東方二次創作劇場 「巫女と巫女」 - 東方風神録より -   作:俄かさん。

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早苗の「神風」を霊夢が「一閃」で圧倒! 称賛と「センパイ」で絆深め、宴会で幻想郷が団結、守矢の祠が調和と賽銭をもたらす!



東方二次創作劇場 「巫女と巫女」 (後編)

「あの子は守矢の風祝にして、豊穣と奇跡をもたらす巫女。いうなれば

 

 現 人 神 。

 

 もっとも、本人はその自覚はないみたいだけどね?」

 

スキマ越しに語る紫。

その言葉に目を丸くする幽香。

 

目の前は濛々と立ち込め、辺り一面を埋め尽くす爆煙。

それは現人神としての片鱗を見せた早苗の成せるわざ。

その大技を前に、さしもの博麗の巫女もひとたまりもなかったのであろうか、爆煙が晴れるころにははらはらと装束の切れ端と思しき布切れが風に吹かれ舞い落ちていく。

 

「勝負あり、かしら」

「……そうねえ」

 

二人して守矢の風祝の勝利を確信する。

そして当事者である早苗自身も自らの実力で勝ち取った勝利の歓喜に震えていた。

 

「やった、やりました!神奈子さま、諏訪子さま、わたしついに博麗の巫女に勝ちましたっ!!」

 

天仰ぎ、大切な家族に向けて声高らかに叫ぶ。

だが、不意に差し込む影にその表情は凍り付く。

 

「騒ぎが起きたら鎮める。それがわたしの仕事。……そう言ったわよね?」

 

ズタボロになりつつも太陽を背に隼のように舞い降りるのは。

 

「そ、そんな?」

「そして必ず鎮める。それがわたしの本分。揺らぎはしないわ」

 

 ず ば っ 。

 

振り下ろされる巫力を込めた幣の一閃。

その一閃をもらい、早苗は地へと叩き落とされるのだった。

 

「ああ、……やっぱりこういうオチ?」

「あらあら」

 

そこからの逆転劇に嘆息する幽香に緩く首を傾げる紫。

着地ざまに地に倒れ伏す守矢の風祝に駆け寄る博麗の巫女を眺めつつ、ぱちんと紫は閉じた扇子を打ち鳴らす。

 

「最後は経験の差。あとは空間認識力の違い、かしらね」

「どういうこと?」

「場を平面的に見るか立体的に見るかの違い。どうでもいいけど」

「ふーん?」

「さて、わたし、見るもの見たし、帰ろうかしら?これからわたし、合コンなのよね」

「合コンってなによ?」

「幽香も来る?」

「じょーだんやめて?そんなの趣味じゃないわ。あんた一人で行けば?わたしはお花のお世話で忙しいの」

「あらそう?じゃあ、送るわ。『太陽の花畑』でよかった?」

「ええ、お願い」

 

そっとスキマを閉じて撤収しようとする二人。

その間際に、幽香は見た。

 

(……なに、あいつら?)

 

博麗神社の赤鳥居脇に「何か」を設置するもののけどもの姿を。

そいつらは置くだけ置いて、一目散に妖怪の山の方角へと逃げ去っていくのだった。

 

 

「勝った、勝ったはずなのに。なんで。……なんで?」

 

未だ起き上がれず、仰向けに天を仰いだまま咽ぶ早苗。

その嘆きを霊夢はただ傍らで静かに聞き入る。その嘆きが落ち着いた頃合いになって、屈み込んでそっと手を差し伸べていく。

 

「あなたすごいわね。こんな短期間で強くなるなんて?ほんとびっくりしたわ」

「っ!」

 

その言葉は初めて受ける心からの称賛の言葉。

けれど早苗はその手を払いのける。

 

「次は、次こそは負けませんっ。負けませんから、ぜったい!」

「あら、懲りないのね。いいわよ、またいつでも挑んできなさいな。だけど今日はもうこれでおしまい。流石に疲れたわ」

 

差し伸べた手を無下に払い除けられても、霊夢は怒ることなく小さく笑んで見せる。それはまるで太陽のようだ。

その慈愛に満ちた笑みに不覚にも早苗は見とれてしまう。

 

「さ、ちょうどいい食材もあることだし、久々に宴でも開きましょうかね。うちは弾幕ごっこのシメは宴会って決まってんの。……当然あなたも参加してもらうわよ?」

「え、え?」

 

