ハティになっちゃった 作:生体部品3
あと、独り言はどこまでするべきか迷ったので、以降は感想とか疑問がふと声に出たみたいなの以外では、一人の時の心の声は地の文で会話口調で書いていきます。
ガレキを片付け始めて数時間か十数時間か後、もしも僕が鎧殻をまとった戦闘型ニンフではなく炭素生物だったらとっくに疲労困憊して倒れこんでしまっていただろう。
半分になったゲートのような大物はあった場所に倒して伏せてあり、それ以外のガレキは部屋の隅にどかすことによって下が埋まったエレベーターシャフトに入れるようになっていた。
「これで上に行けるかな。そういえば結構時間が経ったのにお腹が空かないな?ちょっと疲れた気がするけど眠くもならない?」
どうやらBPが減らなければ空腹感を感じることはないし、精神的な疲労やエラーの類への対応で再起動が必要にならなければ睡眠もいらないみたいだ。ならこの疲れは気のせいか。
アルカンドの太陽の明るさは常に一定だからホドに『夜』は来ないと考えると、ニンフが炭素生物と同じくらい睡眠が必要だったらたしかに大変だったかもしれない、いつ寝るかなんてコロニーごとに標準時刻があるわけでもなければ暗くなるわけじゃないからみんなバラバラになるだろうし、寝ている時間が全体の1/4から1/3もあるんだもんね。
睡眠の話はともかく、BPの方は動いているだけでも運動量に応じた消費があるみたいだし、足りなければ力が出なくなったり空腹感に耐えられなくなったりするみたいだけど。結構動いたのに消耗は試し打ちのFemtの方が少し消費が多い*1ような気もするし、戦闘がなければニンフって結構燃費いいのかもしれない。
そういえばこの近くにお腹を空かせている子がいるらしいんだっけ?かわいそうだし近くを通りそうなら確認しておかないと。
思い浮かんだことにも一区切りついたので一休みも終わりにしよう。
僕は忘れ物がないか確認すると、エレベーターシャフトに入って上を見た。
一フロア上に開きそうなゲートがある。一フロアと言っても天井が高い分結構な高さがある。
間に他の階がないから一フロアって言ったけどこれ下の階の天井の高さからみるに、二フロア分くらいありそうな気がする。
手がかりにできそうな凹凸があるところを探すと、思いっきり跳びあがってホバリングして蝉のように壁に張り付いた。機動外肢のつま先がかかっているところに、跳んでも崩れないだけの強度があるなら、多少つま先から伸びているとんがりとか太ももの部分の膨らんだ装甲が邪魔でも壁を蹴るようにして上に跳びあがれる。
いくらfolsが故障しにくい鎧殻だからってあんまり多用したい動きじゃないけどね。壁から跳ぶんじゃちゃんと床から跳ぶほどには上がらない。巡礼でアルカンドの外に出ている間は技師型ニンフによる整備を定期的に受けられるわけじゃないから、使用者本人が簡易的な整備をするだけでも故障が起きにくいように作ってあるし、戦闘に使うものでもある分丈夫なものだ、とはいえ必要もないのに乱暴に使ったせいでもしもの時に故障なんてしたら目も当てられないからね。
何回も跳んでなんとか上の階についた。さすがに降積地帯側の出口まで壁キックで行くわけにもいかないから、別の出口を探すことになるだろう。もしこのゲートの先も行き止まりだったり、そうでなくてもどこにも下層に戻るルートが見つからなかったらこのゲートのもう少し上にぶら下がっている切れたエレベーターのワイヤーを登っていくことになりそうだ。
ゲート前にあるシャフト内の出っ張りに立つとゲートを開けて中を覗き込んだ。
敵影なし。ヨシ!何もなくてガランとしていて、突き当り正面にゲートがない以外は下の部屋と同じような構造だ。
下との違いは、正面のゲートの代わりに突き当りの右に開かないゲートがあり、左には開口部があってバルコニーになっているようだ。
開かないゲートはしょうがないので左を見ると、開口部の左右に太いパイプ、何か所かある床の穴の横にライト、奥の縁には落下防止の柵の残骸が見えた。
外に出て少し進むと左のパイプをくぐり、下をのぞき込む。
「えーとたしか増えた知識によるとイーデン様の研究室がこの下に……。」
壁に穴が開いているし、どうやら記憶とあっていそうだな。一旦上る前の部屋と同じ階らしい穴に降りてから、もう一回下を確認して降りよう。
と飛び降りた瞬間、二足の自動機械と目が合う。相手の銃が僕に向く。マシンガンタイプかな?
「こ、こんにちは?*2」慌ててCaladbolgを取り出す。
返答は銃弾。ダメか!
