ハティになっちゃった 作:生体部品3
飢えた者は何を食べてもうまいと言う
飢えのために感覚が損なわれて正しい判断ができないからだ
心もまた同様に貧しさ、欠乏の害を受ける
それゆえ、それでもなお正しい心を失わないものはそれだけで尊敬すべき人である。と
機械根があるはずだったところから例の子の方に進み始めた僕だったんだけど、広いところに出るまでは語るようなことは特になかったね。
この辺りをうろついてる自動機械は跳んだりしないタイプみたいで、高さがあれば追いかけてこれないみたいだから上を取れば、伏せて一方的に撃てるし、高所が取れなくてもこのあたりにたくさんあるそんなに厚さのないコンクリート塀はCaladbolgなら一方的に貫通して撃てるからね。
遮蔽が取れない飛びクラゲもいたけど、逃げ場所がないようなところに追い詰められない限りCaladbolgの弾数でも余裕をもって倒せるから特に問題はなかったよ。そうしてパイプから大きな空間に出たんだ。
風もないのにパイプから出たとたんにスイと横切る飛びクラゲ、珍しいな。普段はただそこに浮いてたり、風に吹かれて移動するくらいで、それ以外のことなんて敵を見つけて自爆するときくらいだと思ってたのに。
慌ててパイプに戻ろうとする僕に向こうも気が付いたみたいでゆっくり振り向くクラゲを打ち抜いて、いや、クラゲの前ってあるのかな?とかパイプの外の足場ってこのパイプがパイプとして使われなくなってからつけられてそうだし、このあたりに窟があったのか?いやあったんだろうな。と気が逸れそうになったところで、上から自動機械の足音。クラゲの爆発の音でも聞かれていたかな?
ここまで上を取ってきたけど逆に上を取られる形になったな。でも多分体形的に二脚の自動機械だとニンフほどには上下の射角が取れないはずだ。
そう思ってCaladbolgを上に構えて待つと数秒後自動機械が下をのぞき込んでくる。
その顎先を打ち抜くと足を滑らせたのか相手が滑り落ちてくる。
慌ててパイプ側に身を寄せて避けると足場にバウンドしてそのまま落ちて見えなくなった。
それはそうだ、特に踏ん張るところもないパイプの上でバランスを崩せば当然そうなる。
ジャンプ回避の時以外では自動機械は足場から落ちない、なんてことは起きない。
folsはそこまで速度が出る鎧殻ではないから今まで大して意識したことはなかったけど、推進機動と体術を合わせて突き飛ばす、みたいなのってもしかしてかなり強いんじゃないか?層間プレートが近いところ以外の屋外では落下するなら結構な高さになることが多いし、飛行できないたいていの相手は突き落とせば戻ってこれないか戻るのにかなり時間がかかるはずだ。
足場を伝ってパイプの上に出るとそのままパイプの反対側に下りる。反対側の足場の先が目的地だ。
カシャカシャと機動外肢が音を立てる。上の方の欠けた壁から足場に落ちてきたのだろう小石をたまに蹴っ飛ばしてカラカラ、カツーンと音を立てる。
下に落ちた小石を目で追うとずっと下の方の岩場に飛びクラゲが引っかかってるのを見かけて、はっと振り返って通ってきた足場の下を確認する。よかった、引っかかってるのはいないみたいだ。気が付いたら後ろからってことがあるからね。
「誰かーっ!」
今誰かの声のようなのが聞こえたな。やっぱりこの先にいるんだ!
「おーーーいっ!!」
足場が壁から出ているところが終わって通路の入口まで来るともっとしっかり聞こえる。
必死そうな声音の割に音量がなさそうだ、音で自動機械が寄ってこないように……?いや、そんな力ももう残ってないのか!?
「聞k「誰かいるのかい、今行くよ。」よ、よかった。」
僕は慌てて返事をすると声の方に駆け寄った。
通路を進んで曲がったすぐ先には壁、いや天井が落ちてきて壁になったのかな。突き当り一面の壁の一部が鉄骨だけになって向こう側が見えている。そこにその子がいた。
「あの……何か食べる物ないですか……」
と明らかに空腹に耐えるように体を震わせる、やけに小さな通常型の子が言う。見た感じこのままだとガリガリ変な音を立て続けるHDDくらいに限界が近そうなのに、なんて子だ。
「あぁ。ちょっと待ってね。」
ごそごそと補給剤を探しながら鉄骨に寄って部屋の奥を見ようとする。この子、ギラギラした目ですっごい見てくるな……飢えで正気を失ってないかちょっと不安になってきたぞ。奥に部屋があるけど、思っていた通りの行き止まりに見える。
何もおかしいことはないし、今のところ知っている通りのはずなのに、何か違和感がある。
あ、補給剤あった。取り出すと彼女は鉄骨の間からゆっくり手を伸ばしてくる。彼女が手を伸ばしてもまだ届かない距離だ。左右に振ると口を半開きにしたままぴったり目で追ってくる。
「ぁ……。」
考え事を優先して遊んでる場合じゃないな。僕は呻き始めた彼女に補給剤を差し出すとそれはすごい勢いでひったくられるとお礼を言っている途中の口に突っ込まれた。口と手が別の意志で動いているあたり、やはり相当な状況だったみたいだ。
「(ガキッゴリッゴリッ……ムグムグ)」
一心不乱に食べているけど、なかなか減っていかない。多分噛み割る力も残ってなくて、口中の一次消化液でふやかして溶けたのを飲んでる状態なんだろう。
「そういえば自己紹介もまだだったね。僕の名前はハティ。アルカンドの巡礼さ。君の名前は?」
手元に意識が行っていた彼女は弾かれたように顔を上げてこっちを見ると
「
「落ち着いてから聞くよ。それより
早速さっき拾ったBalmungを暖気すると鉄骨工事に入った。話を聞くのはその後だね。
なんかここまでタイトルが四文字だな。と思ってもそれをもったいなく思って固執してはいけないよ。いきなり四字熟語を叩き込み始めることになるから。