 

「博麗神社で宴会っ宴会ですよ!持ち込み歓迎、屋台も出ますよー(ばさばさっ)」

 

 

夕焼け小焼けで日が暮れて、日没と同時に博麗神社に集まり出す暇人ども。皆が皆、新築さながらに生まれ変わったオンボロ神社の様相に驚きの声を上げる。

そんなこんなで。

 

「久しぶりね霊夢?」

「ええ、レミリア。永夜の時以来ね。それに咲夜も」

「はい、霊夢さん。ご無沙汰しております。今日はわたしもお料理の方でお手伝いしますね?」

「ありがとう、咲夜」

 

妖怪の山、その麓にある霧の湖のほとりに構える紅魔館からは、レミリア・スカーレットと十六夜咲夜。そして冥界、白玉楼より魂魄妖夢と西行寺幽々子がやって来た。

 

「どうも霊夢さん。お誘いありがとうございます。これはいつぞやの埋め合わせも兼ねて、つまらぬものですが」

「あら妖夢。これ、すごいっ、舟盛りじゃない?つまらなくなんてないわよ?」

「そうよー、つまらなくないわー、つまらないものならわたしが全部食べちゃうからー」

「みょっ、ゆ、幽々子さま?!」

「あはは、幽々子は相変わらず食いしん坊なのね?」

 

少しずつ少しずつ、賑やかになる宴会会場。

出される料理も主菜の米を軸に和洋混合のフルコースがそろう。

料理が美味ければ当然酒も進む。

本殿の主会場はもちろん、境内の八目鰻の屋台も大盛況で、明るい笑い声があちこちで木霊する。

 

「よー、霊夢ー。お待たせー」

「あ、魔理沙、おっそーい!あ、アリスも来たの? 」

「ええ、付き添いでね。魔理沙が行くっていうからしかたなくね」

「よく言うぜ師匠?籠もってねえでたまにはこういうのにも顔出せよー?」

「はいはい魔理沙。分かってるわよ?」

 

魔法の森から霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイドの師弟コンビ。二人は同じ魔法使いというだけあって仲がいいらしい。ちなみにお隣さんどうしでもある。

さらにそこへ。

 

「おっす、霊夢?」

「珍しい。妹紅に慧音じゃない?仕事帰りか何か?」

「ま、そんなとこだな。ところで例の守矢の風祝とやらは?」

「奥にいるわよ、みんなに囲まれてあっぷあっぷしてる。いじめちゃだめよ?」

「ばっか、んなことするかよ?……からかうくらいで止めとくし?」

「こら妹紅っ、大概にせい」

「っせぇな慧音、冗談だよ冗談?」

 

迷いの竹林から藤原妹紅、人里の寺子屋から上白沢慧音がやってきた。この二人、実はデキているという噂らしい。二人はなんだかんだ言い合いつつ、肩を並べて屋台に向かっていく。

 

(あー、やれやれ。普通に主催としてお接待するのも疲れるわね。いつぶりかしら?)

 

ひとしきり面々を境内で出迎えた頃合いで大きく伸びをする霊夢。

それからようやく本殿の方へと足を向けるのだった。

 

 

「は、はわわっ」

 

本殿奥の上座でテンパる早苗。

四方八方を見知らぬ郷の住民どもに包囲され、逃げるに逃げられない。

 

「あたいはチルノっ!こっちは大ちゃん、あっちはルーミア!おまえ、強いんだってな、こんどあたいと勝負しろよっ!あたい、さいきょうだからなっ!」

「チルノちゃん、ほんとにさいきょう?」

「のだ、のだっ!!」

「あ、えっとえっと」

 

軽いジャブ程度にバカトリオ。こいつらはまだ序の口。

その次がだいぶやっかい。

 

「へえ、あなたずいぶん綺麗な肌をしてるのね、血色も良さそう。どんな血の味がするのかしら?」

「え、え?」

「うふふ、あなた、ほーんと可愛いわねー?美味しそう」

「わわ、た、食べないでくださいっ!?」

 

左に紅魔館、右に白玉楼のラスボスに挟まれ、絶体絶命。

みんな、あの号外のくだりでこの新しい巫女に興味津々だ。

 

