進め! 我らは力の同盟!   作:クラウス道化

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(4)さらなる力を手に! 力の同盟!

 漆黒のハーピーは楽しげに翼を広げ、こちらをじっと見つめていた。

俺とブラディは言葉を交わすこともなく、警戒を解かぬまま、それぞれ武器を構えて彼女を睨み返した。

 

 これまで幾多の魔物と遭遇してきたが、ここまで露骨に“格の違い”を感じさせる存在は久しい。

火山の中心部。灼熱が支配し、熱風と溶岩の息吹に満ちているはずのこの場所で、なぜか俺の背筋を冷たいものが走る。

 

「大将のお出ましか……」

 

「こんな鳥は見たことがないのう……」

 

 俺の脳裏に浮かんだのは、かつて対峙した邪神ハスターの姿。

あのときはシェーディがなんとかしてくれたが、今回はそうは行かない。慎重にことを進めなければ、どうなるか分からないのだ。

 

「ふふ、そんなに警戒しなくていいわ……。今の私はあなたに害をもたらすつもりはないもの」

 

「むう……。そう言われて『はいそうですか』とはいかんだろう」

 

 ブラディの疑いの声に、俺も内心で同意する。

 

「ええ、もっともね……。疑うのは当然だわ。でも、信じてもらうしかない。■■■■■──今はヴェーク、だったわね。あなたは色々と知りたいことがあるはずよ」

 

 漆黒のハーピーは口元に手を添え、くすりと笑った。

その仕草は洗練されていて、幼さの欠片も感じられない。

 

 この魔物は、おそらく見た目通りの年齢ではない。

幼い外見に反して長い年月を生きている存在は、総じて強力で、そして厄介なことが多い。

 

 例を挙げるなら、ぺこやたまも様、そしてシェーディも同類だろう。

 

「……ブラディ、一度、武器を下ろそう。話をさせてほしい」

 

「もっと戦いたかったのだが……。ふん、ここは引いてやろう。我は大物だからな!」

 

 そう言い放つと、ブラディはわざとらしく胸を張り、自らの尖剣を鞘に収めた。

その様子に苦笑しつつ、俺も弓を背に担ぎ、改めて漆黒のハーピーと正面から向き合う。

 

「色々と聞きたいんだが……まずは、どう呼べばいい?」

 

「──私はダークフェニックス。惑星を焼き尽くし、輪廻に還す存在──。そして、世界に転生を促すための法則──」

 

 漆黒のハーピー――ダークフェニックスは、長々しい名乗り口上を終えると、こちらも満足そうに胸を張った。

その姿は、小さなハーピーの子供がふんぞり返っているようで、どこか可愛らしい。

 

 だが、見た目で油断してはならないだろう。

先程まで、ミニの身体から溢れ出ていた禍々しいオーラの主なのだ。

 

「……まあ、今は休暇中の小さな波動生命ってところかしら……。ほんと、急に攫われて嫌になっちゃうわね。あの性格悪そうなウサギ、次に見つけたら丸ごと焼き尽くしてやるわ……」

 

 ブツブツと小声で文句を言いながら、ダークフェニックスは足で地面を小さく蹴った。

どうやら、相当気に障る出来事があったようだ。不機嫌そうなその態度には、先程の禍々しさに加えて、濃い怨念のようなものまで混じっている。

 

「えーっと……ダークフェニックス。ミニは、大丈夫なのか?」

 

「何も問題ないわ……。彼女には悪いことをしたわね。私は本調子じゃなかったから、急いで何かに憑依する必要があったの。多めにエネルギーを吸い取ったけど……すぐに回復するはずよ」

 

 俺がさらに言葉を重ねる前に、ブラディが壁際へ歩み寄り、ミニをそっと降ろした。

近づいて様子を確かめると、ミニは規則正しい寝息を立て、深く眠っている。呼吸も安定しており、顔色にも異常は見られない。

 

 体だけは、相変わらず大きいままだったが。

 

 ひとまず最悪の事態ではないと判断し、胸の奥に溜まっていた息を吐く。

俺は再びダークフェニックスへと向き直った。

 

「……どうして、俺の前世の名前を知っている?」

 

