進め! 我らは力の同盟!   作:クラウス道化

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(44)感動の再会ふたたび! 力の同盟!

 力の同盟はしっかりと体を休め、ついに次の任務の日を迎えた。

俺たちは黄色のローブに身を包み、メフィストの案内でイリアスシェルターの奥深くへと進んでいく。

 

「まだ着かないのか……?」

 

「もう少しですよ。ここは秘匿しておかねばならない場所ですので……」

 

 メフィストは淡々とした口調でそう答えるが、その顔にもわずかに疲労の色が見えていた。

 

「その言葉、十分ほど前にも聞きましたわ……」

 

 どこでもてれぽくんの本体が保管されている部屋に案内すると言われてから、すでに三十分は経過していた。

曲がりくねった通路を抜け、無意味に思えるレバーを動かし、謎のスイッチを押し、また別の扉が現れる――ずっとそんな調子だ。

 

「なんと回りくどい手順が必要な部屋なのだ……。我はもう最初の仕掛けを忘れたぞ……」

 

「会議室でホークのエンブレムを取って、地下道の赤の鍵を手に入れて、バイクの模型を動かしたあと、図書館のワールドウォーカーを発売順に並べて、隠し扉を開けたぜ!」

 

「アイシス、すごい……。メモしなくちゃ……」

 

 向かっている場所は、どこでもてれぽくんの本体がある場所だ。

妙な謎解きや仕掛けをいくつも超えなければならないため、俺たちは若干の疲労感を覚えていた。

 

 メフィスト曰く、テレポート装置は敵軍に奪われれば、イリアスヴィルにとって致命的な損失となる。

だからこそ、あらゆる手段を講じて防護を施しているのだという。理屈は分かるのだが……面倒なものは面倒だ。

 

「次の部屋では、プリエステスが作曲した“日光”という曲をピアノで弾けば扉が開きます」

 

「…………」

 

「部屋に入ったあと、少し集中をさせてください。 ミスタッチをすると──天井からトゲが飛び出て、段々と下に降りてくるのです」

 

「こえーよ! そんな仕掛け、ぜってえ事故で死人出るだろ!」

 

「実際に以前、初代天使長が平坦になった事故がありまして……。ですが、その件以降はきちんと注意喚起と対策を──」

 

 メフィストが扉の鍵を外すと、低い軋み音とともに部屋が開かれた。

中には一台のグランドピアノがぽつんと置かれている。

 

 だが、様子がおかしい。

すでに天井のトゲがせり出しており、金属が擦れるような重い音を立てながら、ゆっくりと地面へと迫っていた。

 

「ま、間違えてしまった……!」

 

「ホルミエル様ー! 天井がー! 天井が降りてきますー!」

 

「パフェがくしゃみをするからだぞー!」

 

「このままじゃ、サンドイッチになっちゃうよ~!」

 

 四人の天使たちがピアノの下で頭を抱え、慌てふためいている。

ホルミエルとワイティエルの三人組だ。俺たちが来る前に、どうやらミスタッチをしたらしい。

 

「言ったそばから事故ってるじゃねぇか!」

 

「……落ち着いてください。前回の事故を受け、関係者しか知らない“セーフティ”を設置してあります。ご安心を」

 

 アイシスがツッコミを入れているその隙に、メフィストは滑らかな手つきで鍵盤を叩いた。

すると、天井のトゲがカチリと音を立て、ゆっくりと上昇していく。やがて壁の一部がスライドし、隠し通路が姿を現した。

 

「た、たすかった……」

 

「ほんとに必要か? この仕様」

 

「プロメスティンが楽しそうに制作していたので、誰も止められず……」

 

「もう指摘を入れるのも疲れてきた。これで本当に終わりなんだろうな?」

 

「ええ。この先の扉にケンタウロスのメダルをはめれば、プロメスティンの研究室に通じます」

 

「不便じゃないの……?」

 

「“どこでもてれぽくん”の開発は、潜入作戦が立案される前から進められていた……とだけ申し上げておきます」

 

 メフィストは淡々とそう告げると、ひとつ息を吐き、ゆっくりと通路の奥へと進んでいった。

 