「こら、レミリア、幽々子っ。そんなに脅かさないのっ!怖がってるじゃない?」

「あら霊夢?わたしたちは普通におしゃべりしてるだけよ?」

「そーよー、そのとおりよー、霊夢はこの子のおねーさんにでもなったつもりかしらー?」

「ちょっ、幽々子、なに言ってるの?! 」

 

遅れてやって来た霊夢は早々に幽々子に揶揄われ、思わず顔を真っ赤にして叫ぶ。

こんな面白い状況をどっかの誰かさんが見逃さないはずがなく。

 

「よ、霊夢ー。おまえがおねえちゃんかー?」

「ちょっ、魔理沙っ!もう酔ってんの?!」

「おーまだまだいけっぜー、にしても、いいなおまえら二人そろって『みこみこ』ってか?」

「あのねー?へんなコンビ名命名しないでくれる?」

「おん?気に食わねえってか?じゃ、『きょうだい』だなっ、もちろんおまえがおねえちゃん♪」

「もう、魔理沙っ、早苗もなんか言いなさいよっ!」

「え、え、わ、わたしがですか(はわわっ)?!」

 

急に話を振られ、狼狽える早苗。

しかし、そこは風祝のプライドか、すぐに立ち直ると空の杯を掲げて立ち上がりざまに霊夢に詰め寄る。

 

「では、わたしはあなたをセンパイと呼ぶことにしますっ」

「へ、なに?なんで急に?」

 

突然のセンパイ呼ばわりに驚く霊夢。

何やら面白いことが始まりそうな予兆を前に、一同の視線が一斉に二人の巫女に集まる。

 

「これでもあなたに敬意を表してるのですよ、不服ですか?」

「あ、うん、そ、そうじゃないけど?」

「では構いませんね、センパイ?」

「あ、えっと、うん」

 

有無を言わさぬ言圧に圧され、ついうっかり頷いてしまう霊夢。

それを見るや、ふふんっと早苗は得意げに鼻を鳴らす。

 

「じゃあ、センパイ。吞み比べしましょうか?昼間の弾幕勝負の意趣返しも兼ねて?」

「え、早苗?本気なの?もしかして早苗ももう酔ってる?」

「酔ってませんよー、まだこれからじゃないですか、さあ、受けてくださいよ、さあ、さあっ!」

「お、いいねえ、新旧巫女対決!吞み比べでどんどんやっちまえっ!!」

「ちょ、魔理沙ーーーーーーっ!!!!!」

 

霊夢の絶叫虚しく響く中、魔理沙の煽りで仁義なき巫女対決(呑み比べ)が勃発するのだった。

 

 

(ふう、すっかり遅くなったわね。早苗は大丈夫かしら?……ん?)

 

太陽の花畑でのお花のお世話を終えて、長い石段を上りながら赤鳥居へと向かう幽香。

そこで赤鳥居脇に屈み込んで何やら拝んでる一匹の妖精、リグル・ナイトバグを目撃する。

 

「あんたそこで何やってんの?」

「わ、ごめんなさいっ(ばひゅんっ)」

 

不審げに問いかける棘の入った幽香の声に驚き、リグルは慌てて淡い燐光を発しながら飛んで逃げていく。

それを舌打ち交じりに見送った後に、幽香は改めて昼間スキマ越しに見た「それ」をまじまじと眺める。

そして、はっとなる。

 

(……やったわね、紫?)

 

あの胡散臭い旧友の仕組んだ陰謀の全貌を、ここではっきりと幽香は思い知るのだった。

 

 

「この郷に我々を招いて以来、これでおまえとは切っても切れぬ因縁ができたようだな」

「ふふ、ご不満かしら?」

 

妖怪の山のいただき、「合コン会場」である守矢神社の本殿。

杯片手に語らう紫と守矢の主神、神奈子と諏訪子。

 

神奈子の含みを持たせたような物言いに紫は薄い笑みを浮かべ、おどけるように小首を傾げやる。

その仕草に小さく神奈子は鼻を鳴らす。

 

「まず最初におまえはあのひよこを博麗の巫女にぶつけるようにそそのかした。その次は敵に塩を送る、あのくだり」

 

そこまで告げてからちら、と神奈子は傍らのしもべたちへと一瞥を投げかける。

秋穣子、秋静葉、河城にとり、そして犬走椛。その四人が博麗神社のリフォームの仕掛け人。

主の目線を受け、四人は一様に互いの顔を見合わせた後に、得意げな笑みを浮かべる。

そのさまを穏やかに眺めた後に、改めて神奈子は真顔になって紫と向き合う。

 

