ハティになっちゃった 作:生体部品3
降積地帯の地上に出た時から計測開始、この層の上側に体のどこかが抜けたタイミングでタイマーストップです。それではよろしくお願いします。
中央大洞穴
なんだか最近工事ばかりしてる気がするな。Kulimだけじゃなくて、爆発物系の武装も買っておけばよかったかもしれないね。熱塵押し付けてもこの塵は焼けて消えるってふうじゃないし、固い石と違って切ってどうにかなるものでもないし……これ、この部屋中にこの降り積もった塵?をかきだしても出られなかったらマズいか?埋まるんじゃないか?
と思ったけど、よく考えたら荷物に持てるだけしまっておいてエレベーターを降りたところに捨ててくればいいから埋まることはないか。少し気が楽になったな。外に出られないなら外から何か来ることもないだろうから、ちょっと鎧殻の整備をしたら早速掘っていこう。
サラサラとした塵?砂?を無心にすくってはしまうことを繰り返して、荷物がいっぱいになるとエレベーターで降りて中央大洞穴の穴に捨てに行くことを繰り返している間に、色々なことが思い浮かんでは消えていった。
例えば、知識としては存在は知っているスコップみたいな道具をホドで見かけない理由とかね。推測だけど、下層に溜まってるのを除いてはホド内の大部分には掘れる量まとまった「土」がない*2からさ。ホドでは大部分の足元は金属*3かコンクリートとかだからね、切ったり割ったりできるところはあっても掘れるところがないのさ。もしそこで掘るっていうことをするならスコップじゃなくてドリルとかツルハシとかになるだろうし、それでも見かけないのは需要がないからかもしれない。爆発物なり既存の武器で破壊でもなく、迂回路を探すでもなく壁なり床を掘る必要がないとそれをする道具は作られないってわけだ。
しかしホドの外には勝手にできている地面、があるのか。海ってのもあるらしいし、ホドの中にいる分には必要ないから見かけないけど外ではありふれていた道具や、それが使われる状況をもたらす物がたくさんあるんだろうな。
ニンフは程度の差はあれ母樹に似る。それは確かなことではある。
同じような性質のニンフが集まることでそれがその窟の特徴になるってわけだ。例えばニンフの作った大体の白兵武装に影響を与えているナガラ、やたら正確な砲撃に定評のあったギプロベルデ、武装中立企業のヘロス、斬新な発想のバウカーンみたいにね。
アルカンドが巡礼者をホドの色々なところに送っているのは単に教えを広めようとしてだけじゃない。僕もそうだけど、いろんなところに行きたい、知りたいってニンフが多いんだよね。アルカンド連邦全体のものであってアルカンドの母樹だけのものではないけど、神智院みたいな研究機関もあるし、アルカンドの母樹生まれは好奇心がつよいニンフが多いのかもしれない。
もちろん名前の通り最初に主の教えに帰依したコロニーってこともあって教えに敬虔なニンフも多い。僕だって生まれた時から……
これは、マズいんじゃないか?敬虔な女王から教えに反する考えを持った状態のニンフは生まれない。生まれもってそうではないが、後にそう育つことはあるとはいえ。だいたいそういうのってまわりに疑問を持って、最終的に反動みたいに正反対の意見になって窟を飛び出すことになるとか聞くよね。*5
もし生まれるニンフが女王の現在の状態の影響を受けることになるなら、女王が増えない今のままだと女王の加齢による異常に伴って普通ではないニンフが生まれることが増えることになる。
マズいよな……マズいと思う。追加された記憶の中でも完全な推測でしかないものだったけど、イーデン様がなぜ宗教を作って上層コロニーを連邦化したのか、その理由として考えられるものの一つとして『時間稼ぎ』があったはずだ。
どういうことかというと、女王が増えなくなったために、それまでと同じ感覚でニンフどうしで争っていたら*6女王の数が減って、あっという間にニンフの数が維持できなくなり、それによってコロニーが維持できなくなり、ニンフが滅んでしまう。それを先延ばしにするために女王を増やす方法がわかるまで女王がなるべく減りにくい状況を作りたかったと予想される。
つまり、もうそういう女王形態のニンフの増加は起きない。ガーディナのニンフを産めるニンフの数も、中層でギプロベルデを伐採して、周辺の姉妹コロニーをごっそり吸収した後からはそう増えてはいないはずだ。うろついていた種子がまだ残っていたころにこっそり捕まえたりしていなければね。