「簡単な話よ……。死んだあなたを見逃して、転生させたのは──私だから。ふふ、覚えているはずはないわね……。あなたは丸裸どころか、記憶だけを持つ魂だけの状態だったんだから」

 

「なっ……!」

 

 ダークフェニックスの言葉を聞いて、俺は驚愕した。

なぜ自分がこの世界にいるのか──その根源に、ついに触れることになったのだ。

 

 ・・・・・ 

 

「あなた……私好みの炎ね。渦のような激しさの奥に、確かな安寧を感じさせるわ」

 

「褒めてくれてるの? ありがとう、グリモワール。そう言ってもらえると、素直に嬉しいわ……」

 

 先程まで酒盛りをしていた場所に腰を下ろし、俺たちは改めてダークフェニックスから詳しい話を聞くことになった。

グリモワールはすっかり彼女と打ち解けた様子で、自然な流れのまま隣に座っている。色の違う炎同士、通じるものがあるのだろうか。

 

「いーや! 我らは認めんぞ! 炎とは真っ赤に激しく猛り、灰燼となるまで焼き尽くし、突き進むものなのだ!」

 

「そうだ! そうだ!」

 

「滾る闘志と! 怒りの炎が最も大事なのだ! うおおおぉぉぉっ!!」

 

「赤い精霊の皆さんと脳筋ドラゴン、ちょっと落ち着いてもらっていいか? それで、ダークフェニックス……」

 

 俺は、ちょこんと座るダークフェニックスに声を掛けた。

彼女はいつの間にかブラディから手渡されたコップにワインを注ぎ、香りを楽しむように一拍置いてから、美味しそうに飲み干している。

 

「いいわね、飲食って。ダラダラするのも良かったけど、これも悪くないわ。……ああ、転生の話ね。それは、あなたのいた“第八世界”に関わることよ……」

 

 そう言って、ダークフェニックスは自身の身に起きた出来事を語り始めた。

 

 ダークフェニックスは銀河を渡り、生命の宿る星々を順に巡り、焼き尽くしてきたという。

星に生きる生命の中から、最適な依代に一時的に憑依し、その器を通して星を燃やす。そして、燃え盛る星の中で自らを再生させ、星の灰から次なる星へと旅立つ。

 

 それは、単に破壊だけを目的としたものではなかった。

ダークフェニックスの主な役目は、循環を促すことにあったのだ。

 

 破壊と再生を繰り返すことで、魂を輪廻へと導き、世界そのものの流れを保つ――。

それこそが、ダークフェニックスに課せられた役割だったらしい。

 

 しかし──その任務を遂行している際、想定外のことが起きた。

 

「地球──ここでは第八世界と呼ばれている場所にある星で、私はいつもの通り、使命を果たそうとしていた……。でも、私が世界を滅ぼす前に、人間が反物質対消滅兵器を使って、世界を終わらせたわ……」

 

 そう語るダークフェニックスの声は、先程までの余裕を失い、どこか沈んでいた。

翼も尾も動かさず、ただ燃え盛る溶岩の揺らめきを見つめている。

 

「私は実体を持たない存在だけれど……あの兵器は、そんな私にすら深刻な傷を与えたわ。だけどそれは、再生すれば済む話。……もう一つ、致命的な問題が起きた」

 

 ダークフェニックスは一拍、言葉を切る。

 

「自分の“存在意義”に、疑問を持ってしまったの」

 

「……なるほど、存在意義か」

 

「私は法則の執行者。魂を円環の輪廻へ導くために星を焼き、終わりと始まりを与える存在……。でもね」

 

 そこで、ダークフェニックスはゆっくりと視線を上げた。

 

「私が世界を焼き尽くす前に、人は自らの手で、すべてを燃やし尽くして終わらせた……。それなら、私は何のために在るの?」

 

 まるで水面に落ちた一滴の雫のように、小さく、だが確実に波紋を広げていく。

その微細な疑問が、ダークフェニックスに“心”を芽生えさせた。

 

 やがて心は思考となり、思考は海となり――そこから、“自我”が生まれた。

世界の法則が、宇宙の波動生命が──自らの自由意思を持ったそうだ。

 

「仕事は別に……自分がやらなくてもいいんじゃないって気づいたのよ。それからは宇宙を適当に漂いながら、のんびりくたーっとした生活してたの」

 

