イカサマが闇のカードゲーマーに通用した   作:レイトントン

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悪巧みは割と好き

「イカサマダイスをばら撒いたのには、幾つかの理由がある」

 

 

 ところどころ……イカサマについて、そしてアヤメやキリヒコについてはぼかして話すとするか。

 

 

「VS学園にイカサマダイスをばら撒いた理由は4つある。細かいところを含めるともっとだが」

「一石四鳥の策だったと? 興味深いね。ぜひ聞かせてくれたまえよ」

「イカサマダイスをばら撒いた第一の目的は、俺の評価の向上だ。元々、コネクション元の面子のために、講師としての評価はある程度は上げておくつもりだった。履修登録期間に予定が狂い、俺の講義に生徒が上手く集まらなかった場合。あるいは、俺の講義が不評だった時に備えた。イカサマを摘発し、その後、イカサマに手を染めた生徒に手を差し伸べた講師という肩書きを手に入れるための手段だった」

 

 当たり前だが、イカサマに強い忌避感を持っている者は非常に多い。(このカードゲームが強い力を持つ世界では特に)

 

 だからこそイカサマダイスを与える人間は慎重に選別しなければならないと考えていたが、そもそも偽造カードなど使用している生徒がいるのであれば話は別だ。

 

 偽造カードを使用している生徒には心当たりがあった。三国カズヤだ。

 元々、手駒による調査で、カズヤが何らかの他人に言えないような手段でレアカードを手に入れていることは把握していた。

 

 そして、極め付けがハルとのVS。

 偶然ではあったが、そこで俺はヤツが偽造カードを使用していることを確信した。

 

 そして、彼のことを調べる内、彼と同じようにレアカードを手に入れ成績を上げた生徒が何人もいることが浮かび上がった。

 

 彼らは元々、偽造カードというイカサマ同然のものに手を染めていた。だからこそ、イカサマダイスを売りつけるのも容易だった。

 

 

「ガキ共を捕まえるのは簡単だ。何しろ、全ての物証を俺が把握しているんだからな。カズヤの件もそうだ。ダイスを飲み込んで隠す方法は俺が教えた。イカサマの精度を上げるために色々とアドバイスもさせたし、賭けVSを今日、つまり事件発生日に実施するよう、イカサマダイスの販売条件に入れた」

 

 

 ダイスを飲み込むため、同じ大きさ・形に氷をカットしたもので練習すると本番でえずきにくいとかな。

 どういうイカサマをするかまでの誘導も俺によるもの。俺がイカサマを暴くことができたのは必然だった。

 

 俺が用意したイカサマを、俺が指摘する。俺が陥れた生徒たちを、俺が救う。それによって俺の評価が上がる。

 何もかもがマッチポンプだらけな話だ。

 

 

「第二の理由は、DS(おまえたち)の情報を得るためだ」

 

 ここは、俺がVS学園に入ってから追加された点だな。

 俺は元々、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、これをさらに有効に使うことができると学園長の話を聞いて確信した。

 

「摘発された生徒達は当然処罰を受けるし、イカサマに手を出した経緯も調査される。その際、偽造カードをばら撒いていたDSの情報も手に入る。交換会に参加していたことなど、生徒達から得た情報を元に手駒にお前たちの足跡を調査させる予定だった」

 

 加えて言えば、今アカネが俺の目の前で、俺に接触を図っていることも事件による成果と言える。

 DSの犯行を利用した犯行。

 面白くない、と俺を潰しに来るか、あるいは興味を持って接触しにくるか、我関せずと静観を決め込むか。こいつらの出方を見るのも目的の一つだった。まあ、これは『DSの情報』という枠組みで纏めてしまっていいだろう。アカネに説明すんの面倒だし。

 

「第三の理由は学園長の娘、キョウカの籠絡となる。キョウカに強い敵愾心を抱いていたカズヤを煽りキョウカに対して賭けVSを挑ませた。手には狙った目を出せるイカサマダイス。カズヤが無茶なVSに走るのには十分だった」

 

 煽り、というのはアヤメによる誘導を指す。

 直接的に仕掛けるよう指示したわけではないが、キョウカは度々アヤメに突っかかっていた。それを疎ましく思っている、しかも自分よりも強いからタチが悪い。そんな愚痴を重ねさせた。

 元々、キョウカを目の敵にしていたカズヤだ。イカサマダイス販売時に、特定の日付に賭けVSをするよう指示されていたことも、まさに天啓を得た気分だったことだろう。

 

