何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
出発してから三日。僕らを乗せたライヒアラの馬車列はヤントゥネンに到着していた。とは言っても中に入るわけじゃない。交通の要衝としての重要度と規模を体現するように聳え立つ城壁。その外で馬車列はヤントゥネンの商人から補給を受けている。
中に入らないので、キッド君やアディちゃんは不満げだ。まぁ、修羅の国フレメヴィーラで長距離移動はしづらいからね。他の都市は物珍しいだろう。
補給が終わってまた出発だ。一日かけてクロケの森へ。ライヒアラからヤントゥネンまでと違って街道整備があまりされていないらしく、進行ペースが遅い。
四日も乗っていれば流石に暇にも慣れる。眠っていた僕がキッド君に起こされた時には、クロケの森に少し入った、開けた場所に馬車が止まっていた。
教官たちの号令がかかる。
「荷物を下ろしたら各班、まずはテントを作れ。それが終わったら夕食にするぞ」
この四日、夜を越すのも馬車の中だった。街道のド真ん中でいちいちテントを広げたら、移動が遅れるからだろう。けれどこの演習の目的には野営訓練も含まれている。だからテントの設営も訓練のうち。
僕ら四人はテントの設営が割と早く済んだ。手順をエル君と僕で、体格のいいキッド君とアディちゃんに教えるというやり方が上手くいったからだ。最初はエル君に指示役を任せていたけれど、いかんせん僕も小さすぎた。
キッド君とアディちゃんが他の班を手伝いに行く一方、エル君は何処かに行こうとしている。
「エル君、どこ行くの」
「
サボり………ではないかな。僕らのノルマは済んでるし、そもそも僕らは手伝いに向いてない。
そこで僕は自分に正直になる。
「………見たい」
「えへへ、行きましょう」
我が意を得たり、とばかりにエル君が笑う。これ、アディちゃんが見たら喜びそうだな。
二人で中等部キャンプの隣、高等部キャンプに向かう。そこでは十機の
教習機として使われる中でそうなったのか、どの機体も個性豊か。もとは前世代の正式採用機、サロドレアがベースになっている機体のはずだけど。
「壮観だね」
「はい!」
エル君、満面の笑み。気持ちはわかるよ。
二人で眺めていると、僕は後ろから気配を感じた。
「おい、そこの………銀色と黒色?エルネスティと………誰だ?」
声をかけてきたのは体格がいい、質実剛健な感じの先輩だった。
「こんばんは、エドガー先輩。少しお邪魔しています」
「はじめまして、レイ・カルザスです。同じくお邪魔してます」
「ああ、丁寧にどうも。私はエドガー・C・ブランシュだ。君はエルネスティに連れてこられたのかな?」
「エルネスティ君ほどじゃありませんけど、僕も
「そうか………エルネスティにも同じ趣味の友人がいるのだな」
エドガー先輩が言う。………まぁ、わざわざ見に来るのは確かに趣味が同じと言えるよね。
「ええ!先輩は待機の担当ですか?」
「いや、先ほどまでは待機の順番を決めていたんだが………。まぁ、例によってディーが渋ってな」
「ディートリヒ先輩が?」
エル君とエドガー先輩は高等部トークを始めたので、僕は
どうやらディートリヒという先輩は待機任務を面倒に思っているようだ。確実にエドガー先輩よりは不真面目なタイプ。言っても仕方ないことでも愚痴が出る人でもあるらしい。
「奴の愚痴につきあうのも面倒になったのでな。少し気分転換がてら、こいつを見に来た」
エル君とエドガー先輩につられて、僕も一機の
「先輩も、
「うむ?好きと言うか………こいつは、私の武器であり相棒だからな。共にあれば気分が落ち着く。今みたいに心がささくれた時とか、疲れてるときにはよくこいつのところに来るよ。………私としたことが、柄にもないか」
エドガー先輩はそういって、頭をかく。
「いいえ、信頼できる相棒がいるというのは素晴らしいことだと思います」
エル君の返答に、僕も内心で同意する。相棒って、愛機っていいよね。
「エルネスティも、
「え?あぁ、ありがとうございます、ブランシュ先輩」
「エドガーでいい。長々と立ち話をしてしまったな。一年生は夜が更ける前に戻っておけ」
「はい」
「そうですね、戻ります」
僕はエル君と一緒に、中等部キャンプへと歩き出した。