「急にはっちゃけた話になったな」

 

「だってそうでしょ? 今まで“私だけ”の役目だって思ってたのに、魔法も使えない人間ごときが同じことをしたのよ? やる気なんて、宇宙の彼方に飛んでいっちゃったわ」

 

 そう言うと、ダークフェニックスはするりと身を寄せ、座っているブラディの膝に頭を預けた。

にへへ、と締まりのない笑みを浮かべ、猫のようにゴロゴロと甘える仕草を見せる。

 

「我にはよくわからん話だが……本当によく頑張ったな! 我慢が報われ、莫大な休暇を楽しむのも大事だろう!」

 

「ふふふ……。ブラディは優しいわね……」

 

「話が宇宙規模なスケール過ぎて、ついて行けないな……。それで、なんで俺のことを知ってたんだ?」

 

「第八世界が滅んだあと、魂だけになったあなたを見つけたの。驚いたわ、私ですら深刻な傷を負ったほどなのに、ただの人間の魂が残っていたなんて……」

 

 第八世界が滅んだあと、俺は魂だけの状態で、ひとり宇宙を漂っていたそうだ。

 

 弱っていたダークフェニックスが、反物質対消滅から逃れるため、時空を飛び越えた。

その際に、俺の魂は偶然、その移動に巻き込まれたらしい。選ばれたわけでもない、ただ流れに引っかかっただけの魂だった。

 

 ダークフェニックスは役割をこなすため、俺の魂を焼き尽くそうとしたそうだが──。

すでに仕事に対する意欲が消えかけていた。だから、ダークフェニックスは俺の魂を見逃して、焼かなかった。

 

「戯れに、私の魂の一部──不死鳥の魂を少し混ぜ込んで、この星へと送り込んだわ」

 

「ダークフェニックスの魂が……俺に?」

 

 思わず聞き返すと、ダークフェニックスは否定せず、話を続ける。

 

「あのとき、あなたの魂はひどく傷ついていたから……。そのままだと、この惑星にたどり着けないと思ったの。だから混ぜ込んだだけ。結果的に、利点はあったんじゃない?」

 

 そう言って、ダークフェニックスは足元の溶岩へ視線を落とした。

赤く脈打つ光が、その横顔を照らしている。

 

「ただの人間が、魔物すら焼かれる高温に耐えられるわけがないでしょ? 平気なのは、私の魂の一部があなたの中にあって、影響を与えていたからよ……」

 

「そ、そうだったのか。てっきり、気合でなんとかなっているものだと……」

 

 一瞬の沈黙のあと、冷ややかな声が落ちてくる。

 

「……そんなわけないじゃない」

 

「うっ。言われてみれば、それもそうだな……。それよりも、ダークフェニックス──お礼を言わせてほしい」

 

 俺は姿勢を正し、ダークフェニックスに向き直る。

今までの話を聞くに、俺は彼女が居なければこの世界にやってくることはなかった。命の恩人……というよりも魂の恩人と言ったほうがいいだろう。

 

 俺は頭を下げ、感謝の気持ちを伝える。

 

「この世界にやってきて、色んな人に出会って、いろんな苦労をしたけど……ずっと楽しい時間を過ごせているんだ。ダークフェニックスがいなかったら、こんな風になれなかった。ありがとう」

 

 ダークフェニックスは俺の言葉を聞き、照れたような素振りを見せる。

 

「そこまで感謝しなくていいわ……。私の、気まぐれだったもの……」

 

 そっけない言い方だったが、声はどこか柔らかい。

 

「それでも、だ。本当にありがとう」

 

 ダークフェニックスは満足そうな顔をして、再びブラディの膝に頭を置いた。

 

 ・・・・・ 

 

 俺は大事な恩人に出会えたことに感謝しつつ、もう一つ聞きたいことがあった。

 

「そういえば、どうして俺を攫ったんだ? 最初から話してくれれば、それで済んだんじゃないか」

 

「ミニが私を自分の中で抑えつけていたから、思ったような行動が取れなかったの。それでもなんとか、誘導することは出来たわ……」

 

「ああ、封印ってそういうことだったのか」

 

 その言葉で、ようやく腑に落ちた。

ダークフェニックスには、狙いがあったのだ。

 