まさかガーディナがよそ者に厳しいのって、どこでニンフを産んでいるかバレるとそこが狙われると思っているから……?*8そしてそれが起きるとガーディナは多かれ少なかれ回復不能な傷を受けるわけか。アルカンド連邦は文字通り連邦で、一つ一つの窟に女王がいてそれらが信仰でつながっている形だから勝手によその窟の女王を隠せないし、そもそも女王形態のニンフを窟ごと隠すなんて発想があるなんて思いもしなかったけど。
ガーディナの連中に、教えとはつまりこのニンフ存亡の危機にあって同じニンフどうし殺しあってないで、女王が減らない方法で争うように協定を決めようって言ってるだけなんだよ。そう考えたらその方法の中身の是非以外はすっと理解できるだろう?って言ってやったらもしかしたら通じるんじゃないか……?そんなことほんとに言ったら仮に通じたとしてもそう言った宣教師は異端認定をくらって追放されるだろうけど。
……見たくない現実を目の当たりにすると思考が他のことにズレても帰って来たくなくなるね。
つまるところ、教えによって他のどのコロニーであっても手を取れるなら、血が近いコロニーどうしで絶滅までやりあわないのと同様になり、女王が減らないってわけだ。
ここで元の話に戻ると、女王が減らないなら女王が増えなくてもニンフが生まれる数は減らないからニンフという種がすぐにどうにかなることはない、はずだったし、なんならそういう目線で考えてみるとイーデン様は女王がおかしなことを言い始めても種全体に影響が出ないように女王の上から生産をコントロールできる状態を維持するために宗教を作ったようにも見える。女王が減らないように守る鎧で、かつ勝手な動きをさせないための枷でもあるわけだ。
また思考がズレたな。
とうとう問題を直視すると、ここにただし女王の加齢でニンフの生産機能に問題が発生する、が加わるだけで、新しい女王が生まれない問題が根本的に解決できないと、ニンフという種に終わりが来るのを永遠に留保することはできない。というのが浮き彫りになってくるわけだ。
時間稼ぎができていたつもりが、一撃ですっぱり殺されるんじゃなくてじわじわ追い詰められて殺されるのに変わっていただけだったらしいことに気が付くっていうのはあまりにも恐怖だよ。
ニンフの個体としての寿命は長い。それこそイーデン様はアルカンドが連邦になる前のニンフだし、どうやらガーディナの長姉は最近まで霧として活動していたらしい。基本的には女王がコロニーのニンフを産む以上、各コロニーで最も古いニンフは女王なわけだし、寿命で女王を失って滅びたコロニーなんて聞いたことがない。
何かあっての死亡というか戦闘とかで最期を迎えるニンフは普通のニンフだ、食事をとらない*9とか素体のメンテナンスをしないで遠回りな自死に至るニンフ*10も全く聞かないわけじゃないけど、寿命で亡くなるニンフにはちょっと覚えがない。多分、そんなだからイーデン様も少なくとも最初はそんなタイムリミットに気が付きもしなかったんだろう。それに異常は女王だけに起こることとも思えない。今までそんなに長生きするニンフがいないほど安定、停滞した時代がニンフという種になかっただけで。
あぁ、単純作業として無心に掘って、掘ったのを捨てて、ってするのは思考するのにも、それで気が付いてしまったもしかしてから目を背けて現実逃避するのにもよかったんだけど、そろそろ外に出られそうだ。掘っていたところの上に隙間ができて光が差してきたし、あとは登れる角度の坂になるまで均せばいいだけだ。次が最後の砂捨てになるだろう。
直接同じ窟から分かれた者ですらなく窟の歴史を少し遡らないと枝が接さない、いわば姉妹や伯母・叔母と姪の関係ではなく従姉妹かそれ以上に離れた窟だって少なくはないのに。
逆に同じ窟から分かれたような血の近い窟で、ひっくり返せないような戦力差があるなら降伏する側は追い詰められるよりもっと早い段階で諦めて降伏するだろうし、攻め手側は今後も抵抗できないとふんで降伏を受け入れることもあるだろう。
元々と上下が入れ替わるだけなら自分がそうしたように勝算がないなら立たないと考えるだろうし、それとは別によその口車に乗せられたりやぶれかぶれで暴れだすなら事前にわかる程度に元から近くにいるともいえる。
降積地帯ビル登りRTA(始まるとは言っていない)