ハティになっちゃった 作:生体部品3
足場が確かなら数分で移動できる距離しか移動してないぞ一体何が起きているんだ……?
鉄骨を除去した僕は部屋に入ると、そこでさっき感じた違和感の理由に気が付いたんだ。
この子、ニンフのにおいがまるでしない。この距離でニンフの存在をそれで感じられないなんて普通はないことだし、もし疑っていたらコストカットされた偽装装置*1の映像だと思うかもしれないね。
ヨヨの戦えるほうがヨド説って本当だったのか。音が立たないように待たれたら見えるまで気が付かないぞこんなの。元からそれを警戒してないと近くにニンフがいると判断できないだろうし、そんな状態で足音がしたってまずは自動機械とかを疑うはずだ、そんな初めから戦闘するつもりのニンフとはかけ離れた脅威度のものと誤認するのは不意を打たれた側には致命的になるってわけだ。それにこの、近くにニンフがいるかわからないって言うのは自動機械から隠れるのにも役に立つはずだ。
「食べ終わったみたいだね、落ち着いたかい?」
「あ、はい!巡礼者様、ありがとうございます……おかげ様でヨヨは助かりました!」
元気になったみたいで、さっきまでの鬼気迫った表情もなくなっているし普通に会話できそうだ。
ここまでで例の知識が大きく間違ってたことはなかったけど、細かいところに違いがあることはあったし一応聞いておこうか、と思って確認をすることにした。生産コロニーの情報開示は普通自動だし意識して止められるものではないけど、生まれつきその機能に何か問題がある子は他のところにもいてもおかしくないからね。まぁ特に他所にそういったニンフがいるなんて聞いたことはないけれど。
「それで君はどこから来たんだい?このあたりにニンフの窟があったりするのかな?」
「実はヨヨにもここがどこかわかっていなくて……中層の方からずっと降りてきました!」
かくかくしかじかと彼女の話を聞いていくと、行商のようなこともしていたようだったし、今は現物のセルが欲しいみたいだったから彼女の持っていたKulim*2とメモとか手紙に使うようなちょっとした記録装置をいくつか買ったよ。Kulimは武器として使うならBalmungより連続で振るのには向いてないけど、工具として使うならそっちと違って刃を立てるのを考える必要もないし、そもそも物理的な刃がない分ただでさえ壊れにくいビーム系の装備な上にこれは壊れにくさからアルカンドでも制式装備になってるくらいのものだからね。
「えっと、それでお礼なんですが……買い物の後に聞くことじゃないですけど、何がいいとかありますか?」それならさっきのを割引に、とか言われても困るからかすごく言いづらそうにしてるな。
「そんな顔しなくたって別に、それならいくらか返せなんて言わないさ。そうだな、それならここまで君の通ったところのルートマップ*3をもらってもいいかい?」
「道の情報ですか?大丈夫ですけど、ヨヨは小さいので、他のニンフだと通れない所も多いと思いますよ?」
「いいのさ、上の方じゃなくてこのあたりのがあればと思っただけだからね。僕がここに降りてきたルートは使えなくなってしまったから、戻るルートを探す手がかりにはなるといいな。」
この子、表情がころころ変わるな。このあたりのと言ったところで、さっきの話に出た炉を取られると思ったのかドキっとした顔になったり、戻るルートを探してるだけとわかるとホッとしたりして。
「そういうことなら、どうぞ!」
僕はデータを受け取って確認したけど、彼女が落ちてきたこの部屋の上の隙間のこっち側って彼女のデータではまだ来てない方みたいだな、それなら。
「ついでに上の穴に戻るかい?君を乗せたまま跳べばそこから戻れそうだけど。」
「いいんですか!?ありがとうございます!!」食い気味なくらいの食いつきだな。気持ちはわかる。僕だって同じ状況でほとんど食事の心配がなくなる炉がある場所に戻れそうなら戻りたいだろうから。
しかしこのあたりでそんな施設がまだ残ってるなんて、近くに旧アーヴド跡地でもあるのかな?
いや、そうか。朽ちた育房がアーヴドなのか。ニンフが発生した土地、アーヴドは下層*4という情報だけ残ってたから、アーヴドは異形の大量発生に飲まれた他の下層コロニーと同じようにそれで滅びたんだと思い込んでたけど、今の上層と中層の境目が逆さ森の下だったり、中層と下層の境目がガーディナの対異形前線であるみたいに、過去の下層の範囲が異なるのはあり得そうだ。もっと上にあるのかと思ってたけど、たしかにこのあたりにも上層から光が届いているところもある。
とするともしかして炉の近くから、育房に何本も出ているパイプのどれかにつながってるんじゃないか?中のニンフが生活に使ってる可能性があるな。それならこのままそこにつけるようにしたら彼女はそちらに合流できるかもしれないからいいもんね?うん、そうしよう。ついでに伝言を頼んでおこう。
「うん。その代わり、もしもこのあたりで変わったにおいの種子っていうニンフに会うことがあれば、手紙を渡してほしいんだ。ちょっと今書くから待ってね。」
「……ヨシ、これで頼むよ。そのまま渡してくれればいい。」
「わかりました!……それじゃあ、えっと、失礼します?」
そうして彼女を副腕によじ登らせると思いっきり天井近くに跳んだ。
そのまま僕は彼女がこの部屋に落ちてきた穴に寄ったら、そこにそのまま飛び移った彼女は手を振って何回もお礼をいいながら穴の向こうに消えていった。
その後僕は研究室に、正確にはその上にあるモノレールの駅に向かった。レールの途中で反対側に見えるパイプに飛び移ったらよじ登って上に見える足場に向かう予定さ。さっきもらったマップによると、その先にどこまで上がるかわからないけどエレベーターがありそうだったからね。まずはそこに向かって何とか降積地帯まで戻るつもりなんだ。
そのまま降積地帯まで上がれれば降りてきたところの近くに戻れそうだし、どうかこれでうまくいってくれよ……。さすがにモノレールのレールの上をもぞもぞ帰る可能性なんて考えたくもないからね……。
ちなみに主人公は半端に思い出したせいで勘違いしてますが、深層の転送時説明文にニンフ誕生の地とあるのでアーヴドの発生地点はさらに下。アルカンドもナガラもそう名乗り始める前はアーヴドの一部だったようだし、アーヴド自体は初期位置が下層だっただけで最大版図は下層から上層まで全域だった時期があるのでネマ様の「アーヴド?ここだよ」はアーヴド崩壊前に抜けた重装甲信者ニンフが立てたコロニーのように途中で離脱しなかった地でその後も誰かが取った地ではないので、アーヴドについて聞かれて、アーヴド?ここもそうだよ、くらいの意味しかないと思われる。
あとヨヨちゃんは口に出す会話がほとんど句読点で終わらないで「!」「…」「?」で終わる族で思ったよりしゃべらせにくかったことと、右の副腕に装備してたら推進機動とかの時に落としそうで怖くなってきたのでご飯の心配のないところにリリースしました。
次回、降積地帯RTA開始
ここは書きたいこと少ししかないし、ニ三話くらいですぐ抜けられるといいなぁ。