イカサマが闇のカードゲーマーに通用した   作:レイトントン

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なんだかんだ言うが甘い

「伊波ハクト……あなたは全く邪悪な人間ですね。拳銃などという野蛮な手段に訴えるとは……」

「目には目を。闇のVSなんてもんを使用するやつ相手だ、野蛮な手段も取ろうってもんだ」

「崇高なこの闇の力とあなたの銃撃を一緒にしないでください」

 

 崇高ねえ。

 まあ御託はいい。

 

「とっとと始めよう。お互いの魂とレアカードをかけて」

 

 勝ちの決まった勝負をな。

 

「ああ、そうそう。お前が勝ったらそいつも返してやるよ」

 

 闇で形作られた台にカードを投げつける。カードの強度が強いため、闇の台にカードが突き刺さった。

 

「アヤメのカード、ですか」

「海に捨てたって言ったな。悪りぃ、あれ嘘」

「ふふふ。どこまでもコケにしてくれますね」

「キリヒコさん、すみません。脅されて情報を漏らしてしまいました……」

 

 アヤメはキリヒコに謝罪する。が、キリヒコは首を振る。

 

「問題ありません。伊波ハクトは相当な手練……尋問の腕も相当なものでしょうからね。あなたにはまだ働いて貰わねば。カードのままでも、魂の多寡は分かるでしょうから」

「はい。もちろんです」

「さ、話は済んだか? VSを始めるぞ」

 

 俺は通常スリーブのデッキを取り出す。イカサマスリーブは例によって警戒されているからな。

 ただ、今回はいつものイザキエル主軸のデッキに加えて、キリヒコデッキのメタカードを多数投入した。また、勝利の鍵となるカードもな。

 

 

 

 

 

「……驚きました。前回戦った時よりも遥かに強い……!」

 

 悔しがるキリヒコは、上手くデッキを回せないでいる。当然だ。ガンメタ張らせてもらってるんだからな。

 

「仕方ない……私は『悪夢の使者グリモリア』を場に出します。このカードは()()()()場のクリーチャー2体を破壊し、代わりに墓場からクリーチャー1体を蘇生する効果を持ちます」

 

 グリモリアの強力な点は、これで自分自身を破壊することもできれば、逆に相手のクリーチャー2体を破壊し、雑魚クリーチャーを蘇生させることも可能な点だ。

 が、今はその能力は封じられている。

 

「だが、お前はクリーチャーの効果でクリーチャーを破壊できない。俺の領域魔法によってな。よって効果も不発となる」

「俺の? アヤメから奪ったカードでしょうに、よくも抜け抜けと言えたものですね」

「てめえらもレアカードを他人様からパクってるだろうが。俺がお前らからカードを奪っても何も言われる筋合いはねえよ」

 

 俺が張った領域魔法『緑鳥の楽園』は、互いの場のクリーチャーに『クリーチャーから攻撃されず、クリーチャーの効果を受けない』という耐性を付与する、途轍もなく強力な効果を持つ。これも闇のカードだ。

 これにより、それぞれの場のクリーチャーは魔法でしか破壊されなくなる。一見、メリットしかない効果に思えるが……

 

 キリヒコのデッキ傾向は、自らのクリーチャーを破壊して強力な効果を発揮するタイプ。だがVSのルールにおいて、コストとなるクリーチャーの破壊が不発に終わった場合、効果の発動もできなくなる。

 

 よって、この領域魔法1枚でキリヒコのデッキは半分機能停止に陥っている。闇のカードだけあり、凶悪なメタカードだ。

 

「しかし、グリモリアは4/5と単純にステータスも悪くないカードです。効果が使えないなら、直接攻撃するまで。あなたもクリーチャーの攻撃や効果で私のクリーチャーを破壊することはできないのですから」

「はっ、ここまできて4点の攻撃力で直接攻撃に切り替えか? 俺に削り殺されなきゃいいけどな」

 

 俺の生命力はまだまだ残っている。効果もなしに殴りだけでどうにかしようにも、こちらはもっと有利な状況を敷ける。

 

「俺は『強奪!』を使用。お前のデッキの『テンペスト』をいただく」

「領域魔法を破壊できるカードを的確に……! おのれ、私のデッキを把握していますね……!」

 

 ぴっ、とヤケ気味になったキリヒコからデッキ内のテンペストを投げ渡される。

 テンペストは5コストながら場のカード1枚を破壊できる非常に使い勝手の良いカードだ。これは闇のカードではなく、単純に強いカードだな。今まで何度もお目にかかったことがある。

