IF―変革のLast Jahr   作:黒川 優

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前略、作者です。

近々(@if_author)Twitterに機体のモデル、優やアリスなどキャラのモデルなどを画像付きで紹介しようと思っています。

イメージがつきにくい人はぜひ足を運んで下さい。

それでは本編へどうぞ♪ヽ(´▽`)/


覚醒への飛躍

◇

(楯無side)

 

 

 

「うんうん。勝ち上がってるわね」

 

学年別トーナメント表の進行状態を端から見渡し、井上 酉花の場所を確認する。

2回戦の相手が候補生と当たりが悪かったみたいだけど勝てたみたい。

まぁ……

 

「ねぇねぇ。さっきの見た?」

「見た見た!ブレードがいくつにも増えたよね!」

「井上さんがやってたのって何て言うんだろう?」

「連続展開って言うんだって。意図的に使う人はいないんだって」

「そうなの?井上さんすごーい!」

 

強いて言えば詰めが甘いわね。

こんな人がいる所で使ったら目立つに決まってるのに。

 

(それにしても)

専用機じゃないとはいえ、代表候補生を倒すには“何か特別なこと”をしなければならない。

その事実から彼が機体の扱い方に対して格段に高い技術を持っているわけではないことがわかる。

 

やっぱりお父様が以前言っていたのは間違ってはいなかったのかしら……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「アインスは特別強いというわけではない」

 

「確かに、アインスによって既存のISが容易く破壊された。

しかし、そのISは当時第一世代のもの。

対してアインスはまだ未知の能力、第三世代、もしくはそれ以上のものを持つ」

 

「お父様。つまりどういうことでしょうか?」

 

「今のアインスの力の本質は操縦者のものとは限らない。

下手をすればお前の方が上手いかもしれない」

 

「刀奈。お前にはしっかりと本質を見れることができる人間になってほしい」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

世間では彼の存在をひた隠しにしている。

対してAIF、特に日本は彼が自由国籍などグレーゾーンに存在することから依存する傾向にある。

 

しかし彼の実力に対する評価が間違っていれば、それは国家間のバランスを崩してしまう。

 

故に私は知らなければならない。

私がこの先を予測し大局を見れるようになるためにも。

 

 

 

◇

(優side―第3アリーナ)

 

 

 

「あー……。もうやだ……」

 

只今開催中の学年別トーナメント。

本当だったら二回戦ぐらいで適当に戦って適当に負けるつもりだったのに、アイツのせいで台無しである。

 

しかもいつもの癖で連続展開したらすごい技術持ってる人って思われるようになってしまった。

ここにはモニターがあってどんなに遠くても鮮明に映されてしまうのを忘れてた。

 

(どうしたものか……)

連続展開、爆発加速。これだけでも一般の一年の生徒が会得しているのはおかしい。

これに、楯無を倒すために別のスキルを使ったら確実に素性がバレる。

 

(もっとシンプルに、上から叩けばいいだけの戦法ないかなぁ~)

まぁ無いから世の人が戦法や技術を考案するんだけど…。

 

いやでもさ、今の環境でも究極竜に巨大化付けたらそこそこなんとかなるじゃん?

(多分除去されるけど)

王道があっても良くない?

 

(あ……あった)

今まで使った技術だけでも、訓練機でも勝てる可能性がある戦法が。

ってか、前使ったじゃん俺。

 

「すいません。打鉄の後付領域って何の武装が入ってますか?」

「えっと……。近接ブレードと物理シールド、小型の遠距離武装。

酉花さんのにはウイングスラスターが収納されてますね」

「じゃあウイングスラスター以外ブレードだけにしてくれませんか?」

「え?いいんですか?」

 

整備科の先輩は俺の頼みがとても怪奇なものに聞こえたようだ。

 

「はい。お願いします」

 

これがシンプルにして最善の方法なのだから。

 

 

 

◇

(楯無side)

 

 

いち早く、私はアリーナに入り辺りを確認していた。

というのもミステリアスレディを使ってからの癖で、早く来ればその分アクアクリスタルのナノマシンを長時間放出できるので戦いが有利になるとついつい考えてしまっているのである。

 

しかし、ここは戦場とは違い学生対抗の試合。その辺は厳しい。

さっきの試合の時も惰性的にフラフラしてた時にナノマシンを放出してたらしく織斑先生に注意された。

 

(さて、何でくるか……)

クリア・パッションは限定的な空間でしかその真価を発揮できない。

その情報をこの前、そして模擬戦を通して教えてしまっている。

そうなれば距離を取れるリヴァイブで来るのが妥当な判断だが……。

 

「そんな簡単なセオリーでは選ばないわね」

 

私の前に現れた優くんはこれまでと同じように打鉄で来た。

 

「約束通り来てくれたわね」

『えぇ。おかげで苦労したわ』

 

皆の前では猫被りの声で私に応える。

この声が素で出せるのだからスゴいというべきか怖いというべきか。

 

 

―――10、9、8、7……

 

「約束は守ってもらうわよ」

『えぇ。貴女が勝ったら、ね』

 

まだ自然体のまま。

そう平然といられるということは私を倒す策ができたのかしら。

 

―――0

 

ガキン――!