「キョウカは俺のことを目の敵にしていた。学園長の娘という立場もあり、いずれ俺の障害になる可能性があった。懐柔もしくは排除は必須。そのための準備だったわけだ。もっとも、彼女から仕掛けてきたVSに勝利したことで、キョウカからの不審感は拭えていたがな」

 

 そのタイミングで、キョウカにイカサマが警戒されていないかも確認した。

 自力でイカサマを看破してくるようならカズヤをぶつけても仕方ないからな。

 

 そして彼女がイカサマを警戒していないことを確認した俺は、学園長から聞き出せなかった、この学園の秘密を彼女から聞き出すため。キョウカが圧倒的に不利なイカサマ野郎相手のVSを組み上げた。

 

 しかし、せっかくイカサマ無警戒を確認してやったというのに、あのクソガキは逆上して一回のVSで複数回、イカサマダイスを使用して怪しまれるという失態を犯した。

 こういうのは肝心の一回だけ使うもんなんだって教えたはずなんだがな。キリヒコが。

 

 まあ、ダイスを隠す方は上手くやったようだから許してやるとするか。

 

 結果、キョウカを追い詰めたところに俺が介入、助け出すことでさらに彼女の信頼を得るという筋書きだったわけだが、おかげでいとも簡単に『秘密』のことを聞き出すことができた。

 

「第四の理由は、イカサマダイスと偽造カードという『物証を作る』ためだ」

「ふむ? 物証を作る? そんなものはない方が有利なんじゃないかな?」

 

 にやにやしながら、アカネは聞いてくる。分かっているリアクションだ。

 

「そのことは後々だな。他にも手駒の性能を試すとか、イカサマダイスや偽造カード(本物)を売って小金儲けをするだとか、色々と細かい理由はあったが。概ねはそんなところだ」

「一手でそこまでの戦略を練っているとはね……そして何より、君の思惑通りに事は運んだ。我々としても実に欲しい人材だ」

 

 欲しいとまで言ってくるとは、アカネはよほど感心しているようだ。

 

 だが、ここまでの理由は、全て後付けにすぎない。

 

 

 いつから俺がイカサマダイスのばら撒きを目論んでいたのか。それは八代ソウジロウに依頼され、VS学園の講師をすることになった、その瞬間からだ。その時にはもうキリヒコにイカサマダイスの製造を命じていた。

 

 依頼に伴い、勤務先について調べるのは当然のこと。俺はアヤメから、VS学園についての詳細を聞き出していた。

 

 そこで知ったのが、審判科の存在だ。

 

 VS学園でのVSにはジャッジが付く。これは俺にとって死活問題だった。なにせ、イカサマが全く通用しないかもしれないのだからな。

 聞いた瞬間は、そう考えた。が、すぐに俺は冷静になる。

 

 

 果たして、ジャッジについて学んでいる最中の子供に、この俺のイカサマが見抜けるのだろうか? と。

 

 

 もちろん、手元を注視されれば危険だ。3人がかりで囲まれたりすれば、素人相手でもイカサマなんぞ出来やしない。

 だが、仮にも教える立場。講師という人間相手に、そこまでの警戒心を抱くことは容易ではない。

 

 

 生徒たちにイカサマダイスをばら撒き、VSを行わせて囮とすることで、ジャッジのレベルを測る。これが本来の最初の目的だった。

 

 全員がイカサマダイスを見抜けるようなレベルであるなら、もうイカサマは諦めるしかない。が、予想通り、生徒たちのジャッジとしての習熟度にはバラつきがあった。

 見抜ける者と見抜けない者。当然、経験豊富な3年になるに連れて優秀な生徒の数は増え、逆に1年はそもそも一人でジャッジに付くことはなく、2年も大多数はイカサマダイスに、あるいは欺瞞工作に気付けないレベルだということが分かった。

 

 イカサマダイスの件で警戒が強まったが、どの道その程度のイカサマで強まる警戒では、俺のイカサマを見抜く事はできない。

 

 

 また、生徒たちにイカサマダイスを販売する際。価格を下げる代わりに、特定のタイミングで賭けVSを行うように交換条件を出したとはアカネに説明したが、これにより、生徒たちは一斉にVSを行った。

 するとどうなるか。即応できるジャッジの人数、学園側の動き。キャパシティを見ることができた。

 

 結果、大抵のジャッジがザルであること。多人数のVSを誘発できれば、俺のVSにジャッジが付かない状況を作り出せることが分かった。教師と生徒。どちらのVSに優先的にジャッジが付くかといえば、生徒の方になるだろう。

