何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
決闘騒ぎの後の僕の学生生活は、驚くほど順調だった。
思わず鼻歌が出るくらいだ。まあ浮かれてるとアディちゃんや、たまにセラーティ先輩に撫でられるのであまり表に出さないようにしている。キッド君、あんまり助けてくれないし。
当のエル君は
エル君が高等部に交じるようになったのは、三年間中等部に交じっていた流れでのこと。
つまり、僕らも三年間初等部で過ごして、いまや中等部に進学したということだ。
「今日もレイ君は可愛いねえ」
アディちゃんがそう言いながら僕を撫でる。アディちゃんとキッド君は順調に身長が伸びてきていて、アディちゃんは女性らしく、キッド君は男性的に成長してきている。では僕はというと、幼い頃から予想していた通り全然身長が伸びていない。エル君と、この点では同類と言っていいだろう。だからこそ高機動戦闘を真似たのだし。
さて、最近の僕らの話題といえば、野外演習だ。
野外演習は中等部の三学年が合同で行うもので、騎士として魔獣と戦い、実践経験を積むための実地訓練だ。といっても僕ら中等部一年生はアウトドア技術の習得が主なのだけど。
目的地はヤントゥネンという都市の近くの、小型魔獣が多い山林。ヤントゥネンはフレメヴィーラの中でも規模が大きい都市らしい。
護衛として高等部の騎操士学科(実のところ、
一週間かそれ以上前から話題に上がっていたのだけど、高等部に入り浸っていたエル君は今知ったらしい。あと二週間後だというのに。
キッドくんは呆れている。一方でしばらくエル君が欠乏気味だったアディちゃんは、むしろエル君が来たことで不機嫌さを表に出して、ちょっとした文句を言っている。アディちゃんの恋路、前途多難だ。エル君、
あ、エル君が助けを求めている。キッド君は仕方ないなと言いたげに話題を変えた。
「野外演習じゃ班組んで行動すんだけどよ、お前はどうすんだ、エル」
エル君、アディちゃんを横目に見つつ答える。
「特に指定がない限り、僕たちで集まっていたほうがいいですね。聞けば一年生は基本的なことが主ですし、適当に決めても問題ないでしょう」
「ふーん、じゃあその間は一緒にいられるんだぁ」
アディちゃん、明らかに機嫌がよくなった。そのままエル君の後ろから抱き着く。(僕はひそかにこれを、エル君摂取姿勢と呼んでいる)
エル君は………ダメそうだね。なんでアディちゃんの機嫌が好転したのかもあまりわかってなさそうだ。
前途多難。僕は内心で繰り返した。
そんな一幕があってから二週間、つまり野外演習初日。僕ら中等部は大型の乗合馬車に詰め込まれていた。この世界、
行先はヤントゥネン近くの山林、詳しく言うとクロケの森。ここは多分、訓練に都合がいい場所なのだろう。かなり長い道のりを馬車で行くことになるけれど、それも含めて。僕ら中等部はお荷物としての長距離行軍の訓練、そして護衛に十機ついている高等部の
お荷物の僕らは退屈なものだ。アディちゃんみたいに眠れたらいい方。
「仕方ねーってのはわかんだけどよ。さすがにこいつぁ暇すぎんだろ」
キッド君が愚痴っている。僕はといえば外(半分くらいは護衛の
「でしたらキッドも外の景色を眺めませんか?見ていると飽きませんよ」
「いや、そんなもんで満足できんのはおめぇだけだって。レイも外見るだけじゃ満足してねぇみたいだし。というか寝てるのか?」
「起きてるよー。今魔法の術式を色々と想像しているとこ。でもこの揺れじゃ書き出せないからなぁ………」
目を開けるとエル君は馬車の内側に振り向いて座っている。かわいらしく小首をかしげている様子を見るに、キッド君の退屈を紛らわそうとしているのだろう。エル君、ただの
「では、僕の持ってきた本を読みますか?暇つぶしにはなると思いますけど」
「本かあ………。何つうか、体動かしたいんだけど。まあいいや、なんて本だ?」
僕もエル君を見る。何を持ってきたのかは気になるところだ。
「錬金術概論・上巻です」
「教科書か………。錬金術に興味がないわけじゃないけど」
「いや、それで暇潰すくれーなら寝たほうがマシじゃねえか?」
「そうなると本当にやることがありませんね。アディを見習って寝ますか?」
キッド君は気持ちよさそうに眠っているアディちゃん(こうして見ると可愛いものだ)を見てうらやましく感じたのか、がくりと顔を上に向ける。そして、何かを思いついた様子で言った。
「まあ、退屈しのぎには、なるか?」
キッド君はやにわに立ち上がると、そのまま馬車の屋根へと上がっていった。確かに悪くない、と僕も立ち上がって、同時に立ったエル君に先を譲って屋根に上る。この馬車の屋根は荷台になっていて、僕らの荷物や演習の物資が載せられている。
「きもちー」
「ここからのほうが景色がいいですね」
荷台に上がると、街道に吹く風を浴びられて心地がいい。エル君も景色を眺めるのに集中し始めた。
「あー、結局暇だな。まあ、狭い馬車よりゃマシか」
キッド君にとっては微妙だったみたいだけれど。
「あー、こんなところにいた」
屋根に座って一息つき、口笛を吹いていると、アディちゃんも屋根のほうに顔を出した。
「アディ、起きたのですか」
「うん。いつの間にか三人ともいなくなってるし」
そういいながらもアディちゃんは屋根に上がってくると、おもむろにエル君の膝を枕にし始めた。
「日差しがあったかくて、こちらのほうが寝やすいわね」
「寝るのはいいですけど、なぜ僕の足を枕にしてますか」
「そちらのほうが寝やすいから」
あんまりな言動だけど、気持ちはわかる。エルくんって半ズボンとハイブーツを履いているんだけど、その間から見える足の素肌がスベスベで柔らかそうなんだよね。寝心地よさそう。
「………」
エル君、なぜかジト目で僕を見つめてくる。可愛い。
「え、何?エル君」
「いや、ものすごくレイに言われたくないこと言われた気がして………」
「そうなんだ、不思議だね」
ばれてる。そりゃ僕もアディちゃんの可愛がり対象になって久しいから、自分が可愛い寄りなことは自覚している。むしろその点ではエル君に仲間意識を感じているくらいだ。
「大きくなりたいねぇ」
「同意します」
キッド君は僕らのゆるい会話を眺めていたけれど、やがてアディちゃんと同じように寝始めた。
僕はというと、護衛についている