「ここまでやってのけてのついでだ。この際聞こうじゃないか、つまるところ、おまえの真意は何だ?」

「そうね。……ただ面白ければそれでいいわ。それが答えよ?」

 

言霊伴う神威を前にしても、臆せず紫は澄まし顔でさらりと答える。

その食えない態度と返しに、さしもの神奈子も「やれやれ」と嘆息をつかざるを得ない。

 

「まあいいさ。守矢と博麗に乾杯」

 

その言葉の意味するところは。

 

「あーあ、早苗さ。あんなに顔真っ赤にして大丈夫ずら?って、ああ、博麗の巫女と同時にぶっ倒れたずらー」

「あらあら、今度は引き分けね。見なさいよ、あの二人の寝顔」

「ふ、ひよこ、いや、早苗。あの調子じゃ現人神の自覚に目覚めるのは、まだ当分先のようだな」

 

スキマ越しに眺めるのは、博麗神社の仁義なき巫女対決の決着、二人仲良く同時に倒れるその瞬間。

周囲がやんややんやと囃し立てる中、守矢と博麗の巫女は何故か手を繋いでそのまますやすやと寝入るのだ。

それはまるで。

 

三人は和やかな雰囲気でそれを飽きることなく、どこか愛しげにいつまでもいつまでも見守り続けるのだった。

 

 

やがて夜が明け、陽は昇り雀が囀り始める。それは宴のお開きの合図。

参加した各々はそれぞれの帰路についていく。

 

「……う、うーん?あー、頭痛っ」

 

しっちゃかめっちゃかの祭の後、本殿の片隅でむくっと起き出す霊夢。

起き上がりざま、キンキン鳴り響く頭痛に軽く眉根を寄せると。

 

「おとうさん、おかあさん」

 

不意に傍らから聞こえる、啜り泣くようなその寝言。

その寝言に驚いたように、未だ眠る早苗を見つめる霊夢。

それから。

 

(親、か)

 

数度双眸瞬かせた後に霊夢は立ち上がり、奥の押し入れから取り出した毛布をそっと早苗にかけてやる。

そんなところへ。

 

「霊夢っ、霊夢!いるの?」

 

どたっどたっと足音荒々しく、そのついでにそこらの一升瓶抱えて眠る普通の魔法使いを跨ぎつつ、やってくるのは。

その大柄な侵入者の凄味を増した形相に霊夢はぽかんとする。

 

「……幽香じゃない。どうしたの、こんな朝っぱらから?」

「とにかく、こっちに来なさいっ。見て欲しいものがあるのよ!」

「なによもう、そんな大声で喚かないで?頭に響くわ。それに早苗が起きちゃうじゃない?」

「いいからつきあいなさいっ(むんずっ)」

「痛い痛い、耳引っ張らないでっ!」

 

 

二日酔いで悶える博麗の巫女が花守に連行された先は、赤鳥居。

その鳥居脇に据えられた「小さな祠」を「あれま」と霊夢は嘆息交じりに眺める。

 

そこに祀られているのは愛らしい蛙と蛇の彫像。

その手前に据えられた、小さな賽銭箱。

 

「これ、どういう意味か分かるわよね?してやられたのよ、あんた」

「あー、うん、そうね」

「そうね、ってあんた?」

 

この領域侵犯とも取れる事態を前にしても、全く動じない霊夢。

それどころか、呑気に「ふわあ」と大きく欠伸をする。

 

「どうでもいいじゃない?一応、この鳥居を隔てて境界はしっかりと守られてるし、それに」

「それに?」

「これでもここもうちの敷地内ってことだし、ここのお賽銭はうちが貰ってもいいってことよね?」

「……はあ、あんた、ちゃっかりしてるのね?大した根性だわ」

 

呆れ顔で頭を抱える幽香をよそに、霊夢はただ満面の笑みを浮かべるのだった。

 

吹き抜ける「西からの風」。

それはかつては対立と混乱を促し、そしていまは調和をもたらしていく。

 

やがてその噂を聞きつけて、日増しに増えていくその祠目当てに訪れる参拝者たち。

そのおかげで博麗神社は慢性的な財政不足から解放される兆しをみせるのだった。

 

 

 

 

おまけ。

 

「……うーん、センパイ。だ、い、す、き(むにゃむにゃ)」

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