 

 この手の領域魔法を破壊できるカードは、あと2枚しかヤツのデッキには入っていない。場のクリーチャーで攻撃しつつ領域魔法を維持できれば、俺の勝ちは揺らがない。

 

 そして、ヤツの手札にその2枚が入ることはない。

 

 

 

 

 

 

 伊波ハクトは危険な男だ。

 初めて見たのは、アヤメの笛吹組事務所襲撃を監視していた時。

 ヤツはなんと、アヤメに対して拳銃で発砲した。先ほどの私への発砲といい……銃を使うことになんら躊躇いがない。

 

 加えて、ヤツは恐らく……イカサマをしている。

 根拠はない。直接VSをしたが、証拠も押さえられていない。使用カードに異常はなかったし、VS中も不審な動きはなかった。

 一度ヤツにデッキを渡して、カードに不穏なことを……たとえばカードを抜き取り自らのものにしたり、カードにわざと傷を付けたりといった行為をしていないか、確かめてみたがそれもしていない。

 

 だが、分かる。ヤツは、いざとなれば手段を選ばない者の雰囲気を発している。

 

 しかし、ヤツも私がイカサマを警戒しているのは分かっている。ならば、私とのVS中にイカサマなどできまい。

 不審な動きがあればそれを指摘し、闇の力で裁く。

 

 プレイングを考えながら、ヤツのイカサマを警戒するのは、神経が削られる。だが、やらなければならない。

 私は神を復活させるのだから。

 

 幸い、ヤツの実力は大したことはない。一度カジノでヤツとVSをした際は、私が圧勝したのだ。

 

 

 

 ————そう思っていたのに。

 

「俺は領域魔法『緑鳥の楽園』を展開する」

「そのカードは……!」

 

 アヤメに与えられた闇のカードで、私のデッキに対してこの上なく最悪の相性のカードだ。

 あのカードが出てしまっては、私のデッキにあるクリーチャーを破壊し効果を発揮する類のカードが封じられてしまう。

 

 

 さらに、彼は『強奪!』で私のデッキから、領域を破壊し得るカードを奪う。

 その迷いない選択の速さで、私は確信する。この男は、私のデッキ内容を把握している。

 確かに、前回のVSでも『強奪!』を使われ、外した際にデッキに指定カードが入っていないか確認はされたが……

 

 あれだけ短い時間で、私のデッキを全て把握した? そんなはずはない。VSのカードの種類は非常に多い。『テンペスト』など有名カードもあるが、恐らく全てのカード内容を把握している人間などほんの一握りだろう。

 

 にもかかわらず、あのテンポでカードを確認していって、長いテキストを全て把握した? あり得ない。瞬間記憶能力でもあるか、あるいは動画でも——

 

「ッ!」

 

 それだ。

 ヤツは恐らく、どこかにカメラを仕掛けて私のデッキ内容を盗撮したのだ。

 

 どこまでも卑劣な男だ……

 

 ……待てよ?

 だとするなら、どこからがヤツの計画の内だった?

 手札を公開するクリーチャー。相手のデッキからカードを奪う魔法。失敗した場合は、確認のため相手のデッキの確認が可能……まさか……

 

 伊波ハクト。この男は、危険だ。

 消さなければならない……絶対に。

 

「私のターン」

 

 強い覚悟でもって、山札からカードを引く。

 良いカードを引いた。これなら——

 

「俺は魔力2で高速魔法『出会い頭の痛手』を発動。お前のドローカードを墓場に送る」

「なんだと……?」

 

 ここで、そのような魔法を出すとは。

 せっかく領域魔法を破壊できるカードを引き込んだというのに……

 

 ……いや、タイミングが良すぎないか?

 

 はっとする。そうだ、私が領域魔法を破壊できるカードを引いたタイミングで、都合よく高速魔法を発動できるものだろうか?