 

 人は権威には無条件で服従する。

 講師という立場を持っている俺がイカサマに手を染めていると考える者はそういない。ジャッジを付ける優先度は必然、下がる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 全てはそのためのイカサマダイスだった。

 

 

 

 

「どうかな、伊波くん。君のその辣腕をDSで振るってみる気はないかな?」

 

 アカネは、そう言って俺に手を差し伸べてくる。

 

「スカウトか。だが、秘密結社の構成員を増やすってのは簡単なことじゃないだろ。それだけの権限がまだ若いお前にあるのか?」

「私の仕事は、学園に封印されたカードの奪取。そして、これからカードゲーム界に大きな影響を与えるだろう人材の調査・勧誘だ。これも仕事の内さ」

「偽造カードを流したのもその一環ってか」

「……ふふ、鋭い人は好きだよ。ああ、益々君が欲しい。どうかな、できれば断ってほしくはないんだが」

 

 ここまで話しておいて断ってほしくない、は普通に脅しだろ。

 まあ良い。元々向こうの出方次第ではDSに入るつもりだった。

 だが、これだけは聞いておきたい。

 

「労働条件は?」

「うん?」

「だから、労働条件だ。契約期間、業務内容、労働時間に給与形態……満足する条件が得られなければ断らせてもらう」

「確かに確かに。労働条件も知らせずにスカウトも何もないね。これは失礼した」

 

 何がおかしいのか、アカネは笑いながら俺に条件を提示してきた。

 

「……おい。なんだ『業務内容:色々』っつーアバウトな内容は」

「そうとしか言えないよ。私のように調査・スカウト・窃盗のために公的施設への潜入をする者もいれば、レアカードの強奪・偽造カードの密造。組織のトップ連中の護衛なんかもある。面倒なら断ればいいさ」

「そんな緩くて許されんのか?」

「実力が伴っていれば多少の勝手は許される。無能がそれをやれば処分されるけど、君なら問題ないさ」

 

 やはり秘密結社にも無能はいるか。それもDSに入る理由の一つではあるが。

 

「分かった。が、こちらからも幾つか条件がある」

「条件か。言ってみたまえ」

「さっきお前が言ったように、DSにもクビにしたい無能のカスがいるんだろ? そいつの身柄を俺に寄越せ」

「くっ……くくくっ! いやぁ、悪の秘密結社の私が言うのもなんだけど。わっるいヤツだねぇハクトくん! 君といると退屈しなさそうだ」

 

 すぐにこちらの意図を見抜いてくるあたり、こちらとしてもアカネが味方でいる内は仕事がスムーズに済みそうで助かる。逆に敵対すると厄介そうだ。

 

「記憶処理を施してからにはなるが、良いだろう。ちょうど下手を打って処罰対象となった者がいてね。君と入れ替わりなら得しかない」

「そうか。別の条件だが……」

 

 

 

 といった形で、俺はDSに加入することとなった。こちら側の条件の提示により、交換条件でジャバウォック強奪の手伝いをさせられる羽目にはなったが、元々アカネたちが計画していたことにタダ乗りしただけの楽な仕事ではあった。

 

 

 

 

 そして、ジャバウォックの窃盗から数日が経った後。

 

 

 

 

 

「……まさか本当にDSの構成員を捕らえてしまうとは」

「生徒たちの協力のお陰です。私だけの力ではありません」

 

 DSにもいたらしい無能のカスをアカネのスケープゴートとし、学園に偽造カードとイカサマダイスを流した張本人に仕立て上げ、学園側に身柄を引き渡した。

 肝心なことは全て記憶から抹消された搾りカスでしかないが、そいつの拠点には大量の偽造カードとイカサマダイスを運び込んである。

 

 これが第四の理由、物証作りの目的だ。

 

 学園長との会話から流用するが、()()()()()()()()()()()()()

 DSであることを証明するには、動かぬ証拠が必要だからな。

 DSに入れなかった場合は、適当に罪のない人間……俺のことを疎ましく思う教員あたりに証拠をなすり付けて冤罪を仕立て上げるつもりだった。

 

 秘密結社に入れたので、そこまでする必要はなくなったが。構成員を捕えるのは容易ではないが、内側に入ってしまえば話は別だ。

 

 

 

 これにより、『DSの構成員を捕える』という追加の仕事も達成。俺は多額のインセンティブを得ることとなった。

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