 ダークフェニックスは、ミニの体に憑依していたものの、その意識の壁は想像以上に厚かったそうだ。

肉体の主導権は常にミニが握っており、彼女は必要最低限の干渉しか許されていなかった。声を直接届けることも、姿を現すこともできず、やれたことはミニの意識を少しずつ誘導することだけだったという。

 

 火山内部での戦闘は、その均衡を崩すきっかけになった。

激しい衝突と混乱によってミニの集中が途切れ、さらに肉体が少しダメージを負ったことで、一瞬だけ隙が生まれた。その短い時間を逃さず、ダークフェニックスは表に出ることができたのだ。

 

「でも、ちょうど良かった。あなたが複数の炎の精霊と契約したことで、私との相性が良くなった。お願いがあるのだけど、あなたにも憑依させてほしいわ……」

 

「それは、どういうことなんだ?」

 

 話によると、ダークフェニックスは依代に憑依をしなくてはいけないそうだ。

一応、本調子であれば、本体のエネルギー体の姿でも過ごせるらしい。だが、今は消耗しすぎており、何かに憑依しておかなければ、顕現することが出来ないそうだ。

 

 憑依は、力を回復するためにも必要らしかった。

宇宙では問題なく存在できても、星の上では消耗するため、エネルギー体のままでは長く保てないらしい。

 

「あなたは、この滅茶苦茶になった星をなんとかしようとしているのでしょう? なら、私の力を貸してあげる……。それに、私の目標と交差するわ……」

 

「目標?」

 

「ええ……。私をここに無理矢理連れてきた、変なウサギに復讐するのよ……。確か、混沌の使徒、とかって名乗ってたかしら……」

 

「……!」

 

 混沌の使徒──イリアス様が言っていた、混沌の神が生み出した手先。

おそらく、この世界を救うためには、避けては通れないであろう相手だ。

 

「私のことを『十六の破滅事象』にするとかなんとか、よく分からないことを言って……。そもそも、私はどちらかと言えば管理者側の立場で──」

 

 ダークフェニックスはブラディの太ももに顔を埋め、ブツブツと呪詛のようなものを吐き出し始めた。

……なんだか、体がビリビリするのでやめてほしい。確実にダメージがこちらに来ている。

 

「──今は無期限の休暇を楽しんでいるだけであって、決して無職ではないのよ……」

 

「そ、そうか。ともかく、力を貸してくれるなら、ありがたい」

 

「流石に、力の全ては渡せないけどね。多分、魂の器が溢れて爆発しちゃうから……。ミニと半分ずつ分け与える形になるわ。──さあ、手を出して」

 

 言われるまま、俺は手を差し出す。

ダークフェニックスの翼が指先に触れた、その瞬間──熱ではなく、どこか懐かしいような、安心感にも似た温もりが、ゆっくりと体の奥へと巡っていった。

 

「なんだか、もっとこう……力が溢れたり、高まったりするのかと思ったけど。あんまり違いが分からないな」

 

「それもそうよ。元々、あなたの魂には私の魂が結びついていたのだから。それでも、以前とは全く違うはずよ……」

 

「我には分かるぞ! 以前から熱く良い魂だと思っていたが、更に輝くようになったな!」

 

 ブラディが目を輝かせ、声を上げた。

それに加えて、満面の笑みで拍手をしてくれる。

 

「炎を好む相手には、さらに好かれるようになったかもしれないわね……」

 

「さらに? 前から好かれてたのか……?」

 

「まあ、無意識に関心を持たれる程度だけどね……。周りに居なかった?」

 

 俺はダークフェニックスの言葉を思い返し、少し考え込む。

 

 言われてみれば、これまで炎を得意とするドラゴンと縁を持つことが多かった。

パピ、デアフリーゼ、ブラディ……それに、グランベリア。炎の扱いが得意なミニやアイシス、ボムボムとウリエラもそのうちに入るだろうか。

 

 定期的にSNSが炎上する飛鳥命と、放火が趣味なプリエステスは──おそらく違うだろう。

そんなことを思いながら、炎の精霊をちらりと見る。彼女たちは腕を組み、いかにも分かったような顔で揃って頷いていた。

 

「黙って聞いていたが、この魂の輝き具合を見ていると、感嘆の声をこぼさずにはいられない! ヴェークよ、また磨きがかかったようだな!」

 