 今のターンより前で、あのカードを発動できるタイミングはあったはずだ。

 

 それを、ヤツはまさに今しかないというタイミングで。まるで私の手札が分かっているかのように……

 

「……なるほど。裏切りましたね? アヤメ」

 

 私の手元には、ちょうど投げ渡されたカードがあった。それも、アヤメの魂が入ったカードが。

 

「…………」

「黙りですか。まあいいでしょう。あなたが私に逆らうというのであればどうぞご自由に。ですが、覚悟することですね。伊波ハクト亡き後、我が神に魂を捧げられることを!」

 

 私は確信を持って、伊波ハクトに指を突き付ける。この男を断罪するために。

 

「伊波ハクト、あなたはイカサマをしている。アヤメに私の手札を覗かせ、その内容を把握した。……違いますか?」

「違う」

 

 しれっと。まさにそんな表現が合いそうなくらい簡単に、伊波ハクトは否定した。

 

「しらばっくれようとしても無駄です。懺悔なさい。イカサマが発覚すれば、闇の力であなたを罰することができる。さあ、闇よ。伊波ハクトに裁きを!」

 

 勝った。私は、この悪人の尻尾を掴んだのだ。

 

 ——しかし、闇の力は、ヤツを罰そうとしない。

 

「……なに?」

「残念。闇の力ってのは、名前の割に公正なんだよ。ちゃんとVSで負けたヤツをカードにするし、イカサマだってのもイチャモンじゃ反応しねえ」

「イチャモン? 私の指摘が間違っていたと?」

「そう言ったはずだが。聞き入れてもらえなくて悲しいよ、俺は」

 

 伊波ハクトは、めそめそと泣いたフリをする。ちょっと本気で殴ってやろうかと思うくらいには腹立たしい。

 そんな馬鹿な。この闇の空間にはカメラなど設置できるはずもない。私の手札を確認する方法は、私の台に突き刺さったアヤメのカードから情報を得るより他に方法はないはずだ。

 

 ……本当に、イカサマをしていない?

 いや、それは想定が甘い。考えろ。何か、何か手段があるはず……

 

「おい、遅延行為か? さっさとターンを進めてくれよ」

「……私は『霊能力者イズモ』を場に出します。場のクリーチャー1体の攻撃力と体力を2点増加。攻撃力6となったグリモリアであなたに攻撃する」

 

 イズモが札を出し、それをグリモリアに取り付けると、彼女の纏うオーラがより大きくなる。そのまま、悪魔の槍で伊波ハクトに襲いかかった。

 

「おっと、手痛いダメージだ」

 

 この後、グリモリアは奪われた『テンペスト』で破壊されるだろうが……それは仕方ない。

 それよりも、ヤツのイカサマを暴かなければ。

 一体、どんな手段を使っているのか……

 

 

 

 

 

 

 今頃キリヒコは俺のイカサマを暴く方法を考えているんだろうが、無駄だ。

 絶対にバレようがないイカサマを使っているんだからな。

 

 

(我が主……本当に、本ッ当に、今回だけですからね)

(『背徳』の天使の面目躍如だろ?)

(我が主?)

(嘘嘘、冗談だ。感謝してるよ本当に)

 

 イザキエルはもう手伝わないと言うが、こいつ割と俺に甘いからな。

 命の危機なら手を貸してくれることだろう。

 まさに今のように。

 

 

 

 俺はイザキエルを使い、相手の手札を盗み見ている。

 

 

 

 麻雀には『通し』と呼ばれるイカサマがある。観客に紛れ込ませた仲間や他のプレイヤーから合図を受け取り情報のやり取りをする。

 いわばこれは『精霊通し』。見えない存在による手札の覗き見。しかも相手に見えないのを良いことに堂々と手札を覗き込み、堂々と俺に教えている。反則も反則、超反則だ。

 

 これの悪質なところは、精霊が目に見えるヤツがそもそも限られているところだ。一対一で、しかも相手が見えないヤツなら、絶対に気付かれない。

 

 キリヒコにイザキエルが見えないことは、前回のVSの時点で把握してある。

 俺はキリヒコにカードを出す時、何度か()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、キリヒコは違和感なく俺の出したカードの名前を言い当ててみせた。

 

 それの何が問題なのか?

 問題がないことが問題なのだ。

 

 なぜならその時、キリヒコの目はイザキエルの手で覆われていた。

 もしキリヒコが精霊を見ることができたなら、俺のカードの名前など答えられるはずがない。

 

 その時点で、キリヒコに精霊が見えないことは確定した。

 ただのVSを受けてくれて助かったぜ。闇のVSしかしなかったアヤメ相手には、闇の力の認識阻害のせいで視線が追えなかった。

 イザキエルが見えていない確信が持てず、使えなかった手だ。

 

 相手の山札に加えて、手札まで丸裸となっては、負けようがない。

 

 この勝負は始まる前から決まっていたんだ。

 以前、イザキエルにも同じことを言ったが、俺は使()()()()()()()()()()使()()







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