異世界ざまぁ配信局 作:@ななしの配信者さん
そうして、彼女から魔力が放出されました。
途端、三人はくずおれて、マチルダの姿が消えました。
おそらく認識改変と、転移魔法でしょう。
性格は最悪ですが、技術だけは一級品です。
私は認識されていなかったので対象外だったようですが、三人はまともに受けてしまいました。
「……なぜクレアの石像をこわしたのですか?」
突然賢者様を責めるような物言いをするロイド。
残る二人も、敵意のこもった目で賢者様を睨みつけます。
「あぁー、最後っぺを残して行ったのか。まぁ、解呪できないわけないけどな」
賢者様がパチンと指を鳴らすと、三人はまたもや頭を抑えてひざまづきました。
思わぬ次第に、コメントは大荒れです。
:どういうことだ? マチルダはなにをしたんだ
:え、あいつパーティー見捨てたの?
:性悪女はマチルダだったか
コメントを眺めている間に三人は正気を取り戻したようで、ロイドとシローネはパニックになりました。
「くそっ、やられた! まさか堂々と持ち逃げするなんて!」
「クレアさんは! クレアさんはどうなるんですか!?」
ダグラスだけは冷静に、虚空へ……いえ、私に向かって、言葉を発しました。
「もういいんじゃないか。やりたいことはできただろう?」
「……そうですね。もう充分かもしれません」
私が姿をあらわすと、二人は劇的に反応しました。
「クレア!? どういうことだ?」
「え、なんで……? 幻……?」
ここまで驚かれると、さすがに申し訳なさが勝ります。
「……ごめんなさい。実はもう、賢者様に戻してもらっていたんです。あの石像は、賢者様お手製の偽物でした。私は無事です」
「よかった……! 本当に無事でよかった……!」
泣いて抱きついてくるシローネを抱き止めながら、私も謝ります。
「本当にごめんね……すぐに顔を見せればよかったよね。でも、どうしても仕返しがしたかったの」
「……見捨てて置いていった俺たちにか?」
ばつが悪そうにこぼしたダグラスの言葉を、一部同意しながら否定します。
「少しは心配してくれたらと思いましたが、本命は違います。マチルダの所業を暴きたくて、今回の計画を実行しました」
「たしかにあいつは許されないことをしたが、ここまですると読んでいたのか?」
「いえ……もしかしたら何もしないかもと思っていました」
私が否定すると、賢者様は意見をかぶせてきました。
「俺は何かやると思っていたよ。この子をこけさせて囮にするくらいだからな」
「なんだと? どういう意味だ?」
訝しげなダグラスに、賢者様は答え合わせをします。
「そのままの意味だよ。たまたま近くにいて様子を見ていたら、魔力の波動を感じた後に、この子がこけたんだ。明らかに人為的なもので、誰がやったのかと思ったが……まぁ、状況から察するに、一人しかいないだろうね」
その暴露に、コメントは大盛り上がりです。
:マジでクソだなあいつ
:拡散しまくって特定しようぜ。許せねぇわ
:そういう理由なら、この企画したのもわかる
:マチルダのファンやってたのがショック
:俺はお前のこと嫌いだけど、今回ばかりは味方してやる
そのほとんどが、私に肯定的な意見ばかりでした。
実際にその目でマチルダの所業を見たからでしょう。
ただ暴露するだけではこうはいかなかったはずです。
作戦は成功と言っていいでしょう。
でも、やったことはやったことです。残ったメンバーには謝らなければなりません。
「マチルダに仕返しがしたかったとはいえ、皆を騙した上に、無断で配信してしまい……本当に申し訳ありません」
「……配信してたのか?」
戦々恐々とするロイドに、私は小さくなって謝ります。
「本当にごめんなさい。謝っても許されないとは思いますが、自分の欲を優先してしまいました」
「……私は、クレアさんが無事だったならそれでいいです。本当は、すぐにでも教えて欲しかったですけどね」
「シローネ……」
「俺は途中で気がついたから別に構わん。まぁ、二度は勘弁してほしいがな」
「二度目なんてやりませんよ。する理由がないです」
「それもそうだな。やり返す相手はどっかに逃げちまったし。どうする? ギルドに依頼して指名手配するか?」
「いえ……それには及びません。既に、全世界に居場所がバレているみたいですから。私が何もせずとも、彼女は生きにくくなるでしょう。だから、もうこれ以上は望みません」
先ほどから見ていたコメントによると、マチルダの足取りは既に捕捉され、情報がばら撒かれています。
せめて命の危険がなければいいなぁと思いながらも、気持ちがスッとするのでした。
「そっか。それで、クレアはどうするんだい? パーティーに戻ってきてくれるのか?」
ロイドの問いには、すぐに返事をしました。
「それはもちろん。こんなことをした私が戻っていいのなら、是非。あ、でも一つだけお願いがあります」
「なにかあるのか?」
「賢者様もパーティーにいれていただきたいのです。地上にあこがれを持っていたようですし、いろんな所を案内したいなと思って」
そう告げた時の賢者様の顔と言ったら、写真に残しておきたいくらい傑作なのでした。