異世界ざまぁ配信局   作:@ななしの配信者さん

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有名商人に、ホンモノとニセモノを交えて鑑定を頼んだら、見抜ける? 見抜けない? ざまぁ編5

「失礼します。私も高額な品の買取をお願いしたいので、店長さんに見てもらえますか?」

 

 ついに登場したシローネ。

 ローブを目ぶかにかぶり、いかにも怪しげなスタイルです。

 

 :だれ?

 :女性っぽいけど、パーティーメンバーで女性と言ったら……

 :もしかしたら関係ない人かもよ

 

 ゴルディンは少し警戒しているようですが、いましがた大口の取引を成功させた、と思い込んでいるところ。

 

 気が大きくなったのか、話は聞く、という姿勢でした。

 

「お伺いします」

 

 賢者様との取引もそこそこに、隣のテーブルに移動するゴルディン。

 

 そして、シローネは、ヴェノムチェイサーの目を取り出しました。

 偽物ではなく、まごうことなき本物です。

 

「これは……」

 

 昨日、マチルダが騒ぎを起こしてくれたおかげで、ヴェノムチェイサーの目の価値は、充分わかっていることでしょう。

 

 これを狙って、わざわざオークションの翌日に作戦を決行したのでした。

 思った通りマチルダが動いてくれたおかげで、作戦も順調。

 偽物騒動があったので、向こうは最大限警戒しながら、つぶさに査定していました。

 

 先ほど話題に出たアイテムの登場に、コメントも湧き立ちます。

 

 :あれってさっき言ってたやつじゃね?

 :前の配信で見たぞ。本物ならやばいね

 :どうせマチルダに持たせたのと同じ偽物でしょ?

 

「いえ。あれは本物ですよ。といっても、私たちが証明することはできないのですが……どちらにせよ、後日判明します」

 

 :どゆこと?

 :ガランさんの査定はどうなん?

 :まぁ、画面越しじゃ本物かわからないわな

 

 先ほどの査定で、ガランのおじさんは信用を得た様子。

 ここで話を振らねば、娯楽配信としては失格でしょう。

 

「ガラン氏は、あの目をどう査定しますか?」

「実物を見るのが初めてなので確実かは怪しいが、偽物といえる材料が全くないので、逆説的に本物のヴェノムチェイサーの目と判定した。相変わらずウチでは買い取れない前提ではあるが……ライブラタイトと同じか、それ以上の値をつけるだろうな。なにせ、秘薬の素材だ。入手難易度も相まって、一介の商人が買い取るには不相応すぎる」

 

 :俺はこのおじさんを信じる

 :この人が本物って言うなら本物かも

 :どっちかの目が節穴か

 

 期待するコメントと一緒に、状況を見守ります。

 やがて、ゴルディンはゆっくりと口を開きました。

 

「ふむ……これはよくできたヴェノムチェイサーの目の偽物ですな。しかし、美術的価値が非常に高いので、金貨100枚は出せます。レプリカとして博物館に飾れますからね」

 

 :大嘘つき!

 :どっちかが嘘ついてるんだよな、これ

 :絶対こいつが買い叩こうとしてるだけだと思う

 

 それっぽいことを宣うゴルディンの手から、ヴェノムチェイサーの目を回収したシローネは、ぱさりとフードをとりました。

 

「そうですか。なら、買取はやめておきますね」

 

 :やっぱりシローネちゃん!

 :まぁ、消去法でね?

 :なんでシローネが最後なんだ?

 

 彼女の姿を見た途端、ゴルディンは明らかに狼狽しました。

 

「なっ……シローネ!? こんなところでなにを!」

「賢者様からお預かりしたヴェノムチェイサーの目を売ろうと思ったのですが、どうやら偽物だと判断されたようなので。価値のわからない方にお譲りすることはできません」

「お前っ……ワシを騙したな!? 一体なにが目的だ!」

「未来の旦那様になるかもしれない方の目利きを試したい、と相談したら、快く貸してくれたのですよ。どうやら、見る目がなかったようですが……これでは申し出も承諾できませんね」

「この女狐めっ……!」

 

 憤るゴルディンですが、コメント欄はそれどころではありません。

 

 :未来の旦那ってなに!?