 

開始早々、瞬間加速で私に斬り込んできた。けど特性上動きは直線的。

すぐに流す。

 

「あら、今日は手が早いのね」

『えぇ。貴女相手にはこっちの方が良いと思ってね』

 

基本的に強者、強力な機体と手合わせする時、弱い方はすぐには飛びかからない。

誰もが小手調べをして倒すチャンスを作れるように分析する。

それをしないのは模擬戦のデータだけで足りていると思っているからか。

 

(いくらなんでもそれは甘…)

 

――ガン!カッガン!ガン!ガン!ガン!

 

(ちょ、ちょ、ちょっと)

正面からは連続展開で切り込み。

上からは展開された近接ブレードが雨のように降ってくる。

 

(まさか…私にアクアクリスタルの能力を使わせないつもり…?)

防がれようが反撃を喰らおうがお構い無しに攻めてくる。

誰よりも経験のある彼がゴリ押しでくるとはお粗末である。

 

ただ困ったのは彼の攻撃速度。

以前こっそりやった模擬戦よりも連続展開が速い。

私の手の数に限りがある以上、このハイペースを対処するのは厳しい。

この点は流石と言える。

 

けど、防ぎきれない。反撃できないわけじゃない。

彼の攻撃予測範囲を先に捉え突き抜いた。

 

「え……」

 

また、反撃の一撃が彼に届かなかった。

その大きい隙に鋭い横一閃を受けてしまった。

一旦距離を取る。

 

(なんで……)

最初の模擬戦でも同じことはあった。

それは彼が肉眼では分からないほど僅かに移動していたからである。

けど、今は状況が真逆だ。

それなのにどうして同じ状況が起こるの?

 

 

息を整える時間も与えてくれず再び剣撃の嵐に飲み込まれる。

 

打鉄にこんな能力はない。

あったとしてもフィティングを行わない訓練機ではできないはずなのだ。

 

彼の最大連撃が終わり大きな隙ができた。

これは今日の戦いで一番のチャンス。

私は渾身の一撃を放った。

しかし、タイミングを見計い損ね、空を切った。

 

――ザザァァァ

 

今度は斬られる前に退避する。

するとさっきまで自分の距離感覚と実際の距離を見直すとかなり誤差があることに気付いた。

 

「これは…打ち拍子ね……」

 

ニヤッと優くんは笑っていた。

 

打ち拍子というのは私達が個々に持つ律動を意図的にずらすことで相手の攻め手を崩すもの。

超短期決戦を狙う彼にうってつけの技術である。

こういう時、こっちが目が慣れてきたと思っていたら相手の“当て拍子"、つまり律動を合わされて場を支配されていることが多い。

だから反撃に出たらカウンターで負けましたなんてのはよくある話だ。

 

「つくづく考えることが嫌らしいわね」

 

ただのゴリ押しだと思ったらとんでもない。

ハイスピード展開は打ち拍子を悟られない為。

ISの技術を使わなかったのは武術の技術なら一部の人しか知らず、恐らく対戦している相手しか感じられないから。

前回との戦術差、どうやら眠っていた虎を起こしてしまったようだ。

 

『バレちゃ仕方ないわ。少し趣向を変えないとね。

―Murdered Doll―(殺人ドール)』

 

後付拡張領域に収納していたブレードが一斉に箱状に展開され

真昼の世界が一気に夜の世界へと変わっていった。

 

―バチッ、バチチチチチッ

 

優くんの金眼から電気のようなものが迸る。

 

(あれは…オーディンの瞳)

演算能力を格段に飛躍させる魔法の瞳。

それを使うということはかなり大掛かりなものを仕掛けるということだ。

 

 

――ガキン!