「ムッチャメラメラ! 猛々しく荒ぶるその炎! 素晴らしい!!」

 

「私としては、静けさを大事にしてほしいわ……。静寂にこそ、力が宿るものよ……」

 

 炎の精霊たちは俺の周囲に立ち、それぞれが思い思いの感想を口にしている。

各自の評価の方向性はともかく、どうやら評価自体は悪くないようだ。

 

「じゃあ、私はサボ──安寧の微睡みに身を任せるから、用があれば呼びなさい……」

 

「ああ、ありがとう!」

 

 その声を最後に、ダークフェニックスの姿は炎の塊へと変わり、静かに揺らぎながら、俺とミニの中へと分かれて溶け込むように消えていった。

 

 ・・・・・ 

 

「これ、どうやったら消えるんだ……?」

 

「ううむ……。脱力して駄目なら、次は力んでみてはどうだ?」

 

「よし、じゃあやってみるか──うわっ! また量が増えた!!」

 

 俺は寝息を立てるミニを背負いながら、ゴルド火山から外へ出ようとしていた。

一連の騒動が無事に終わったこと自体は喜ばしい。だが、その代償として、ひとつ厄介な問題が残ってしまった。

 

 俺の体から、ダークフェニックスを連想させる禍々しい漆黒のオーラが、もくもくと吹き出しているのだ。

しかも、事あるごとに増えてしまう。黒い全身鎧に纏わりついてしまい、ただ歩いているだけなのに、何だか威圧感があるような気がする。

 

「まあ、無理に消さなくて良いのではないか? 我はカッコいいと思うぞ!」

 

「そうかな? なら、このままにしておこうか。別に触っても害はないみたいだし」

 

 ミニの体からは何も出ていない以上、制御できるはずなのだが……どうにも上手くいかない。

先ほどからダークフェニックスを呼んでいるものの、返ってくるのは反応ではなく、やけに事務的な声だけだった。

 

『ただいま、睡眠中です。起こさないでください』

 

 定例文めいたその声が、直接頭の中に響く。

どうやら、完全にお休みになられているらしい。

 

 それと、炎の精霊たちも俺の中に宿っている。

頭の中でずっと笑い声が響いているが、問題はない。俺の魂の中に精霊とダークフェニックス用の仮想領域を作ったので、大丈夫だ。大丈夫なのだ。

 

「それにしても、再びフェニックスを見ることが出来るとはな。それも二体!」

 

「再びってことは、修羅世界にも居たのか?」

 

「我の城で一時期、暮らしていたぞ。面白いことにな、上半身が鳥で、下半身が人間だったのだ! 残念なことに、食中毒で死んでしまったがな……」

 

「そいつは本当に不死鳥だったのか? ……そういえば、似たようなラミアが一時期、家の庭に勝手に住み着いて──おっ、出口が見えたぞ」

 

 陽の光が岩の隙間から見えた。

ブラディが道中の魔物を倒してくれたので、想定よりも早く出口にたどり着けたようだ。

 

 灼熱の空間から解放され、外へ出た瞬間、思わず息を吐く。

暑さと緊張が一気に抜け、心底ほっとした。

 

「あっ、イリアス様! おーい!!」

 

 ゴルド火山を出てすぐの場所で、ガルダが腰を下ろしているのが見えた。

その近くには簡易的なキャンプが張られ、イヌエルとプルエルが焚き火を囲み、楽しそうにマシュマロを焼いている。

 

 よく見ると、影紬が棒に括りつけられ、焚き火の上でプラプラと揺れていた。

 

 俺が声を掛けると、背を向けていたイリアス様がこちらを振り返った。

そして──次の瞬間だった。

 

「だ、大魔王!! 大魔王が現れました!! ──アメージンググレイス!!!」

 

 立ち上がったイリアス様は、完全に取り乱した様子で杖を構える。

そして、なぜか――味方であるはずの俺に向かって、容赦のない量の聖なる光を叩き込んできた。

 

「──ぬわーーっっ!!」

 

「ヴェ、ヴェェェェーク!!」

 

 ブラディは両手で頬を抑え、絶叫する。

俺は避けることが出来ず、光に呑み込まれて意識を失ってしまったのだった。

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