 :いったいどういうことだよ、説明しろ

 :場合によってはアンチになる

 

 コメントは大荒れ。

 風向きをよくするため、ここで注釈をいれます。

 

「実は、シローネは以前より、ゴルディン氏に求婚されていました。本人は嫌だったようなのですが、あまりにもしつこく、その対抗策として、私たちはシローネの名声を高めようと、賢者様のいるダンジョンに潜りました。結果的に力になっていただけたのですが、賢者様が地上で生活するためにと売った素材で、ゴルディン氏が名声を得てしまったため、シローネの立場が危うくなりました。責任を感じた賢者様は、同じく割を食ってしまった商人のガラン氏も巻き込み、今回のドッキリを企画しました」

 

 :なるほど。そもそもこの企画がシローネのためだったのか

 :あー、巡り巡ってって感じなのね

 :ゴルディン許せねえ。俺たちのシローネちゃんを娶ろうだなんて

 

 凛とした佇まいのシローネは、毅然とした態度でゴルディンに言い放ちました。

 

「私はあなたのものにはなりません! それを、皆さんの前で証明します!」

「皆さんだと……?」

 

 訝しむゴルディンを尻目に、私は隠蔽を解き、声を発します。

 

「『ドッキリ大成功〜!』……でいいんでしたよね、賢者様。これ、ちょっぴり恥ずかしいんですけど」

「あぁ。あってるよ」

 

 隣のテーブルにいた賢者様も変装を解き、私の隣に立ちます。

 同時に、ガランのおじさんの隠蔽魔法も解きました。

 彼は呆れたようにゴルディンに言い放ちます。

 

「まさか、ここまで買い叩こうとはな。見下げ果てたぞ」

「きっ、きさまら……! 組んでいたのか! 絶対に許さぬぞ! 覚えておけよ!」

 

 捨て台詞を吐いたゴルディンに、シローネはきっぱりと言い返しました。

 

「それはこちらのセリフです。私たちにしようとしたこと、忘れないでくださいね。まぁ、あなたが忘れても、配信を見ていた民が忘れないと思いますが」

「は、配信!? 皆さんの前で証明……まさか、そのスマホで配信していたのか!?」

 

 どうやら、すぐには合点が言ってなかった様子。

 そんなゴルディンに対し、煽るようなコメントが流れます。

 

 :いえーい、見てるー?

 :こいつのところではもう買わん

 :ぼったくり商会潰れてしまえ

 

「どうやら、多くの方がぼったくりだと判断したようですよ。明日から大変ですね」

「えぇい! うっとおしい! こっちは王城との繋がりがあるんだからな! お前たちなぞ一捻りだ!」

 

 顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら宣うゴルディンに、シローネは微笑みを返しました。

 

「そうですね。今まで通り取引ができればいいですね。ガランさん、こちらに来てください」

 

 呼ばれたガランのおじさんは、不思議そうにシローネに近づきました。

 真に迫らせるため、ここから先の行動は、彼にも伝えていません。

 そんな彼の手に、シローネはヴェノムチェイサーの目を置きました。

 

「では、この目はガランさんにお譲りするので。せいぜい、追い落とされぬよう、用心してくださいませ」

 

 :え、あげるの!?

 :ガランさんも驚いとる

 :いいな、俺も欲しい

 

 にっこりしたシローネに、言葉を失うガランのおじさん。

 王城との繋がりを奪われると判断したのか、ゴルディンは慌てふためきます。

 

「お、お前! 自分が何を言っているのかわかっているのか! それは秘薬の材料だぞ! それをおいそれと渡すだと! どこまでこちらを追い落としたいんだ!」

「あら。これは『よくできたレプリカ』、でしたよね? 金貨100枚ぽっちのものを渡しただけで、何をそんなに慌てふためいているのでしょうか?」

「こ、このっ……」

 

 頭に血が上りすぎて、もはやまともな言葉も発せないゴルディン。シローネの煽りスキルがあまりにも高すぎます。

 

 ようやく冷静さを取り戻したガランのおじさんが何か言おうとしますが、人差し指を自身の口の前に持っていったシローネが、『しーっ』と彼の耳元で囁きました。

 

