何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
思い返すと、僕は運がいい人間なんだと思う。
王都カンカネンに住む、ありふれた平民の家庭に生まれたのが僕だ。王都であるが故に特別、治安が保たれている方だったのだ。これが第一の幸運。
ところが、両親は僕が物心つく前………輪廻転生を自覚する前に病死してしまったらしい。これは孤児院の先生が教えてくれたことだ。両親との死別は不運なことだったのかもしれないけど、拾われた孤児院がよかった事は第二の幸運だと思う。朧げにしか思い出せない今世の両親を考えると、憂鬱にはなるけれど。
それよりも、と僕は孤児院の先生に頼ったり、孤児院にあった本を読んだりしてこの世界の事を学ぶことにしていた。ここが中世のような世界であることはなんとなく察していたから、生きるための知識を学べる環境にいるうちに少しでも学びたかった。
そうしているうちに、このフレメヴィーラ王国が魔獣との生存競争の最前線であることを知り、そしてその武器となる魔法や、魔法の技術で組み上げられたロボット………
魔法を学びたい。フレメヴィーラの言葉を理解して難しめの本も読めるようになった頃にはその思考でいっぱいだった。今は悪くない環境にいるけれど、そうでなくなる日が来ないとも限らないから、自分を守る力が欲しかった。
孤児院の先生は僕のそんな願いに応えて、魔法を教えてくれるようになった。これが第三の幸運。
この世界、空気中にエーテルが存在するらしい。魔力とはそのエーテルを生物が吸収して作るものだとか。魔法はイメージじゃなく、ロジックで組み上げるもののようだった。魔獣は体に触媒があって、それを本能で使う。人間はそれを杖に備えた触媒と、ロジカルな制御術式で代用しているらしい。
制御術式を理解するのには時間がかかった。
プログラミングを学んでおけばよかったのかな、とか心の中で愚痴りつつも、四苦八苦してどうにか、基礎的な魔法を撃てるようになった頃には8歳になっていた。普通の子供より早いと先生は言ってくれたけど、僕は単に思考力の面で下駄を履いていたから出来ただけだ。第四の幸運と言えるかもしれない。身体も鍛えた方がいいと言われて基礎的な体力作りもしているけど、持久力はともかく力がついた気がしない。
孤児院の他の子たちと比べると、僕は身長が伸びていなかった。顔も男っぽくなっていないから、大半の人には女の子だと思われている。
これが平和な現代への輪廻転生だったなら、自分の外見も良くなるよう磨いたかもしれない。しかし僕は、自分を守れるようになることが最重要だと思って魔法の練習や体力づくりを続けていた。
そのうちに剣の鍛錬をするようになって、おかしいと思った。孤児院の先生がなぜ剣を教えられるんだ、って。僕にいろいろ教えてくれた孤児院の先生は、かなりしっかりした体を持った男の人だ。もしかして元兵士だったりするのかな、と思ったから聞いてみた。すると先生は、自分は騎操士だったから、と答えてくれた。生き残るための方法を学ぶのに最適な相手だったんだと分かって、それから僕はいっそう熱心になったと思う。剣は重かったけど、頑張って扱おうとした。結局僕には重すぎたので、短剣を学ばせてもらった。そもそも、普通の剣をどうにか使えても杖とは併用できない。片手に杖、片手に短剣というスタイルが僕にとっては唯一、現実的なんだと考えた。
短剣は剣を受け流すもの、杖こそが攻撃手段だ。僕はたぶん大きくなれないだろうとなんとなく察していたから、接近戦でも剣で斬りかかるより短剣で突き刺したりする方がいいはずだった。
そうやって自分なりの戦い方を見定め、魔法も上達を実感し始めた頃に、先生からライヒアラ騎操士学園への入学案内を渡された。ライヒアラの初等部から中等部までは補助金が出るらしい。
フレメヴィーラは修羅の国だ。それは、騎士だけじゃなく農民や平民が自衛のため、戦いを学びたがる程らしい。なるほど、先生が僕に教えてくれるわけだと思った。あえて気にしないでおいたけど、子供の僕に戦い方を教えてくれること、実は変に思っていたんだ。
何はともあれ、ライヒアラ。行かない手はなかった。