞬の躊躇いの後に最後の一枚を掲げる。

 

「夢想天生っ!!(ぱすっ)……へっ?」

 

ここに来て「不発する」霊夢の切り札。

その不発を嘲笑うかのように迫る早苗の荒れ狂う弾幕の嵐。

 

「これが覚悟の差というものです。存分に思い知れっ!!!!」

「くっ!!!!」

 

轟く早苗の怒号。切り札を失い、焦る霊夢。

瞬間、空を引き裂かんばかりの激しい爆発音が響き渡るのだった。

 

 

その一部始終をスキマ越しに眺める二人の古参妖怪。

ホワイトアウトするその景色をただ静かに見守る。

 

「あの短期間でここまで博麗の巫女と渡り合う?何なのよあの子?」

「そうね、普通の人間じゃないわよ、あの子は」

「どういうことよ?」

 

意味深な紫の物言いに幽香は軽く眉根を寄せる。

投げかけられる問いかけに紫はただ意味深な笑みを浮かべやる。

 

「あの子は守矢の風祝にして、豊穣と奇跡をもたらす巫女。いうなれば

 

 現 人 神 。

 

 もっとも、本人はその自覚はないみたいだけどね?」

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