 :俺もあれやってほしい

 :ずるいぞ、そこを変われ

 :年上お姉さんにもてあそばれたい人生だった

 

 どうやら、視聴者さんにとってインパクトの強い絵面だったようです。

 

 場がいい具合に混乱した頃、賢者様が言い放ちました。

 

「よし。目的も済んだし帰るぞ」

 

 そう言って、きびすを返す賢者様。

 私たちもそのあとに続きます。

 

 その背中に、ゴルディンの負け惜しみが投げかけられました。

 

「ふんっ! 嵌めるなら、きちんと嵌めるべきだったな! なんのつもりかは知らないが、伝説級の魔物素材を二つも売ってくれたおかげで、まだ王城との繋がりは切れんよ!」

 

 自慢げに語るその素材は、賢者様が仕込んだ偽物です。王城に献上すれば、信用がなくなるのは必至。

 私は笑いを堪えながら、声を無視して外に出ました。

 

 ですが、コメントは少し心配気です。

 

 :どうするの? あんな高い物渡しちゃって

 :爪はまだしも、宝石はやばくね?

 :これじゃあ結局変わらないんじゃ……

 

 ひとけがないところに移動したので、ひとまず視聴者さんを落ち着かせます。

 

「大丈夫ですよ。マチルダの時を思い出してください。なぜ賢者様が品物を一度しまったと思いますか?」

 

 :なるほどね。だからこんなに落ち着いてるのか

 :あわれゴルディン、偽物を掴まされる

 :同じものに見えたけど違うのか

 

 どうやら、納得いただけた様子。

 コメントが落ち着いたところで、締めくくりに入ります。

 

「さて。『有名商人に、ホンモノとニセモノを交えて鑑定を頼んだら、見抜ける? 見抜けない?』、お楽しみいただけましたでしょうか? 結果は、見抜いた上でぼったくる、でしたね」

 

 :あれはやばいね、金の亡者だ

 :明日から不買運動するわ

 :悪徳商人、成敗!

 

 コメントの流れは完全にこちらへ向いていました。

 ゴルディンが終始買い叩こうとしていたのと、シローネの事情が明らかになったからでしょう。

 こちらを悪く言うコメントもありますが、それはあまりにも少数。

 民意は私たちに味方しているので、成功と言っていいでしょう。

 

「好評だったようでなによりです。今回は事情があったので急遽ドッキリをとりおこなわせていただきましたが、次回以降は未定です。またなにかあればするかもしれませんが……しばらくは通常配信でしょうね。それでは皆様。次回の配信もお楽しみに」

 

 締めの挨拶を終えた私は、配信を閉じます。

 完全に停止したのを確認した後、皆に労りの言葉をかけました。

 

「おつかれさまです。これにて作戦終了ですね。ゴルディンの勢いは確実に失墜すると思うので、これでシローネも煩わされることがなくなるはずです。ガランのおじさんも、交易が復活するでしょう」

「あぁ。助かった。それで、この目は賢者様に返せばいいのか? 持っているだけで恐ろしいのだが」

 

 そんな弱気なことを言うガランのおじさんに、賢者様は笑って言いました。

 

「いや、それはあげるから好きにしていいぞ」

「っ……冗談でも言っていいことと悪いことがありましてね」

「冗談じゃない。ゴルディンは確かに追い落としたが、あんたの名声を取り戻さなきゃ、立て直しもできないだろう。似たような価値の素材は他にもあるから心配するな」

 

 ガランのおじさんは、尚もなにか言いたげでしたが、言葉を飲み込んで、お礼を述べました。

 

「……本当にありがとうございます。このご恩をなんとお返しすればいいか……」

「いいって。まぁ、強いて言うなら今後ともよろしく、って感じかな。お互い協力関係を築けるのが一番嬉しい」

 

 こちらもドッキリ大成功、と言ったところでしょうか。

 これで終わり。

 そう思った私たちでしたが……。

 

 目を瞑りながらふーっと息を吐いて、落ち着きを取り戻したガランのおじさん。

 彼は意を決したように、神妙な顔で口を開きました。

 

「ならば、とっておきの情報をお伝えします。後日、我が商会にお越しください」

 

 

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