 ・・・・・ 

 

 最後の扉を抜けると、圧迫感すら覚える巨大な部屋が広がっていた。

中央には、地面に固定された巨大な金属製の環。そしてその真上、天井からは同じ規格の環が鎖で吊り下げられている。

 

 壁際には無数の鉄パイプが縦横に這い、床にはケーブルが絡み合っていた。

機械油の匂いと低い唸り声のような振動が、空間全体に満ちている。

 

 俺たちが足元のケーブルを踏まないよう慎重に進んでいると──奥から妙な叫び声が響いた。

 

「うおぉぉぉぉ!!!」

 

「ひぃー! ひぃー! し、死ぬぅー!」

 

「なんだあれ」

 

 視線を向けると、巨大な回し車が勢いよく回転していた。

その中で、ウリエラとガブリエラが必死に走っている。ガブリエラは半泣きになりながら何度も転びかけ、対してウリエラは目を輝かせて楽しそうに全力ダッシュしていた。

 

 俺が訝しげに見てると、横からプロメスティンがやって来た。

 

「どこでもてれぽくんは電力もそこそこ食うのでな。魔力を吸い取る他に、こうして適度な運動でエネルギーを供給してもらっているぞ」

 

「いい汗かけるぜ! うおぉぉぉぉ!!」

 

「も、もう無理です……! ──あばばばばっ!!」

 

「ちなみにガブリエラは、止まろうとすると電撃が走る仕様にしてある」

 

 ガブリエラは涙目で必死に走っていた。

額には汗が流れ落ちており、今にも倒れそうになっている。しかし、止まることが出来ないので、死にそうな表情で走っている。

 

「ウ、ウリエラ様……! も、もう……これ以上は……!」

 

「もっと足を使え! 疲れたと思ったら、疲れてないと考えるんだ!」

 

「言葉が……! 言葉が通じてないっ……!」

 

「…………」

 

「ワタクシもやりたいですわ!」

 

「また今度な」

 

 俺の言葉に抗議するシェーディとエクレアを他所に、俺は金属製の環へと視線を向けた。

 

「どこでもてれぽくんの起動方法は私が解き明かしたのだが──この環そのものはピラミッドから発掘された代物でな。構造解析には──」

 

「講義はまた後にしておきましょう。プロメスティン、起動準備は?」

 

「もちろんだとも。魔力、電力ともに満タン。あとは起動するだけだ。……あんこ、わかめ、持ち場へ」

 

「わかった……」

 

「こっちに、来て……」

 

 気配もなく背後からにゅるりと現れた魔物たち。

アンコウ娘のあんこに、ワカメ娘のわかめと言うらしい。

 

「なんだこやつら……」

 

「なんだ、私の助手二人に文句があるのか、蛭蟲? こう見えても、この二名はイリアスヴィル総合大学を首席で卒業している。お前たちよりは数段優れた頭脳の持ち主だ」

 

「どっちも演劇学科出身ですけどね」

 

「ちなみに私、ワカメじゃなくてイシクラゲなんだよ……」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 そんなやり取りの中、プロメスティンの助手に連れられて、俺たちは巨大な環の中心へと立たされた。

あんことわかめは位置を細かく調整すると、すっと後方へと下がっていく。

 

「では起動するぞ。天文学的な確率で、テレポートした直後に体内の水分子が爆発する可能性もあるが……まあ、多分大丈夫だ」

 

「出してくださいませ! 出してくださいませ!」

 

「おい! そういう不安煽る話はもっと前に言えよ!!」

 

 エクレアとアイシスの抗議をよそに、環が回転し始め、青白い光が走り出した。

壁沿いのパイプから蒸気が噴き出し、ケーブルがバチバチと火花を散らす。天井に吊られた環もゆっくりと降下し、まるで俺たちを挟み込もうとするかのようだ。

 

「力の同盟の皆さん、健闘をお祈りしています」

 

「えっほ! えっほ! 俺も応援してるぜー! 頑張れよー!」

 

「もう嫌ですー! 誰か助けてくださいー!」

 

