ハティになっちゃった 作:生体部品3
『ホドの流通品はラベルと内容物が全く異なっている場合が多い』
――修復剤の説明文より
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生きていればニンフにだって怖いもの、恐怖を感じる時はある。そうだろ?
でもそれは例えば、手柄が立てられないで死ぬことだったり、捕まって囮にされて部隊の他のニンフに迷惑をかけることだったり、死んだ後に異形に食われるような死に方をすることだったり。そういう自分が無駄だったことになることを恐れるようなのばっかりで、戦うのが怖いとか、痛いのが怖いなんてやつ、戦士には一人もいやしないんだ。それどころかまったく居ないわけじゃないけど通常型にだって稀さ。
戦うために作られた刀剣や銃が敗北や無様を恐れることはあっても切り合いや撃ち合いを恐れることはないのと同じことだ。
でも、僕は戦いが怖い、痛いのが怖い、なんでそう感じないのかわからない*1ガーディナのみんなもたまに怖い。
そうやって余計なことを考えて戦闘どころじゃなくなるせいで、戦闘機動を取りながら武器で狙えない、狙うのも避けるのも半端になって結局どっちもできない。どちらかに専念しようとしたって動かなきゃ狙われるし、避けることだけ考えて武器が撃てなければずっと撃たれ続ける。そうやってる間に攻撃に当たって痛くて結局何もできない。
どうして僕は戦士じゃないんだ……。
体は出力スペックから間違いなく戦闘型のはずだ。鎧殻の使い方も通常型と違って感覚で動かせるレベル*2で全部わかってる。どう動かせばいいのかは全部わかってるのにその通りに動いてくれないんだ。体も頭も全部そろってるのにただそれを動かすことだけができない。
他に何が必要だっていうんだ、必要なのは足りないことじゃなくて余計なものがあることなのか?
僕が戦士じゃないから……?みんなが言う通りコストが高いだけの出来損ないなのがいけないのか……?
もし、僕が生まれたところがガーディナでなかったなら。
例えば話に聞く上層、アルカンドは連邦制だから実体としてはたくさんのコロニーの集まりらしい。
そのコロニーどうしは争わずに手を取り合って暮らしているから、上層のコロニー間での戦争なんてなくって、中層のガーディナとの間でだけ戦いがあるけど、多くのコロニーは戦争から離れているんだっていう。
僕もそんなところに生まれていたなら、戦えなかったから、積載量だけなら通常型よりマシだっていう理由での輜重隊送り、じゃなくてもっと前向きな気持ちで、そうすることが好きだからって輸送の仕事とかに就けたのかな。
行きたいな、上層に。バレたらただじゃすまないだろうけど。連れ出してくれるニンフにはもう渡りをつけてある。そのうち連絡が来るはずだ。この間の返事によるとしばらく先になりそうだけどね。
誰か呼んでる……。行かないと、急ぎの荷物でも出たのかな?
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「行きますよ!!あなたのせいで予定が変わって時間がないので途中行きながら説明します。さぁ早く!!」
「えちょ。わ、わかったから引っ張らないで!!待ってって、待って下さい!!」
「おい見ろよ、カルラドがヘロスの通常型に引きずられてんぞ。」
「今度はなにやらかしたんだよあの出来損ない。」と嘲笑う声がかかる。
「あ、こちらこの件で彼女を借りる許可証と差し入れです。皆さんでどうぞ。」とにっこり笑いかけ補給剤を1ケース丸ごと差し出す鎧殻を着ていないニンフ。
「おう、たしかに。」
「とっとと行ってこい!」とどつかれるカルラド。
「さぁ、早く早く!」
「だから引っ張らないでって!?」
カルラド回収完了。後はもう帰らない道。
次回、やっと上層に到着です。ここまで来ればあと少しだ……。