 

さっきと同じような猛攻が再び迫り来る。

 

(チカチカする……)

ブレードによって暗く閉ざされた空間から時折日光が差し込んでくる。

けど、優くんが私の目線より上から攻めてくるせいで上を見ざる負えない。

 

 

『ふふふっ。ここよ』

 

優くんの声に反応し後ろを振り向いた瞬間、不自然なほど視界が明るくなって周りが見えなくなった。

これはISの……。いや訓練機にこんなことは出来ない。

次の瞬間、私は剣撃を受け壁に叩き付けられた。

 

 

(まさか…そんな現象を利用してくるなんてね)

人の目は暗い所から明るい所に行く時、明順応を行う。

その逆は暗順応。共に瞳に入る光の量を調節している体の反応だ。

 

ただ、この反応はすぐには起こらない。

1回脳に刺激が入り、脳が各器官に指令を出すことで反応として体が動く。

要は時間が掛かる。

 

優くんは視界が不確かになるこの時間を狙っていたのだ。

ISが完璧なものでもそれを使う私達の体が完璧じやないことを狙った戦術だった。

 

これは偶然だけどブレードで閉鎖的な空間が作れるから思う存分、容赦無く攻めてくる。

それど外から見れば“武器が大量にあるのだからゴリ押せて当たり前”とか、ただ力負けしただけにしか見えない。

 

「まだよ」

 

アクアクリスタルの能力で幻影を作り小隊編成で彼に畳みかける。

能力で視界は1回切った。これなら本体を特定される間に対策を練れる。

 

――ガキン!

 

しかし、私の予想と反して完全に幻影と本体を見分けられた。

幻影の方を見るとブレードをクナイのように投擲されている。

幻影には実体がないのを利用された。

そうしなくても今の優くんは視線の方向で幻影の場所を判別している可能性がある。

これじゃ時間稼ぎにもならない。

 

再び彼の戦略にジリジリと引きずり込まれる。

 

――ガキン!キン!キン!

 

今回、唯一助かった点は機体がレヴァでなかったこと。

レヴァならミスティルで武器を一点に集中させて一発KOなんてことができてしまう。

 

そうでなくてもこの攻略は厳しい。

この技が明、暗順応を利用している以上、センサーの類いに切り替えたいがそれもできない。

熱を出している優くんの体だけが攻撃しているわけではないからだ。

足下では部分展開された槍が私の隙を狙っている。

私が目を閉じ熱源センサーに頼れば、この閉鎖的な空間を作っているブレードが一斉に私を狙うはず。

 

「はぁ……はぁ…」

『ふふふっ』

 

珍しく優くんが微笑む。

けれど私に向ける眼差しは真面目そのもの。

彼の息はまだ落ち着いている。

体力面での戦術の終了、変更は期待できない。

耐える私が先にダメになってしまう。

 

「ふぅー……」

 

1度深呼吸をいれる。

この状況の打開策の一つクリア・パッションは依然と続く彼の容赦無い連撃のせいで意図的に使えない。

 

(仕方ない……)

この戦略は単純に連撃の速度が上回れば余裕で対処できる。

けれど、私にはそれだけの基本能力の高さはない。

別の方法で解決するしかない。

 

――バァン!

 

『――!?』

 

突如、クリア・パッションの爆発で優くんはバランスを崩し自分で作ったブレードの壁にぶつかっていった。

 

意図的にはできない。けど、時限式にしたり地雷のように対象に反応させることはできる。

 

そして場所によってはほぼ意図的に発動できる。

なぜなら優くん自身が攻めてくるのは私の目線より上。

かつ明順応、暗順応が起こせるように私の後を取ることが彼の戦略のカギだから。

 

 

(悪いわね。でも、正直辛いのよ)

そのくらい今の私は弱い。

だから、私はまだ強くなれるって思える。

 

――パチン

 

指鳴りによって続けて爆発が起こる。

優くんは急いで収納しようとしていたが、先に砕けていった。

 

「…ラスト……」

 

わざと加速し彼に精神的圧力をかける。

勿論、優くんにはそんなのは通用しないが加速の推進力を利用できる分、私が攻撃側として動くことができた。

 

 

斬られるのを覚悟で槍を一部収納し彼のブレードが空を切ったところで下から振り上げ最後のブレードを弾いた。

そして、無防備の彼に突き付けた。

 

「はぁ…はぁ……。これで勝負ありよ」

「………………」

 

 

―勝者、更識 楯無―

 

 

勝利のブザーが静かに轟いた。

 

 






Murdered Dollについて補足を

明、暗順応。共にISが自動対応しそうに思いますが、私は対応してくれないと思っています。

その理由として原作で山田先生は「ISの補助は下着の類いと同じ」と言っています。
つまり、ISは正常であるものには関与しないのです。
(順応は人間の普遍的反応)

また実戦での連続展開は優の固有スキルだった(当時は)って理由もありますね。
まさか人間の当たり前のように働く反応に目を付ける人はいないでしょう。
まずそれをさせる環境が作れないですし。

しかしISは自己進化(適応の方が正しい表現かな?)するので二戦目からもう効かない。
だから使い捨てせざる負えない。それがMurdered Dollの悲しいところです。
対個人では中々の技なんですけどね…。


では次回、また明後日会いましょう。ばいばい(^^)/

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