「がんばれ……」

 

「ワームホール、あんてい……」

 

「どこでもてれぽくん、起動!」

 

 回転が激しさを増し、視界は真っ白に弾け飛んだ。

全身が凍てつく嵐に投げ込まれたかのような衝撃に、思わず息が詰まる。

 

 ──そして次の瞬間、俺たちはまったく見知らぬ部屋の中に立っていた。

 

 ・・・・・ 

 

「うぎゃー! ワタクシの身体が水になってますわ~!!」

 

「エクレア、それは元からだ。……無事にテレポートは成功したようだな」

 

「うう、へんな気持ち悪さが残ってる……」

 

「全員揃ってるな。それで、ここはどこだ……?」

 

 視界が落ち着くと、そこは薄暗い倉庫のような部屋だった。

窓はなく、天井から吊られたランタンだけが橙色の光を落としている。壁際の棚には燻製肉やチーズ、乾燥パンなどがぎっしりと並び、保存食料庫であることが窺えた。

 

「食料庫に出たっぽいな。時間的にも誰もいな──」

 

「おらあっ! そこに隠れてるのは誰だあ!?」

 

「ぐええっ!?!?」

 

 俺の言葉をぶった切るように、アイシスが跳躍して箱の影へ拳を叩き込む。

ゴンと鈍い音がしたあと、小さな悲鳴が響き渡る。俺たちは一気に警戒度を上げて、声の主を見た。

 

「あんなたちだって、誰なのよ! 私が食べ物をちょっと拝借──いえ、品質のチェックをしようとしてたところなのに!」

 

「……エヴァじゃねえか」

 

 黄色いフードを外し、頭のたんこぶをさすっていたのは、サキュバスのエヴァだった。

なぜか口元には黒いハンカチ。完全にこそ泥スタイルである。

 

 アイシスを恨めしげに睨んでいたエヴァだが、すぐに開き直ったように胸を張る。

 

「どこかで会ったかしら? まあいいわ! あんたたちもこの時間に居るってことは、私と同じ目的なんでしょ? 特別に一割くらい食べていいわよ!」

 

「いや他人の物だよな、これ」

 

 その言葉を遮るように、アイシスがエヴァの胸ぐらをつかんで軽々と持ち上げた。

エヴァは慌ててバタバタと手足を動かす。

 

「ぎゃああ! 待って待って! 話聞いて! じゃあ二割! 二割でどう!?」

 

「おい、こいつから事情聞こうぜ」

 

「我は賛成だ。どうにも、洗脳されたような様子も無いからな」

 

「そうだな。エヴァ、ちょっと力を貸してくれないか?」

 

「な、何が聞きたいのよ?」

 

 俺は端的に、ここへ来た目的を説明した。

イリアスヴィルから派遣され、黄色の衣の姉妹団の内部調査を命じられたこと。内部で洗脳が行われている可能性があり、解除方法を探すつもりであること。

 

 エヴァは最初こそ怪訝な顔をしていたが、イリアスヴィルという単語を聞いた途端、あからさまに態度を変えた。

 

「なんだ。あんたたちもイリアスヴィルから来たのね」

 

「エヴァもそうなのか?」

 

「グレートオークのグレッタとフェンリルのレラに借金があって逃げ──まあ、私のことは別にいいじゃない!」

 

「別世界でも変わんねぇな……お前……」

 

 アイシスが呆れた様子でそう言うと、エヴァは肩をすくめた。

地面へ降ろされると、わざとらしく服の皺を伸ばした。

 

「洗脳ねえ……。実は心当たりがあるのよ」

 

「本当か!?」

 

「ええ。私はここまで一人で来たわけじゃなくて、メルティバットとナビスって子と一緒に来たのよね。そう言えば、道中で任務がどうとかって話してたわね……」

 

「お前と違って、その二人は潜入が目的だったのだろうな」

 

 ぺこが当然のようにチーズをつまみながら呟く。

よく見ると、棚の空白が明らかに増えていた。

 

