異世界ざまぁ配信局 作:@ななしの配信者さん
「さて。視聴者の皆さんに質問です。ここはどこでしょう?」
:どこって……どこだ?
:見たことない城がある
:どっかの領地?
「正解は……魔王城です!」
:はぁ!?
:え、魔王城って。勇者はどうした
:今まで音沙汰がないと思ったら、何してんの君たちは
「ドッキリ配信の第四弾! 『勇者が休んでいる間に魔王を倒したら、国は動く? 動かない?』です! 魔王の正体もきちんと暴くので、お楽しみに!」
クレアが宣言すると、滝のようにコメントが流れていく。それを確認してから、俺はスマホをポケットにしまった。
「さて。いよいよ決戦の時だ。皆、準備はいいか?」
「おう。国民に事実を突きつける時だ。その後は……まぁそうなってから考えようや」
「まったく、ダグラスはなりゆき任せなんだから。でもまぁ、ある程度どうするか決めているとはいえ、望む通りになるとは限らないしね。なるようになるって考え方は嫌いじゃないな」
「どうなっても、俺は、お前たちを守りたいと思っている。例え、また穴倉に潜ることになっても、だ」
俺がそう宣言すると、皆は強く頷いた。
シローネが、皆の言葉を代表するかのように言う。
「それは私たちも一緒です。何があろうとも、賢者様をお守りいたします」
「あぁ。私もこの剣に誓って、守り抜こう」
配信の司会進行をしているクレアが、『私もですよ』と言わんばかりにこちらに目配せをして来たので、強く頷き返した。
そうして突入することになった魔王城。
だがそこは、魔物が住むような荒れた場所ではなかった。
「中は綺麗に整備されてますねー。まるで人が住んでいる場所みたいですよ!」
クレアが視聴者に説明するように、内観を映していく。
そうなのだ。魔王城であるのに、魔物が住んでいる気配が微塵もない。
現に、魔物に出会うこともなく、悠々と奥に進めている。
しかしある程度進むと、侵入者迎撃とばかりに、魔物が大量発生した。壁や床に描かれた召喚陣から、最上級魔物が現れる。
まるで、ミダスから聞いた邪龍のような召喚の仕方だ。
同じ魔の物の仕業としてみれば似かよるのは当たり前なのかもしれないが、俺はそうじゃないことを知っている。
溢れる魔物の群れを危なげなく捌き、奥へと進んでいく。
間取りはわからないものの、とにかく奥へ、奥へと進んでいけば、両開きの大きな扉の前にたどり着いた。
そこまで来る間に、魔物の発生する魔法陣は全て潰している。
元がなければ魔物が湧くこともないだろう。
その魔法陣の怪しさについて言及していたクレアが、巨大な扉を前にして、視聴者に宣言するように口を開いた。
「いやぁ、激しい魔物の出迎えでしたね。まるで人為的に呼び寄せたような魔物群れの出迎えがありましたが、私たちの敵ではありませんでしたね! さてさて。魔王がいそうな雰囲気の扉が目の前にが……果たして、魔王はいるのでしょうか!? いざ、ご開帳!」
ぎぃ、と大きな音がして開く扉。その瞬間、扉の向こうから大火力の魔法が飛んできた。
さすがにこれに当たれば、このパーティーでもひとたまりもないだろう。
皆が避ける素振りを見せるも、念のため、俺のチート能力でガードをした。
旧時代の魔王を軽くいなした実績があるのだ。今代魔王もものの数ではなく、なんとかできる程度であった。
まぁ、魔王の正体を思えば当然か。
向こうはどうやらそうは思っていなかったらしく、舌打ちをしながら続く魔法を放って来た。
俺はそれを防御しながら、クレアに目配せする。
俺は近くにいる四人を守りながら、ゴリ押すように、ジリジリと前に進んで行った。
それを拒絶するように、魔法の火力があがる。
けれど、旧時代に恐れられた俺のチート能力は、この程度ではびくともしなかった。
ついに無駄だとわかったのか、魔法の追撃が止まる。
煙の奥から、静かな男の声が聞こえて来た。
「勇者ではない者が、ここに何をしに来た」
「お前が魔王だな?」
俺が問いかけると、魔王はゆっくりと口を開いた。
「……いかにも。そなたらは、勇者ではないようだが?」
なぜそんなことがわかるんだ、とは誰も聞かない。この後に起こることを考えれば、無駄な質問でしかないからだ。
睨み合うように黙り込む、俺たち五人。
相対するは、いかつい黒鎧と、顔を覆うヘルムを被った魔王。
シローネは、穏やかな様相で、仇敵を眺め。
ダグラスは興味深そうに視線を投げて。
ロイドは油断なく、剣を構える。
俺は、いつ攻撃されてもいいようにと、魔王の一挙手一投足を見定め。
実況のクレアすら黙って、その瞬間を見守っていた。
剣聖ミダスによって、その鎧がバラバラにされる瞬間を。
キン、と音がした瞬間、隠蔽魔法をかけられていたミダスによって、その鎧が脱げ落ちた。
後に残るは、パンツ一丁の、男の姿。
丁度、今代勇者と同じ目にあった、今代魔王——つまり先代勇者は、ぽかんとした顔でこちらを眺めていた。