なんかもう一匹いる!目の前に飛び込んじゃったんだけど!?一匹目がリロードしてる間にどうにか数を減らさないと。
最初に一発当てた方に続けて
二匹目もリロードし始めたので横から胴体にCaladbolgの残り三発*3を打ち込むと動かなくなった。Caladbolgをリロードしながら足先でつついてみても二匹とも動かない。
他にはいなさそうかな?なんとかなったみたいだ。使えそうなセル資源を回収しなきゃ。戦闘に巻き込まれて壊れた木箱はみんな空みたいだし、機体の残骸くらいかな。
回収が済んだら、伏せて下をのぞき込んで場所を確認すると、崖に捕まるような体勢からホバリングしてさらに下の壁の穴に飛び込んだ。
壁にパイプが這う通路*4を少し進むと、先は少し広くなっていた。梯子*5で上がってくるようになっている穴とその周りに少し残された物資がある。何も知らなければ通路も含めて少しだけ物資が残った隠し倉庫にも見える。
「荷物の余裕もあまりないから何でも持っていくわけにはいかないし、まずはこっち。」収納用の箱がいくつか積んである後ろ、壁にも見えるところに手を伸ばす。ひんやりした壁が手に触れる。
「開かないか?」これが開くゲートであるという前提で考えるならロックがありそうなところにCaladbolgを打ち込む。壁とかでも貫通しやすい*6これで物理的にロックしてるところが壊せれば開けられるかもしれないと思ったが、打ち込んでも見た目に変わりはない。
「ダメか……。ん?」打ち込んだところを触ってみると、指が少し壁にめり込んで見えた。
「これ!光学迷彩の逆でゲートにゲートの立体映像が被せてあるのか!」触って調べてみると、どうやら本当はゲートは既に壊れかけみたいだ。開けられるかも。
ゲートは真ん中から開くタイプに見える、ロックの部分を打ち抜いたことだけ確認するとそこに手をかけて思いっきり横に引く。しばらくがたがたと引いていると少しずつ動いていって、やがて通れるくらい開いた、と思う。手が立体映像に埋まって見えるから見た目は変わってないけど全体の四分の一くらいは開いているはずだ。近くに落ちていた銃*7を差し込んでみて開いているのを確認したので入ってみる。
ドアをすり抜けると眩しいライトがこちらに向いていた。これが立体映像も兼ねているのかな。銃をドアに立てかけてライトの脇を通り抜ける。積まれた段ボール、たくさんのラックに並ぶサーバー、薬棚、手術台とライト、薬瓶にガスボンベ、鉗子や注射器のようなものまである。とりあえず手術台の横に保管されていた目を回収する。多分これが主の右目のコピーってやつなんだろう。
部屋の真ん中に設置されている手術台のところまで行くと奥にモニタとキーボードが二揃い見えたのでそっちも調べることにする。
「片方だけキーボードが逆さまに置いてある?このキーボード、Wind〇wsキー*8ついてる。」よく見ると両方ともコードの類は伸びてないし、モニタに至っては机から直接生えている。机の下の袖机に見えたものも机と一体化している引き出しだったことに気づく。
「無線が生きてる。
これもしかして直接アクセスできたり……しない!
それでキーボードがあるのか。直接干渉できないから手打ちで……これ片方のキーボードが上下逆さまに置いてあるのって文字も違うから読めなかっただけなんじゃ……?こんな状況で右目の権限コピーを完成させたのってすごいな。中国語の部屋*10の中の人はその言語をわかるようにはならないんだぞ?
宇宙猫になりかけながらもサーバに入れないか確認してみる。あ、マウスないや、さっきのやつ持ってくればよかった。さっき無線をたどった時みたいに入力の間に入って、入れるものと入ったものを対応させれば直接つながっても操作できるかな?使われてる言葉がわからないとできないことだけど、増えた知識のおかげで炭素生物の言葉が今の僕にはわかるからね。
とはいえ時間がかかりそうだ。後回しにして目の方を見てみよう。見ると言っても説明が見られるわけじゃないし、さらっと最終更新見るくらいだけど。うん、さっき見つけたメモリ媒体と同じで多分イーデン様が触ったらしい形跡があるな。
他にも部屋を見て回ったらQRコードとかあったけど、ここにあるマシンにも入れてない状況でどこかにつながるわけでもない。いつか戻ってきて再挑戦したいな。でも今は記憶が正しいのかの確認とかをしたいからそっちが先だ。そういえばお腹を空かせた子以外に種子*11っていうのもいるのか。見てみたいな。
一人だと会話難しいので、ヨヨちゃんを右副腕に乗せるか下層をとっとと抜けて中層の亡命組と合流とかしたいところですね。
7/5 19:30 追伸 モニタは再度確認したら、別に直接生えてるわけじゃなくて机の後ろ側に締め付けて固定する部分がありました。キーボードと同じで電源とるようなコードないけど。この話では生えてる感じで行きます。