「でもね、入団手続きが終わってから、二人とも急におかしくなっちゃって。最初は“信仰に目覚めたのね~”って思ってたんだけど……熱心すぎるっていうか。日に日に目が据わっていって」

 

「どんな感じだった?」

 

「ずーっと経典みたいなの読み込んで、時間になると決まった言葉を何度も繰り返すのよ。私の言葉にもあんまり反応しなくなってきたし……」

 

「うわ、ドンピシャじゃねぇか。いつからそんな様子になった?」

 

 問いに、エヴァは眉間に皺を寄せて記憶を探る。

しばらく唸ったあと、ぽんと手を打った。

 

「入団手続きのあとね。質問に答えさせられて、最後に妙な照明で光を浴びせられてからよ。あれがターニングポイントね、確実に」

 

「それが洗脳の方法か……?」

 

「さあ? でも、それ以来二人とも私に小言をあんまり言わなくなったのよ。私的には、静かで助かってるけどね~」

 

「なぜ……こいつには効いていないのだ?」

 

「…………」

 

 同じ疑念が浮かんだのだろう。ぺことシェーディが、まるで珍しい生物を見るようにエヴァを凝視する。

アイシスも腕を組み、真剣な表情をして──。

 

「……こいつは元々アレだから弾かれた説があるな」

 

「アレって何よ!? 私はいつも真面目に──このチーズすごく美味しいわね! ポケットに詰め込まなくちゃ!」

 

 説得力がゼロだった。

俺はとりあえず、エヴァに道案内を頼むことにした。不安はあるが、闇雲に歩き回るよりは良さそうだ。

 

「エヴァ、中を案内してくれるか?」

 

「いいわよ! まずは宝物庫へ行きましょう! 一人だと持ちきれないのよね~!」

 

「そこじゃなくてよ……。妙な照明がある部屋に案内頼むぜ」

 

「……報酬は?」

 

「うーん、危険な仕事だしな……。それなら俺が借金、肩代わりしようか」

 

 その瞬間、エヴァの目がゴールドの形になった。

 

「ヴェーク……額も聞いてないのに大丈夫なのか?」

 

「まあ、流石に払える範囲だろうから……」

 

「何してるの! 早く行くわよー!」

 

 スキップしながら進むエヴァを追い、力の同盟は薄暗い通路へと足を踏み入れた。

 

 ・・・・・ 

 

「この部屋が共同の寝室ね。この時間は誰も居ないけど」

 

「思っていたより清潔なのだな……」

 

「アリ娘が掃除してくれてるのよ。自分以外の働きものって素敵よね~」

 

 エヴァの案内に従い、内部を調査する。

壁も床も、ゴツゴツとした石材で固められているが、天井には天然の鍾乳石が無数に垂れ下がっていた。

 

 洞窟をそのまま利用した要塞──そんな印象だ。

エヴァの話によれば、巨大なアリの巣のような構造になっており、慣れていないものはすぐ迷子になるという。

 

 廊下の両端には暖かい光を放つ蝋燭が等間隔で配置されており、明るく照らされている。

俺たちが進んでいる間にも何人かとすれ違うが、特に怪しまれている様子もない。

 

「こっちは食堂ね。それで、次の部屋が入団の手続きをする部屋よ」

 

「……止まれ。中に誰かいる」

 

 俺は扉に耳を寄せると、くぐもった会話が聞こえてきた。

 

「今回は縁がなかったようじゃのう。ささやかながら、ゴールドをお渡しするので、どうぞお引き取りを……」

 

「……面接に落ちることも、私は識っていた……」

 

 どうやら、入団の選考を行っているようだ。

俺たちは扉を少しだけ開けて、中の様子を見ることにした。

 

 魔導師のような姿をした魔物が、トボトボと部屋から出ていく様子が見えた。

椅子には白髪の少女が座っており、机に肘をついて深いため息を吐いた。

 

「まったく。最近の若いものは……。少し聞きかじっただけで何でも理解できた気になる……」

 

「ロビリッチね。彼女も確か、イリアスヴィルから来たのよ」

 

「めんどくせえ奴みてぇだな……」

 

 ロビリッチはぼやきながら、席を立った。

俺たちが隠れている扉とは別の扉から退出し、周辺に気配がなくなる。俺たちはそっと部屋に入ると、ガラスで作られた向日葵のような大きな照明が、部屋の端に置かれていた。

 

「これがそうなのか?」

 

「ここにボタンがあって、それを押すとピカーって光るのよ」

 

「仕組みは……普通かな……?」

 

 俺は気をつけながら、洗脳を行っているらしい装置を見る。

見たところ、豪華な照明道具にしか見えず、どこにも細工のようなものは見当たらない。操作ボタンは分かりやすい場所にあったが、そのほかは分からない。

 

「我が試しに、エヴァへもう一度当ててみるか?」

 

「嫌よ! どうして洗脳の効果があるって話を聞いてから、また当たらないといけないのよ!」

 

「すでに一度体験している以上、誤差ではないか?」

 

「イヤよ! イーヤー!」

 

 ぺこの淡々とした提案に、エヴァが床を転げ回って全力拒否。

俺も正直不安なので、ひとまず制止する。

 

「それは最後の手段にしておこう。……とりあえず、これを壊して──」

 

「なんじゃお主ら。ここは限られたもの以外は──もごごっ!!」

 

 ぺこの触手が、扉の隙間から現れたロビリッチを瞬時に拘束する。

長くもない呻き声とともに、彼女はバタリと崩れ落ちた。気絶させることに成功したようだ。

 

「危なかったな……。とりあえず、こっちに寝かせよう」

 

「本当に洗脳されているのか? 変わった様子は──」

 

 俺がロビリッチを横に寝かせようとした、その瞬間。

閉じていた瞼がカッと開き、鋭く俺の手首を掴む。妖しい黄色の瞳が、狂気の光を宿していた。

 

「なっ!?」

 

「ヴェーク!」

 

「黄衣の王に逆らうか……。我が偉大なる王に仇なそうというのか……」

 

「な、何かいつもと雰囲気が違うんですけどー!?」

 

「明らかに洗脳されてんな、これ!」

 

「…………」

 

 俺は慌てて縄を取り出して、ロビリッチを拘束する。

最後に口に布を噛ませて、体をガチガチに縛った。ロビリッチがうーうーと唸っていたが、徐々に静かになっていく。エヴァはその様子を見て震えていた。

 

「ど、どうなってるのよ……! 私は自分の部屋に戻らせてもらうわ……!」

 

「今は共同の寝室じゃなかったの……?」

 

「そ、そうだった! 逃げ場がないじゃない……!」

 

 エヴァは頭を抱えて、その場にしゃがみ込む。

 

「──あー!!」

 

「おい! 静かにしてくれ!」

 

 突然の叫び声に、俺は慌てて制止する。

理由を問うと、エヴァは今にも泣き出しそうな顔で訴えてきた。

 

「このあとの集会、ロビリッチがパイプオルガン演奏担当なのよっ!!」

 

「げっ……それは完全に不味いヤツだな」

 

「ならばワタクシが弾きましょう! 外見は少々変わりましたが……イメチェンということで押し通せますわ!」

 

「見た目、完全に別人だけど……」

 

「…………」

 

 どうやら、かなり厄介なことになってきたらしい。

シェーディが縛られたロビリッチの頬をつんつんしながら、無表情で様子を伺っているのを横目で見つつ、俺は思考をまとめる。

 

「とりあえず、これを破壊してみるか。このままだと、バレて騒ぎになるのは確実だし」

 

 俺は目の前の洗脳の道具……と思われる装置を壊すことにした。

向日葵型の照明を力任せに掴むと、そのまま床へ叩きつけた。ガシャン、と甲高い音を立てて砕け散る。

 

「……どうだ?」

 

 ぺこに目で合図し、ロビリッチの口元を解放する。

 

「もぐぐ──許されぬ、許される行いをして──」

 

「駄目だな。これはまだ洗脳されているぞ、ヴェーク」

 

「困ったな……」

 

 潜入したばかりだというのに、俺たちは早くも窮地へ追い込まれていた。

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